SLPY

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1 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 22:12:06.49 ID:uIL0LTdw0
ジャン「クソだね……おら、見てみろよ」


 ハムハム ハグハグ ガツガツッ

まこと「うまい! これホントに旨いよ!!」
一「いやさすが主任の料理、手も心もばっちり籠って流石ってカンジ! それにくらべてこっちは……www」
夢子「あ、あなた……」
虹子「……いいのよ、いいの大丈夫、夢子さん。……ほら、みゆきはこっちを食べましょうね?」
みゆき「うきゃーっ(丼を放り投げる)」
虹子「あッ」

 ベチャッ コロコロコロ……

一味「……」

ジャン「カカカカカーッ!!」


2 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 22:16:37.71 ID:uIL0LTdw0
『な、な、なんと言うことでしょう!
 ”クッキング・パパ”荒岩一味の名札のついた料理を、家族と関係者が貪り食っています……が!
 その実、料理は秋山醤(ジャン)の作ったものだったと言うのです!』

まこと「エッ……」

一味「……」

まこと「ね、ねえ父ちゃん……それって本当なの……?」

まこと「こ、この料理、父ちゃんの料理じゃなかったの……」

一味「……あァ、そうだよ。俺の料理は、そこの床に転がっている、ドンブリだ……」

ジャン「正確には”冬もホクホク”おウチメイドのひつまぶし(ウマいぞ!)だったか?

ジャン「家庭持ちの男のセンスってなぁよくわからんねぇ、カカカカカカカカ!」


4 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 22:19:54.23 ID:uIL0LTdw0
一「あ、主任、その、ええと、俺、なんていうか、こっちのドンブリも案外ウマいと思ってたんですよッ」

夢子「あ、あなた……」

一「(……しまったァ~ッ てっきりジャンの料理だと思って、床にバラ巻いた後だったのネッ)」

一味「……大丈夫、だ……」

みゆき「きゃっきゃっ、うきゃきゃっ(ベチンベチン)」

虹子「こっ、こらっ、食べ物をおもちゃにするんじゃないのッ!」

みゆき「うきゃーっ(ブンッ)」

一味「(ベチャッ)」


6 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 22:24:50.73 ID:uIL0LTdw0
虹子「し……審判の方ッこれどういうことなんですかッ! あんまりにも夫が可哀そうだワッ」

ジャン「カッカカカカカカ! 待ちなよ奥さん! この勝負方法を受けたのは他ならぬアンタの夫だぜ?」

虹子「えッ」

一味「……その通りだ」

  「”オマエの料理は、気遣いで美味い美味いと言われているだけだ”」

  「……そんな安い挑発に乗って……名札を替えて勝負するようなマネをしたのさ」

虹子「でもッ こんな人の料理だと判っていたら最初から私……あッ」


7 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 22:26:43.10 ID:uIL0LTdw0
一味「……もう、いい。もういいんだ」

虹子「でもッ」

一味「もういいと言ってるだろッ(ドンッ)」

虹子「きゃっ……ああッ(ツルッ、ベターン)」

みゆき「ぎゃっ」

   「うきゃ……うゥ……アアァァァーン」



       アァァァァーン

       アァァァァーン

       アァァァァーン


会場『………………』


8 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 22:31:26.85 ID:uIL0LTdw0
ジャン「さァ~て……グチャドロのお涙頂戴話も終わったところで、さっさと判定してくれよ、大谷サン」

大谷「わぁっとるわい、クソッ……」

大谷「(クソッタレの荒岩一家が……なぁにが”クッキング・パパ”じゃい、偉そうな口叩きよって)」


『い、一回戦勝者は……”中華の覇王”秋山醤(ジャン)!
 圧倒的評価で”クッキング・パパ”荒岩一味を打ち破り、二回戦の切符を手にしましたぁ!』


みゆき「アァァァーン、アァァァアーン」

虹子「……」


9 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 22:34:42.40 ID:uIL0LTdw0
一味「一……すまないが、みゆき達を、頼む」

一「うぇっ、うっあっ、はい~ッ」

まこと「とうちゃん何処行くのさ!」

一味「まこと……すまないが、今は一人にさせてくれ……」

まこと「嫌だい! おいてかないでくれよ父ちゃん」

一味「今は一人にさせてくれ。そうでなければ、お前であっても何をしてしまうか……っ」

まこと「えッ……」


10 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 22:37:12.35 ID:uIL0LTdw0
ジャン「そうそう、そんな冷たい事言いっこ無しだぜ、パパさんよぉ」

まこと「秋山ァ……お前が! お前のせいで父ちゃんがァ!」

ジャン「は? お 前 の せ い だ ろ ?」

まこと「うっ……」

一味「秋山、俺のことはいい……だが家族を」

ジャン「あぁ、俺も別に興味ないからいいんだよ。話があるのはアンタに対してだ」

一味「ナンだと……?」


11 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 22:42:16.69 ID:uIL0LTdw0
【放送席】

一味「……」

アナウンサー「……」

解説「……」

アナウンサー『えー……秋山選手たっての依頼で放送席送りとなりました……』

一味「……荒岩一味(あらいわかずみ)です」

アナウンサー『あー、えー、その、秋山選手からの依頼で……』

一味「……”クッキングパパ”荒岩一味ですッ!!!」

解説『まさに生き恥と言うところでしょう。辛いですね』

アナウンサー『明太子だけに』

二人『ワッハッハッハ』

一味「……」


14 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 22:47:59.58 ID:uIL0LTdw0
アナ『それでは本”大会”のルールをおさらいしていきましょう』

  『本大会は8名の選抜選手からなるトーナメント形式により争われます』

  『各対戦の審査員は対戦者同士の関係者から無作為に選出』

  『各対戦に設けられたテーマにより勝敗を決し、優勝を奪い合うこととなります』

解説『先ほど本戦一回戦が終了したところですが……やはりアマチュアはアマチュアと言うところですね』

アナ『否定はいたしません。やはりアマチュアの料理には花がないと言いますか』

解説『面白みがないですよね。秋山選手も人間としては相当のクズですが、料理人としては一流ですから』

一味「……」


15 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 22:50:56.57 ID:uIL0LTdw0
解説『次の対戦もプロとアマチュアの対戦だと伺っておりますが』

アナ『ご心配なく。このカードには先ほどのようなグダついた展開の心配はございません!』

一味「……」

アナ『36歳vs15歳! 時代を超えてぶつかり合う心ッ!』

  『”大使閣下の料理人”大沢公 対 ”ミスター味っ子”味吉陽一の対戦ですッッッッ!!』


17 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 22:55:20.00 ID:uIL0LTdw0

   ワ ア ア ア ア ア ア ア ア 

公「はじめまして陽一君。今日はよろしくお願いしますね」

陽一「へへっ、カタいカタいとは聞いてたけど、岩塩みたいなオッチャンだね! 陽一でいいって、陽一で」

公「そんな訳にはいきませんよ。公の場で全力を尽くす相手に相対するんです。礼を失する訳にはいきません」

陽一「あーハイハイ! 調子狂うんだよなぁ、そういうのって……よろしくお願いしまぁ~す、これでいいだろ?」

公「……ええ、ありがとうございます」

陽一「チェッ、大人ぶっちゃってさ」


18 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 23:01:44.43 ID:uIL0LTdw0
アナ『なお、本対戦の審査員には、ベトナム国大使、国家情報担当大使を経て現中華人民共和国大使である』

  『倉木和也氏をはじめとした、各国の外交官諸氏及びOBの方々をお招きしています』

アンダーソン「ヘイ、ミスターコウ! とっとと起きナワ、Better Nowな料理を魅せてクダサーイ!」

デュマ「フッ……」

倉木「……」

公「(倉木大使……)」

倉木「(ニコッ)」

公「(……ええ、大丈夫ですよ。倉木大使)」


20 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 23:06:47.89 ID:uIL0LTdw0
公「審査員が僕の関係者ですから、料理のジャンルはそちらがお選びください」

陽一「へへっ……実はもう決めてあるんだ」

公「?」

陽一「おっちゃん、フランス料理が専門なんだろ? だったら当然、フランス料理で対決さっ!」

アナ『おぉっとこれは大胆不敵! 敢えて相手の土俵で勝負を挑もうと言うのかミスター味っ子ォ!』

解説『中華の料理人に”ハンデだ、和食で勝負してやる”なんて言われて
   叩きのめされたアマチュアに見習わせたい』

一味「……すみません」

アナ『(オイテメエ、足引っ張るのはともかくよ、空気醒めさせるのはやめてくれや)』

一味「……すみまっしぇん(ニカッ)」

アナ『(グリグリ)』


22 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 23:12:22.46 ID:uIL0LTdw0
審判『それでは第一回戦第二試合、始めッ!』

アナ『ここからは両対戦者の関係者を解説者としてお迎えしたいと思います』

法子「こんばんは、味吉法子、陽一の母です」

??「……アナウンサーさん、表には出なくて良いってお話だったのでは」

アナ『(すみません前任者がクズだったもので…偽名かなにかをお願いします。音声は替えますから)』

花子「……こんばんは。花子と申します」


23 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 23:18:04.88 ID:uIL0LTdw0
アナ『さて、まずは大沢選手の調理場を覗いてまいりましょう』

  『これは……子羊(ラム)の肉でしょうか? それに数種類の調味料……あまり奇抜さはありませんね』

花子「公の料理は何だってそうですよ。徹頭徹尾、面白みのない画一的なものです」

一味「……それがプロの仕事と言うものなのだろうな。基本と原点に付従うこともまた、尊敬されるべき勇気だ」

花子「あら、あなたもお料理をなさるのですか?」

一味「……まあ、少しは」

花子「もしそうであれば、あなたの言葉はプロフェッショナルとして許されざるものです。軽蔑します(ニコッ)」

一味「えッ」

花子「公の料理を見ていれば、あなたにもきっと判りますよ」


25 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 23:19:30.02 ID:sT8rxqMW0
一味に対する扱いがひど過ぎるだろwwwwwwwwwwwwwww
どうせなら山岡に対してやってほしいww



27 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 23:24:33.20 ID:uIL0LTdw0
アナ『続いて味吉選手の調理場を…… お お お お ー ッ!!!?』

解説『何をしているのでしょうね、これは』

アナ『これは何を考えているのかーっ!? 味吉陽一選手ッ!』

  『床一面に敷き詰めたブルーシートの上に、雪原を作り上げているではありませんかッ!!』

一味『……あれはベーキングパウダー、いや、塩かな。いずれにせよ氷の類では』

法子『よ、陽一、陽ちゃん、あなたが何をしようとしてるのか、母さん全然わからないわよ!!』


     ウ オ オ オ オ オ オ オ オ

アナ『これぞ味っ子の代名詞!”母わか”おひとつ、いただきましたぁ! これは判らなくなってきたぞォ!?』

一味「……」


30 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 23:32:36.34 ID:uIL0LTdw0
    ワ ア ア ア ア ア ア ア ア

