1人1台配備の学習用端末、子供の個人情報扱いに不備…2割強の自治体「利用目的を定めず」
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小中学生に1人1台配備された学習用端末を巡り、読売新聞が東京23区や政令市など74自治体に、子供の個人情報を守るため、情報の利用目的を定めているか取材したところ、2割強の17自治体が「定めていない」と答えた。他の多くの自治体でも、利用目的が曖昧なケースが目立った。情報保護が不十分だと商業利用される懸念もあり、文部科学省は自治体の対応状況を調査する方針だ。
学習用端末は、政府の「GIGAスクール構想」の下、小中学校の授業で使われている。端末には民間業者の学習用アプリが搭載され、各自治体の判断によって、児童生徒の氏名やテストの結果、心理状態などのデータを集めている。市区町村の教育委員会が業者と契約を結び、データの分析などを委託している。
改正個人情報保護法が昨年4月に施行され、自治体も個人情報を取得する場合は、利用目的を具体的に定め、本人に知らせるよう義務づけられた。
目的を定め利用範囲を決めておかないと、情報が際限なく使われる恐れがある。文科省は昨年3月、教育データを扱う際の留意事項を策定。教委や学校が利用目的を定めて児童生徒や保護者に知らせた上で、業者に取り扱いを委託する際は、目的外利用を契約で禁じるよう求めた。
取材は、東京23区や政令市、道府県庁所在市の教委を対象に、昨年12月~今月に実施した。
個人情報の利用目的を定めているか尋ねたところ、東京都世田谷区や宇都宮市、和歌山市など17自治体(23%)が「定めていない」と回答した。「認識が不足していた」「対応が追いつかない」などの理由だった。
一方、福島市や千葉市、宮崎市など57自治体(77%)は利用目的を定めていると答えた。ただ、このうち50自治体が、単に「教育」や「アカウント登録」とするなど抽象的で情報保護が不十分な恐れがあった。
利用目的を児童生徒や保護者に明示しているか聞いたところ、33自治体(45%)は「明示していない」と回答。業者と契約する際に利用目的以外の使用を禁じているかという問いには、18自治体(24%)が「禁じていない」と答えた。
文科省は「各教委の情報保護に対する意識が低い」として、近く留意事項に利用目的の具体例などを盛り込み、情報管理の徹底を促す方針だ。
個人情報の保護に詳しい森亮二弁護士は「情報の保護が不十分な自治体が多く、一部は違法状態にある。極めて深刻な状況だ。個別具体的に目的を定めて明示しなければ、適正に利用されているか検証できず、子供のデータを守れない。国は自治体を指導していく必要がある」と話している。
◆GIGAスクール構想= パソコンやタブレットなどを配備し、一人一人に合わせた指導などをすることが目的。2019年末に発表された。約900万人いる児童生徒のほぼ全てに端末が配備され、21年度から本格活用が始まった。