2019年5月16日(木)
自民 「失言」防止手引配る
“発言は一部が切り取られる”
人権感覚の欠如 無反省
安倍内閣の閣僚や国会議員による暴言が相次いでいる問題で、自民党本部が「『失言』や『誤解』を防ぐには」と題した内部文書を作成し、同党所属国会議員らに送付していたことが分かりました。文書の中身は「発言は『切り取られる』ことを意識する」、「タイトルに使われやすい『強めのワード』に注意」などマスコミ対策に終始。「失言」の背景にある人権感覚の欠如などについて、まったく言及しない無反省なものとなっています。
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文書は自民党組織運動本部遊説局が作成したもので、「配布厳禁・内部資料」としています。今月中旬に党所属国会議員、参院選候補者に対して「政治活動の参考にご活用ください」と送付しました。
文書は、政治家の発言は「確実に一部が切り取られて報道されます」と警告。「リスクを軽減する3つの対策」として(1)句点を意識して短い文章を重ねる話法(2)支持者や身内と使っている「危ない表現」を確認(3)「弱者」や「被害者」に触れる際には一層の配慮を―と「失言」しないための“テクニック”を教えています。
また「タイトルに使われやすい」強めの表現を▽歴史認識、政治信条に関する個人的見解▽ジェンダー(性差)・LGBTについての個人的見解▽事故や災害に関し配慮に欠ける発言▽病気や老いに関する発言▽気心知れた身内と話すような、わかりやすく、ウケも狙える雑談口調の表現―の五つに分類しています。
「子どもを産まなかったほうが問題」との麻生太郎財務相の暴言や杉田水脈衆院議員が「(LGBTのカップルは)子どもを作らない、つまり『生産性』がない」と述べたことが大きな批判を浴びましたが、こうした発言には触れていません。
五輪担当相だった桜田義孝衆院議員は東北選出の自民党衆院議員について「復興以上に大事」と発言し、辞任に追い込まれました。ところが、同文書では「『弱者』や『被害者』が存在するテーマについては、表現に『ブレーキ』をかけるようにしましょう」との単なる注意にとどめています。(丹田智之)