陽一「へへっ……!」

アナ『陽一選手が取りだしたのは……肉だァッ! ここで陽一選手の料理も肉料理と判明ッ!』

陽一「驚くのは、これからさ!」

アナ『あーっと陽一選手、肉を空高く舞い上がらせた! 他の材料も次々に宙を舞う! そして……』


      ビ ッ タ ー ン

アナ『なんと、ブルーシートの上に出来上がったのは…… 世 界 地 図 だ ァ !!』

  『陽一選手、会場に世界を作り上げましたッ!
   まさに、まさにこれこそが、21世紀のグローバルスタンダード!!』


  「OH!」「ファンタスティック!」「ブラヴォー!!」「ハラショー!!」


花子「(公……)」


32 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 23:38:43.73 ID:uIL0LTdw0
審判『そこまでッ!』


アナ『お互いの料理が出揃いましたが……これは……』

解説『なんとも不可解な結果となりましたね』


アナ『陽一選手の卓上に置かれているのは色とりどりのサンドイッチでしょうか』

  『オープンサンドイッチから何から、様々な趣向を凝らしている事がこの机上からでもわかります』

解説『一度は世界を創るまでに至った陽一選手の料理の結末がこれとは。拍子抜けとも言えます』

一味「サンドイッチはフランス料理なのかな」

アナ『(テメーで調べとけボゲ)次に大沢選手の料理を……』


                  『えー、私陽一君の料理の方が気になるー』

    『陽一クンの料理食べてよぉ~』

                             『うーまいぞ! うーまいぞ! うーまいぞ!!』



33 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 23:40:04.76 ID:sT8rxqMW0
この>>1はクッキングパパになんか恨みでもあるのかw


34 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 23:41:53.70 ID:uIL0LTdw0
 ~ 2時間経過 ~


アナ『こ、これは』

解説『ミスター味っ子の料理と言えば一つのエンターテイメントですからね。観客が気になるのも当然でしょう』

倉木「では、先に陽一君の料理を頂きませんか」

  「大沢君、かまいませんね?」

公「――」

公「はい」

アナ『さすが現中国大使、空気の読める方です。大沢選手も元上司の命であれば仕方無いと言ったところか』

解説『これがプロの仕事と言う事でしょうね。いかがですか”クッキング・パパ”』

一味『あ、ええ、いいんじゃないでしょうか』

アナ『はいはい。   では、審査員の方々、どうぞ』


37 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 23:48:50.09 ID:uIL0LTdw0
アンダーソン「ふむ、リトルサムラーイの料理ですか」

デュマ「フッ。私はオーサワをフレンチ・キュイジニエと認めはしたが、ジャップボーイの仕事には期待していない」

ロック「どうですかな。子供の創造性は侮れませんぞ」

呉「……(これは)」


    ハ グ ッ


   『 お お お お お お お お お お お お お お 』

デュマ「こっ、これはぁぁぁぁぁぁ!!」

アンダーソン「見える、東の空が白んでいく様が見えるぞぉぉぉぉぉ」

ロック「太陽が、雨が、風が、私を包み込む……これは……ベトナムの……?」

呉「そうか……これは世界!! 私たちは今、人類の歴史を追体験しているのだ!!」


40 :以下、名無しにかわります:2010/02/13(土) 23:55:30.46 ID:uIL0LTdw0
デュマ「ナポレオン、ジャンヌ・ダルク、ド・ゴール、マリーアントワネット……栄枯盛衰とはこのことか」

アンダーソン「アメリカの歴史は浅い。だがそれは濃い血を積み上げて作り上げた涙の歴史なのだ」

ロック「戦争、貧困、そして平和……我々が求める先の標(しるべ)は過去にも習うことができる」

呉「そうだ、それこそが未来を創る糧なのだ……」

   オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ 

アナ『これは! これは凄い! 言っている意味は全く分からないが兎に角凄い!!』

解説『もはやフランス料理の枠を超えていますね。地球人類全てを魅了する』

一味『”グローバル料理”とでも言ったところかな』

アナ『お前少し黙ってろ(一味さんは喋らなくて結構です』

法子『陽ちゃーん! 陽ちゃーん!!!』


44 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:03:04.53 ID:oIMVPlbx0
    『食わせろ! 俺にも食わせろーっ!!』

                       『さすがはミスター味っ子だぜ!!』

   『ファーンタスティック! グローゥバル!!!!』


      ~ 3 0 分 経 過 ~

アナ『えー……会場の方々と審査員の方々が落ち着くまでに時間がかかってしまいましたが』


一味「まあ、仕方のないことだろう。大勢も決した事だしな(ニッ)」

花子「?」

一味「君のプロフェッショナルなナイト様も、こうなってしまっては形無しだな」

花子「……気付いていたんですね、公と……私の事を」

一味「無駄に人生を歩んできたわけではないからな    君の視線で判るヨッ」

花子「あら。……でも、そんなことしか判らないようじゃ、あなたの人生は無駄だったのかもしれませんね」

一味「えッ」


ホア「だって私は今も、公の勝利を疑っていませんから」


45 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:09:15.30 ID:oIMVPlbx0
アナ『大沢選手の料理は……平皿に盛られた一品料理のようですが……』

公「アン・クルール・ド・セル(鳥の塩包み焼き)大沢公風です」

解説『……聞いた事がありますね』

ホア「知っているのですか、解説の方」

解説『外務次官の友人に聞いた事があります。大沢選手がベトナム大使館で働いていたころ
   非公式に行われたフランス人料理人とのマレンゴ勝負。その際大沢選手が作ったのがあの料理だと』

アナ『なるほど、大沢選手の初勝利を飾ったスペシャリテ(得意料理)と言う訳ですね。
   フランス代表を打ち負かしたと言うその実力、果たしてこの8年間でどこまで進化しているのかッ!!



46 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:11:21.42 ID:oIMVPlbx0


                     カチャ


          モフモフ

                        モクモク
     モグモグ

                   フゥー


ホア「(……公……!)」


47 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:14:20.43 ID:oIMVPlbx0
審判『さて、それでは判定に移りたいと思いますが……』

アンダーソン「…………」

デュマ「…………」

一味「…………」

ロック「…………」

呉「…………」

法子「……どうして一味さんまで悩んでるんです」

一味「だって、そうでしょう。評価の様子を見ていたら、陽一君の圧勝は想像に難くない。
   どうして皆悩んでいるのか、気になりませんか?」

法子「そりゃ、気にはなりますけど……あなたに言われると、なんだか腹が立つんですよね」

一味「……」



48 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:15:30.72 ID:b1t5DQLm0
一wwww味www
もう許してやれよ



49 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:18:06.37 ID:oIMVPlbx0
倉木「……陽一君」

陽一「ン、なんだい?」

倉木「いくつか、質問があるのですが、教えていただけますか」

陽一「んだよぉ、回りくどいなぁ……何でも答えるから、さっさと言ってよ」

倉木「申し訳ありません。では、伺うのですが……具に使っていたタケノコ。
   あれをコンクリートに置いて放置していましたが、どうしてなのですか?」

陽一「知らないよっ」

デュマ「知らない?」

陽一「ああ。知らないよ。コンクリートの上にタケノコを置いておくと、なぜか渋みがとれるのさ!」


50 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:21:27.01 ID:oIMVPlbx0
倉木「そうですか。渋みが。では、ブルーシートの上に具を広げたのにも、何か意味が?」

陽一「だからぁ……意味なんて無いってば」

呉「意味が、無い……」

陽一「そうさ。まあ、敢えて言うなら、作業するスペースは広いほうがやりやすい、ってのと……
   言葉の通じない相手に、目で食事を楽しませるのも、国際的かなって思ったのさ!」

ロック「むう……」

倉木「……大沢君にも質問があります」

公「……はい」


51 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:25:07.79 ID:oIMVPlbx0
倉木「なぜ、今日この料理なのですか? 陽一君は目と舌で私たちを楽しませてくれた。
   君のこの料理を食べるのは、これで二度目です。私達がつまらない思いをするとは考えませんでしたか」

公「……今日御集りになられた方々は、皆僕の若いころ、
  僕がまだ料理人としてあがいている時代を知る方々です。
  みなさんの御蔭で今日の僕が居る。そんな皆さんに、僕の原点をお見せしたかった。
  成長した僕を見ていただきたかった。
  そんな手前勝手な気持ちを込めさせていただくために、このメニューを選びました」

倉木「……わかりました」


52 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:26:01.87 ID:oIMVPlbx0


       ガヤガヤ
                  『おい……なんかグダグダじゃねえか……』

                    ワイワイ

        『もう陽一の勝ちでいいだろjk……』                 

                        グダグダ

         ザワザワ……




53 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:29:26.78 ID:oIMVPlbx0
倉木「ちょっと、マイクをお借りしてもよろしいでしょうか」

審判「えっ、あ、はい」


倉木『会場のみなさん』

                      ワイワイ
      ガヤガヤ
                 ドヨドヨ

倉木『知ってのとおり、この大沢公はもともと私の料理人です』
  『今回は、私も公正な立場の人間としてこの場に来たつもりでしたが』
  『なかなかどうして、人の情と言うのは、捨てる事ができないようで』


  『正直のところ、どちらを勝たせて良いか判断がつきません』



54 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:30:46.95 ID:oIMVPlbx0
  ザワザワ
         がやがや        ドヨドヨ

   ブリブリ           アラアラ

倉木『そこで』


倉木『私は、みなさんに問いかけたいと思います』

  『この二人の料理人、どちらが優れているのかを』


   ガチャ



55 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:32:23.64 ID:oIMVPlbx0
    『えっ、何これ、会場に通じる入り口開いちゃったよ』
                      『いいのか、食いに逝っていいのか?』
  『地球まるごとサンドイッチとか超気になるんですけど!?』
 『陽一君の料理、私も食べたいっ!』                 
                   『行こうぜ、俺達が審査員だ!!!』


      ド ド ド ド ド ド ド ド ド 

陽一「えっ、えっ、えええええっ!!!」



56 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:38:01.63 ID:oIMVPlbx0
アナ『こ、これは……』

