安倍晋三元首相の悲願だった憲法改正への動きに強烈なブレーキがかかっている。
自民党は7月の参院選で圧勝し、憲法改正に前向きな勢力が参院で3分の2を超えた。7月11日の記者会見で、岸田首相は「安倍元総理の思いを受け継ぎ、特に情熱を傾けていた拉致問題、憲法改正など、自身の手で果たすことができなかった難題に取り組む」との意向を表明している。
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だが、7月30日と31日に共同通信社が実施した全国電話世論調査で、岸田内閣の支持率は51.0%と前回調査から12.2ポイントも急落。2021年10月の内閣発足以来、最低となった。
また、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の関わりについて、実態解明の「必要がある」との回答は80.6%にのぼった。
旧統一教会との関係で注目されているのが、自民党が2012年にまとめた「憲法改正草案」だ。8月2日、東京新聞は《旧統一教会側と自民党、改憲案が「一致」 緊急事態条項、家族条項…濃厚な関係が影響?》という記事を掲載。
旧統一教会の政治部門とされる国際勝共連合(勝共連合)の改憲案と、自民党の改憲草案が、「緊急事態条項」や「家族条項」などで一致していることを指摘している。
たとえば、自民草案では、現憲法20条にある《いかなる宗教団体も政治上の権力を行使してはならない》の文言を削除。さらに、国とその機関の宗教活動を禁じた点も変え、《社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない》としている。自民党の改憲草案では、信教の自由への制限と政教分離の原則が緩和されているのだ。
この報道を受け、SNSには《自民党改憲草案、統一教会の教義にそっくり》といった声が数多くあがっている。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、「いまのままの自民党の改憲草案では、憲法改正は絶望的」と言う。
「選挙を手伝ってもらったぐらいなら、他の宗教団体と変わらないでしょう。ただ、これだけ、旧統一教会の考え方と自民党の改正草案が一致してしまうと、旧統一教会が自分たちの理想を実現しようと憲法に手を突っ込んだと見られかねません。
自民党は同性婚やLGBT平等法に反対。さらに、旧統一教会の影響で、『子ども庁』が『子ども家庭庁』に名称変更されたと思わせてしまった。
これでは、政教分離の原則から逸脱するだけでなく、政治が宗教に支配されているという印象を与えてしまう。もはや、自民党の憲法改正草案を、『旧統一教会とは関係ない、私たちが考えたもの』と言い続けるには無理があります」
現実問題として、憲法改正を発議できても、国民投票で過半数を得るのは難しいだろう。
「本当に憲法を改正したいのなら、一度、自民党の改憲草案を引っ込めて、宗教に影響を受けたと思わせない新たな草案を出し直すしかないですよ。そうしないと、いつまでも旧統一教会の改憲案に自民党が乗っかったと思われてしまいます。
国民投票で、『旧統一教会が作った改憲案は認められない』と反対キャンペーンをやられたら終わりですよ。いまの草案で突き進む限り、憲法改正は絶望的です」(同)
安倍元首相の悲願だった憲法改正を成し遂げるには、自民党は旧統一教会との関係性を徹底的に調査し、見直すところから始めるべきだろう。
( SmartFLASH )