雪華綺晶、食べられる。
- 465 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:01:17 ID:9KCzAQ2c0
- §ある晴れた昼下がり・桜田家の庭
金糸雀「あ、水銀燈ー! 水銀燈~っ! あなたも真紅にお呼ばれしたのかしら」
水銀燈「やかまわしいわね。大声出さなくても聞こえてるっての」
雪華綺晶「……黒薔薇のお姉様が紅薔薇のお姉様の呼び出しに応じるとは珍しいですわね」
水銀燈「あんただってそうでしょうが末妹」
蒼星石「それで、そのオセロコンビがちゃんと真紅の言うとおりに、ここへ来たってのはどういう風の吹き回しなのかな?」
水銀燈「別に。何ていうか暇だったから。それだけよ。と言うか私とコイツをコンビ扱いしないで頂戴、蒼星石」
蒼星石「メンゴメンゴ。じゃあ白薔薇は? どういう理由でここに?」
雪華綺晶「敢えて言うなら匂い……ですわね」
蒼星石「匂い?」
雪華綺晶「何か面白そうなことを紅薔薇のお姉様は企んでいる。そう直感しました」
水銀燈「どうせ、くだらない三文芝居でしょ。せいぜい馬鹿にしてやるわ」 - 466 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:03:23 ID:9KCzAQ2c0
- 翠星石「おーおー! みんな時間通りに勢ぞろいしているですね!」
雛苺「感心なの!」
金糸雀「翠星石、雛苺」
翠星石「おらおら、ちょっとそこをどけですカナチビ」
雛苺「うぃ! お立ち台を運ぶ邪魔なのよ~! うんしょ、こらしょ」
水銀燈「お立ち台ぃ~?」
翠星石「そうですぅ。これから真紅が姉妹全員に対して重大な発表をするそうなのです」
雛苺「その発表のためのお立ち台を今、ヒナ達が運んでいるの」
水銀燈「くだらなぁい。何がお立ち台よ。何様のつもり? 真紅は」
蒼星石「まあまあ、真紅は形から入るタイプだから」
雪華綺晶「……」 - 467 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:04:35 ID:9KCzAQ2c0
- 真紅「お立ち台とマイクの用意はできた? 翠星石、雛苺」スタスタ
翠星石「お、来たですか真紅」
雛苺「ちゃんと言われたとおりの場所に置いたのよ」
真紅「よろしい。では、ついにこの真紅の晴れ舞台というわけね」ガサゴソ
蒼星石「真紅がお立ち台に上っていく」
金糸雀「一体、何を話す気かしら」
雪華綺晶「ドキドキしますわね」
蒼星石「……見て、真紅はラジカセを担いでいる」
水銀燈「何を考えているのやら」
真紅「……それではミュージックスタート」ぽちっ
ラジカセ『♪~♪♪~~』
金糸雀「音楽が流れ始めたかしら!」
翠星石「こ、この曲は……?」 - 468 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:05:27 ID:9KCzAQ2c0
- 真紅「♪茨の茎を~伸ばしてぇ~たわぁめてぇ~」
蒼星石「あ、歌いだした」
雛苺「真紅がカラオケ始めちゃったのよ?」
水銀燈「何これ? 真紅がへったくそな歌を披露するだけ? ひょっとして?」
雪華綺晶「まさか」
真紅「♪私に~零して~雫の一片ぁ~」
水銀燈「へたくそー! やめて帰りなさぁい!!」
金糸雀「ちょ、ちょっと水銀燈! 野次を飛ばすだなんて下品かしら」
蒼星石「本当にもう、水銀燈は短気なんだから」
翠星石「気持ちも分かるですけどね。いきなり呼び出されて
へっぽこな歌を聴かされたら翠星石でもげんなりするですよ……」
雪華綺晶「翠のお姉様達は真紅が何を始めるかを知らなかったのですか?」
雛苺「うぃ。とにかくステージの準備をしろと言われただけなの」 - 469 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:07:06 ID:9KCzAQ2c0
