三浦知良が目を輝かせて「ボールまたいで、エラシコやって」 57歳のサッカー少年は今オフもストイックに過ごす
日本サッカー界の生ける伝説は、超一流のエンターテイナーでもある。
カズこと三浦知良が、観衆の視線をわしづかみにした。
12月21日に行なわれた南雄太さんの引退試合で、カズは後半途中からピッチに立った。背番号11の登場でスタンドの熱が一段高まるが、それだけで満足させないのが、この男なのだ。右サイドからのクロスを右足でプッシュし、ヘディングシュートも決めてみせた。
「みんなが取らせてくれたんでね」と感謝するのは、公式戦でも練習試合でも、引退試合のようなエキシビションマッチでも変わらない。
南雄太氏の引退試合でも三浦知良の存在感は際立っていた photo by ©️ヤナガワゴーッ!この記事に関連する写真を見る 引退試合の最後に用意されたPK戦では、後攻の5人目で登場する。すべてのプログラムを締めくくる大役である。
GKを務める南さんからは、「忖度(そんたく)なしで蹴ってください」とお願いをされていた。カズは右足でゴール右隅上を狙う。横浜FCでチームメイトだった後輩との"ガチ"な勝負は、南の好セーブに阻まれた。
試合を終えてメディアの前で足を止めたカズは、「PKは下手なもんですから」と笑みを浮かべながら答えた。そんなことはない。日本代表でも所属クラブでも、重要なPKを何度も決めている。
「まあね、みんなが楽しくやれましたし、お客さんが喜んでくれたからよかったですね」
試合前の選手入場で、ヴェルディ川崎のレプリカユニフォームを着た少年の手を引いた。カズ自身が切り開いてきたJリーグの歴史が、映し出された光景だった。
「あの子のお父さんが、小学校6年の時に買ったユニフォームだそうなんです。光栄ですよね。そういう歴史というかね」
12月は引退試合が多く開催された。カズは12月15日にも松井大輔さんを送り出す輪に加わっている。
「大輔もそうだし、雄太もそうだし、彼らの人柄がこれだけ惹きつけて、みんながこれだけ集まるわけですから、日本のサッカーがここまでやってきた歴史が積み重ねってきてるんだなって感じますよね。
引退試合っていうのは、なかなかできるものじゃないですから。こうやって引退試合が行なわれて、それぞれの地域で、お客さんが集まってくれるわけですからね。サッカーがそれだけ地域に根づいてきているってことですよね」
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著者プロフィール
戸塚 啓 (とつか・けい)
スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専
門誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より 7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグ ワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本 サッカー』(小学館)