社長交代で必要な手続きとは?書類・費用や交代時のポイントなども解説

事業承継手帳

社長交代では多くの手続きが発生する!


戦略的な理由や高齢化など、様々な事情で社長が交代することがあります。また、社長交代時には、多くの手続きが発生します。
スムーズに社長交代を行うためにも、どのような手続きが必要なのかあらかじめ把握しておくことが大切です。

今回は、社長交代の際に必要となる手続きや、交代する際のポイントなどについて紹介します。
社長交代の計画を立てる際の参考にしてください。

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社長交代で必要となる5つの手続き


社長を交代する際には、正式な手続きを踏まなければなりません。社長交代には主に5つの手続きが発生するため、その流れを紹介します。

1.社内で社長交代の決議を行う

まずは、社内で社長交代の決議を行います。社長本人の意向のみで辞めることはできず、決議によって新社長の選定が必要です。
なお、新社長の選定は、取締役会の設置の有無によって異なることに注意してください。
取締役会を設置している場合は、取締役会で決議を行い、取締役の中から選出します。
取締役以外の従業員から選定する場合、あらかじめ取締役に就任しておかなければなりません。

取締役会を設置していない場合には、以下の方法で選定します。

  • 定款によって代表取締役を指名する
  • 株式総会の決議で選定する
  • 取締役の互選によって選出する

 
定款に選定方法の記載があれば、それに則って選定します。記載がなければ、株式総会の決議や取締役の互選により選出しなければなりません。

2.法務局で登記変更をする

新社長の選定が終わったら、次に管轄の法務局で登記変更の手続きを行います。
法務局に必要書類を提出して登記変更が完了すると、1~2週間程度で登記簿が発行されます。

なお、登記簿はこの後の手続きで必要となるため、登記変更は速やかに行ってください。申請期限は新社長の選定から2週間以内です。

3.税務署と各行政機関で代表者変更の手続きをする

登記変更が完了したら、税務署や県税事務所、市町村役場(東京23区は届出不要)で代表者の変更手続きを行います。
会社経営では様々な税金が発生し、国や都道府県・市町村に納めなければなりません。
税金を申告する際には代表取締役の署名が必要で、登録の代表者と実際の代表者が異なれば、納税の手続きに影響が出てしまいます。
そのため、社長を交代する際には代表者の変更が必要です。

代表者変更では主に登記簿が必要ですが、それ以外の提出書類については各機関のホームページを確認して準備してください。

4.取引先の金融機関で名義変更の手続きをする

次に、取引先の金融機関で名義変更の手続きを行います。銀行口座は会社名や団体名のみで登録はできず、代表取締役の個人名登録も必要です。
各金融機関では社長を交代する際は、代表者変更を行うことを定めていることが一般的です。

代表者変更を怠ると、今後の取引きに支障が出る恐れがあります。複数の金融機関で口座を開設している場合は、漏れず変更手続きを行ってください。
なお、金融機関で代表者を変更する際には登記簿の写しの提出を求められるため、事前に用意しておくとスムーズに手続きを済ませられます。

5.健康保険組合・年金事務所で代表者変更の手続きをする

次に、健康保険組合や年金事務所で代表者の変更手続きを行います。従業員の健康保険や年金支給に関わる手続きであるため、速やかに手続きを行ってください。
手続きは加盟している組合や境界によって異なります。例えば、協会けんぽに加入している場合、年金事務所で手続きが必要です。
健康保険組合に加入している場合、健康保険組合と年金事務所の両方で手続きを行います。

届け出に新社長の署名や住所を記入するだけの簡単な手続きが基本です。
ただし、申請期限があったり添付書類が必要になったりする可能性があるため、各機関で確認してください。