- 真紅「♪終焉を知ってなお~ ♪んーふふふふふふふーん」
蒼星石「あ、歌詞をごまかし始めた」
翠星石「覚えてねーなら無理するなです真紅ぅ~!」
真紅「♪目には目を~ ♪歯には歯を~」
金糸雀「もう、うろ覚えってレベルじゃねーかしら!」
雪華綺晶「適当な歌詞つけ始めましたわね」
水銀燈「本当ふざけんじゃないわよ!」ブンッ
金糸雀「い、石を投げるのはやり過ぎかしら水銀燈!」
翠星石「いんにゃ、これは真紅が悪いですよ! 人前で披露するならもっとちゃんと練習してからやれですぅ」ブンッ
蒼星石「翠星石まで」
真紅「♪い~しを投げるのはや~めぇて~」クネクネ
蒼星石「……」イラッ
金糸雀「……」イラッ
雪華綺晶「あらあら、温厚派の蒼と金のお姉様まで真紅のアドリブ(?)に少しイラッとしていますわ」
雛苺「真紅は人をイラッとさせるのが大得意なのよ」 - 470 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:08:19 ID:9KCzAQ2c0
- 真紅「♪私の薔薇を~さぁ~は~み~な~さ~いぃ~」
翠星石「うぬぬ、翠星石達の投石をかわしながら歌いきりやがったですよ」
水銀燈「ああもう、憎たらしいったらありゃしない!」
真紅「……」コトッ
金糸雀「マイクをステージ上に置いた?」
真紅「……」スタスタ
雪華綺晶「そしてお立ち台の上を去っていく……」
水銀燈「ちょ、ちょっと何よ真紅! まさか本当にこれで終わり!?」
雛苺「こんな適当な歌のためだけにヒナ達はステージを作らされたの!?」
雪華綺晶「まだネタになる分、ジャイアンリサイタルの方がましです」
蒼星石「いや、待って! このマイクをステージ上に残すパフォーマンス! これは『引退表明』だッッ!!」
翠星石「引退表明~っ!?」
水銀燈「引退って何を引退するのよ、何を」
蒼星石「……アイドル?」
金糸雀「真紅は元からアイドルじゃないかしら」 - 471 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:09:35 ID:9KCzAQ2c0
- 真紅「察しの悪い子達ね」ヒョコッ
雛苺「し、真紅?」
真紅「私が引退するとしたら一つしかないでしょ」
雪華綺晶「それは一体……?」
真紅「やれやれだわ。ここまで言っても分からないだなんて」
金糸雀「……」
真紅「私、真紅は今日この日にローゼンメイデンを引退します!」キッパリ
蒼星石「え!?」
水銀燈「ええええ!?」
金糸雀「やややや、辞める!? ローゼンメイデンを!?」
雛苺「それって、どういうことなのよ!?」
雪華綺晶「……」 - 472 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:12:19 ID:9KCzAQ2c0
- 真紅「アリスゲームで腕はもげるわ、首は取れるわ、もはや私は体力の限界よ。気力も無い。
これから薔薇乙女として、闘いを続けていくことは不可能」
翠星石「そんな! 何かの冗談ですよね真紅ぅ!」
真紅「これが冗談に見えて? 翠星石?」
蒼星石「いや、変なお立ち台と歌謡ショーの前フリやられたら、誰だって冗談としか思えないって」
真紅「蒼星石までそんなことを。本当に……やれやれって感じだわ。この私の引退表明という
株価大暴落間違いなしの暗い話題をできるだけポップでキュートなバイブスで伝えようと
努力しただけだと言うのに。それと歌詞があやふやだったのはJASRAC対策のため」
蒼星石「歌詞ぼかした程度でJASRACは見逃してくれないよ」
水銀燈「ともかく、アンタの頭がイカレたとしか思えないわ。でもまぁ、いいんじゃなぁい?
