金糸雀とバカマツタケ
- 602 :名無しさん:2013/10/28(月) 21:33:34 ID:WTde/CvE0
- 金糸雀「さあ! 今夜も始まりました! 『熱狂!!スーパー薔薇乙女プロレスリング!!』
実況はお馴染み乙女番長こと私、金糸雀が!」
真紅「そして解説は真紅でお送りします」
金糸雀「では、早速! 選手入場です! 赤コーナー!
今宵も自慢の悪戯殺法が炸裂するか! 3度目の防衛戦! チャンピオン翠星石ーーッ!」
翠星石「オーイェー! やる気! 元気! 翠星石ぃ!!」ババッ
真紅「彼女は近頃チャンピオンとしての自覚と貫禄も備えてきました」
金糸雀「青コーナー! 挑戦者ぁ! ゴーゴーレッツゴー雛苺ーーっ!!」
雛苺「うぃーー!!」シュバッ
真紅「幾度倒されても起き上がる不屈の精神はなおも健在。さらには実力も、ここ最近
メキメキと上達している。今度こそ、ついにチャンピオンのベルトに手が届くかもしれません」
金糸雀「両者見合って待ったなし! 運命のゴングが今、鳴り響くかしらーっ!」カーン
翠星石「でやーーーっ」
雛苺「うにゅーーーっ」 - 603 :名無しさん:2013/10/28(月) 21:34:39 ID:WTde/CvE0
- 翠星石「ローゼン首切り水平チョーーープ!」ぐわっ
金糸雀「アッーーー! 出たっー! いきなり急所狙いの必殺技!」
真紅「獅子は兎を狩るにも全力よ。今夜のチャンプに慢心は無いようね!」
雛苺「そう来ることは見切っていたのよ! 雛苺フライングボディプレスーー!」ぴょいーん
金糸雀「うまい! 挑戦者、チョップを避けて高く跳ぶーーっ! そしてそのままボディアタック!」
真紅「防御がそのまま攻撃に繋がっている。流れるような美しい技の応酬よ。目が離せないわね」 - 604 :名無しさん:2013/10/28(月) 21:36:26 ID:WTde/CvE0
- 翠星石「がーはっはっはっは! かかったですねぇチビ苺!」
雛苺「にゅわっ?」
翠星石「チョップはてめぇを跳ばせるための布石ですぅ! その体勢で! これは、かわせるですかぁ!?」
金糸雀「アッーーーーと! チャンピオン、この流れまで読んでいた!? 即座に対空技の構えだぁー!」
真紅「あの構えは!? まさか!」
翠星石「必殺ぅ~! ローゼン竜巻アッパー!」ずばっ
雛苺「うぎゃーーーなのーーーー!」ドゴオッ
金糸雀「入ったー! 空中から落ち来る雛苺に翠星石渾身のジャンピングアッパーがジャストミート!
雛苺選手、見事な車田ふっとびを見せてリングに沈むーーーッ!」
真紅「空振りしたチョップの回転の勢いをそのまま止めずにアッパーに繋げている!
さらにはカウンター気味に挑戦者のアゴを打ち抜いた! これは強力よ!」
金糸雀「ボディではなく正確にアゴを狙ったことといい
チョップからアッパーへの淀みの無い連携! やはり、これは真紅さん……?」
真紅「ええ。チャンプは最初からここまでの状況を頭の中で描いていたに違いないわ」 - 605 :名無しさん:2013/10/28(月) 21:37:34 ID:WTde/CvE0
- 雛苺「きゅ~~」ピヨピヨ
翠星石「がーはっはっはっは! がーはっはっはははは!!」
金糸雀「挑戦者、立てない! 不屈の雛苺、まさかの超スピード敗北!
