『言いたいけど言えない』はもう終わり。職場で即実践できる「アサーティブコミュニケーション」入門

相談するビジネスパーソン

「仕事で自分の意見を伝えるのは大切だとわかっていても、どうしても気を使って言いたいことが言えない……」

そんな経験はありませんか? 職場での円滑なコミュニケーションに悩む方は少なくありません。

そんなあなたに「アサーティブコミュニケーション」をお勧めします。これは自分も相手も大切にしながら、効果的に自己表現する方法です。

本記事では、職場でよくある具体例を交えて、アサーティブコミュニケーションの実践的な取り入れ方をご紹介します。これらのテクニックを身につければ、きっとあなたの職場生活がより充実したものになるはずです。

アサーティブコミュニケーションとは?

近畿大学教授の堀田美保氏は、アサーティブネスを以下のように説明しています。

「相手も自分も尊重するコミュニケーション」。言いづらいことを相手に伝える手段の一つで、自分の考え方や感じ方を、相手のことも尊重しながら伝えます。*1

「言いにくいことだけれど、相手が受け取りやすい形にして伝えたい」というときにぴったりなのが、アサーティブコミュニケーションなのですね。

具体的には、どのようなコミュニケーションなのでしょうか。特定非営利活動法人アサーティブジャパンの森田汐生氏によると、アサーティブコミュニケーションでは以下の3点を意識することが大切だそうです。

  1. 自分にも相手にも誠実に
  2. 内容は具体的に伝える
  3. 常に「私」を主語にする *2

一見すると、当たり前のことのように思えますよね。しかし、仕事の場面で意識できているかといえば、意外と抜け落ちているものです。

では、職場でよくある場面に当てはめて、具体的に見ていきましょう。

仕事の相談をしたいけれど、なかなか言い出せない場面

「聞きたいことがあるけれど、相手はいつも忙しそうだから、聞くタイミングがわからないな……」

上司や先輩が忙しそうにしているのを見ると、それをさえぎってまで相談していいものか悩みますよね。そうこうしているうちに時間が経ってしまい、「なんでもっと早く相談しなかったの?」と注意を受けてしまったなんて経験がある方もいるのではないでしょうか。

アサーティブコミュニケーションで大切な3点のなかから「自分にも相手にも誠実に」「内容は具体的に伝える」を使って、この場面での相談方法を考えてみました。

自分にも相手にも誠実に

まず、自分と上司の気持ちを考えてみます。

自分はできるだけ早く仕事についての相談がしたい。そして上司は忙しいようだから、手短に済ませてほしいはずだと考えられます。

「忙しそうなのが落ち着くまで待とう(相手の都合に合わせる)」でも、「とにかく自分が聞きたいのだからすぐ聞いてしまおう(自分の都合だけで動く)」でもなく、「いますぐ聞きに行くけれど、上司が聞きやすいように話そう」と考えるのが、自分も相手も尊重するアサーティブな考え方です。

具体的には「お忙しいところすみませんが」など、相手に配慮する言葉から話し始めるといいでしょう。

同僚と話す男女

内容は具体的に伝える

忙しい相手には、簡潔で具体的に要件を伝えたほうが伝わりやすそうですよね。具体的には「A社への提案内容についてご相談があります」など、何についての相談なのかを始めにはっきり伝えるといいでしょう。

そして「今日のどこかで、15分ほどお時間をいただきたいのですが、ご都合いかがでしょうか」など、相手にしてほしいと思っていることをわかりやすく伝えます。「15分」という具体的な時間を示すことで、相手も「15分なら、あのミーティングのあとに時間をつくれそうだな」と判断しやすくなります。

まとめると、

「お忙しいところすみませんが、A社への提案内容についてご相談があります。今日のどこかで、15分ほどお時間をいただきたいのですが、ご都合いかがでしょうか」

というひとことになります。

事前に話しかける言葉がわかっていると、相手が忙しそうでも話しかけに行きやすくなりますね。

チェックを依頼した書類が戻ってこない場面

「期日が近づいてきているのに、上司にチェックを依頼した書類が戻ってこない。正直困っているけれど、なんて言えばいいんだろう……」

こんな場面でもアサーティブコミュニケーションは役立ちます。

具体的には、こんなふうに話すことができます。

「お忙しいところすみません。先日チェックをお願いしたA社への提案資料なのですが、提案日が近づいてきています。チェックしていただけそうな日を教えていただけますと、私も提案準備の目途が立てられるのですが、いかがでしょうか」

相手を不快にさせることなく、「早く資料をチェックして戻してほしい」という自分の気持ちを伝えることができていますね。この話し方には、アサーティブコミュニケーションの「内容は具体的に伝える」「自分にも相手にも誠実に」の2点が反映されています。

「内容は具体的に伝える」については、「先日チェックをお願いしたA社への提案資料」のように具体的に話すことで、何の話かを相手にわかりやすく伝えていますね。

次に、「自分にも相手にも誠実に」について。自分の要望を伝えたくても、「いますぐチェックしてほしい」と伝えるのは角が立ちますよね。そこで、代わりに「チェックしてもらえる日を教えてほしい」と譲歩することで、やんわりと催促することができます。

仕事をする男性ふたり

会議で反対意見を言いたい場面

「みんなは賛成のようだけれど、自分は反対。でも、とても言いにくい空気だな……」

会議中、こんなふうに感じて、結局意見を出さなかったということはありませんか?

少数意見だとわかっていても、自分の意見を出すことで、会社としてもよりよい成果が得られていたかもしれません。自分の意見を言わないということは、会社側から見ても損失なのです。

常に「私」を主語にする

少数意見を発言するのは怖いもの。

とはいえ、「なにかを味方につけたい」という気持ちから「○○さんも言っていた」「世間では当たり前」など、自分以外の誰かを引き合いに出すのは悪手です。相手に反発心をもたれ、話を聞いてもらえない可能性があります。

どんなときも、常に「私」を主語にして意見を伝えることが大切です。では、どのように伝えればいいのでしょうか。

たとえば、こんな意見の伝え方が考えられます。

「その案について、一点よろしいでしょうか。その案はとてもキャッチーで、若い世代の顧客を引きつけられると思います。しかし、○○という切り口で行なうのは、コンプライアンスの面から見て危うく感じます。その部分だけ変更すれば、よりよい案になると思うのですが、いかがでしょうか?」

あくまで「私」を主語に、意見を述べることができていますね。

先に、メリットについて言及することで、賛成しているほかの社員に寄り添うことができます。そして、具体的に何が問題なのかを端的に伝え、「そこを変更したい」という自分の意見を伝えています。

こうすることで、相手の気持ちを尊重しながら、しっかりと自分の意見を話すことができるのです。

「自分にも相手にも誠実に」「内容は具体的に伝える」「 常に『私』を主語にする」

この3つのポイントをおさえることで、どんなときも自分の意見をスムーズに伝えることができるのですね。

会社でのミーティング

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まわりを不快にさせないように……と慮るあまり、自分の意見を伝えられないことは誰しも経験しているのではないでしょうか。アサーティブコミュニケーションを取り入れれば、相手と自分、どちらも尊重しながら心地よくコミュニケーションがとれるようになりますよ。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。

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