正直、引退とは賢い判断だと思う。ずっと目障りだったもの真紅は」
金糸雀「ままま、待ってかしら水銀燈! 真紅、本当に本当の本当なのよね! 薔薇乙女引退って!」
真紅「ええ、そうよ。嘘偽りのない私の『本当の気持ち』。略して『ほも』よ」
蒼星石「略さないで」 - 473 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:13:42 ID:9KCzAQ2c0
- 翠星石「つーか、引退なんて勝手にできるのですぅ? お父様に何の断りも無く」
真紅「さあ?」
金糸雀「『さあ』って……」
水銀燈「別にそんなのはどうでもいいわよ。要は真紅がアリスゲームやめたいってだけでしょ。
だったら、ほら、さっさと出すもん出して再起不能(リタイヤ)になっちゃいなさい」
真紅「出すもの?」
水銀燈「ローザミスティカに決まってんでしょ。何をしらばっくれて……」
真紅「いや、ミスティカは出さないわよ。そんなことしたら私、死んじゃうじゃない。引退はするけど、死ぬのは嫌」
水銀燈「はぁ!? 何て我儘を……っ」
真紅「と言うか、未だにローザミスティカのやり取りだけがアリスゲームの解決策だなんて、旧世紀時代の考え方よ水銀燈」
水銀燈「うぐっ……」 - 474 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:15:54 ID:9KCzAQ2c0
- 雪華綺晶「……では、紅薔薇のお姉様はローゼンメイデンを辞めて何になると言うのです?」
真紅「当然、フリーのメイデンになった真紅ちゃんは、これから多方面でマルチな才能を発揮していくことをお約束します」
金糸雀「はぁ?」
雛苺「真紅は何を言っているのよ? ヒナには全然分からないの」
翠星石「翠星石もですぅ。世迷言にしか聞こえねーですよ……」
蒼星石「具体的に何を企んでいるんだ真紅、君は?」
真紅「さしあたって、先ずは2020年東京オリンピックに向けて五輪マスコットキャラとしての地位を得たいと思います」
水銀燈「ああ、はいはい。好きなだけ勝手に思ってなさい。私、もう帰ってもいい?」
真紅「待ちなさい。五輪キャラを狙うには私だけでは力不足。水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石の力も借りたい」
翠星石「へっ!?」 - 475 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:20:29 ID:9KCzAQ2c0
- 雛苺「うにゅにゅ? ヒナと雪華綺晶は~?」
雪華綺晶「そうですわ。何故、私達二人は戦力外に? 請われても受けるつもりはサラサラありませんが」
真紅「本当に察しの悪い子達ね。五輪の五色と薔薇乙女第1から第5ドールまでが対応しているからに決まっているじゃない」
水銀燈「え?」
金糸雀「そ、そう言われれば」
蒼星石「黒、黄、緑、青、赤。確かに」
真紅「でしょ? これは最早、私達はオリンピックのために生まれたと言っても過言ではない」
翠星石「すんげー、こじつけっぽいですが、それと引退宣言と何の関係が……」
真紅「いや、だから引退しなくちゃフリーな活動できないじゃない」
蒼星石「引退とか関係なく、君は常にスーパーフリーダムじゃないか」
翠星石「そうです、そうですぅ!」
金糸雀「大体、カナ達まで五輪キャラになろうとするんだったら、カナ達までローゼンメイデン引退しなくちゃ……」
真紅「ええ、そうよ。一緒に引退しましょう。それが何か問題でも」
水銀燈「問題でもって……アンタ! 引退するなら一人だけでやって頂戴! 私達を巻き込まないで!」
真紅「ああ、もう、うるさいわねぇ。そんなの後で復帰すればいいじゃない」
雛苺「ふっき?」
翠星石「ちょ、おま! 真紅ぅ? 引退しておきながら薔薇乙女に復帰する気満々なのですかぁ!?」
真紅「そうよ。五輪キャラとしてのお勤めを果たし、アリスゲームへの意欲と気力と体力を取り戻したらね」
金糸雀「いやいやいやいやいやいやいや! め、滅茶苦茶なのかしら真紅」
真紅「どこがよ。実に計画的じゃない」
雪華綺晶「……」
水銀燈「あほらし。もう本当に帰らせてもらうわ、私」
蒼星石「悪いけど僕も」
翠星石「翠星石もですぅ。久しぶりにおじじの家に茶をしばきに行くですよ」
雛苺「ヒナはトモエのお家に遊びに行ってくるの」
金糸雀「みっちゃんから暗くならない内に帰るように言われているかしら」
雪華綺晶「では私は川へ洗濯に……」 - 476 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:22:48 ID:9KCzAQ2c0
- 真紅「本当にそのまま帰っていいの? もし私だけが人類の祭典オリンピックのメインマスコットに選ばれたとしたら
それは最早、人形の最高峰に立った事の証。すなわち、アリスへの道が拓かれたも同然」
水銀燈「!」ぴくっ
蒼星石「……」ぴたっ
翠星石「……なんですと?」
金糸雀「……そんなまさか」
真紅「お父様だって何の職歴も無いボンクラメイデンよりは栄誉ある五輪メイデンの方をアリスに選ぶはず」
水銀燈「ふ、ふぅ~~ん……」
蒼星石「……仮に僕達が協力したとして、ちゃんと五輪メイデン計画が成功する見込みは?」
真紅「全てこの真紅に任せなさい。五輪の書だって、既に三回も読み返しているのだから」
翠星石「五輪の書ってオリンピックに関係あったっけですぅ?」
