マンションの部屋がワンランク心地よくなる。プロに教わる、論理的な「インテリアコーディネート」の考え方

インテリアコーディネート

引越しや断捨離をきっかけにお部屋のインテリアをガラッと変えたいと思ったとき、ポイントになるのが家具のセレクトや配置です。特にマンションの場合は面積に限りがあるためリビングやキッチン、ダイニングがひとつながりのことも多く、空間をどのように区分けするかなど頭を悩ませた経験のある方も多いのではないでしょうか。

今回はそんな「インテリアコーディネート」のポイントと実例、そしてプロでなくとも実践できる基礎的な考え方について、インテリアコーディネーターとして活動する秋山麻衣子さんにお聞きしました。

感性だけに頼らない論理的なコーディネートを提案されていらっしゃる秋山さんのお話は、プロでなくても満足度の高い部屋づくりに生かせる考え方が詰まっていました。

インテリアコーディネーターは、「お悩み」をもとに理想の住まいを組み立てていく仕事

── そもそも、インテリアコーディネーターとはどんなお仕事なのでしょうか?

秋山麻衣子さん
秋山麻衣子さん/ビジュアルディレクションMaG(マグ)の代表。プロップスタイリスト、インテリアコーディネーターとして広告、雑誌、PVのスタイリングや住宅、ホテルなどのコーディネートで活動中

秋山麻衣子さん(以下、秋山):すごくざっくりというなら、家具の提案から購入、実際の手配までをお手伝いする仕事です。

いろいろなタイプのインテリアコーディネーターがいるので、仕事の工程もばらばらだと思うのですが、私の場合はクライアントへのヒアリングにとても力を入れています。住宅に関するお悩みや理想を詳しくお聞きし、それをできる限り実現できるように家具のレイアウトなどを提案しつつサポートしていく、という形です。

── 住宅に関するお悩みというのは、例えばどのようなものが多いですか?

秋山:ご相談によってさまざまですが、「いまの住まいが理想と違っていて、生活スタイルを変えるためにインテリアの力を借りたい」という方が多いかもしれないですね。例えば、引越しをしてお住まいが変わったタイミングで家具もそろえ直して心機一転したいとか、お気に入りのソファを中心にしたレイアウトを組みたいけれど、ほかの家具をどう配置したらよいか分からない、といったお悩みはよくお聞きします。

── 家具の提案・購入・手配を担当されているとのことでしたが、具体的にはどこからどこまでをお願いできるんでしょうか?

秋山::ケースバイケースなのですが、私の場合は大まかに分けて3プランでご提案することが多いです。

Aプランは、住宅のお悩みや理想を詳しくヒアリングした上で、家具のコーディネートを提案させていただくところまで。

Bプランは、Aに加えて家具の仕入れ・搬入をするところまで。引越しに合わせて新しく家具を購入する場合などは、何十ものお店に問い合わせすることも珍しくないので、そういった手続きをすべて私のほうで行った上で、搬入の日取りも決めます。

最後のCプランの場合は全部ですね。家具の提案~手配に加えて、現状の持ち物のなかから捨てるものと残すものの選定などもお手伝いしますし、大きな家具だけでなく小物までそろえたいという方の場合は、コップや画びょうに至るまで一つひとつセレクトして提案し、実際に空間に合わせて配置するところまで行います。

── プランによってはそんなに細かいところまで一任できるんですね!予算はどのくらいから相談可能なのでしょうか?

秋山:価格設定はインテリアコーディネーターによってばらばらなので、10万円以下から相談できる方もいると思うのですが、私の場合はできることの幅を狭めたくないこともあり、すこし高めに設定させていただいています。

家具購入費とは別に、Aプランの場合は20万円~、Bプランの場合は35万円~、Cプランの場合は100万円~という形です。B、Cプランの場合は家具の手配もこちらで行うので、家具の料金の10%をプラスで頂いています。もちろん、どこまでかかわらせてもらうかは、ヒアリングを経た上で臨機応変に選んでいただいています。

感性ではなく、「行動履歴」をもとにコーディネートする

秋山麻衣子さん

── 秋山さんはクライアントへのヒアリングを重視されているとのことでしたが、実際に相談を受けたとき、どんなことを聞きながらコーディネートのコンセプトを固めていくのでしょうか?