社長交代の手続きで必要となる主な書類


法務局で登記変更を行う際、いくつかの書類を添付しなければなりません。実際に用意する書類は会社によって異なりますが、主に以下の書類が必要です。

変更登記申請書

社長や役員の人数・名前などに変更があった際、法務局に必要事項を明記して申請するための書類です。法務局の窓口やWebサイトから入手できます。

新社長の選定方法に応じた書類

変更登記申請書に添付する書類は、新社長の選定方法によって異なります。

選定方法 添付書類
株式総会・取締役会での決議 株主総会の議事録・株主リスト
取締役会非設置で取締役が2人以上 互選書
定款に従った選定 定款

株式総会や取締役会の決議で選定した場合、その決議の証明として議事録や株主リストを添付します。
議事録には、開催日時・場所、議事の経過領域、結果、新代表取締役の氏名などが記載されている必要があります。

取締役会非設置で取締役が2人以上いる場合、取締役の賛成によって選出されたことを証明するための互選書が必要です。
こちらも決定日や過半数以上の賛成で決定した旨、選ばれた人の氏名・住所などが記載されたものを添付してください。
定款に基づいて選定した場合、その事実を証明するために会社の定款を添付します。

辞任届・就任承諾書

辞任届や就任承諾書も必要です。辞任届は、現在の代表取締役が辞任する意思を示すための書類です。
一方の就任承諾書は、新しく選定された人が代表取締役になる意思を示すための書類になります。
辞任や選任された日付、書類の制作日、指名・住所などの記載が必要です。

印鑑届出書・印鑑証明書

社長交代にあたって代表印の変更が必要となるため、新社長の実印の印鑑登録を行わなければなりません。法務局で印鑑届出書を提出し、印鑑登録を行ってください。

また、登記変更では印鑑証明書が必要です。印鑑証明書は、旧社長と新社長、事務手続きを行う取締役の3人分を用意してください。
印鑑証明書は役所や郵便局、コンビニで取得可能です。

委任状

社長交代に関する手続きを代理人が行う場合には、委任状が必要です。
委任状の様式は特に決まっていませんが、委任者に申請を託した理由、委任者と受任者の氏名・住所、委任した日時を記載してください。
法務局のホームページにある役員変更登記申請書の記載例を参考にするのがおすすめです。

社長交代の手続きにかかる費用


社長交代手続きでは、登録免許税・印鑑証明書の発行費用・代表印の作成費用が発生します。
それぞれの費用の目安は以下のとおりです。

登録免許税 資本金1億円以下:1万円
資本金1億円以上:3万円
印鑑証明の発行費用 1通につき300円
代表印の作成費用 900円~

登録免許税は、資本金の金額によって変動することに注意してください。また、代表印の作成費は、印鑑の大きさや素材などによって異なります。
書類作成や手続きを司法書士などの士業に代行してもらう場合、その報酬も必要です。士業への報酬は5万円~が相場です。

社長交代に合わせてやるべきこと


ここからは、社長交代の際にやるべきことを解説します。

社内と関係者に社長交代の報告をする

社長交代が決まったら、その旨を社内と関係者に通知してください。社長が交代することは、社内をはじめ、取引先にとっても大きな影響を与えるものになります。
報告が遅れると社員や取引先から信用を失う可能性もあります。そのため、社長交代の手続きと並行して通知の準備も行い、適切なタイミングで報告しましょう。
重要な取引先には、社長が自ら挨拶に出向くことも検討してください。

ホームページの記載を修正する

ホームページを運営しているのであれば、そこに記載される情報の修正が必要です。
会社概要の代表者の項目や代表者メッセージの内容などを修正してください。
ホームページは会社の顔となるものなため、記載情報と実際の社長の名前が異なると、ステークホルダーが困惑してしまうかもしれません。
閲覧者を困らせないためにも、ホームページの記載内容は早めに修正しましょう。

社長交代のお知らせを掲載するのみでなく、前社長の退任挨拶と現社長の就任挨拶などを掲載するのも良い方法です。

契約書などの書類の記載事項を修正する

契約書や請求書などの書類はテンプレート化しているケースが多くあります。
テンプレートに代表者の名義が記載されている場合、すべて新しい社長の名義に変更しなければなりません。
社長を交代する際は、仕事で使う書類のテンプレートを確認して、漏れなく氏名変更を行ってください。