そしてチャンピオンの馬鹿笑いが高らかに響くーーーっ!!」
真紅「こうまで見事に決まってしまったのだもの。流石の雛苺の闘志が折れたとしても仕方が無い。
それにしても素晴らしいわ翠星石。今夜のリングはまさにあなたの美技を描くキャンバスだった」
翠星石「がーはっはっは! アーイアム! ナンバッワーーーーン!!」びしっ
金糸雀「それでは皆様、また次回をお楽しみに~っ」
真紅「来週はくんくん探偵スペシャル特番『温泉旅館湯煙殺人事件!血に染まるメロンパン!』の
放送を予定していますので、再来週の放送となりますのだわだわ」 - 606 :名無しさん:2013/10/28(月) 21:39:05 ID:WTde/CvE0
- ジュン「……何やってんだ。僕の部屋でドタバタと」ガチャッ
翠星石「お? チビ人間のお帰りですか。今日は遅かったですねぇ」
雛苺「お帰りなの~、ジュン~」
金糸雀「お邪魔しているかしら」
ジュン「あ! このリング!? ひょっとしてお前ら、またプロレスごっこを!?」
真紅「何か文句でもあるの? ジュン」
ジュン「大ありだよ馬鹿! 桜田家お約束条項その37! 言ってみろ!」
翠星石「お約束条項~? これまた随分と久しぶりにそんなものを……」
ジュン「いいから言ってみろ。まさか忘れてるわけじゃあ……?」
真紅「そんなわけ無いでしょ。その37は『庭の雑草にマヨネーズをかけて食べてはいけない』よ」
ジュン「それは第137条だ」 - 607 :名無しさん:2013/10/28(月) 21:40:15 ID:WTde/CvE0
- 雛苺「うにゅにゅ? 『象さんにお酒を飲ませて暴れさせてはいけない』?」
ジュン「それは76条」
金糸雀「と言うか、そんなお約束が桜田家にはあったのね」
翠星石「むむむ! 第37条だなんて、そんな初期で古いお約束、いちいち覚えてねーですぅ」
ジュン「ああもう! 37条は『僕の部屋の中でプロレスごっこをしない』だ!」
真紅「そう言えばそうだった」
ジュン「分かってるだろうな! お約束条項に違反したら……」
真紅「ちょ、ちょっと待ってジュン! 私たちはプロレスごっこをしていない!」
翠星石「そ、そうですそうです! 翠星石達がやっていたのは『熱狂!!薔薇乙女プロレスリング!!』です」
雛苺「ごっこじゃないのー! 真剣な勝負だったのよー!」
金糸雀「まったくもって、そのとーりかしら」
ジュン「やかましい! 何を今更な言い逃れを! 産地偽装の言い訳の方がまだもっともらしいわ!」 - 608 :名無しさん:2013/10/28(月) 21:41:29 ID:WTde/CvE0
- ジュン「大体、真紅達はいつもいつも……」
のり『みんな~? ごはんよー!』
ジュン「っ!?」
翠星石「お! のりの声ですぅ!」
雛苺「わぁい! ごはん! ごはん!」
金糸雀「カナもお呼ばれしちゃうかしら~」
ジュン「あ! こら、まだ話は……」
真紅「説教なら、ご飯を食べながらでもできるでしょ?」
翠星石「翠星石が先に行って美味しいの全部食べちゃうですー」
雛苺「あー! ずるいのー! そんなことさせないの!」
金糸雀「そうよ! 客人であるカナを優先してかしら~」
ジュン「ったく……」 - 609 :名無しさん:2013/10/28(月) 21:43:16 ID:WTde/CvE0
- のり「みんな、ちゃんと手は洗ってきたわね?」
雛苺「は~い!」
翠星石「今日の晩御飯は何ですか? のり!」
のり「ふふふ、今日はちょっと豪華よ!」
金糸雀「豪華!? ひょっとしてカナのために、すぺしゃるなディナーを用意してくれたのかしら!?」
ジュン「くんくん? この匂いは……」
真紅「……」
のり「じゃじゃーん! 今日は松茸ご飯でーす!」
翠星石「ま、マツタケですとーーーーっ!!」
