「偽りの自分」でいたらずっと成長できない。嫉妬心を消して「本当の自分」を手に入れる方法

秋山ジョー賢司さん「嫉妬心を消して本当の自分を手に入れる方法」01

「今の自分には何かが足りない……」という不安をもっている人はいませんか? そういう人は、「偽りの自分」で生きているかもしれず、これはあまりいいことではありません。ビジネスパーソンとしてのパフォーマンスが上がりにくい状態にあるからです。

そう指摘するのは、行動心理学、解剖生理学、生態学、マーケティング、コーチングなど多分野の知見をもつエグゼクティブ・コーチである秋山ジョー賢司(あきやま・じょー・けんじ)さん。まずは耳慣れない「偽りの自分」についての解説から始めてもらいます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

他人からの評価ばかりを求める「偽りの自分」

「偽りの自分」とは、イギリスの精神科医であるD. W. ウィニコットが子どもの精神分析臨床のなかで見つけた概念です。ウィニコットは、「自然にありのままの自己表現ができる」という「本当の自分」に対して、「周囲が自分に何を期待しているかによって自分の感情や行動を選択する」状態を「偽りの自分」と定義づけました。

そのように、他人を喜ばせたり他人から評価されたりすることを優先するがゆえに、「偽りの自分」で生きている人には、「今の自分には何かが足りない……」と不安をもっている特徴があるのです。

「偽りの自分」で生きている人を例えるなら、「胸にぽっかりと大きな穴が空いている人」というイメージがぴったりくるでしょうか。その「大きな穴」が、「自分に足りないと思っている部分」です。そして、「偽りの自分」で生きている人には、その穴を埋めようする、つまり「自分に足りないと思っている部分」を手に入れて他人に認められようとする行動原理が見られます。

では、具体的に考えていきます。ともに「チームに貢献したい」と思っているAさん、Bさんがいるとします。Aさんは「偽りの自分」で生きている人で、Bさんは「本当の自分」で生きている人だとしましょう。

Aさんは、チームに貢献することで「他人に認められたい」と考えて行動します。一方のBさんは、純粋に「チームに貢献したい」と考えて行動します。ともに「チームに貢献したい」とはいっても、AさんとBさんでは目的が違いますから、それぞれの行動やパフォーマンスが変わってくるのです。高いパフォーマンスを発揮できるのは、「本当の自分」で生きているBさんのほうです。

AさんとBさんがそれぞれ提出した企画書に対して、上司からダメ出しをされたとしましょう。Aさんは、「他人に認められたい」という欲求を満たすことができず、「やっぱり自分には何かが足りないんだ……」と萎縮してしまい、次のチャレンジに向かえなくなります。

一方のBさんは、純粋に「チームに貢献したい」と思っていますから、「この企画書では駄目なのか」「どこを改善すればいいだろう?」「よし、次こそ上司を納得させるぞ!」とチャレンジを続けて大きく飛躍することもできます。

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「偽りの自分」が生まれた理由は、人間の生存戦略にある

では、なぜ「偽りの自分」が生まれるのでしょうか? その理由のひとつは、人間の生存戦略にあります。人間は、集団で形成する社会のなかで生きる戦略をとったことで、子孫を爆発的に増やして発展を遂げてきました。

集団で形成される社会のなかでは、他人からの評価が非常に重要なものとなります。そして、他人から評価されるために必要となるのが、実績、能力、権威、資格など「根拠がある自信」と私が呼ぶものです。

ただ、根拠がある自信には、他人に示すことができて自分でも認識できるメリットがある一方で、時代、社会、相手によって変わるデメリットもあります。時代や社会によって評価ポイントは違いますし、同じ内容の企画書でも評価してくれる上司もいればダメ出ししてくる上司もいるように、相手によって評価は変わります。

そのために、変化する評価ポイントに合わせて常に「自分に足りない部分」を求め続ける「偽りの自分」で生きる人が生まれるのです。

そして、評価ポイントは常に変化するのですから、「偽りの自分」で生きている人がもつ、「今の自分には何かが足りない……」という不安が消えることは、この先もずっとないでしょう。

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「偽りの自分」をつくる、「嫉妬」を手放す

では、「偽りの自分」から脱却して「本当の自分」として生きる方法を解説していきます。「偽りの自分」をつくる要素には、「嫉妬」「劣等感」「優柔不断」「あと回し」「人見知り」の5つがあります。そのなかでもこれからの時代、大きな問題になっていくであろう「嫉妬」についてお伝えします。

「会社ではあいつのほうが評価されているけれど、本当は自分のほうが優秀だ」「でも、自分が評価されないのは、自分には何かが足りないからかもしれない」といった嫉妬が、「偽りの自分」をつくってしまうのです。

嫉妬にとらわれないようにするには、嫉妬が起きるプロセスを知ることが欠かせません。そのプロセスには4つのステップがあります。

まず、「会社で自分より評価されている人」など、嫉妬の対象を思い浮かべてください。次に、「自分にもそれくらいの仕事はできる」と自画自賛しましょう。続いて、「実際にはあいつのほうが出世している」のように、現実を見ます。最後に、「あいつは運がいいから」と、その現実がある理由を考えてください。すると、あなたの心のなかに嫉妬の炎が燃え上がります。

このステップをたどるなかでしっかり考えてほしいのが、「自分の能力をなんのために使っているのか」ということ。実は、嫉妬しやすい人は能力依存の傾向が強く、その能力を自分の承認欲求を満たすために使っているケースがとても多く見られるのです。

みなさんはどうでしたか? 承認欲求を満たすために自分の能力を使っていることに気づけた人は、自分の能力を使って本当は何をしたいのか、何をすべきかを真剣に考えてください。もし思いつかなかったら、自分の能力を使ってどんな人を助けたいかを考えましょう。自分のためではなく、やるべきことや誰かのために能力を使う思考にシフトしていくと、嫉妬心は消えていきます。そして、嫉妬がつくり出す「偽りの自分」を手放すこともできるのです。

しかも、そのあとには、急激な成長につながることも。先にお伝えしたように、嫉妬しやすい人には能力依存の傾向が見られます。いわば、しっかり自分の能力は磨いているということです。その能力を、承認欲求を満たすためではなく、やるべきことや誰かのために使えたらどうでしょうか? もっていたポテンシャルが一気に花開くのも珍しいことではありません。

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【秋山ジョー賢司さん ほかのインタビュー記事はこちら】
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不安が覚悟に変わる 心を鍛える技術

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  • 作者:秋山ジョー賢司
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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【プロフィール】
秋山ジョー賢司(あきやま・じょー・けんじ)
1967年生まれ、東京都出身。エグゼクティブ・コーチ。経営者を中心に、元プロアスリート、能楽師など、業界の第一線で活躍するエグゼクティブらに向けて、ハイパフォーマンスを発揮するためのマインドセットを指導する。行動心理学、解剖生理学、生態学、マーケティング、コーチング、NLPなどを習得し、20年の歳月を費やし開発した「コアマインドプログラム」は、劇的な変化をもたらした受講者の強い支持を受け、受講希望者があとを絶たない。また、同氏の人気番組Podcast『経営者のマインドサプリ』は、累計500万ダウンロードを突破している。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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