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山本七平著『ある異常体験者の偏見』/悪魔の論理/126頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①前略~自己絶対化とそれに基づく反省の強要は、前述のように、相手を、自らのうちに自らの尺度をもつ独立した人間、すなわち対等の人間と認めないことだから、一種の実験動物視となり、従って精神への「生体実験」をしているに等しくなる。<『ある異常体験者の偏見』

2012-11-23 14:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

②従ってこれがすぐに肉体への生体実験へと転化しても不思議でない。 生体実験とか、生体実験の強制といえば人は驚くであろうが、この「時の勝者の絶対化」に依拠する自己絶対化が続く限り、そしてその媒体である商業軍国主義が存在する限り、過去に行われた如く今後も起るであろうと私は思う。

2012-11-23 15:27:59
山本七平bot @yamamoto7hei

③軍隊の私的制裁に次のようなものがあった。 「キサマ、これをきれいと思うか」 「ハイ」 「本当にそう思うんだな」 「ハイ」 「間違いないな」 「ハイ」じゃ、ナメてみろ」 編上靴ナメ、タンツポナメ、便器ナメといわれた私的制裁だが、一種の生体実験である。

2012-11-23 15:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

④もし「いやだ」といえば、きれいでないものをきれいだと嘘をついたことを自認したことになる。 従って制裁をうけるのが当然ということになり 「キサマァ、ペロリしやがったな」 となる。その後は説明の必要があるまい。

2012-11-23 16:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤そして制裁をうけるのは、受ける方が悪いのだから、制裁をうけた後なお「反省」しなければならない。 それがいやならナメなければならない。 最近ある人から、これに非常によく似た例を聞いた。

2012-11-23 16:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

ある人たちが、ある会社の従業員に、カドミウム入りと称する水をコップに入れてつきつけ「飲メ」と迫ったという。 事実かどうか知らぬが、これも便器ナメと非常によく似た発想の生体実験の強要である。

2012-11-23 17:28:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦言うまでもないことだが、その便器がきれいかきたないか、あるいはその水が有毒か無毒かということ自体には、生体実験の必要ははじめから存在しないのである。 従って生体実験へと進む考え方の基本は、実験の試料――すなわち便器や水そのものとは別のところにあるはずである。

2012-11-23 17:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧それはどこにあるのか。 それはある対象を絶対化し、それによって自己を絶対化し、従って自己の言葉を他を準する絶対の権威とする者が、その絶対性が、またそれに基づく反省の強要が、人命にも人体にも優先する絶対的なものであること。

2012-11-23 18:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨および、自分の言葉が前述の二重の裏切りとも言うべき虚構であることを隠して、これを誤りなき絶対の真実であると立証しようとする場合に用いられるのである。 従って、生体実験を強要する側には、必ず虚偽がひそんでいるといってよい。

2012-11-23 18:57:48
山本七平bot @yamamoto7hei

1】これが非常に明確に出ているのが本多勝一氏の『雑音でいじめられる側の眼』…であって、これは聖書に出てくる有名な『荒野のこころみ』といわれる寓話の中の、俗に「悪魔の論理」といわれるものと全く同じ構造になっているから、両者を並べて少し検討してみたいと思う。<『ある異常体験者の偏見』

2012-11-23 19:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

2】これは創作記事『殺人ゲーム=百人斬り競争』が、物理的にはじめから不可能なことではないかというベンダサン氏の問いに対して、本多勝一氏が非常に用心した言い方ではあるが、生体実験という発想で次のように応酬しているところである。

2012-11-23 19:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

3】「……このように当人たち(向井・野田両少尉)が死刑になった後では、何とでも憶測や詭弁を弄することもできますよ、いくら名刀でも、いくら剣道の大達人でも、百人もの人間が切れるかどうか。実験してみますか、ナチスや日本軍のように人間をつかって?