秋山:私は現場を見ることをいちばん大事にしているので、実際のお住まいにお邪魔させてもらいます。その上で、現実的なことは一旦置いておいて、どんなおうちが理想かを聞いていきます。

とはいえ、「どんな家が理想ですか?」と漠然と聞かれても、大抵の方は困ってしまうと思うんですよね。「具体的にはイメージできていないけれど、いまより家をちょっとおしゃれにしたい」という感じでご相談してくださる方も多いので。

なので私の場合は、「カフェやお店などで好きな空間はありますか?」という質問を基点にヒアリングすることが多いです。「このカフェはすごくリラックスできて好き」「ここは住むにはちょっと疲れるかも」といった情報をたくさん引き出した上で、私のほうでもスタイルの異なるインテリアのカタログや写真集をお見せし、「このインテリアはありか?なしか?」と一つずつ確認していきます。

── 美容室でヘアカタログを見ながら髪型を相談するときのようなイメージでしょうか?

秋山:それに近いかもしれません。まずは好きな雰囲気をざっくりとお聞きした上で、クライアントの方が好きな空間・嫌いな空間の傾向を実際の写真を通じてつかんでいく、という流れですね。

理想をお聞きしたら、次は現実的なことについてです。現在お住まいのおうちに対して不便に感じていること、悩まれていることがあればお聞きします。漠然と聞かれても出てこない場合は、クライアントの方のルーティンや行動履歴を具体的に掘り下げます。

例えば、朝起きてすぐにコーヒーを飲む習慣をお持ちの方であれば、ベッドからコーヒーまでの動線ができるだけシンプルなほうがいいでしょう。お風呂に入るとき服をそのまま洗濯機に入れる習慣がある方であれば、脱衣所に洗濯かごは置かなくていいかもしれないですよね。そういう風に一日の動きをお聞きしつつ、間取りや広さなどの現実的な問題と照らし合わせた上で、できるだけストレスのない動線をつくることを目指していくんです。

── 最初から家具の配置を考えるのではなく、行動履歴をもとにした動線をまずは考えるんですね。目から鱗です。

秋山:習慣をもとに現実の動線を想像していくというのは、ちょっと探偵みたいですよね(笑)。その後、ヒアリングした情報を持ち帰り、空間のコンセプトプランを作っていきます。クライアントからお聞きしたイメージをもとに具体的な素材や色、スタイルをいくつかのパターンに絞り込み、資料に落とし込んだ上で、あわせてゾーニングのプランも複数考えていきます。

── 「ゾーニング」というのはなんですか?

秋山:ここは寝るためのスペース、ここはテレビを見るためのスペース、というように、行動範囲や用途ごとに空間を区分けをしていくことです。クライアントの方からヒアリングした行動履歴をもとに、例えばダイニングとリビングが一体になっているほうがいいか、ソファなどで隔てられているほうがいいか、といった複数のパターンを考えます。

そのパターンをもとに再度ヒアリングを行って、現実的な落としどころをクライアントと一緒に決めていきます。ゾーニングをすると、実際にどのくらいの寸法の家具をどこに置いていくかもおおよそ決まっていくので、ゾーニングはインテリアコーディネートの肝ですね。

ゾーニング図
簡易的なゾーニングプラン

── そのあとでようやく、実際に家具をセレクト・配置していくということでしょうか?

秋山:そうです。家具を選ぶのは本当に最後なんですよ。家具も、コンセプトに合うものを複数セレクトした上で提案しています。もちろん、あらかじめ持っていらっしゃる家具を活かしたいというケースや、「このソファを中心にコーディネートしたい」といった希望があるケースもあるので、その際はまた臨機応変に進めていきます。

最初に説明したAプランの場合は、セレクトした家具の購入先や価格についての情報をお伝えし、配置の提案をするところまでになるのですが、B、Cプランの場合、予算を共有いただいた上で実際に私も家具屋さんに同行し、何軒もお店を見て回るんですね。そもそもどんなショップに行けばいいか分からないという方も多いですし、家具はやっぱり質感や使い心地を実際に確かめられると安心なので。

特注家具をつくる場合の注文のコツや、高価になることも多いアンティーク家具の相場などはご存じでない方がほとんどなので、お値段のアドバイスも行います。率直に「これはちょっとボッタクリに近いので、買わないほうがいいと思います」とお伝えすることもあります(笑)。

プロじゃなくてもまねできる。インテリアコーディネートの基本的な考え方

── インテリアコーディネートってもっと感覚的なものかと思っていたのですが、お話をお聞きしていると、かなり理論的な作業なのですね。

秋山麻衣子さん

秋山:そうですね。私のアプローチは感覚的に考えるというより、行動を軸に一つひとつ組み立てていくという形です。論理的に組んでいくので。インテリアやお店にまつわるデータ量は別として、個々人が満足できる部屋つくりの基本的なメソッドは誰にでもまねできるものだと思っています。

秋山さんが立ち上げたビジュアルディレクションのチーム「MaG(マグ)」のWebサイトより

── 満足できる部屋つくりに役立つメソッドがあれば、ぜひ教えていただきたいです。マンション住まいの人が部屋の印象をガラッと変えたいと思った場合、まずはどんなところから考えればいいのでしょうか?