解説『阿鼻叫喚と言うか、お祭り騒ぎと言うか。酷いものですね』

法子『でも、陽ちゃん楽しそう。あんなにニコニコして料理する姿、なかなか見ないわ』

一味「会場に流れ込んだ人間のほとんどが陽一の卓に集っている。勝敗は言わずもがな……か」

ホア「……」

一味「……何、俺の事は気にするな。怒っちゃいないよ。だから君も……」

ホア「おめでとう……公」

一味「……??」

ホア「アナウンサーさん、私はこれで失礼しますね」

アナ「えっ? ああっ、はい、お疲れさまでした。でもいいんですか? 大沢選手、きっと落ち込んでいますよ」


ホア「……ふふっ」


57 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:42:47.17 ID:oIMVPlbx0
   ~ 3 時 間 後 ~

(誰もいなくなった会場で、一人キッチンを掃除する公)

公「……ふぅ」

倉木「お疲れ様です、大沢君」

公「倉木大使。そちらこそ御苦労さまでした」

倉木「私は食事をしただけですからね。大沢君こそ、もっと落ち込んでいるのかと思いましたが」

公「ふふ。なぜか疲れが感じられないのです」

倉木「おや、負けたと言うのに、とても強気なコメントですね」

公「……ええ」

倉木「……すみませんでした、大沢君」



59 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:47:44.22 ID:oIMVPlbx0
公「何の事でしょうか?」

倉木「今回の件は私にとっても計算外だったのです。
   各国の首脳が見守る中、かつての部下が子供と料理で対決などと。
   負けようものなら笑い物ですし、勝とうものなら私のイメージ低下は避けられない。
   ”中国の大使、子供をいじめてご満悦”……かの国が好みそうな見出しです」

公「……」

倉木「そんな舞台に、君は立たなければならなかった。しかも、料理人としての矜持を抱えたまま。
   本当は陽一君と、全力でぶつかり合いたかった、そうなのではありませんか?」

公「……はい」


62 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 00:54:53.01 ID:oIMVPlbx0
公「……負けるつもりなんて、ありませんでした。
  僕は、全身全霊で、みなさんにぶつかりたかった」

倉木「ええ。だから君は全力を出したうえで、波風が立たないように負けようとした。
   派手さを押す陽一君の料理に対して、敢えて古典(クラシック)で挑む事によって、ね」

公「……その通りです」

倉木「ですが、それこそが最大の間違いだったのです」

公「え?」



倉木「実際問題、陽一君の料理は、大変マズかった」



66 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 01:02:54.82 ID:oIMVPlbx0
公「……え?」

倉木「もちろん、料理としての完成度は相当なものでした。
   味、見た目、栄養バランス、全てが高水準の、どの国のどの方が食べても美味しいものに仕上がっていた」

公「美味しいのに、マズい……そういうことですか」

倉木「ええ。陽一君の料理は創造的すぎて、得体が知れないのです。
   特に今日集まったのは、立場上画一的な食事を摂る機会の多い方々で、
   未知の食に対する恐怖が強いはず」

公「公邸ならば、メニューに関する質問は全て、料理人が答えますからね」

倉木「そういうことです。如何に美味しい料理であっても、
   あまりにその素性が判らなければ、人の心には不安が残る。
   料理としては満点でしたが、陽一君と言う料理人を考え合わせれば、
   あの料理はマズかったと言わざるを得ないのです」


68 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 01:06:36.32 ID:oIMVPlbx0
公「だから”料理に料理人を介さない”観客を審査員に仕立てて、あの場を収めた……ということですか」

倉木「結果的に、大沢君に黒星を押しつけてしまいました」

公「いえ、かまいません。天下の中国大使殿に、そこまで評価を頂けるなんて。僕は果報者ですよ」

倉木「言うようになりましたね、大沢君」

公「大使閣下のおかげであります」

倉木「フフ、今夜は愉快だ。どうです、落ち着かないでしょうが、私の家で」

公「いえ、今日は招待させてください。ひとみ達が残念パーティーを企画するので、料理をしろとね」

倉木「では、ご相伴にあずかりましょうか」


一回戦 第二試合 ”フランス料理”勝負

”大使閣下の料理人”大沢公 ● ― ○”ミスター味っ子”味吉陽一



71 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 01:16:45.53 ID:oIMVPlbx0
  ~ そ の 2 時 間 前 ~


栗田「なんだか、お祭り騒ぎみたいになっちゃったわね。そこかしこで料理を始めている人がいるわ」

                    『おいしいお汁がピュピュッて出てくる!』
      『ジャぱん281号味噌汁ジャパンじゃ!!』
    『うーまーいーぞー!!』               『味が深い』

富井「まさに食の万国博覧会と言った感じですなァ!」

谷村「しかし流石に飽きてきたな……おお、あれなんか軽そうでいいんじゃないか」

富井「はッ、ただ今頂いてまいります……ん??」


コンブ「へいっ一丁上がりっ! こいつが21世紀のリトルグルメでいっ!!」


74 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 01:21:10.76 ID:oIMVPlbx0
コンブ「名づけて「フリフリキュウ日の月曜日ゼリー」でいっ」

・作り方
1、駄菓子屋のゼリー御菓子を器に入れる(味はおこのみで大丈夫だぜいッ)
2、器にペプシキューカンパーをゼリーの半分くらい入れる
3、フリスク(ペパーミント)と一緒にキュッ!

アナ『OH! MY! コ~ンブ★』

一味「ん……ミントのスースー感がキツいな。鼻通りは良くなりそうだがなッ」

解説『空気読めよ……』

ミンミン「やっぱりコンブは天才ね!」

パイ助「これで優勝もいただきだゼィ!」



76 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 01:27:07.47 ID:oIMVPlbx0
山岡「……このゼリーは失敗作だな。飲めやしないよ」

栗田「山岡さん!」

富井「くぉら山岡ぁ~っ! 今までどこに行っていたのかと思えば、いきなりその態度は何だァ!」

谷村「どういうことかね山岡君」

山岡「ゼリーの薬臭い甘味とキューカンパーが見事に喧嘩しちまってる上に、フリスクの甘味も消しとばしてる。
   口の中に残るのはうそ臭い爽快感だけさ。何より金がかかり過ぎてる。本末転倒だよ」

パイ助「何ィ!」

ミンミン「えらそうな事言わないでよ! 食べてるだけのクセに!」

山岡「……明日の試合を見に来て下さい。本物のリトルグルメをご覧に入れましょう」

栗田「…………

                                      えっ?」

谷村「ちょ、や、山岡君!?」


79 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 01:41:37.46 ID:b1t5DQLm0
理不尽すぎんだろwwwww


77 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 01:32:08.87 ID:oIMVPlbx0
●●●「……」

キリコ「ジャン!」

ジャン「何だよ」

キリコ「アンタ、またふざけた事したらしいじゃない。うちのカンバン背負ってバカな事しないでよ」

ジャン「……荒岩一味の話なら聞かねーぞ。あれでも全然足らないくらいだ」

キリコ「……あんたのやり方は間違ってる、と、思ってた。でも、ああいうやり方も……」

ジャン「……知らねーよ。俺は俺の思うようにやるだけだ」

キリコ「……あたしには、今のあんたを止める資格、ないのかもね」

ジャン「ああ」


80 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 01:43:07.34 ID:oIMVPlbx0
        ~ 翌 日 ~

アナ『さあやってきました一回戦第三試合、”美味しんぼ”山岡士郎vs”OH MY”なべやきコンブの決戦だ!』

解説『いわば料理の究極と最底辺の戦いですからね。注目せざるを得ませんよ』

アナ『しかしあぁっと……ここで山岡選手が取りだしたのは……!?』

  『 コ ン ビ ニ 袋 だ ァ - ッ !?』

アナ『信じられません山岡選手! 試合の食材をコンビニで購入してきたようです!?』

一味『いや、アナウンサー。ちゃんと見てくれ』

アナ『あんだよ』

一味『あれはナチュラルローソンの袋だ』

アナ『そうですか』


81 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 01:45:56.07 ID:b1t5DQLm0
一味の扱いなんとかしてやれwwwwww


83 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 01:48:19.78 ID:oIMVPlbx0
一味『ナチュラルローソンとは普通のローソンと看板が違うだけじゃない、まず』

アナ『さてコンブ選手にカメラを移しましょう……あぁっ、これはなんと……カロリーメイトだ!!』

解説『こんな高級品を使ってしまって大丈夫なのでしょうか』

コンブ「へへっ、近所のマツキヨで一箱128円でいっ」

アナ『ペロリン村にも近代化の波が押し寄せていたっ! 21世紀コンブ! まさにオーマイコンブであります!』


85 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 01:53:30.63 ID:oIMVPlbx0
   ~ 控 室 ~

虹子「……」

一「虹子さん……ホンッとにスンマセンでしたぁ~ッ!!」

夢子「あ、あなた……」

虹子「……夢子ちゃんの言う通りよ。私達は、何に謝ればいいのかしら?」

一「えッ、そりゃあ、主任の料理を美味しがらなかったことじゃないスか」

虹子「そんなの、あの人を余計に傷つけるだけだワッ。
   あのジャンって子の料理が美味しかったのは事実だもの」

まこと「じゃあ、じゃあ母ちゃんはどうしろって言うのさッ!!」

虹子「……」

まこと「今も父ちゃんは笑い物にされてるんだッ! あのジャンって奴と……みんなの、せい、で……」

虹子「私にだって……判らないわヨッ……!!」


87 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 01:59:01.03 ID:oIMVPlbx0
コンブ「こいつを牛乳と混ぜて……」

         ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ 

アナ『おっとミキサーに掛けている! ミキサーに掛けております!』

解説『粘りの無いパン生地のようなものが出来上がったようですね』

アナ『これをどう調理していくのか、気になるところではありますが……対して山岡選手!』

解説『全く動きがありませんね』

アナ『大人の余裕と言うことか!? 残り時間はもうほとんど残っていないぞ!!』


89 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 02:05:49.80 ID:oIMVPlbx0
     ~ 調 理 終 了 ~

コンブ「完成だ! こいつが21世紀のリトルグルメ”カロリーデコレーション”でぇい!!」

京極「こ、こいつは凄いで! 牛乳とともに鋳潰したカロリーメイトをケーキ状にして焼き直しとる!」

大原「チーズ味をチーズケーキ、土台はチョコ味、メープル味がフレーバー……フルーツ味は飾りですな」

雄山「フン、こんなもの子供騙しのゴミクズよ」

コンブ「まあまあ、食べてみてよ」

審判『あっ、そういえば今日は荒岩一味さんの誕生日でしたね』

一味「あ、ああ、そうだが?」

審判『確認しただけです。ではみなさん、どうぞお召し上がりください』

一味「」


91 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 02:14:01.51 ID:MdFn9cW20
雄山「……」

京極「これは……!!」

大原「むうっ」


     ” O H  M Y  コ ~ ン ブ  ! !”