雛苺「ふぉおおおおお! ヒナ知ってるの! マツタケって凄い高いのよ!」
金糸雀「ま、まさかの国産マツタケかしら!?」
のり「流石にそれは無理だから、今日のはカナダ産!」
ジュン「カナダでもマツタケって取れるんだ」
のり「そうみたいね」
ジュン「最近、流行の産地偽装じゃないだろうな?」
のり「なんでカナダ産に偽装しなくちゃいけないのよ」
ジュン「中国産とかよりはイメージ良くなるだろ」
金糸雀「それが本当だとしたら、随分と中途半端な産地偽装かしら」
真紅「それでも偽装は偽装。薔薇乙女は産地偽装には厳しくてよ! 私個人はマツタケよく知らないけど」
のり「そ、そうなんだ」
翠星石「何しろ産地偽装メイデンにアリスゲームを引っ掻き回された前例があるですからね……」
雛苺「ノーモア薔薇水晶、ウェルカム雪華綺晶なのよね!」
ジュン「お前らって、妙なところで薔薇水晶に辛く当たるよな」
のり「ま、まあとにかく、いただきましょう! ごはん冷めちゃうわ」 - 610 :名無しさん:2013/10/28(月) 21:44:57 ID:WTde/CvE0
- 全員『いっただきまーす』
翠星石「うっひょー! マツタケ、マツタケどこですかー?」グリグリ
ジュン「茶碗のご飯の中を箸でまさぐるな。下品だぞ」
翠星石「そんなこと言ったって、マツタケが見あたらねーのが悪いんですぅ」
雛苺「うぃ! 見た目、ただの茶色いご飯なのよー」
金糸雀「香りはすれども姿は見えずかしら」
真紅「……」
翠星石「お! それっぽいもの発見ですぅ! ……て、これは?」ピラッ
金糸雀「な、何という薄さ! まるでセロファンかしら!」
雛苺「向こう側が透けて見えるのー!!」
ジュン「姉ちゃん……」
のり「ご、ごめんねー! 外国産でもそれが精一杯で……」
翠星石「くっ! なんてことです! おじじの家にいた頃はマジモンの国産マツタケを七輪で焼いて
食べさせてくれたですのに……これが、これが現代日本の格差社会ですかっ!」
ジュン「うるせぇよ。だったら薔薇屋敷に帰れ、お前」 - 611 :名無しさん:2013/10/28(月) 21:45:41 ID:WTde/CvE0
- 雛苺「ヒナはご飯が美味しければそれでいいのー!」ムシャムシャ
金糸雀「高級な味付きご飯と思えば、凄い贅沢かしら」モグモグ
のり「ヒナちゃん、カナちゃん……!」
ジュン「そうだな。マツタケ自体ありがたいものだし……」
真紅「……」
ジュン「ん? どうした真紅? さっきから全然食べてないみたいだが……」
のり「ま、まさか真紅ちゃんも、こんなマツタケご飯は嫌?」
真紅「いや、その……そういうわけじゃあないんだけど。できれば、ただの白ご飯は無い? のり?」
ジュン「お、お前! そんな嫌味を!」
真紅「い、嫌味じゃないわ!」
のり「ごめんなさい真紅ちゃん。今日はこれしか……」 - 612 :名無しさん:2013/10/28(月) 21:46:53 ID:WTde/CvE0
- 真紅「うぐ……」
翠星石「どうしたんですぅ真紅? 食べてみりゃ、そこそこマツタケの風味はあるですよ」
真紅「……あなた達、平気なの? この風味……というか、匂いに」
雛苺「匂い?」
金糸雀「あ! ひょっとして真紅! マツタケ食べるの初めてなのかしら!?」
真紅「!」
のり「え? あ! そ、そう言えば……」
ジュン「真紅がうちに来てから、食卓にマツタケ出たのは確かにこれが最初だが……」
翠星石「翠星石も日本にきて、おじじの家で食べたのが初めてだったですね」
雛苺「ヒナもトモエのお家にいた時に初めて食べたのよ」
金糸雀「カナもみっちゃんにご馳走してもらったのがマツタケ初体験だったかしら」
真紅「……」
ジュン「食わず嫌いは良くないぞ真紅。マツタケなんて、この機を逃したら次はいつ食べられることだか」
真紅「そ、そうね。なら仕方ない。いただきます!」パクッ