秋山:まずは自分が惹かれる部屋やお店などの空間をリサーチして、写真を集めていくのがいいと思います。私がコンセプトプランを考える際は、クライアントが目指したいお部屋の雰囲気に近そうな場所に実際に行って写真を撮ってきたり、参考になりそうなカタログを集めたりして、それを一旦すべて壁に並べて貼ってみるんです。

実際のインテリアの写真を並べて見てみると、「この写真とこの写真の空間は似てるな」とか、「このインテリアはこの家の中だとちょっと浮いてしまうかも」というのが視覚的にはっきりしてくるので、その中から色や素材などの共通項を分析してみるのがおすすめです。

それから、自分の行動をもとに、部屋の中でやりたいことを書き出してみてください。「ソファで寝落ちできるようにしたい」「パソコン作業がしたい」というようにすべて書き出してみて、その中から優先順位をつけていく。快適だと感じる空間って、必ずしも空間を均等に割り振らず、やりたいことの優先順位がきちんとつけられていることが多いんですよ。

優先順位が決まっていないと、とりあえずソファの横にライト、近くにローテーブル、その前にテレビボード、それぞれの間になんとなく歩けるスペースを確保しておく……というような感じで、間延びした空間になってしまうことが少なくないので。

── いまおっしゃったような配置、たしかに「なんとなく」やりがちですね。

秋山:コーディネートは見た目と機能性のかけ合わせで決まるので、空間をすべて均等に割り振るのがその人に合っている場合もあると思うんですけどね。でも、自分の行動履歴をもとに考えれば、「大きいソファさえあれば、歩き回れるスペースはなくてもいいかも」とか「むしろソファは置かずクッションだけにして、フローリングを広々と使おう」というのが見えてくると思うので。

「グレーのソファを置くと部屋がきれいに見える」と言い切っているインテリアのメソッドなどもありますが、そういったものが自分の生活スタイルには合わない場合、それを疑ってみるのもいいかもしれません。

自分の好みのイメージと必要としている機能がはっきりしてくると、おのずと家具のおおまかな配置や寸法も絞れていくと思います。

── なるほど。マンションの場合、部屋自体がそこまで広くないことが多いと思うのですが、できる限り空間をすっきりと見せるためのコツなどはありますか?

秋山:空間をすっきり見せたい場合は、収納をできる限りふたつきにして隠してしまうのがいちばん手っ取り早いのですが……正直、犠牲はありますよね。使いづらくはなると思います。ティッシュなんかも、隠すだけで一気に生活感がなくなるけれど、ティッシュがすぐに見えない位置にあるのってすごく不便なんですよね。

秋山さんの自宅兼オフィスの収納。仕事柄、食器などを収集しているため小物が増えていき収納も大変なんだそう。すっきり見せるコツの一つは「種類やサイズでそろえ陳列すること」

空間の中で機能性をどれほど重視するかというのは本当に人によるので、その優先順位も自分で書き出してみるといいかもしれません。例えば、ゾーニングをした上で「この空間は生活感をゼロにしたいけれど、この空間はある程度ごちゃごちゃしていてもOK」と決めることもできますし。インテリアはトライ&エラーだと思うので、もしもそのプロセスを楽しめるのであれば、いろいろ配置を変えたりして工夫してみるのもおすすめです。

インテリアコーディネートの実例紹介

■実例1:F邸

── 秋山さんが実際にインテリアコーディネートを担当されたお宅の実例も紹介していただけますか?

インテリアコーディネート実例

秋山:はい。こちらのF邸はコンパクトなマンションでの事例になります。引越し後に最低限の家具だけがある状態だったのですが、シンプルできれいな部屋にするためのインテリアコーディネートをお願いしたいというご依頼でした。小物にはこだわりのある方で、作家さんの器やちょっとしたオブジェなどはご自分で選ぶのが好きということでしたので、Bプランでそういった小物に合うような家具をセレクトしていく形になりました。

── ヒアリングではどのようなことをお聞きになったんですか?