京極「美味い! 思っとったよりもけっこう美味い!」

大原「予想外ですな。ちゃんとケーキの味がします」

雄山「ふん、わしにこんなチャチな生クリームを食わせた罪は重いぞ」

アナ『予想外!! 予想外の好評であります!!』


93 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 02:20:09.88 ID:MdFn9cW20
栗田「……あの、一味さんはどう思われますか」

富井「(栗田クンっ、そんな奴に関わるんじゃあないッ 社のイメージが落ちるだろ!)」

栗田「(そんな……彼だって家に帰れば父親なんですッ。少しくらい活躍の場がなくちゃあんまりだわ)」

一味「ハハッ 気を使う必要はない……俺は敗者だからここにいるんだ」

アナ『いや、面白いじゃないか。何か言ってみろよ、言えるならよ』

一味「……正直、山岡君の勝ちは絶望的だろう。畑が違いすぎる。コンブ君がリトルグルメで
   自爆してくれるのが唯一必勝の活路だったんだが、ああして好評を得ているしな」

栗田「……好評……ですかね?」

一味「え」

栗田「いえ、何でもないんですっ(そうよ、多分私の勘違いなんだわ)」


94 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 02:23:38.73 ID:MdFn9cW20
アナ『さあ、次は山岡選手の……え、あれぇ!?』

解説『ええ、そうです。彼は袋を出したままついに一度も動きませんでした』

一味「やはり試合を投げていたか。だが、彼を責めることは誰にもできない。誰にでも得手不得手というものが」

山岡「やれやれ。負け犬ってのは、負けた後でもよく吠えるのかい」

一味「何?」

山岡「ご覧下さい。これが俺のリトルグルメです」


95 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 02:29:53.75 ID:MdFn9cW20
     バ ァ ァ ァ ー ン

富井「あ、あれは……!?」

栗田「ショートケーキ、クリームワッフル……ただのコンビニスイーツじゃない……!!」

一味「やはりな……勝負を捨てたか、山岡君」

栗田「そんな……え、でも、あれ?」

解説『選手達の様子がおかしいですね』

雄山「ハアッハッハッハッ!!! 面白い真似をしてくれるな士郎!!」

コンブ「……そんな筈はない、まさか……」

大原「どうしたんだいコンブくん、そんな真っ青な顔をして」

コンブ「どうしたもこうしたもないだろ! 山岡さん!


        そ れ を ど こ で 買 っ て き た の さ ! ?   」


96 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 02:38:50.02 ID:MdFn9cW20
山岡「会場前のコンビニですよ……もっとも、俺の家の近所で買っても、結果は同じでしたがね」

コンブ「嘘……だろ、そんな……生クリームいっぱいのショートケーキに、よくわかんない外国のお菓子……
    そんなの、ずるいよ……そんなの……」

富井「コンブ君は何をあんなに動揺しているんですかねェ」

谷村「わからん……だが……待てよ……ふむ」

栗田「私……なんとなくわかる気がします」

一味「……どういう事、なんだい」

山岡「詳しい事は知りませんがね。コンブ君、彼の住んでいるぺろりん村は相当な田舎だ。
   辛うじて鉄道が敷かれているもの流通なんて壊滅的だろうさ。洋菓子なんて食える筈がない。
   あり合わせの既成品、駄菓子を活用して新たな旨味を得ようとする文化、それがリトルグルメだ。
   あくまで美味い本物が存在し、味を二の次として楽しさで補おうとするのが本質なんだよ」

京極「つまりリトルグルメは、どう足掻こうが上等な既成品にゃあ敵わないって事でっか?」

山岡「そうだ」


97 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 02:46:20.81 ID:MdFn9cW20
パイ助「う……」

山岡「嘘だと思うなら、俺の持ってきた洋菓子をどれでもいい、食べてみる事だ。
   例えばそのショートケーキなら、カロリーメイト8本分の値段で本物の生クリームと苺が楽しめる。
   ベルギーワッフル、クイニーアマン。どれも百円と少しで買える。美味いぞ」

雄山「調子に乗るんじゃないぞ士郎。今回は相手のレベルが低すぎたために勝ちを拾えたに過ぎん。
   ケーキの模倣品にケーキで勝ったからと言って、何を調子に乗れる事があろうか」

山岡「俺に言わせれば、コンビニのケーキだってケーキの模倣品だよ」

雄山「減らず口を」

栗田「ひどい……まだ判定も出てないのに……」

解説『今から判定を取る方が、よほど酷い追い討ちだと思いますがね』

アナ『違いありませんね』


一回戦 第三試合 ”リトルグルメ”勝負

”美味しんぼ”山岡士郎 ○ ― ●”OH!MYコンブ”なべやきコンブ


98 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 02:47:11.92 ID:xT8eEWEh0
さすがに山岡は嫌な奴だな


100 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 02:53:39.75 ID:MdFn9cW20
ミンミン「コンブ……」

パイ助「今は……一人にしてやろうぜ」



コンブ「…………」

   「……はぁ~あ」

   「勝負にすら、なんなかった、かぁ」

   「……悔しい、なぁ……」

   「……」

一味「コンブくん」

コンブ「あ、アンタは……第一試合のおっちゃん」


105 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 02:58:40.65 ID:MdFn9cW20
ズズズズ

コンブ「グスッ……ごちそうになってありがとうございます、おっちゃん」

一味「おッ、礼儀正しいじゃないか」

  ・  ・  ・  ・

コンブ「そっか、おっちゃんも大変だったんだねぇ」

一味「まッ、負けちまったもんは仕方ないさ。これも仕事だ」

コンブ「仕事かぁ。おっちゃんは、料理人なの?」

一味「いや、普段は商社のサラリーマンさ。家で料理はよく作るがね」

コンブ「へぇ。料理人にはなりたいと思わなかったの?」

一味「はは、まあ厳しい世界だからネッ。家族にサービスするぐらいで精いっぱいさ」

コンブ「……」


107 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 03:04:29.03 ID:MdFn9cW20
一味「それにしても、審査員の奴らはひどかったな。山岡なんて料理すらしてないじゃないか」

コンブ「……」

一味「子供に対してあんまりだ」

コンブ「……」

一味「美食倶楽部だか東西新聞だか知らないが、大沢君の方がよほど大人だったよ。
   子供を相手にするのだから、それなりの態度というものを、大人は示さねばならないと思うネッ」

コンブ「……おっちゃん」

一味「ン、なんだい」

コンブ「やっぱ、アンタダメだわ」

一味「えッ……」

コンブ「ジュースありがとう。さよなら。」

    タッタッタッ

一味「………………」


111 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 03:13:00.47 ID:MdFn9cW20
   ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

伴「(…… 違 う ! 震えちょるんは武者震いばい!)」

 「(やっけど……やっぱり……)」

 「(キ ツ か ぁ ぁ ……!」

   ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル

 『”本戦”ン? よっぽどレベルの低い大会なんだな。お前みたいな……』

 『気張るんじゃないわよ。どうせ出来る事なんて限られてるんだから。ね、』

 『後ろ向きな事を言うつもりはないよ。だが、勝って来いとも言わないさ。君は』

 「(……どこまで練習しても、どこまで経験積んでも、どこまで実績を重ねても)」

 「(俺は)」


        B a m  B i n o ! !


115 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 03:21:24.87 ID:MdFn9cW20
アナ『さあ、一回戦も終盤! 第四試合となりました』

解説『様々な意味で期待のカードですね』

アナ『その期待、確信に変えていただきましょう。
   まずご紹介するのは、イタリア料理専門店、東京六本木はトラットリア・バッカナーレ。
   未だ若手でありながら、厨房(クオーレ)から接客(サーラ)までこなすスペシャリスト!
   愛称は”バンビーノ”伴省吾君ですっ!』


       ウ オ オ オ オ オ オ オ オ オ 


116 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 03:24:22.01 ID:MdFn9cW20
解説『凄い人気ですね一味さん』

一味『ええ~……そうですね』

解説『もう少し気の利いた返しをお願いします。子供の遊びじゃないんですから』

一味『すみません』

解説『それはともかく、彼はお店の方でも”九州弁の彼”なんて呼ばれて親しまれているそうですよ。
   なんでも接客に個性が光ってるんだとか』

一味『ほう、それはどんな』

解説『今のはアナさんに話しかけたんですけど』

一味『すみません』

アナ『陽一君に勝るとも劣らない人気ですね。そういえば、陽一君は一回戦の直後から姿を消しているとか』

一味『学校は大丈夫なんですかね』

アナ『(グリグリ)』


118 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 03:32:22.97 ID:AivFa7wA0
なんでとうちゃんがこの扱いなんだよwwwww


117 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 03:29:17.60 ID:MdFn9cW20
アナ『さあ、そんな伴選手の対戦相手は……』

伴「(ガチガチ)」

???「大会、初めてかい? 力抜きなよ」

伴「ふぇっ!?」

   フワッ

???「おっと、驚かせちゃったか。挨拶に来ただけなんだけどさ」

伴「挨拶って……」

???「うん、僕が君の対戦相手。抽選の時にも会ったんだけど、覚えてない?」

伴「うぐ……(ガッチガチだった事しか覚えちょらん)」


119 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 03:34:27.62 ID:MdFn9cW20
伴「(しっかし……何ちゅぅかコイツ……)」

 「(とんでもなく……ジジイばい)」

 「(国籍……いやまずこれ人類の体毛じゃなかとや。多すぎ。毛の化け物ばい)」

 「(腰こそ曲がってないにせよ、とてもとても料理ばできるようには)」

???「伴省吾さん? だったよね」

  スッ

???「よろしく、お願いします」

伴「ふえっ、はいっ」

  グッ

伴「(――――~~~~ッ!!!)」

???「よろしくね」


伴「(……判った)」

伴「(……判ったと!)」


121 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 03:42:50.37 ID:MdFn9cW20
一味「(……? 伴君の目がすわった?)」

井之頭五郎「ふゥん……急に眼が据わった。こういう展開もあるのか」

一味「な、何ですかあなた、いきなり」

アナ『ちょっとどいてください一味さん(ドンッ)
   えー、ようやく到着いたしました。本日のゲスト、井之頭五郎さんです』

解説『井之頭さんは輸入雑貨のお店を営まれる傍ら、様々なお店で御食事をなされるのが趣味とのことで』

五郎「(あー……テレビってこれだから嫌だ にしてもよく知ってるな 俺の事)」



一味「……」


122 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 03:50:33.24 ID:MdFn9cW20
     ~ 控 室 ~