蒼星石「オリンピックを五輪と和訳した際の『五輪』は五輪の書に肖ってのことだけど、内容的には特に関係ないよ」
雛苺「へぇー」
金糸雀「蒼星石は何でもよく知っているかしら」 - 477 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:24:52 ID:9KCzAQ2c0
- §唐突に数日後・桜田ジュンの部屋
雪華綺晶「こ、こう……ですか? 苺のお姉様」グニュー
雛苺「違うのー! もっと、うにゅーって、愛しさと切なさと心強さを表現するのよ!」
雪華綺晶「は、はい」グニャー
ジュン「……何やってんだ? 二人して、柔軟体操? しかも珍しい組み合わせだな」
雪華綺晶「あ、これはこれはマスター」
ジュン「どさくさまぎれでマスターって呼ぶな」
雛苺「えっとねー、ジュン! 今、ヒナは雪華綺晶に苺大福ごっこを教えてあげていたの!」
ジュン「苺大福ごっこ?」
雪華綺晶「お姉様曰く、苺大福になりきる遊びだそうです」
ジュン「ああ、そう……。で、真紅や翠星石達はどうした? ここ数日ずっと見かけていないんだが」 - 478 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:26:55 ID:9KCzAQ2c0
- 雪華綺晶「お、お姉様方は……」
雛苺「真紅達はJASRACに連れて行かれたのよ」
ジュン「な、なにぃ!? 何をやらかしたんだ真紅達は!?」
雪華綺晶「待ってください雛苺。水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅が
連れて行かれたのはJASRACにではありません。JOCの方です」
ジュン「五人も連れて行かれたの!? それで『じぇいおーしー』って? 」
雪華綺晶「日本オリンピック委員会のことです」
ジュン「そ、そこが何で真紅達を連れて行ったんだ?」
雛苺「ジュンは真紅が五輪メイデンになると言って騒いでいた話は覚えているのよね?」
ジュン「あ、ああ。いつもの戯言だと思って右から左に受け流していたが」
雪華綺晶「それが言葉巧み(?)に黒のお姉様から蒼のお姉様までを騙して
五人仲良く五輪メイデンを結成したのです。それがJOCの目に留まり……」
ジュン「え!? まさか本当に五輪マスコットとして採用……っ!?」
雪華綺晶「いえ、違います。悪い意味で目をつけられてしまいました」
ジュン「そ、それはつまり、どういう……?」 - 479 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:29:26 ID:9KCzAQ2c0
- 雛苺「うぃ、真紅達はねオリンピック饅頭っていう五色のお饅頭を作って売りまくっていたの」
ジュン「……」
雪華綺晶「それも自分達を勝手に五輪メイデンと称した上でです」
ジュン「いいの、それ?」
雪華綺晶「もちろんダメです。だからJOCにしょっぴかれました、五人とも。
JOCは勝手にオリンピックだとか五輪だとかの名称を金儲け目的で濫用することを良しとはしていません」
ジュン「……それ知ってて、何で真紅達を止めなかったの? 雪華綺晶」
雪華綺晶「五人ともノリノリだったものですから。私だけの力ではとてもとても」
ジュン「水銀燈や蒼星石までいて、誰もブレーキ役にならなかったのか?」
雪華綺晶「儲け話になると水銀燈や翠星石はたいていの不合理には目を瞑りますし、蒼星石は翠星石から頼まれると
なかなか嫌とは言えません。あと金糸雀は基本的に何も考えていないドールですし……」
雛苺「真紅はねー、ドールとマスターの契約と同じで、五輪メイデンとしての既成事実さえ
作ってしまえば、後はどうにでもなると言っていたのよー! デファクトスタンダードなのー」
ジュン「で、でふぁくと?」 - 480 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:30:45 ID:9KCzAQ2c0
- 雪華綺晶「とまあ、このように激甘な見通しで動いた結果、真紅達五人はJOCで反省文を目一杯書かされているところですわ」
ジュン「保護者として僕、呼び出されたりしないかな……?」ドキドキ
雪華綺晶「大丈夫でしょう。自分のケツぐらいは拭けるお姉様方ですから」
雛苺「そういうわけで今日はヒナと雪華綺晶で遊んでいるの。
さぁ、続きなのよ! もっとうにゅーの気持ちを考えるのよね雪華綺晶!」
雪華綺晶「し、しかし……」
雛苺「しかしもお菓子もないの! 今日のヒナはスパルタなの!」
雪華綺晶「お言葉ですが、私はお姉様ほど苺大福に通じていません。
何卒、私に、もそっと苺大福を理解する機会を与えてくれませんか?」
雛苺「むむむ、そう言われればそうなのよね。雪華綺晶はまだまだ苺大福初心者だったの。
いいわ、早速、今日のおやつの、うにゅーちゃんを持ってきてあげる」
雪華綺晶「ありがとうございます、お姉様」
ジュン「……」 - 481 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:31:33 ID:9KCzAQ2c0
- 雛苺「はいっ! 持ってきたのよ雪華綺晶。さあ二人で仲良く食べ……」
雪華綺晶「お待ちください」ピタッ
雛苺「みょわっ?」
雪華綺晶「このうにゅー、ぱくっと一口で食べてしまっては理解に足りません」
雛苺「……?」
雪華綺晶「まずはこの肌触り、苺大福の外側の硬軟はどうなっているのか?
