「物言う株主」に存在感 環境アクティビズムも台頭
業績や経営方針に「物言う株主」から注文がつくケースが増えてきた(写真はイメージ)=PIXTA
最近、「物言う株主」に関するニュースをよく聞くわね。「物言う株主」とはどんな株主のことを言うのかな。注目されるようになったことには、どんな背景があるのかな。
「物言う株主」について、山田摂子さんと小平綾さんに小平龍四郎編集委員が解説した。
山田さん「そもそもどんな株主なのですか」
株主の立場から経営戦略に注文をつけたり、増配や自社株買いなどの利益還元を求めたりする投資家のことです。他の株主に比べてアクティブな動きが目立つので「物言う株主」を「アクティビスト」、彼ら・彼女らの行動を「アクティビズム」ともいいます。
アクティビズムは1980年代の米国で盛んになり、日本では官僚出身の村上世彰氏らが2000年に「村上ファンド」の本格的な活動を始めたことで、注目されるようになりました。今や日本は米国に次いでアクティビズムが盛んな国のひとつで、約50社のアクティビスト・ファンドが日本で活動しているとされます。東芝の株主総会で存在感を高めたエフィッシモ・キャピタル・マネジーメントも、シンガポールを拠点に活動するアクティビストです。
小平さん「企業の資産を切り売りするのですか」
ハゲタカファンドとよく混同されますが、考え方が違います。物言う株主の行動は、基本的には株主の本源的な権利に基づくものです。株式は会社の経営状態に応じて配当が減ったり、株価が急落したりすることがあります。会社が破綻すれば持ち分の価値はまっさきにゼロになります。つまり株主は資金の出し手として、銀行などに比べて大きなリスクを負っています。
その代わりに株主は企業を監視し、経営に注文をつけるために取締役を選ぶのです。「物を言う」のは権利であり、特別なことではありません。
日本では戦後長らく、企業どうしが株式を保有し合い、互いの経営に口を出さないようにしてきました。いわゆる「株式の持ち合い」で、長期の視点で経営できる利点がある半面、変化に即応できず国際競争力が低下する弊害が生じました。そこで持ち合いを解消し、投資先の経営や戦略に目配りする機運が高まりました。その後アベノミクスで企業統治改革が進展し、アクティビズムも広がりました。