ジャン「邪魔するぜ」

まこと「秋山醤!!」

一「てんめえええええ!!」

ジャン「おっと(ブシュゥウゥ)」

一「ギャーッ、な、なんだコレはぁ~っ」

夢子「あ、あなた……」

ジャン「カーカカカカカ! 一回戦で余ったナマコの内臓だよ! 人体にゃ無害だから安心しな!」

まこと「うぅぅぅぅ……なんでだよ! なんでとーちゃんにあんな事やらせるんだよ!!」

ジャン「クククククッ! 俺は俺の仕事をこなしてるだけさ! おっさんの行く末なんて知ったこっちゃないね!」

虹子「……そうではないのでしょう、秋山さん」

ジャン「……!」

虹子「私もマスコミのはしくれ。あなたの人となりは知っているわッ。
   あなたの人間性は最悪だけれど、料理を冒涜するような真似は、絶対に、しない、は、ず……!」

ジャン「……(ニッ)」


124 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 03:59:56.86 ID:MdFn9cW20
五郎「麺対決? よくわからないな 蕎麦とうどんと……後はラーメンか」

解説『広義に言えばスパゲティはもとより、マカロニなども麺類足りえますね。
   古来中国では麦を面とし引き延ばしたものを麺と定義していたわけですから』

アナ『後はこの課題の審査員であるバッカナーレの方々がどう解釈するか、でしょうね。
   広いようで狭く、狭いようで広い”麺”と言う概念の対決。果たして軍配はどちらに上がるのか』


                シャアアアアアアアアアアアアア

     ジャッジャッジャッ
                         ダダダダダダダダ

伴「(フライパンをアーリオ・オーリオにしてムール貝とアサリを投入)」

 「(白ワインば加えて強火で一気呵成に具材を炒める)」

 「(クスクス、パスタ、スパゲティ、ナポリタン、娼婦風、漁師風)」

 「(頭の中をイメージが駆け巡る……この感覚ばい)」


125 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 04:06:17.64 ID:AMj1Q5KDO
ああ腹減ったなあもう!


127 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 04:07:44.10 ID:MdFn9cW20

五郎「やるね、彼」

一味「……私に言っているんですか」

五郎「そうだよ」

一味「あ、はぁ……ハイ」

五郎「多分彼の腕前は、あなたに数段劣ると思うんだ。彼が如何にプロであっても、
   経験の差って埋まらないよ。だけど俺は、彼の料理をすごく食べたい」

一味「……私よりも、ですか」

五郎「そう。素直にそう思うし、そう言える。何故かはわからないけどね。料理人さんには失礼な話だったかな」

解説『いいんですよ。その人は料理人じゃありませんから』

五郎「ああ、やっぱり。そうかとも思ったんだけど、違う気もしていたんだ」


一味「……??」


128 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 04:12:29.05 ID:MdFn9cW20
伴「(体中の血が騒ぎおる)」

 「(俺はバンビーノ、ヒヨッ子ばい)」

 「(だけど)」

 「(だけど、譲れんったい)」

 「( た と え 絶 対 に 勝 て な く て も )」

 「(走り続けることだけは……足掻き続けることだけできれば……)」

 「(それでよか……それだけで……よかったい……)」


129 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 04:20:31.26 ID:MdFn9cW20

      ゴ  ト   ッ   ……

伴「七種の夏野菜と……二種のチーズの……ミートソースミラノ風です……」



五郎(やれやれ いくら食うに困ったからって 解説の仕事なんて受けてくるじゃなかったよ

   結局調理シーンを眺めるばかりで 余計に胃を空かせる結果となってしまった

   ここに水でも詰め込むか はたまた入り口でもらった飴玉でも流し込むか ウーン おっ)

伴「……」

五郎「一皿、頂けますか」

伴「……グラッツェ」

五郎(ああ 一味さんの寂しい笑顔と被ってしまった ここは笑いの少ない大会会場だな

   クソッ、やっぱりこんな仕事、受けるんじゃなかった

   ここは 食を楽しむには 少しさみしすぎる……)


”バンビーノ!”伴省吾  ● ― ○”???”???


130 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 04:26:29.34 ID:MdFn9cW20

            ~ 二 週 間 前 ~

征五郎「……」

大政「……」

小政「……」

慎吾「……ええと……」

飛男「うん、将太クン、さすがに今回は……」

将太「お願いします! 親方! 僕をコンクールに出してくださいッ!!!」

大政「だ、だからな将太、コンクールじゃなくてまず”大会”だからな?」

小政「そ、そーだよお前! そんなことも判ってない状況で大会に……出るのは……」

慎吾「今回は……うん……その……」

将太「お願いします! お願いします! お願いします! お願いします! 」

飛男「いい加減にしてくださいよ将太クンっ!!!」


131 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 04:31:01.16 ID:MdFn9cW20
将太「えっ、飛男」

飛男「もうはっきり言っちゃいますけどね、どう考えても無理なモンは無理なんですよっ!
   大体何スか”大会”って! 話聞いたら寿司全然関係ないじゃないッスか!!
   いくら将太君が天才寿司職人だろうとまず勝ち目なんてないでしょうがよ!!」

将太「飛男それは違うよ」

飛男「え?」

将太「僕は天才寿司職人なんかじゃない」

飛男「(あーそっちかよ)」

将太「僕を小樽から送り出してくれた家族、鳳寿司のみんな、市場のみんな、戦ってきたライバル。
   そんな人たちに支えられて今の僕がいるんだ。皆からもらった力を使えば、きっと今回も負けはしない」

慎吾「……そうだね。今までだって、そうやって苦境を乗り越えてきた将太君なんだから。
   親方、僕からもお願いします。将太クンを大会に出させてやってくださいっ」


132 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 04:31:58.41 ID:xT8eEWEh0
将太もかよwww


134 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 04:35:56.01 ID:MdFn9cW20
小政「……ったく、ホンットーに馬鹿だなお前らは」

飛男「そうそう、言ってやってくださいよ小政兄さん」

小政「不利な状況で戦うってんなら、情報が必要だろ? 集めておいてやったぜ、ライバルの情報をな」

将太「小政兄さん……」

飛男「いやだから……アンタもほら内容読めってオイ……中華にフレンチに……普通の料理人ばっかじゃねえか!」

将太「飛男、あきらめちゃいけない」

飛男「だーかーらーよー!! 例えば点心職人がなんでもありの料理大会で勝てるかよ!
   デザート職人はどうだよ!住み分けってのがあるの! 寿司職人は寿司職人の大会にでーるーの!!」


135 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 04:42:15.28 ID:MdFn9cW20
大政「将太。飛男もお前が憎くて言っている訳ではないんだ。ちゃんと話を聞け」

将太「大政兄さん……」

大政「職人には守るべき守備範囲と言うものがある。自らに枠組みを決め、その道を究めるのが職人だ。
   それをいたずらな気持ちで踏み外すことは、その道を究めている者への侮辱でもある」

将飛『兄さん……!』

大政「だがな、お前はそんな枠をブチ破ってどこまでも飛んで行ける、俺にはそんな気がするんだ」

飛男「(薬でもキマってんじゃねーのかコイツら)」

大政「将太、俺達にも見せてくれ。誰も届く事のなかった、限界を超えた世界ってやつをな」

将太「兄さん……はいっ!!」

征五郎「どうやら、決まりのようだな」

将太「はい!」

飛男「……はい?」


136 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 04:49:08.35 ID:MdFn9cW20

征五郎「将太、鳳寿司の看板を背負って出るのだ、恥ずかしい戦いをしてくるんじゃあないぞ」

将太「ハイ!」

飛男「いいっかげんにしろォォォォォォ!!!」


         ガッシャーン

将太「うわっ……何なんだよ飛男」

飛男「アンタが何なんだよ実際! ノリで何でも進めてんじゃねーよ!
   アンタは寿司職人なの! 普通の料理大会じゃ絶対 勝 て な い の !」

将太「諦」

飛男「へーへーそうですねぇ! あきらめたらそこで試合終了ですよねえぇ!!
   だったらアンタはカレー対決にでもなったら酢飯にカレー盛って出すんですかねぇ!?」

将太「――はッ!?」

飛男「……やっとわかってくれましたか」

将太「いや、そうじゃない……飛男、でかしたぞ!!!」

飛男「……は?」


                          将太の秘策とは……!?


137 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 05:01:41.09 ID:MdFn9cW20

ジャン「……(イライラ)」

アナ『えー……二回戦第一試合の開始時間となりましたが……選手が一人しか来ていません』

解説『それも来ているのは秋山選手。料理に関しては案外マメなんですよね』

ジャン「……(ガルルルルル)」

アナ『と、とりあえずクッキングパパとでも戦わせておきますか? 尺稼ぎに』

解説『それがこんな時に限って席をはずしているんですよねえ』

アナ『トイレの替え電球みたいな奴ですね』

五郎「オッ 上手い事を言ったな」

解説『(……こいつもちょっとイラッときますね)』


138 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 05:11:01.37 ID:MdFn9cW20
    ドンドンドンドン

法子「陽一、陽一! 試合始まっちゃうわよ! どうして部屋から出てこないの!!」

陽一「……」

法子「陽ちゃん、ちゃんと言ってくれないと、母さん全然わからないわよ……?」

陽一「……」

法子「はぁ……一回戦で勝ったところまではご機嫌だったのに、急にふさぎこんじゃって」

???「ごめんください、御邪魔してもよろしいでしょうか」

法子「あら、あなたは伴さんと戦った……仙人さま?」

???「ははは、そんな大層な者じゃありませんよ」


139 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 05:14:15.11 ID:MdFn9cW20
???「少し、陽一君と二人で話をさせてもらえませんか」

法子「えっ……」

???「彼がふさぎこんでいる理由に、心当たりがありましてね。それも、できれば他人には聞かせたくない」

法子「……それが、母親であっても?」

???「母親であるからこそ」

法子「……わかりました。陽一の事、よろしくお願いしますね」

???「ええ。何でしたら、隣の部屋にでも居ていただければ。
    見ず知らずの他人に息子を任せるのは不安でしょう」

法子「いいえ。だってあなたの目……陽ちゃんにそっくりなんですもの」


140 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 05:20:50.01 ID:MdFn9cW20
陽一「……」

???「聞いてしまったんだろう? 大沢さんと、倉木さんの話」

陽一「!」

???「ごめんね。実は僕もあの場所に居たんだ。盗み聞きしたくはなかったんだけどさ」

陽一「……だったら、判るだろ、俺の気持ち」

???「いや、僕はちょっと判らないな。だから君に聞きに来たんだ」

陽一「だって! だって悔しいじゃないかっ!!」

???「どうして?」

陽一「だって、だって勝負に負けて……本当は負けているのに、勝った気分で喜んでさ……
   しかも勝ちを譲られて上に行くなんて、俺、恥ずかしくて」

???「ふーん」


???「やっぱり、判らないね」


141 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 05:23:56.91 ID:MdFn9cW20
陽一「……ま、そうだよね。所詮他人事だもん。僕の気持ちなんて判るはずない」