契約の再締結や連帯保証人の変更をする

社長交代にあたっては、契約の再締結や連帯保証人の変更も必要です。
賃貸物件や銀行の借入れなどを旧社長の名前で契約していれば、新社長の名義に変更しなければなりません。
契約の再締結が必要になる可能性もあるため、社長交代の前に確認してください。

スムーズな社長交代を実現するためのポイント


社長交代は、通常業務と並行しながら各種手続きを行わなければならず、スムーズに進まないこともあります。
ここで、スムーズな社長交代を実現するためのポイントを紹介します。

社長交代は計画的に行う

社長交代は長期的な視点を持ち、計画的に行うことが大切です。
社長交代は、一般的に5~10年程必要といわれています。社長が交代するまで時間がかかる理由は、後継者の育成に時間がかかってしまうためです。

社長が歳をとって体力が衰えたり判断力が鈍ったりすれば、後継者を育成することが難しくなります。
元気なうちに後継者の育成や社長交代までの具体的な計画を考えておくことで、急な社長交代のリスクを回避できます。

公正性・透明性を確保した社長選定をする

社長を選定する際は、公正性と透明性を確保することが重要です。
新社長に選ばれた理由や選定の経緯が明確でなければ、社員は納得せず不満を抱いてしまう恐れがあります。

社長は組織を牽引するリーダーです。
リーダーシップや持っているビジョン、競争環境への対応力など経営能力があることはもちろん、社員が信頼できる人物を選定しなければなりません。
社内でしっかり決議して公正な人選を行い、交代の経緯を社内に周知させることが大切です。

ロードマップを作成して経営を引き継ぐ

実際に社長が交代するまでには長い時間がかかるため、ロードマップの作成することもおすすめします。
経営の引き継ぎでは、事業継承計画書の作成や後継者の決定・意思確認、後継者の育成など様々なプロセスが発生します。

ロードマップを作成することで社長交代までの流れが明確になり、どのタイミングでどのような準備が必要なのか把握することが可能です。
作成したロードマップは社長と後継者で共有すれば、スムーズに経営を引き継ぐ準備を進められます。

株主の引き継ぎの準備をする

社長交代にあたって自社株を後継者に継承することになるため、株主の引き継ぎ準備も必要です。
株主の引き継ぎに関する準備では、引き継いでもらう自社株の量を決定します。
また、税理士に依頼して株式の財産価値を測ってもらったり、どのタイミングでどのような方法で引き継いでもらうか決めたりしなければなりません。

さらに、相続や贈与の場合、遺産分割争いにも考慮して株主引き継ぎの準備を進める必要があります。
専門的な知識が求められるため、事業承継に強い税理士に相談しながら方針を決めることがおすすめです。

顧客・取引先への連絡は早めに行う

顧客や取引先に対する社長交代の連絡は、早めに行うようにしてください。経営者や組織が変化することに対して、不安を持つ顧客や取引先は少なくありません。
顧客や取引先に対して、早めに新社長の紹介や組織変更の説明、今後のビジョン、感謝の意思などを丁寧に伝え、不安を解消することが大切です。
今後も良好な関係性を保つ上でも、連絡は早めに行ってください。

登記懈怠するとペナルティが課せられる

社長交代によって登記変更が必要になりますが、怠るとペナルティが課せられることに注意してください。

会社法では、登記変更が生じる際は2週間以内に申請を行うことが定められています。
期限内に申請を行わなければ登記懈怠(とうきけたい)とみなされ、1件につき最大50万円の過料が科せられるかもしれません。
登記懈怠は会社の信用を下げることにもつながります。登記変更する時間が取れない場合、オンラインで申請するか、司法書士に登記手続きを委託するのがおすすめです。

まとめ・社長交代の計画を立ててスムーズに手続きを完了させよう

社長交代の際には、社内での決議をはじめ、法務局での登記変更や税金・社会保険に関する代表者変更など様々な手続きが発生します。
また、後継者の育成や交代の手続き、各所への通知などの作業も欠かせません。
スムーズな社長交代を実現させるためにも、早い段階から緻密な計画を立てて準備を進めていきましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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