映画『日本のいちばん長い日』1967年版と2015年版を比較する

旭浜トーチカ。本土決戦にそなえて建設されたものだという(北海道、著者撮影)

映画『日本のいちばん長い日』には、岡本喜八監督・橋本忍脚本の1967年版と、原田眞人監督・脚本の2015年版がある。ぼくが前者を最初に観たのはおそらく小学生のとき、テレビ放映でだった。その後スクリーンでの上映も含め、数回観ている。後者については公開時にこのブログでも触れたことがある。

映画『日本のいちばん長い日』
公開中の映画『日本のいちばん長い日』(原田眞人監督)を観た。どうしたって、岡本喜八監督の同名作(1967年)と引き比べてしまう。 ディテールなどに力を入れていることはよくわかるし、昭和天皇をあえて正面から描こうとしているというチャレン...

今年の8月15日をはさんで、2本をあらためて再見してみた。すると、けっこう大きな違いがあることに気づいた。とりわけ目を惹いたのは、つぎの3点だ。いずれも1967年版にあって、2015年版にはない場面である。

1. 8月14日夜から15日未明にかけての、児玉基地における特攻隊とおもわれる部隊の出撃にまつわる一連のエピソード。1967年版では、すでに中央では戦争終結が決まっているにもかかわらず、現場に出撃命令がだされ、若い特攻隊員たちがなにも知らずに出撃してゆく場面が描かれる。飛行団長役の伊藤雄之助は、台詞はほとんどないが、名演技である(なお史実としては、この日の児玉基地からの特攻隊の出撃は、濃霧のため中止されたらしい)。 2015年版では割愛。

2. 中央以外での出先部隊や個人による徹底抗戦・戦争継続派の動き。1967年版では、厚木基地の302空の小園安名大佐や、東京放送会館内において玉音放送を妨害しようとした警備の憲兵など、宮城事件以外でも各所にみられた抗戦派の動きのいくつかが描かれている。これらの大半は2015年版では割愛され、横浜警備隊の佐々木武雄大尉率いる「国民神風隊」による首相官邸襲撃事件にほぼ集約されている。

3. ビラまきの場面。1967年版では、宮城事件の失敗が明らかとなり、放送でかれらの「正義」である徹底抗戦を訴えることもかなわないとわかったあと、畑中少佐たちが騎乗して都内を駆けまわり、みずからの主張を絶叫しながらビラをまく場面がある。ところが、一般のひとびとの反応は、畑中少佐たちの期待とは裏腹に醒めている。男は首をかしげる。浮浪児は、舞い散るビラをおもしろそうに拾うだけで、中身にはさっぱり興味を示さない。黒沢年男演じる畑中少佐に代表される「正義」への熱狂ないし逆上が、純真かもしれないがナイーヴに過ぎ、国民の幸福を考えたものではなく、それゆえひとびとの広範な支持を得られそうになかったことが示唆される。ビラまきについては史実らしいが、浮浪児の部分などはむろん創作だろう。2015年版では割愛。

ここにあげた3つの場面は、いずれも補助的なエピソードではあるものの、1967年版の特徴的手法であるカットバックの多用とあいまって、大きな効果をあげている。同日同刻にさまざまな場所で、それぞれ立場や考えを異にする者たちが、それぞれの都合や目論みでもってそれぞれに動き、複数のドラマが併走してうねり、すれ違ったり、時に交錯したりする。

こうした手法によって浮かびあがるのは、戦争のような国家もしくは国家間レベルの巨大プロジェクトは、いってみれば暴走機関車のようなものだということだ。いったん事が動きはじめてしまったなら、プロジェクト自体がある種の自律性を帯びてしまう。そうなると、いざやめようという段になっても、容易なことではやめられない。ましてや敗北という形では。

巨大プロジェクトは一個の機械となって、自律的に動く。それゆえ巨大プロジェクトは、それ自体が暴力性を帯びることになる。個々人はその渦中に否応なく投げ込まれる。流れに身をまかせたり、あがいてみせたりするものの、いずれにせよ巨大プロジェクトの圧倒的な機械性と暴力性の前に押しつぶされてゆく。押しつぶされながらも、なにかひとつのことさえ達成できたのであれば、おそらく上出来なのである。

戦争という巨大プロジェクトがもつ圧倒的な機械性という性質と、そのなかにあって個々人が否応なく被らなければならない不条理。その鮮明なコントラストが、1967年版の、とくに中盤以降を冴えわたったものにしている。

いっぽう2015年版に描かれる戦争は、巨大なマシンという圧倒的な存在ではない。むしろたんなる背景ないし状況である。1967年版に見られたような否応のなく前進しつづける機械性や、それがゆえに発揮される暴力性といった部分は、ほぼ消去されている。戦争がもつ怪異で複雑な全体性は、よくできた焼け跡のセットといった記号に撤退している。だから、たとえば宮城事件をおこす少壮参謀たちや横浜からやってくる佐々木大尉たちが、なぜそこまで逆上して戦争終結を受け入れようとしないのかが、作品からだけではよくわからない。

代わりに2015年版で重点がおかれているのは、阿南惟幾陸将の人となりや家族とのかかわりと、昭和天皇の描写である。たとえば阿南大将についていえば、家庭的で人間味溢れる人物として描くことに腐心している。それは、役所広司が演じているからというだけでなく、今様の感覚に合致するからだろう(おなじ役所広司が主役を演じた映画『山本五十六』も似た傾向にあった)。1967年版ではポツダム宣言を受諾するか否かをめぐる動きでも、いまひとつ真意がはっきり見えないところがあり、それがまた戦争を終えるというプロセスのむずかしさをよくあらわしていた阿南だが、2015年版ではきわめて説明的で、とてもわかりやすい人物として描かれている。1967年版が群像劇であるのにたいして、2015年版は、あえて誇張していうなら、ホームドラマである。

1967年版と2015年版。2本の『日本のいちばん長い日』のあいだは、48年という時間によって隔てられている。半世紀に届かんとする時間である。2作品の比較することをとおして、この48年のあいだに生じた「戦争」にたいする社会的意識の変化の、その一端くらいなら、浮かびあがらせることができるかもしれない。

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