まぶされた白粉の濃淡、感触それら全てをつぶさに観察しなくては」シゲシゲ
雛苺「う……にゅにゅ……。触ったり見たりするだけで分かるのぉ?」
雪華綺晶「『見る』のではありません。『観る』のです」
ジュン「……」 - 482 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:33:03 ID:9KCzAQ2c0
- 雪華綺晶「さらに……例えば、強く指を突き刺した場合、大福はどこからどのように裂け……」ズブゥ
雛苺「にゃっ!?」
ジュン「うげげっ」
雪華綺晶「そして皮の内を抉られたらば、苺大福はどのように崩れ、もがき苦しむのかも観察せねばなりません」グリグリ
雛苺「ちょ、ちょっと雪華綺晶……」
雪華綺晶「最後に、味もみておきましょう」ベロン
雛苺「うにゃーっ! ざ、残酷なのよーーっ!」
雪華綺晶「残酷!? では、お姉様は今までただ苺大福をたくさん食べただけで
まるで苺大福の底を見たかのごとき言動をとっていたのですか? その程度の浅慮千万な知識で
苺大福になりきるなどという妄言を? そんな、うにゅード素人が知的探求を志す私に意見をすると言うのですか?」
雛苺「そ、それは……」
雪華綺晶「真に、苺大福ごっこを極めたいのであれば、苺大福の全てを
知らなければならない。人体解剖があってこそ、近代医学も成立しえた」
雛苺「にゅ……」
雪華綺晶「雪華綺晶は間違ったことを言っていますか? お姉様」
雛苺「うう……」 - 483 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:37:00 ID:9KCzAQ2c0
- ジュン「そ、それで雪華綺晶は苺大福の全てが理解できたのか?」
雪華綺晶「勿論ですわ。では御覧に入れましょう。真の苺大福ごっこ、その極みを」ググッ
雛苺「き、雪華綺晶がどんどん丸まっていくのよ!」
雪華綺晶「コォオオオオ……」ぐにゅ~っ
ジュン「こ、このしなやかさと柔らかさはまさに苺大福! なんてことだ! これは『ごっこ』じゃない!
雪華綺晶はまさに、今! うにゅーそのものに変身しつつあるんだ!」
雛苺「流石、アストラルは何でもありなのよね!」
苺大福(雪)「さあ、どうですかお二人とも」ポンッ
ジュン「か、完璧だ雪華綺晶! ここまで完璧なうにゅーを見たことがないぞ僕は!
アルティメット・スィーツ『雪華大福』の誕生だーーーっ!!」
雛苺「すごいのー! 苺大福ごっこに才能を見せた蒼星石よりも凄いのよ!
この艶やかさ、なまめかしさは、うにゅーでありながら、うにゅーを超えているわ」
雪華大福「光栄ですわ」 - 484 :名無しさん:2013/09/17(火) 20:39:56 ID:9KCzAQ2c0
- 雛苺「も、もうヒナは我慢できないの!」
ジュン「へ?」
雪華大福「はい?」
雛苺「こんな極上のうにゅーッ! 食べずにはいられないっ!」ガブゥ
雪華大福「ギャッ!?」
雛苺「うまうま」モギュモギュ
雪華大福「ぎゃっああああ……グオゴゴゴゴアアアアアアアーーーー!!」
ジュン「何この野太い断末魔!? この世にしがみつく悪鬼の最後の叫びかッ!」
雪華大福「ゴァアアアアアーーーー……ッッ」
雛苺「ダメなのよ雪華綺晶。うにゅーはそんなこと言わないの」モシャモシャ
雪華綺晶、食べられる。 【完】
2013/09/18 20:03:46 コメント21 ユーザータグ ローゼンメイデン