2012-11-23 20:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

4】これは実に不思議な発想である。 便器がきれいか汚いかを調べてみるのに、生体実験という発想は全く不要であると同様に『百人斬り競争』が事実か虚報かを調べるにあたって、生体実験などという発想は、はじめから出てくる必要も必然性もないのである。

2012-11-23 20:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

5】事実、この疑間を提示したベンダサン氏であれ、この虚報を徹底的に調査した鈴木明氏であれ、二人を弁護した中国人弁護人隆文元氏であれ、生体実験などという発想ははじめから全く皆無であり無縁であり、そんな発想がありうるということ自体が、想像に絶する実に奇怪なことなのである。

2012-11-23 21:28:01
山本七平bot @yamamoto7hei

6】生体実験という発想があり、これをやれと強要しているのは初めから終りまで、実に本多勝一氏だけなのである。これは言うまでもなく 「私の言う事を嘘だ、そんな事は出来る筈がない、と言うならブッタ斬ってごらんなさいナチスや日本軍のように人間を使ってできないでしょう。

2012-11-23 21:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

7】できないのは、あなたは自分が嘘をついていると自ら認めたことなのですよ。そうでないというならやってごらんなさい」 という論理であり、前述の便器ナメとほぼ同じ論法である。

2012-11-23 22:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

8】「できない」といえば「それ見ろ、お前は嘘をついた、おれの言う事は絶対正しい、反省しろ」という事になる。 こうなれば自らは虚偽者として断罪されるだけでなく、虚報を事実と認め、従って二少尉の処刑を正当と認める事になる。 これは虚偽を事実と認証し、殺人に加担するに等しくなる。

2012-11-23 22:57:48
山本七平bot @yamamoto7hei

9】では「できる」「じゃやってみろ」となったらどうなるか、言われた者は生体実験という恐るべき罪をおかす――即ち、どちらにころんでもその人間が恐るべき罪に陥らぎるを得ないように追い込んでいく論法なので、古くから「悪魔の論理」といわれる有名な論理そのままである。

2012-11-23 23:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

10】聖書において、この論理を解明した「寓話」を現代的に翻案すれば次のようになるであろう。 「荒野のイエスに悪魔が言った。お前は神の救いを信ずるというがそれは嘘だろう。本当はオレの言うことが正しいと思っているんだろう。

2012-11-23 23:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

11】そうでないと言うなら、神殿の屋根からとび下りてみよ。神の救いがお前を支えてくれて、絶対に墜死もせず足も折れないはずだから。なぜしない、しないのは内心ではオレの言葉を絶対に正しいとし、それに従っている証拠だ

2012-11-24 00:27:53
山本七平bot @yamamoto7hei

12】いうまでもなくこれは、それが正しいというなら自らの体で生体実験をしてみろ、しないならば、おれの言葉を正しいとした証拠だという論法である。

2012-11-24 00:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

13】二千年の昔から、この言葉は、様々に外形を変えながら、自己を絶対化して、自己の基準で他を律し、それに基づいて反省を強要する者が、絶えず口にして来た言葉である。 便器ナメから汚水ノマシから、本多勝一氏の「実験してみますか……人間をつかって」まで。

2012-11-24 01:27:59
山本七平bot @yamamoto7hei

14】それは民族により、宗教により、文化様式により、絶えず外形を変えながらも、言われつづけてきた言葉であった。 もちろんこれを口にしたという点では、キリスト教徒も例外ではない。ただ彼らの言い方が、外形的には日本人とは違うことは事実である。

2012-11-24 01:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

15】そして日本の場合は、これがほぼ常に、その時々の「時の勝者」を絶対化し、これを無条件で神格化し、その神格化によって自らを絶対化して反省を売る「商業軍国主義者」によって言われつづけて来たことに特徴があるであろう。

2012-11-24 02:27:52
山本七平bot @yamamoto7hei

16】そして彼らの背後にあるのが、判断を規制して命令同様の力をもつ「軍人的断言法の直接話法」の「沈黙の話法」であった。

2012-11-24 02:57:43
まとめたひと
山本七平bot @yamamoto7hei

山本七平の著作から名文・名言等を紹介しています。字数の都合上、元の記述を編集・追記・省略等したり、(続)で分割して続けたり、①②のように連続させている場合があります。また、字数に余裕があれば<の後に引用元の著作名を入れています。 作者:@yamamoto8hei 作者のブログでも山本七平を紹介中です。

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