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菅官房長官が自由にできる「官房機密費」6年間で74億円

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.06.09 06:00 最終更新日:2019.06.09 06:00

菅官房長官が自由にできる「官房機密費」6年間で74億円

 

 第2次安倍政権誕生後、「官房機密費」は総額で約74億円。その約90%を占めるのは、「政策推進費」という “摑み金”。菅義偉官房長官の胸三寸で使われている、政府の「ブラックボックス」を、開けてみよう−−。

 

「菅義偉官房長官の前任者は、野田内閣の藤村修氏。2012年12月26日の受払簿を見ると、3100万円が使い残されています。2日後の28日の受払簿を見ると、菅長官に引き継がれ、5000万円足されています。

 

 年が明けて1カ月もたたない2013年1月15日のものを見ると、残額が0円に。以降、毎月の受領前に0円になることが、安倍政権になってから続いているのです」

 

 こう解説するのは、『しんぶん赤旗』の矢野昌弘記者だ。同紙は、情報公開請求で入手した資料をもとに、第2次安倍政権発足後の官房機密費の内実を報じている。その資料が以下だ。

 

 

 藤村氏から引き継ぎ、自民党が政権に復帰した2日後に繰り入れをし、年をまたいだ約3週間後、0円になっている。もちろん使途は不明だ。

 

 2018年1年間で使った官房機密費の合計は、12億3847万円で、6年間では、総額約74億円だった。 

 

「ほぼ毎月、国庫から約1億円を受領します。驚くべきは、返納した金額の少なさ。6年間で33万円余りです。この2年では各1万円程度。残さないことが目的化しているとしか考えられません」(矢野氏)

 

 官房機密費とは、正式には内閣官房報償費といい、国庫から支出される公金の一種。情報提供者への謝礼などにあてられる「調査情報対策費」や、贈答品の購入などにあてられる「活動関係費」には、領収書が必要とされる。

 

 だが、「政策推進費」は、領収書は必要なく、使途を記録する必要がない。官房長官が自分で管理する金庫に入った時点で、支出が完了したことになる。

 

「第2次安倍政権発足後、官房機密費の支出のうち、90%超が、この政策推進費なのです。返納された33万円余りは、政策推進費以外のお金でした」(同前)

 

 官房機密費は、長年ベールに覆われていた。政府は、「(開示すれば)外交交渉等に重大な支障を及ぼす恐れ」があるなどと、開示をめぐる裁判で主張してきた。だが、国庫から支出されるものであるだけに、使途への疑問が以前から挙がっていた。

 

「2002年に、共産党の志位和夫委員長が、宮澤喜一内閣で加藤紘一氏が官房長官を務めていた時期の『金銭出納帳』を公表。そこには、国会対策費やパーティ券購入費、餞別、花代、お祝いという費目と、支出先が実名で記録されていたのです」(政治部デスク)

 

 2010年には、「永田町のスナイパー」とあだ名された故・野中広務氏が、「前任の官房長官からの引き継ぎ簿に、政治評論家らの名前が記載され、『ここにはこれだけ持っていけ』とあった」と暴露。さらには、「受け取らなかったのはジャーナリストの田原総一朗氏だけだった」と語ったのだ。

 

 田原氏はのちに、「野中さんはいくら僕に渡そうとしたか。こういう場だからはっきり言う。1000万円です」と明かしている。メディアで活躍する人物のみならず、野党議員にも配られたという証言がある。 

 

「だが国対族をはじめ、最近の野党の議員は『握れない』奴が多くて、迂闊に渡すとバラされかねない」(自民党幹部)

 

 一方で、野中氏の暴露には意図があったと指摘するのは、ある野党の衆議院議員だ。 

 

「野中氏が暴露したのは、民主党政権時。自民政権と同じように機密費を使わないように、牽制するためだったそうです。建前では、機密費は内閣官房の仕事を円滑に進めるためのものとされています。

 

 しかし実際には、政権与党の秘密資金と化しています。1998年の沖縄県知事選では、自民党が推していた稲嶺惠一氏の陣営に、地元対策費として3億円が流れたと聞きました」

 

 さらに、ある閣僚経験者は、今回本誌にこう明かした。 

 

「与党の議員と外遊に行ったとき、『これ、官邸から預かってきたよ』と言って、議員団で分けました。『想定していない出費があるときに足しにしてくれ』という意味でもらってきたそうです」

 

 税金が、使途が不明なうえ、政権与党が好きに使える摑み金になっていることに問題はないのか。政治資金に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授は、こう断じた。

 

「政策推進費は、完全なブラックボックスです。運用には財政法上の問題があるとされていますし、現状は政権の使い勝手のいい財布にすぎず、しかも検証ができない。

 

 完全な公開は無理でも、使途の秘匿性の程度に応じて、時期を定めて支出先を公開する必要があると思います」

 

 官房機密費を差配するのは、いまや「ポスト安倍」の一角とされる菅長官。総理になるために使うことはないと信じたい。次のページでは、ここ6年間の、官房機密費の内訳を紹介する。

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