???「でも言いたい事は判るさ。要するに、思い通り行かなくて拗ねちゃったんだろ?」

陽一「……喧嘩売ってんなら帰ってよ」

???「違うよ。だって、君は勝負に負けて悔しいんだろ」

陽一「そうだよ! だから!!!」



???「だから、もう一度、勝負しに行くんじゃないの?」




142 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 05:27:35.30 ID:MdFn9cW20
陽一「あ……」

???「僕だって、今までの人生、ずっと勝ちを通してきたわけじゃない。
    負けた事もたくさんあったし、その度に失ったものだってなくはなかった。
    負けた時ってね、悲しいんだよ。ああ、あのときああしていたら、って、後悔ばかりでさ」

陽一「……でも、俺にはもう一度機会がある……」

???「うん。どんな形にせよ、君には再戦の機会があるんだ。
    大沢さんを超える料理を作るのもいい。対戦相手を打ち負かして駆け上がるのも、いい。
    こんなに自由なのに、飛ばないなんて、悲しいじゃない?」


143 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 05:31:29.59 ID:MdFn9cW20
陽一「……」


         ガチャ


陽一「俺、もう一度、やってみるよ」

???「ああ。ミスター味っ子、ここに復活だぜ!」

陽一「へへっ、おジイちゃんのおかげだよ」

???「なぁに、僕だって決勝戦、張り合いのある相手と戦いたいからね」

陽一「うん、じゃあ……決勝で待ってるよ!」

             トットットット

法子「……ありがとう、ございます」

???「本心ですよ。僕は彼とも戦ってみたいんだ」

法子「まあ」クスクス


144 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 05:44:22.64 ID:MdFn9cW20
ジャン「……来たか」

陽一「…………」

将太「すっすみませんっ遅くなりましたッ!!!」

解説『将太君の遅刻は織り込み済みですので、シード枠に入れさせていただきました』

アナ『優勝を逃してもお父さんが助かるよう、大会側で最高レベルの医療スタッフを用意しています』

将太「みんな……どうも……ありがとうございますッ……!」

詩織「(がんばって……将太君っ……!)」

審判『では発表します、二回戦第一試合の課題はこれだッ!!』




            自          由

                 (但し自分の得意ジャンルを除く)


150 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 11:12:15.13 ID:mLgwdJw/0
ジャン「得意ジャンルを封印……? こんな事を考えるのは」

大谷「そう、ワシや……」

陽一「どういうことだよオッチャン!」

大谷「簡単なコトや。秋山選手は”中華の覇王”と呼ばれる男やから、中華を出したら負け。
   寿司職人の将太選手は当然寿司を封印やな。
   陽一君は……」

五郎「残念だな 俺もたまにははっちゃけてみたかったんだが 出鼻をくじかれてしまった」

アナ『?』

解説『あっ……』

大谷「”普通の料理”を創ってもらおか?」


151 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 11:16:43.51 ID:mLgwdJw/0


陽一「ぶっ、俺の料理が普通じゃないって言うのかよ!?」

大谷「まあ、そういうコトやな。君の料理はド派手なリアクションに被せて押し切ってばかりや」

陽一「そんなことはない! 俺の、俺の料理はッ」


            『うーまいぞ!うーまいぞ!うーまいぞ!』

  『馬鹿なこと言ってんじゃねークソ審査員!!』            『盛り上がらねーだろーがよー!』

          『陽一クーン!!! 素敵な料理で会場ブッ飛ばしてぇん!!』

大谷「……どや?」

陽一「……わかったよっ! 普通の料理でだって俺が戦えるってトコ、見せてあげるよ!」


152 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 11:23:01.99 ID:mLgwdJw/0

大谷「(かかったっ!)」

大谷「(これで味吉のが上に行く事はまずない……リアクションの無い味吉なんぞ、漫画版みたいなもんや)」

  「(残るは中華縛りの秋山と寿司縛りの将太、どっちが有利か知らんが、
   笹寿司からは大量の賄賂をもらっとるからのぉ)」


笹木「……オレがお前にしてやれる恩返しはこれくらいだ……後はお前の力、信じてるぜ、将太……!!」


大谷「(どっちに転んでもオイシイ思いができるって訳や。いやぁ、自分の溢れすぎる才能が怖すぎるでぇ~)」



153 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 11:26:39.85 ID:7Tvc2o0X0
笹木wwwwwwwwwwwwww
改心してもやることはワイロかwwwwwwwwwww



154 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 11:28:24.25 ID:mLgwdJw/0
ジャン「ケッ、相変わらず辛気臭せぇルールを考えて来やがるぜ」

将太「……」

ジャン「どうしたスシ職人? 尻尾巻いて逃げだすなら今しかないぜ? カーッカカカカカ!」

将太「同じだ……」

ジャン「……あ?」

将太「あの時……小樽の寿司コンテスト……そしてあの寿司コンクール……!」

  「そうさ、僕はいつだって不利な状況で足掻いてきたじゃないか」

  「今回だって一緒さ。みんなの心が一緒にいるから、僕は頑張れるんだ……」

ジャン「(……ウザッ)」

   「(だが……気になるのはあの袋だ)」

   「(どう考えても寿司ネタが入れてあるようには見えない……あれは一体?)」


155 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 11:35:42.35 ID:mLgwdJw/0

慎吾「へへっ、ジャンの奴。動揺しているみたいだ」

小政「将太の”アレ”、使う機会がこんなに早く来るとはなぁ」

征吾郎「将太のがんばりが、運をつかみ取ったと言う事だ」

飛男「………………」

大政「飛男! ボサッとしてるんじゃねえ! 将太が居ない分お前が頑張るんだよ!」

飛男「ヒーッ! ご勘弁を~!」

    『 ワ ハ ハ ハ ハ ハ ハ 』

佐治「……頑張れよ、将太……!!」


156 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 11:40:47.11 ID:mLgwdJw/0
          ~ そ の 少 し 前 ~

一味「……結局コンブ君とはあの後会う事ができなかった」

  「何故彼は突然、あんなに怒りだしたと言うのだろう」

  「なんだ……何だと言うんだ。何故俺ばかりがこんな目にッ」

  「……あれは……大沢さんと伴さん?」


伴「~~~ッ 嫁しゃんと可愛い盛りの娘ば置いてベトナム行っちょったとですか」

大沢「ええ。家族にはつらい思いをさせたと思っています。もしかしたら、今も」

伴「でも、後悔ばしとらんとですね」

大沢「あはは……若い方の前でこんな話をするのは、少し後ろめたいと言うか、気恥ずかしい気もしますけどね」

伴「んなこつなかばい! 俺もそん気持ち、今なら判ります……大沢しゃんとは逆でしたけど」

大沢「逆?」


157 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 11:46:05.54 ID:mLgwdJw/0


伴「俺、なんの覚悟もなしに東京に出てきて……
  地元に友達と彼女ば置いてきて、じぇんぶおじゃんにしちまったとです」

大沢「……」

伴「なんもかも無くして、初めてしゃんと出来たって言うか……その……ああ……」

大沢「……僕だって同じですよ。飛び出してきたのは、勢いみたいなもので。
   それでも、僕は料理が大好きでしたから。料理とともに自分を高める事が、できたんです」

伴「大沢しゃん……」

大沢「辛抱強く付き合ってくれた妻と娘には、本当に感謝しています」



一味「……」

  「……はっ、もうこんな時間かッ」


158 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 11:50:23.05 ID:mLgwdJw/0
一味「ハアッハアッ 申し訳ありませんっ」

アナ『……もういいですから。そのへんの床にでも座っててくださいよ』

五郎「ウーン厳しいな 言い訳をする機会すら貰えないとは かくも料理人とは大変なものらしい」

解説『料理人と言うより社会人の常識でしょう』

アナ『まあ、彼は別に仕事を持っていますからね。お遊び気分で来られてもこちらは迷惑なのですが』

ジャン「(ギッ)」

アナ『……おら、秋山選手に免じて椅子やるから、さっさと座れや』

一味「……ハイ」


161 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 11:55:22.38 ID:mLgwdJw/0
アナ『さあ、気を取り直して参りましょう……まず秋山選手ですが』

五郎「鴨かな 七面鳥 あるいは鳩 間違っても俺が知っている鶏なんかじゃないんだろうな」

解説『大丈夫です、あれは鶏ですよ』

五郎「おッと これは不意打ち まあ奇抜な食材ばかり食べさせられてもげんなりするしな」

一味「ありふれた食材から味を出す事こそ、料理の本懐ですヨッ」

五郎「この人に言われてもなァ なんだかなあという感じだ」

アナ『(グリグリ)洋包丁を操る秋山選手と言うのも、なかなか新鮮味があって面白いですね』

一味「……そうですね」


163 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 11:59:46.12 ID:mLgwdJw/0
アナ『続いて陽一君ですが……これはフォン(だし)を取っているのでしょうか』

解説『彼にとっては厳しい課題ですからね。手さぐり手さぐりということでしょう』

五郎『ワッ あんなにアクが出るものなのか しかしアクって旨そうだ 実は食べられるんじゃないか?』

一味「……」

アナ『なんか言えや』

一味「……味もなくてパサパサした、口当たりの悪いものです。口にしない方がいいですよ」

五郎『秘密の宝石箱の蓋を無理やり開けられてしまった感じだな 楽しみがなくなってしまった……』

解説『ギロッ』

一味「……すみません」


164 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 12:06:24.88 ID:mLgwdJw/0

陽一「…………」

将太「(陽一くん……すごく真剣な表情でアクを取っている)」

  「(ひたすら地味な作業に徹することで、新たな味の境地を創りだそうとしているんだ)」

  「(スゴいよな……僕と大して歳は変わらないはずなのに)」

  「だけど、僕だって負けちゃいない! この何年かで……僕だって成長しているんだっ!」


       ボ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ !!