のり「し、真紅ちゃん? あまり無理しなくても……」 - 613 :名無しさん:2013/10/28(月) 21:48:27 ID:WTde/CvE0
- .ィ/~~~"ヾ
、_/ /  ̄`ヽ}
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||ヽ||゙゚'ω゚'ノ: ピクピク
≦ :/ つとl:
テ :しー-J :
金糸雀「し、真紅!? 何だか小刻みに震えてるかしら!?」
ジュン「まずい! みんな、自分のお茶碗と持てるだけの皿をテーブルから持ち上げろ!」
翠星石「らじゃーですぅ!」ササッ
雛苺「うぃ!」ババッ
のり「ほら! カナちゃんも早く!」ヒョイッ
金糸雀「え? ええ!」カチャカチャ - 614 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:04:38 ID:WTde/CvE0
- .ィ/~~~"ヾ
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テ と_)i:;l|;:;::;:::⊃ ビチビチビチ
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金糸雀「ぎゃああああああ! 真紅が吐いたかしらーーーっ!?」
ジュン「やっぱり……」
翠星石「いい加減真紅のゲロにも慣れてきたですぅ」
のり「ジュン君にいたっては事前予測まで可能なレベルだものね……」
雛苺「テーブルの上のご飯とオカズがもう少しでメチャクチャにされるところだったの」
金糸雀「……」
真紅「オェエエエエ」げろげろ
※参考までに真紅の主なゲロ歴史
酒酔いと船酔いのダブルパンチで吐く (薔薇乙女のうた『ある野薔薇とワタハミの樹』)
柏葉巴の面タオルの匂いを嗅いで吐く (狙われた柏葉巴)
飲んでしまった薬をゲロで翠星石に口移し (狙われた結菱一葉)
エッセンシャルオイルをやけ飲みして吐く (油売りの真紅)
ジュンの寝っ屁を至近距離で嗅いで吐く (桜田ジュンの洗浄『トライアヌスの女帝』)
わざとゲップしようとして誤ってゲロを吐く (雛苺とセミの脱皮)
逆さ吊りで揺られて気持ち悪くなって吐く (桜田ジュンの感冒『その苦輪の運命』) - 615 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:08:07 ID:WTde/CvE0
- §小一時間後
翠星石「ふーぅ! 食った食ったですぅ」
雛苺「マツタケご飯美味しかったの」
ジュン「外国産でもやっぱりそこそこ美味しいな」
金糸雀「真紅がゲロ吐いたのに何事も無かったのように食事を続けられるとは……桜田家恐るべしかしら」
真紅「……」げっそり
雛苺「大丈夫なのよ真紅?」
真紅「ええ。あの後、マツタケご飯にマヨネーズをこれでもかと盛って、何とか食べられる風味にしたけど……」
ジュン「もったいない真似しやがって」
真紅「あんな、何ヶ月も履きつぶした靴下の匂いのようなキノコを美味しいと思えるあなた達が異常なの!」
雛苺「マツタケはそんな匂いじゃないのよ真紅」
翠星石「しかし、確かに匂いは独特ですね。翠星石も最初はちょっと苦手でしたが、すぐ大好きになったですぅ」
金糸雀「うーん、きっと外国産の微妙に鮮度が落ちたマツタケだから真紅はそう感じただけかもしれないかしら。
国産のでりしゃすでピチピチのとれたてマツタケなら、きっと真紅も気に入るはずよ」
真紅「……金糸雀の言うことも一理ある。よし、ジュン」
ジュン「さっき姉ちゃんも言っていたが、うちに国産マツタケを買う余裕は無いからな。
今日のカナダ産だってかなり無理して……」
真紅「何よ! お金が無いなら翠星石や雛苺を質に入れてでも買いなさい!