秋山:「インテリアで複雑なことはしたくない、できるだけ部屋をシンプルに見せたい」というオーダーだったので、どこまでシンプルにして生活感を消すか、というのがキーになりましたね。さっきもお話ししたとおり、収納は基本的に隠すほどすっきり見えるのですが、例えば料理を頻繁にする方であれば、扉を開けて食器を出し、また閉め……というのがストレスになる方もいらっしゃるかと思います。Fさんの場合は、食器の取り出しに多少負荷がかかるのは問題ないということでしたので、一部の食器以外はできるだけ扉の後ろにものを収納する「隠す収納」にしていきました。

インテリアコーディネート実例

一方で、本をたくさん読まれる方で、本はすぐに手に取れるような場所にあってほしいともお話しされていたので、一室を書斎部屋にして、そこにすこしいいデスクとチェア、扉のない大きな本棚を置く形になりました。

インテリアコーディネート実例

一室をまるまる書斎に使うというのは大胆な空間の使い方ではありますが、生活スタイルをお聞きした上ではそれが最善かなと。実際にFさんもとても気に入ってくださっています。

── ほかに秋山さんが提案されたポイントなどはありますか?

インテリアコーディネート実例

秋山:リビングに置いてある丸いテーブルは私がご提案したものですね。空間がそれなりに大きくないと丸いテーブルは邪魔に感じられてしまうのですが、Fさんの場合はあまりものを置きたくないとお聞きしていたのと、一人暮らしでお客さんが来ても少人数ということだったので、あえて丸にしてみてもいいのかなと。このテーブルを置くことによって、かえって空間がぜいたくに使えているのではないかと思います。丸い家具はなめらかな印象にもなりますし、会話もしやすそうだなと考えながらセレクトしました。

■実例2:成沢邸

── こちらのお宅は、ゲームプロデューサーの成沢理恵さんがお住まいの家だとお聞きしています。Cプランでご提案をされたそうですが、成沢さんの場合はどのようなご相談だったのでしょう?

インテリアコーディネート実例

秋山:成沢さんのご相談は「生活感のない、お店のような家にしたい」というものでした。暮らしを整える暇がないから、広いマンションに引っ越すにあたって家具も一新したいと。

成沢さんは「ほっこりしたものが苦手」とおっしゃっていたので、具体的にどのようなスタイルがお好きでどのようなものが苦手なのかをひもといていくところからスタートしましたね。お聞きしていくうちに、古道具や古家具、経年変化を楽しめる素材や朽ちたような表情がある素材がお好きなんだなと徐々に分かってきて、時間をかけてそういったものを集めていきました。最初にご依頼いただいたのは8年ほど前なのですが、おうちをもっと理想の空間に近づけていきたいということで、いまでも継続的にお付き合いしています。

──本当にこだわりの空間ですね。お店ではなく個人のお宅というのが信じられないほどです。

秋山:お仕事部屋にある大きな鹿のハンティングトロフィーもまさにお店のようですよね。

それから、お一人暮らしの住宅にはなかなかない衣装部屋があるのもこだわりポイントです。

インテリアコーディネート実例

アンティークショップのような空間にしたいということでしたので、あえて部屋の真ん中に机を設置し、アクセサリートレイやショーケースのようなアンティークの棚などをその机に置いた上で、周囲に背の高い棚を並べるという個人のお宅ではなかなかしないレイアウトになっています。

衣装部屋は最近、壁紙もグレーに張り替えさせていただきました。

インテリアコーディネート実例

引越し直後のお部屋の壁紙はすこしツルツルした印象だったので、もうすこし朽ちた表情を出したほうが成沢さんの理想とする空気感に近づくんじゃないかな、と。結果的にとても気に入ってくださっていてうれしいですね。

インテリアコーディネートを実際にお願いしてみたら、いちばん好きな空間が家になった

── ここからは、秋山さんにインテリアコーディネートをお願いされた成沢さんご本人にも感想をお聞きしていきたいと思います。そもそも、秋山さんにはどのようなきっかけでご相談されたんですか?

成沢理恵さん
成沢理恵さん/国内大手ゲームパブリッシャーにて、コンシューマ、PC、モバイルの幅広い分野にてゲームプロデューサーとして従事。現在は、東京、福岡、京都などの数社のゲーム会社の役員や顧問を兼任。(リモートでお話を伺いました)

成沢理恵さん(以下、成沢):当時、仕事がとても忙しくて、家の中のものを全部捨てて一新したい気分だったんです。わざわざカフェに行って気分転換をしながら仕事をこなすことも多かったので、次に住むなら家から出たくなくなるような空間がいいなと考えていました。そんな中で秋山さんのサイトを見つけ、とてもすてきなスタイリングをされているのを知り、コーディネートをお願いしました。

私自身、インテリアを集めるのはずっと好きだったんですが、形も色も年代もバラバラなものを思いつくままに買ってしまっていたので、家の中にまったく統一感がなかったんです。引越し後はそれをやめたかったので、テレビとベッドを除く家具はすべて新調したいので提案してほしい、というのを秋山さんに最初から伝えていました。