165 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 12:12:27.71 ID:mLgwdJw/0
アナ『あっとなんだこれはァァァァァ!将太選手のキッチンから突如火柱が立ち上ったぁ!!』

解説『秋山選手のお株を奪う炎、陽一君のお株を奪うド派手な演出ですね。何を創っているのでしょうか』

一味「少なくとも寿司の技法ではありませんな」

五郎「課題とコメントの方向性がかぶってしまった これはいただけない」

解説『最初から寿司は作るなって言われてるんだから当然だろ』

アナ『もうクッキングパパのコメントに期待するのはよしましょう』

解説『はい』

五郎「まったく 大人になれない大人ってのも 本当にいるものなんだなァ」

一味「……」


166 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 12:20:23.44 ID:mLgwdJw/0
アナ『各選手、料理の詰めにかかります』

解説『秋山選手、これは……』


伴「かーっ、すごかですねぇ公しゃん! あの秋山しゃんって中華の料理人やなかとですか」

大沢「ええ、面白いですね。形こそ荒削りですが、あれは紛れもなく正当なフレンチの盛り付けです」

伴「さすがばい……努力の量がケタ違いったい」

???「うーん、本当にそうなのかな」

伴「! アンタ、いや、あンた様はっ」

大沢「伴さんの対戦相手の方ですね。こんにちは(スッ)」

???「こんにちは(ギュッ)」

大沢「……!!」


167 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 12:25:21.68 ID:mLgwdJw/0
大沢「なるほど……伴さんの態度も、うなずけるというものです」

???「よしてよ。僕もみんなも一人の大会参加者。それでいいじゃない」

伴「そげん事言っても……ねェ?」

大沢「フフフ……」


168 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 12:33:00.15 ID:mLgwdJw/0
          ~ 調 理 終 了 ~

アナ『さて、今回の審査員は……』

大谷「当然ワシやがな。秋山の小賢しい小細工を蹴散らせるのはワシしかおらんでェ」

武藤「フム……久々に将太の飯を食らうのも、悪くはない、か」

法子「……陽ちゃん……今回のあなたは……何をしてたのか大体わかるわ……」

五郎「一度に三人の料理!これは重(ヘビー)すぎるぞ 残したら包んでもらおう」

アナ『……この四人に行ってもらいましょう。いいですねクッキングパパ』

一味「はあ、いいんじゃないでしょうか」

アナ『ケッ』

一味「……すみません」

解説『意味もわからず頭を下げるのは、相手を余計怒らせる事だと認識すべきですね』


169 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 12:38:58.11 ID:mLgwdJw/0
大谷「ま・ず・は……陽一君の料理からいただこか」

武藤「フン……ガキ、これは何だ」

陽一「僕はガキじゃない」

武藤「あン……?」

陽一「僕は一人の料理人として、貴方に料理を振舞いたいんです。その心、汲んでいただけませんか」

法子「よ、陽ちゃんッ」

武藤「……ククッ、これは失礼した。では味吉陽一、この料理について教えてくれるか」

陽一「はい。この料理は……”フォンだしたっぷり! 豚バラ肉のほかほか丼”と名付けました」

一味『プフッ』

解説『……』

アナ『……』

五郎「……」


170 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 12:44:19.73 ID:mLgwdJw/0
武藤「ずいぶんとふざけた名前じゃないか。それに豚丼だと? わしにそんな下種な物を食わせる気か」

陽一「……僕の実家は、町の小さな食堂です。
   でっかくもないし、父さんも死んじゃって、人を雇うお金もない。
   僕だって学校があるし、毎日行列のできるようなお店にすることはできません。
   でも、僕や母さんの料理の味が好きで、ちょくちょく通って来てくれる人が居る」

大谷「何や何や? お涙頂戴は間に合っとるでぇ」

武藤「……それで?」

陽一「この豚丼に派手さはないけど。僕の気持ちがこもってます。
   今日もありがとう。また来てね。そんな気持ちを伝えたいと思ったら、自然とこういう物が、できました」

武藤「……並みいる高級素材には目もくれず、
   この武藤鶴栄に豚丼ごときで立ち向かう羽目になったと言う訳か」

陽一「ええ。これが、今僕が作れる最高の料理です」


172 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 12:49:15.18 ID:mLgwdJw/0
武藤「フン……」   パクッ


将太「……武藤さんが……食べた……!?」


   カタッ

武藤「……フン」

              スタスタスタ

陽一「…………」

法子「陽一……」

五郎「ハグッ ハムハムッ フムッ こういうのがたまらないんだよなぁ~ッ」

大谷「(はいはい、どうでもええわどうでもええわ。それより秋山の料理やぁ~……ッ!?)」


175 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 12:55:36.42 ID:mLgwdJw/0
ジャン「ククク……カーッカッカッカッ!!!!」

武藤「こ、これは……!?」

アナ『こ、こ、こんな展開を誰が予想していたと言うのでしょうか!!!
   秋山選手のテーブルの上には! 色とりどりのフランス料理のフルコースが並べられている!?』

解説『鳥の塩包み焼き、クリームチーズのブリュレにポットパイ……子羊のディアブロ風ソテー。
   秋山選手がフランス料理に師事したという記録はありませんが……これは大変なものですね』

一味『文字通りの隠し芸、とでも言ったところでしょうか。これは凄い』

アナ『アンタにとっての料理みたいなものですね』

一味『……はい。でも、これは凄いですよ。
   鳥の包み焼きは一回戦の大沢さんを真似たとしても、ブリュレやポットパイはそうはいかない。
   彼はフレンチに対しても、余程の熟練を積んでいると断言できます』

解説『珍しくまともなコメントですね』

一味『ありがとうございます』


176 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 13:01:22.78 ID:mLgwdJw/0
大谷「ケッ! いつの間にかめかし込む事を覚えよったか、この山ザルめが! ワシの神の舌はごまかせへんで」

    バシイッ

大谷「ジャン! お前何するんや!」

ジャン「へへ、後から難癖つけられるのはツマんねーからな。先に聞いておきたかったんだよ。
    この料理、とりあえず課題の方はクリアしてるってことで、いいんだよな?」

大谷「? まあ……こんなモン、どっから見ても中華料理やないからな。OKとしたるわ」

武藤「(……フッ。こいつもやりおるわい)」

ジャン「それを聞いて安心したぜ。さ、喰いやがれ」

大谷「フン、言われなくても……(ムシャ)」


                 こ   、   こ    れ   う  ぁ   ~~~!!!?


177 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 13:06:37.79 ID:mLgwdJw/0
大谷「な、なんやこのクリームブリュレは……と、豆腐やないかぁい!!!」

(トロ~リ)

少女「おいしいお汁がピュピュッて出てくるぅ!」

法子「これは……麻婆餡。これはブリュレなんかじゃない、麻婆豆腐よ!!」


公「……トロンプ・ルイユ」

???「中華の譜茶料理かもね。解釈がだいぶ違っちゃうけど」

伴「はィ……????」

???「要するに偽物(イミテーション)の料理ってことさ」

公「一見ある料理を作っているように見せかけて、実は違う材料で全く違う料理を作るという技法です」

伴「はァ……じゃあ、ジャンさんは中華料理でフランス料理を作ったってこつですか」

公「ええ。余程の修練を積んでいなければあそこまでは……しかも、専門外で」

???「秋山の魔法、ってやつだね……面白い。すごくワクワクしてきたよ!」


178 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 13:14:27.41 ID:mLgwdJw/0

大谷「こっちのポットパイはフカヒレスープ、こっちの鳥は野菜の包み焼きやと……」

武藤「ディアブロ(悪魔風。胡椒等のスパイスをふんだんにかけ辛さを味わう)に見せかけXO醤か。やりおるわ」

法子「見かけがフランス料理だから、不思議な感じだけど。どれも凄くおいしい!」

五郎「ク~ッご飯がほしくなるな ン? もしかしてこのパンは
   さすが 期待を裏切らない 焼き目のついたゴハンだ」

解説『中華料理でしたね、クッキングパパ』

アナ『素晴らしい解説をありがとうございます、クッキングパパ』

解説『私達と違い、使っている材料をしっかり見ていれば判別もついたかと思うのですが、クッキングパパ』

アナ『どうしてこうなっちゃったのかな』

一味『すみません』

アナ『すみませんじゃなくてさ。どうしてできなかったのか聞いてるんだけど』


179 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 13:19:33.95 ID:mLgwdJw/0
アナ『さて二回戦第一試合。試食は最後の関口将太選手を残すのみとなりました!』

解説『調理中は二人のお株を奪うド派手な演出で楽しませてくれましたが。料理の方も楽しみですね』

鼻田香作「クックッククク……見るまでもねぇ、こいつはカレーの匂いだァ!」

一味「カ、カレーだって!? 寿司職人がカレー!?」

将太「………………」

アナ『……あーあーあー』

山岡「将太に謝れ。アンタは料理人、いや人間として最低の行為を行ったんだ」

一味「……ごめんなさい……」


180 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 13:25:07.98 ID:mLgwdJw/0
アナ『気を取り直して、将太選手! 料理の方をお願いします!!』

将太「はいッ!」

  「見てろよ、こいつが僕のッ……」


       酢   飯   カ   レ   ー    だ   ぁ   ッ !


181 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 13:29:38.72 ID:mLgwdJw/0
解説『……やはり、インパクトはイマイチですね』

アナ『我々も大人です、過ぎた事をいつまでも言うのはよしましょう』

山岡「変わっちまった空気は元には戻りませんがね……ヤレヤレ、ひどい大人もいたもんだ」

一味「……しかし今、明らかに部外者が」

栗田「(パシーン)そうやって言い訳ばかりしてっ!
   負債を押しつけられた子供たちが救われるとでも言うのッ!?
   そんなの、あんまりにも勝手だわ。そんなのって……!!」

一味「……すみませんでした」


183 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 13:40:04.48 ID:1t4WUL6w0
いい加減アゴを許してやれよ


182 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 13:34:10.28 ID:mLgwdJw/0
武藤「……将太」

将太「何も言わず、食べてください。これが僕の気持ちです」

武藤「……(本気で嫌だ)」

大谷「いや、酢飯カレーてアンタ。いくらなんでもふざけすぎとちゃいますの」

五郎「(酢飯カレー! そういうのもあるのか)」

法子「そうね……ありなしで言えば。完全にナシね」

五郎「(ナシか……)」


??「ええい、だから言わんこっちゃない、もう見てらんねぇ!!」


184 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 13:42:03.65 ID:mLgwdJw/0


      ダ ダ ダ ダ ッ 

一味「な、なんだね君は!? ここは部外者立ち入り禁止だぞ! 出ていきたまえ」

飛男「うるっせえんだよエセ料理人! アンタに俺を止める資格なんざ無ぇってんだ!!!」

一味「ムッ」

         ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ


飛男「お願いします! お願いします武藤さん! この酢飯カレーを食べてくださいッ!」

将太「飛男、お前……!!」

飛男「お願いします! お願いします!(土下座)」


193 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 14:58:57.50 ID:mLgwdJw/0