それが、この真紅に仕える下僕の務めではなくて!」
ジュン「無茶言うな。第一、翠星石と雛苺を売ったところで二束三文にしかならなかっただろ(※)」
※真紅は以前、翠星石と雛苺が寝ている隙に質屋へ『ただの人形』として売りとばしたことがある。 - 616 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:09:25 ID:WTde/CvE0
- 金糸雀「うっふっふっふっふ~」ニヤニヤ
真紅「? 何よ金糸雀、急にニヤニヤしながら変な笑い声を出して」
雛苺「気持ち悪いのよ、カナ」
翠星石「発情期ですか?」
金糸雀「ちがーう! みんな国産マツタケのレア度にお困りのようだけど
実はカナには、とっときのグレートな情報があるのかしら!」
ジュン「グレートな情報?」
金糸雀「いかにもかしら! そしてこれは絶対に他言無用よ!」
真紅「もったいぶらないで」
金糸雀「なんと、この街の裏山にはマツタケが自生しているのかしらーっ!!」
翠星石「な、なんですとー!?」
ジュン「んなアホな」
雛苺「えええ? ヒナ達、よくあの裏山で遊んでいるけど、マツタケなんて見たことないのよ」 - 617 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:11:05 ID:WTde/CvE0
- 金糸雀「ふふふ、信じられないのも無理はないかしら。誰も知らないのだから」
真紅「誰も知らないのを、どうしてあなたは知っているのよ金糸雀?」
金糸雀「水銀燈に聞いたのかしら~。流石に詳しい場所までは教えてくれなかったけど」
ジュン「水銀燈? またまた胡散臭い情報の出所だな……」
翠星石「いんにゃ、あいつはサバイバルメイデンです。
裏山の山菜やキノコで水銀燈が食を繋いでいたのは、姉妹にとって周知の事実」
ジュン「そうなんだ……」
真紅「裏山で松茸狩か。面白そうね」
雛苺「うぃ」
翠星石「これで真紅の松茸嫌いも克服ですぅ!」
真紅「私が面白そうと思ったのは、水銀燈が裏山で大事にしている松茸を取ってやるのが面白そうってことよ。
松茸が好きか嫌いかはどうでもいい。売ればお金にもなりそうだし……」
翠星石「そ、そうですか。ともかく、そうと決まれば蒼星石も誘って……」
金糸雀「ちょーっと待ったかしらー!」
雛苺「にゅ?」 - 618 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:11:58 ID:WTde/CvE0
- 金糸雀「ここだけの話と言ったはず! これ以上、裏山の松茸を知られるわけにはいかないわ」
翠星石「えぇっ!? で、でも蒼星石にくらい……」
金糸雀「成金の結菱家に知られたら裏山ごと買収されかねないかしら」
翠星石「な、なるほど!」
ジュン「……」
金糸雀「そういう訳で、これはカナと翠星石達との秘密かしら」
翠星石「分かったですぅ」
金糸雀「明日もこっそりカナ達だけでマツタケ狩りに行くの! いいわね?」
真紅「ええ。了解よ」
雛苺「うぃ!」
ジュン「……僕は行かないからな。そもそも松の木自体、裏山でそうそう見たことがない。
水銀燈の見間違いか、ガセ情報に決まってる」
金糸雀「何とでも言うかしら! マツタケたくさん見つけてもジュンには分けてあげないから!」
ジュン「はいはい……」 - 619 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:13:08 ID:WTde/CvE0
- §翌日・裏山
金糸雀「さぁてさて、早速秋の味覚、マツタケ狩りの始まりかしら! くふふふふ……」
翠星石「腕とお腹が鳴るですぅ」グキュゥ~
真紅「それで、どうやって探すのよ?」
金糸雀「雛苺の鼻を使うのかしら!」
雛苺「ヒナのはな?」
金糸雀「食べごろのマツタケは土中にほとんど埋まっていて、熟練者でなければ目で探すのは不可能!」
翠星石「翠星石もテレビでそんな感じのことを言っていたのを見たですぅ」
金糸雀「そう! そこで薔薇乙女の中でも特に鼻の利く雛苺にマツタケの匂いをかぎ分けてもらうのよ!」
真紅「トリュフを探す豚みたいなものね」
雛苺「にゃーっ! ヒナは豚じゃないのーっ!」
真紅「似たようなカラーリングしているくせに」
金糸雀「それに雛苺は昨日、本物のマツタケを食べたばかりかしら。
匂いの記憶も新しい今だからこそ、マツタケ探しにはうってつけ!」