── ほとんど総入れ替えという形ですね。

成沢:そうですね。私もゲームプロデューサーの仕事をしているので、アーティストには一度大きなコンセプトを伝えたら、あとは細かいことを指示せず自由にやっていただく余地がないといいものにならないんじゃないかなと思って。

それに、インテリアコーディネートを考える上で、お子さんや高齢の方がいらっしゃる場合などはそれぞれの生活スタイルに合わせたコンセプトになってくると思うのですが、私はありがたいことに一人でこの空間を使うことができるので、せっかくなら環境を100%活かしたいという思いがありました。ある種のぜいたくの極みを見てみたいというか……。そのためにプロの力をお借りしたいと思ったんですよね。

── 実際にインテリアコーディネートのご相談をしてみて、秋山さんのお仕事はいかがでしたか。

成沢:勉強になることがたくさんありました。私ははじめ、自分ではナチュラル系のインテリアが好きだと思ってたんです。でも秋山さんは「言葉だけだとイメージが曖昧になるから」と大量のインテリアの本を持ってきてくださって、「直感でいいので、好きなものと嫌いなものに付箋を貼ってみてください」と言ってくれました。そのおかげで、「ナチュラル」という曖昧な言葉に左右されずに好きなイメージ・嫌いなイメージを共有することができたと思います。

── 成沢さんはお仕事柄、ゲーム機器や開発機材などもご自宅に置かれていると思うのですが、そういったものとアンティーク家具の相性はあまりよくなさそうです。どのように配置・収納されているんでしょうか?

成沢:そこは秋山さんが空間をすごくうまく組んでくださいましたね。たしかにメタリックな機材やカラフルなゲーム機器などもたくさんあるんですが、それらは厚みのあるテレビボードの中に隠れているので、すぐそばまで近づかないとほとんど気にならないようになっています。

インテリアコーディネート実例

秋山:成沢さんの普段の行動範囲や、お客さんがいらっしゃったときにどこに座るのかというのもお聞きしていたので、成沢さんがお仕事をされるデスクや、お客さんが座る位置からは見えないように設計したんですよね。

ソファとテレビがあるリビングの空間とお仕事部屋の空間はつながっているのですが、その2つをゾーニングするために、リビング部分のみにラグを敷いて床の素材感をわずかに変えたのもこだわりポイントです。床のフローリングと同じような色のラグを選んだのですが、実ははじめ成沢さんが「とにかくラグが苦手」とおっしゃっていて……(笑)。

成沢:ラグを敷くと生活感が出てしまう気がして嫌だったんですが、秋山さんが最後までお医者さんのように「大丈夫です」と言い続けてくれたので信じました(笑)。結果的に選んでくださったラグは生活感を感じさせないすてきなものでしたし、実際に住み始めてみたら、お客さんが大勢来るときはどうしても床に座ってもらうことになるので、ラグがあってよかったなと感じています。

── 改めてですが、インテリアコーディネートを実際に頼まれてみて、また施工されたお部屋に住まわれてみての満足度はいかがですか?

成沢:本当に気に入っていて、遊びに来てくれる人にも毎回ニヤニヤしながら部屋を見せてます(笑)。みなさんやっぱりお店みたいだと驚いてくれますね。家の居心地が本当にいいので、わざわざカフェで仕事することもほぼなくなりました。これまでは好きな空間を求めて外に行っていたけれど、いまではいちばん好きな空間が家になったので、思い切ってコーディネートをお願いしてよかったなと思っています。

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秋山さんが教えてくださったインテリアコーディネートのメソッドは4つ。

1. 自分の好きな空間・惹かれる空間の写真やカタログを集める
2. その中から、色や素材などの共通項を分析してみる
3. 自分の生活習慣を思い出し、部屋の中でやりたいこと(※)を書き出した上で優先順位をつけてみる(※「ソファでパソコン作業がしたい」「起きたらできるだけ早くコーヒーが飲みたい」など)
4. 2と3を手がかりにしつつ家具をセレクトし、実際の寸法や配置を決めていく

「ソファの色はグレー」といった既存のメソッドや感性だけに頼るのではなく、「自分の好きなイメージ」と「必要としている機能」のかけ合わせでコーディネートを考えていく秋山さんの手法は、プロではなくても参考にできる部分が多そうです。心機一転、自分の部屋のイメージをガラッと変えたくなったときは、ぜひまねしてみてください。

取材・文:生湯葉シホ
写真:曽我美芽
編集:はてな編集部

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