Dr. Tairaのブログ

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海外メディアは衆院選における維新の躍進をどう見たか

総選挙がおわり、与党第1党である自民党の安定多数の議席確保と野党第1党の立憲民主党の大幅議席減という結果に終わりました。その中でも日本維新の会の選挙前議席の4倍にも上る獲得議席は目立ちます。

日本の大手新聞は早速この選挙結果について報じていますが、野党共闘の是非に関するものが多く、今ひとつピンと来ない論調も見られ、問題が矮小化されている感もあります。一方、海外のメディアも選挙結果を一斉に報じており、日本のメディアにない視点も見られます。そこでこれらの中で、維新の躍進を報じた英国ガーディアン紙の記事 [1]を取り上げ、全翻訳で紹介したいと思います。

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当該記事は"Japan election: rightwings populists sweep vote in Osaka"(日本の選挙、右翼のポピュリストが大阪の票を総ざらいする)というタイトルが付けられており、海外メディアが今回の選挙結果と維新という党をどう捉えているか、がよくわかります。

以下、筆者による翻訳です。

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日本の総選挙において、期待されていた野党第1党の挑戦があっという間に頓挫してしまったその夜、地元の小さな政党の候補者が次々と議席を獲得し、経済的に重要な地域を右翼ポピュリズムの中心地に変えた。日本維新の会は、大阪府でほぼ全ての議席を獲得したことにより、11議席から41議席へと約4倍に伸ばし、衆議院第3党となった。

最大の野党である立憲民主党とその仲間たちが敗因を探っている間に、維新はこれまでの低調な選挙の中で最も興味をそそられるバックストーリーになりつつあった。

月曜日の早朝には、与党自民党は、国民による投票で勝利したにもかかわらず、維新という新興勢力によって大阪からあっさりと退けられてしまった。

リベラル派や左派は、維新の台頭に衝撃を受けるだろう。維新は、自民党とそのパートナーである公明党に対する幻滅をうまく利用し、共産党や社民党を含む野党5党に投票する気になれなかった人々から票を集め、候補者が失敗したところも成功させたのである。「日本維新の会は、自民党・公明党政権に不満を持つ保守層の票を集めた」と読売新聞は月曜日に報じた。

しかし、公明党に代わって維新が自民党と正式に連立を組む可能性は低い。維新は、防衛費増額や中国・北朝鮮への厳しい対応に熱心な点では自民党と考えを共にするが、所得再分配には反対している。貧富の差の是正を公約に掲げて選挙戦を戦った岸田文雄首相とは相容れないだろう。

維新が国政選挙で勢力を拡大することは、岸田文雄氏にとって、自分の政党がもはや保守系有権者の自然な拠り所ではないことを思い知らされることになるかもしれない。「新資本主義による所得向上策に反対するだろう」と述べている。

維新は、岸田氏の師匠である安倍晋三元首相がイデオロギー的にこだわっている日本の平和憲法の改正を支持している。東京大学の内山雄教授は、維新と自民党との間で、便宜的な政略結婚が行われる可能性を否定しなかった。

「特にアジアでは、日本が憲法改正に踏み切るかどうかに関心が集まっているが、この様子では(既存の)連立政権では無理だろう」と内山氏は言う。「しかし、日本の"革新党"(Innovation party)が多くの議席を獲得したようなので、憲法改正の可能性は低いにしても、何らかの憲法関連で考えを共有する連立政権が誕生するかもしれない」。

物議を醸した前大阪市長の橋下徹氏が2015年に結成した維新は、大阪府知事も務める吉村洋文氏の代表代行の人気に支えられた。

東京大学の政治学教授であるケネス・マッケルウェイン(Kenneth McElwain)氏は、「私が最も驚いているのは、維新がどれほどうまくやってきたかということだ」、「吉村氏は全国的な知名度を高め、それが党全体の追い風になっていると思う」と述べた。

44歳の吉村氏は、昨年、コロナウイルスに対して効くと誤って主張し、ヨードうがい薬のパニック買いを引き起こしたにもかかわらず、ある党員が「ポップアイドル」と表現したように、パンデミックの最中、そのリーダーシップとコミュニケーション能力で称賛を受けた。

吉村氏は、ツイッターで小池百合子東京都知事よりも多い110万人のフォロワーを持ち、憲法改正や首相の靖国神社参拝など、伝統的な右翼の主張を支持している。

しかし、彼は日本の右翼のイデオロギーに必ずしもピッタリハマるというわけではなく、大阪では韓国人やその他のマイノリティに対するヘイトスピーチの禁止を求めるキャンペーンを行ったこともある。

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筆者あとがき

このガーディンの記事は、維新が海外の目にはどう映っているかが伺われて興味深いです。すなわち、維新を右翼のポピュリストと報じています。吉村知事が憲法改正や首相の靖国神社参拝などを支持していることは、よく知られていますが、日本のメディアは彼を右翼とは決して書きません。今回、維新に投票した人たちの目にもそのようには映っていないでしょう。

引用記事

[1] McCurry, J: Japan election: rightwing populists sweep vote in Osaka. The Guardian Nov.1, 2021. https://www.theguardian.com/world/2021/nov/01/japan-election-rightwing-populists-sweep-vote-in-osaka

              

カテゴリー:社会・時事問題