翠星石「なるほどなるほど。よっしゃチビチビ! とっととマツタケを見つけやがれでーす!」
雛苺「うみゅみゅ。と、とにかく、やってみるのよね」クンクン - 620 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:14:54 ID:WTde/CvE0
- §数時間後
雛苺「……全然分からないの~。もう疲れたのよ」グッタリ
翠星石「うーむ。こんなに探し回っても無いとは……」
真紅「やはり、情報はガセ……か」
金糸雀「『やはり』とは何かしら! まだまだ探し方が足りないだけよ!」
真紅「だって、雛苺とは関係なしに私がその辺を適当に歩き回って見つけたキノコの方が多いし」ドッサリ
翠星石「ぬ!? やけに真紅だけ寄り道していると思ったですけど、いつの間にそんなにキノコを!」
金糸雀「けど、どう見てもそれ毒キノコかしら。全部が全部、毒々しいまでの赤と白の水玉模様……」
真紅「え? でもスーパーマリオだと、これ食べてパワーアップするじゃない。
それに匂いもマツタケと違って食欲を誘うかぐわしい香り……」
金糸雀「ゲームの情報を鵜呑みにしちゃだめかしら」
雛苺「とんだゲーム脳なのよ!」
翠星石「こういうのゲーム脳って言うんですか?」 - 621 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:15:24 ID:WTde/CvE0
- 雛苺「うにゅにゅ!?」ピクッ
金糸雀「?」
雛苺「……」ヒクヒク
翠星石「どうしたんですぅチビ苺? 急にそわそわして? トイレですか?」
真紅「薔薇乙女はトイレ行かないわよ」
雛苺「マツタケなの! マツタケの匂いがするの!」
金糸雀「ええ? 本当!?」
雛苺「こっち! こっちよ!」ダダダッ - 622 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:16:08 ID:WTde/CvE0
- 雛苺「見つけたの! いっぱい生えてるぅ! マツタケに間違いないわ!」
翠星石「うっひょー! 夢のようです! お手柄ですよチビ苺!」
金糸雀「マツタケは本当に裏山にあったかしら! 水銀燈の情報は正しかったのよ!」
真紅「そ、そんな……っ! まさか!」
翠星石「取れです取れです! 全部、取っちゃれでーす!」ブチブチ
雛苺「右も左もマツタケだらけなのー!」ブチブチ
金糸雀「マツタケパラダイスかしらー!」ブチブチ
真紅「ぐっ、確かにこの不快な匂いは昨日のカナダ産マツタケよりも遥か上!」
翠星石「やぁれやれ。結局、真紅はこの純国産マツタケでもダメダメなのですか?」
金糸雀「この際、真紅の好みは二の次かしら! 取れるだけ取るのよマツタケを!」ガサゴソ
雛苺「うぃーーー!」ポイポイ - 623 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:16:53 ID:WTde/CvE0
- §街角・夕焼けの帰り道
翠星石「ああ、こんなに充実した一日を過ごしたのは久しぶりですぅ」
雛苺「夕日がとっても綺麗なの~」
金糸雀「松茸の詰まった籠の重さが心地よいかしら」
真紅「……」
金糸雀「ちょっと真紅、そんなに離れて歩かなくても……」
真紅「ダメ。その匂い、本当もう苦手だわ」
翠星石「この匂いを楽しめないとは、真紅は人生の半分を無駄にしているですぅ」
雛苺「まったくなのよね」
薔薇水晶「あら? お久しぶりですね皆様」ばったり
金糸雀「薔薇水晶!」
翠星石「おお、こんなところで産地偽装メイデンに会うとは奇遇ですぅ!」
薔薇水晶「さ、産地偽装……?」
雛苺「こんばんは! あれ? それとも、こんにちは、なのよ?」 - 624 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:17:38 ID:WTde/CvE0
- 真紅「……それで、あなたはここで何をしているの、薔薇水晶?」
薔薇水晶「私はこれから晩御飯のおかずの買出しに行く途中です。あなた方は?」
金糸雀「ふっふっふー! 聞いて驚くなかれかしら! カナ達はマツタケ狩りの帰りかしら!」
薔薇水晶「マツタケ?」
翠星石(ちょっとカナチビ! マツタケのことは、あまり他人に……!)
金糸雀(裏山のことを黙っていれば問題ないわ! それに、こんな大漁、自慢せずにはいられないかしら!)
翠星石(むむむ、それもそうですね)
雛苺「ほらっ! カゴいっぱいのマツタケを取ってきたのよーっ!」
翠星石「特別に匂いを嗅がせてやるですぅ」
薔薇水晶「……」じーっ
翠星石「ふふふ、そんなに凝視しちまって。どうしてもと言うのなら一本ぐらい……」 - 625 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:21:14 ID:WTde/CvE0
- 薔薇水晶「これ、バカマツタケですね」
翠星石「ッッ!?」
雛苺「ばっ?」
金糸雀「ばかまつたけぇ!? な、何それ!?」
真紅「マツタケじゃないの? これ?」
薔薇水晶「はい。バカマツタケはマツタケと似ていますが、別の種類のキノコです」
翠星石「マ、マジですか!?」
薔薇水晶「これ、ちゃんと松の根元に生えていましたか?
バカマツタケは松林ではなく雑木林に生息するキノコです」
金糸雀「うっ! そ、そう言われれば……」
翠星石「な、なんということですぅ! 騙したですねカナチビ!」
雛苺「バカマツタケだなんてひどいのー!」
真紅「ある意味、金糸雀にはお似合いのキノコだわ」 - 626 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:24:48 ID:WTde/CvE0
- 金糸雀「そんな! カナだって被害者かしら! 元はと言えば水銀燈が……」
翠星石「人のせいにするなですぅ! このおバカナリア!」
雛苺「カナは本物の馬鹿なのー! バカマツタケなの!」
薔薇水晶「あ、あの……喧嘩はよくありません。それにバカマツタケも……」
翠星石「ええい! 産地偽装メイデンは黙ってろですぅ!
昔はアリスゲーム煽ったくせに、今更ケンカはよくないとはどういう了見ですか!」
薔薇水晶「そ、それは……」
雛苺「このバカマツタケ全部あげるからヒナ達のことは放っといてなのよ!」
薔薇水晶「しかし」
雛苺「ほらほら!」グイッ
薔薇水晶「いいのですか……本当に?」
真紅「いいんじゃない? こんな臭いもの、私さっさと捨てたいぐらいだし。
それにバカマツタケなんて名前のキノコ、高く売れそうにもない」
薔薇水晶「分かりました。このお礼はいずれまた……」ペコリ
真紅「槐にもよろしくね~」
翠星石「大体、カナチビはいつも……!」ワーワー
金糸雀「何よ何よ! 翠星石だって……!」ギャーギャー
雛苺「振り回されるヒナの身にもなってなの!」プンスカ
【金糸雀とバカマツタケ】 終 - 627 :名無しさん:2013/10/28(月) 22:34:36 ID:WTde/CvE0
- _______________________________
|
| 【解説 by 蒼星石】
|
|
| マツタケ(学名 Tricholoma nauseosum または Tricholoma matsutake)
|
| ご存知、秋の味覚の高級食材。
| 真紅が随分と拒否反応を示していたけれども、欧米人はマツタケ独特の匂いを嫌がる事が多い。
| そもそも学名のTricholoma nauseosumは「吐き気 (nausea) を催させるシメジ」という意味だ。
| だから真紅が嘔吐してしまったのは、しょうがないことでもあるんだよ。
|
|
| バカマツタケ(学名 Tricholoma bakamatsutake)
|
| マツタケに似たキノコ。マツタケよりも小ぶりだが、香りはマツタケよりも強い。
| 雛苺が見つけることができたのも、この香りの強さによるものだろう。
| 薔薇水晶が言っていたとおり、松林ではなく雑木林に生えることなどから
| 馬鹿な松茸として名づけられてしまった可哀想なキノコでもある。
| 味も悪くないどころか『非常に美味』なキノコ。名称以外は松茸と同等と言えるかもしれない。
| 何事も、名前や見た目だけで判断してはいけないね。
|
┌──┐
i二ニニ二i キノコ狩りや山菜取りは山のルールやエチケットを守って楽しもう。
i´ノノノヽ))) 。 特にキノコの種別の判断はとても難しいものだから、無茶はしないように。
Wリ゚ -゚ノリ / 蒼星石との約束だよ。
⊂)_介」つ
〈__l__〉
〈_ハ_〉 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
2013/10/29 21:43:35 コメント8 ユーザータグ ローゼンメイデン