武藤「しかし解せぬ……なぜ酢飯のカレーがこんなに食えるのだ」

将太「秘密はこの炎です」

武藤「炎?」

将太「普通のご飯にカレーを盛り付けた後、軽くご飯に酢を振って一気に焼き上げるんです。
   こうすることでご飯の酢が飛んで、おいしい焼きカレーが出来上がるって寸法です」

武藤「フフ、なるほどな。焼き上げることにより旨味を倍加させたと言う訳か」

一味「初めから酢を入れなければよかったのでは?」

武藤「……フン。貴様には料理人としての誇りがないと見える」

大谷「つまらない男でんな」

法子「あまりいじめるのはよしましょう。子供も見ていますわ」

一味「……」

アナ『全ての試食が終了しました! これより審査に移ります!!』


197 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 15:04:16.22 ID:mLgwdJw/0
陽一「………………」

公「陽一君。お疲れ様です」

陽一「あっ、公さんに伴さ……!!」

武藤「……わしの顔に何かついているか」

陽一「いえ、その……すみませんでした」

武藤「何を謝る、味吉陽一」

陽一「俺っ、偉そうな口叩いておいて、結局武藤さんを満足させられなくって……」

武藤「……誰が満足していないなどと言った?」

陽一「えっ」


199 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 15:06:27.02 ID:mLgwdJw/0


    チ ャ リ ン



陽一「五百円玉……?」

武藤「わしも歳だからな。一食で三人前など、とても喰いきれたものではない」

  「明日の昼にでもまた、御馳走になりにいくとしよう」

陽一「あっ……!」

武藤「……お前の心。美味かったぞ」

陽一「……公さん、伴さん、俺、俺っ……!!」

伴「そぎゃんこつで泣いてたら、明日から大変とよ、カカカ」

公「そうですね。武藤さんに伝えたのと同じ気持ちを、明日からお客さんみんなに伝えねばならないのですから」

陽一「できるのかな……俺に」

公・伴「(ニイッ)」



200 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 15:07:20.42 ID:mLgwdJw/0



陽一「武藤さぁ~ん!! またのご来店を お待ちしておりま~す!!」


202 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 15:10:45.31 ID:mLgwdJw/0
笹木「どういう事だ大谷ィ! 話が違うじゃねェか!!」

大谷「じゃかあしゃあ! ワシだって計算外だったっちゅうんや!!
   なんぼなんでも”割と食える酢飯カレー”で”中華の覇王”の中華料理に勝てるモンかぃ!!」

笹木「いろいろあるだろ! 親父が死にそうとか、料理の新しい可能性とか云々ってよォ!」

大谷「あー……ワシそういうタイプの審査員ちゃうねん」

笹木「……クッ!」




203 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 15:13:28.31 ID:mLgwdJw/0


        ~ 小 樽 ~
       

久美子「将太クン……」

将太「……久美子ちゃん」

久美子「そんな顔しないで。お父さんも大会スタッフの人のお陰で無事らしいわ」

将太「そっか……」

久美子「……ね。どうして、酢飯のカレーで勝負しようなんて思ったの?」

将太「えッ(思いつきだけど)」

久美子「私ね……将太クンのそういうところ、大好きっ」

将太「久美子ちゃん……へへっ」

久美子「将太クン……♪」


204 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 15:14:38.12 ID:mLgwdJw/0
ジャン「ケッ、張り合いのない奴らだぜ」

山岡「……今のうちに吠えておけ。どうせ決勝で泣くことになるンだからな」

ジャン「言ってろ。ほら、パパがこっちを見ているぜ」

山岡「親ネタはやめてくれ」

ジャン「すまん」

雄山「士郎ォ!だぁからお前はアホだと言うのだァ!!」

五郎(鬼の目にも親心ってわけか 恥ずかしい親を持つと子は苦労するんだな)


 二回戦 第一試合

勝者 ”中華の覇王” 秋山 醤 ○


205 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 15:15:46.27 ID:b1t5DQLm0
>ジャン「すまん」
ジャンwwwww



206 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 15:17:17.49 ID:wN2PG9Y20
ジャン丸くなっとるwwwwwwwwwwwwwwwww


222 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 19:16:10.98 ID:mLgwdJw/0

           ~ 休 憩 室 ~

一味「準決勝、第二試合……か。フゥ」

  「こうして一人、物思いにふけるのも……何年ぶりかな」

  「(思えば……結婚してからと言うもの、一人でいる時間なんて無かった気がする)」

  「(仕事に追われ、妻を愛し、子を愛し。苦痛に感じたことなど、なかったはずだが)」

  「(今は何故だろう、その思い出すら、たまらなく辛い)」

  「(……自ら命を絶つ人間の気持ちも、今なら少しだけ、判る気がする……)」

  「辛いゾ……なんてな、ククッ」

  「さあ、小腹も空いたし、腹ごしらえでもしてくるかッ」


225 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 19:25:38.85 ID:mLgwdJw/0


                               トットットットッ

ジャン「……」

???「……ダメ、かもしれないね」

ジャン「そうだな」

???「……こんな時でも君は、ずいぶん不遜な顔をするんだね」

ジャン「ケッ、何百年生きたか知らねェが、こんな事で心を折ってるようじゃあ、知れたモンだな」

???「ハハハ、そうだね。今でも僕は……まだまだ、半人前さ」

ジャン「そのニヤケ顔が、ムカツクってんだよ」

???「へへ、僕が怖い?」



ジャン「…………あぁ、怖いね」


226 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 19:32:14.24 ID:mLgwdJw/0

        ~ 試 合 会 場 ~

雄山「これはお笑いだ士郎!! 貴様のような半人前が栄誉ある”大会”のセミファイナリストとはな!」

山岡「……アンタにゃあ関係のない話だ。とっとと帰れ」

雄山「クククッ、逃げようとてそうはいかん。ワシは準決勝の審査員も任せられているのだ」

山岡「審査員なら、料理が出てくるまで大人しく座ってりゃあいいでしょう……うっとうしいんだよ」

雄山「フン、臆病なことだな士郎。父の目に映る事がそんなに恐ろしいか」

山岡「ええ、大変恐ろしいですので、近寄らないでください、これこのとおり」

雄山「……」

山岡「あなたの存在自体が迷惑なんですよ」

雄山「士郎!きさま……」

山岡「(うぜえ……)


229 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 19:41:12.62 ID:mLgwdJw/0

山岡「オラ、対戦相手様がお出ましだ。審査員殿はとっとと席へ戻っていただけませんかね」

雄山「士郎! 話をそらそうとしてもそうはいかんぞ……」

???「こんにちは、山岡さん、海原さん(ニコッ)」

山岡「どーも」

雄山「……がっ……あ……!!」

山岡「今度はなんです」


雄山「お前、お前は……いや、貴方は……まさか……」



231 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 19:49:51.42 ID:mLgwdJw/0


???「僕の事……ご存じなんですね、海原雄山さん」

雄山「至極当然にございます。食の東西問わず、
   美食を愛する者ならば、あなたの姿、名を知らぬ者はおりますまい」

山岡「……(知らん)」

???「黙っていていただくわけには、いきませんか」

雄山「そ、それよりも、このような大会、捨て置いて、我が美食倶楽部においで下さい。
   最上の技術と美食にて、貴方をお迎えいたしましょう」

???「よして下さい、海原さん。僕にそこまでしていただくだけの価値などありません」


233 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 19:56:24.19 ID:mLgwdJw/0

雄山「しかしッ」

???「それに……僕は料理人です。料理を作り続けることこそ、僕の幸せなんです」

雄山「……はっ、貴方様がそう仰るのならば」

山岡「おいジジイ、いい加減もったいぶらずに教えてもらいたいね。このジジイが何者なのかを」

雄山「士郎キサマ!!!」

???「いいんですよ……あっ」


           ( ハ ラ リ )


237 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 20:05:22.30 ID:mLgwdJw/0


山岡「(何だ? ジジイの肩布がほどけて……龍の絵に”特”の一文字……まさかッ)」

ジャン「ケッ、クソジジイめが、ようやく正体をバラす気になりやがったか」

一味「……ど、どういうことなんだ」

ジャン「ヘッ、御存知、ないのですか?」

雄山「彼こそが……中国最難関である広州特級厨師試験を最年少で突破し、
   同時に最年長厨師記録を更新し続ける生きた伝説」


ジャン「”真・中華一番”劉昴星(リュウ・マオシン)その人って事さ」





241 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 20:09:20.64 ID:a9bQg0L60
投石器で炒飯ブン投げた人ですね


242 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 20:12:42.60 ID:Vnfwi0PM0
マオ何年生きてんだよw


243 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 20:14:05.06 ID:mLgwdJw/0


マオ「ジャン君……その二つ名、何とかならないかな……」

ジャン「つまんねー謙遜は抜きにしようや。秋山三代の歴史を足してなお敵わない時間を、
    アンタは料理人として生きてるんだ。中途半端に折れてもらっちゃ、秋山の屋台骨にも響くんでね」

マオ「うぅーん……(笑)」


公「やはり、名のある料理人の方でしたか」

伴「公しゃんも気ばついとったですか……あんしゃあ、手のタコが半端じゃなかとです」

公「ええ……それこそ、我々が生きて死に、また生まれるほどの時間を、彼は料理にささげてきたんです」

一味「勝てるわけない、か……いくら、努力したって」

公「……それは伴君への侮辱です。取り消してください、荒岩さん」

伴「へへへ……気にせんとよかよ。俺は負けず嫌いたい。頑張りたかっただけとよ」

一味「……」


244 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 20:22:07.07 ID:mLgwdJw/0


アナ『なんとなんと、これは驚きです! 謎の老人選手の正体は、生ける伝説、”真・中華一番”劉昴星!!』

解説『これは判らなくなってきましたね。究極のメニューに対するは、究極の料理人と言う事ですか』

雄山「! ぬぅん、いかんぞ士郎、それだけは許さん!!」

山岡「……は?」

雄山「わからんのか!! この勝負、即ち日本と中国の威信を賭けた戦いになる!!
   貴様ごときを日本の代表として認めるわけにはいかん! 棄権しろ士郎」

山岡「……お断りだね。まったく年寄りって奴は、生きた年月を重ねれば重ねただけ善くなると思ってやがる」

マオ「……」

山岡「それが驕りなんだよ。無駄に生きれば癖が付く。
   古い観念に縛られれば、待っているのは停滞ですらない。退化だ。
   ま、アンタらしい卑屈さと言えばそうだがね。俺まで付き合わされる道理はない」

雄山「……士郎……」


246 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 20:30:09.79 ID:mLgwdJw/0
マオ「……二人まとめて、かかっておいでよ」

海山『!?』

マオ「もちろん驕っているわけじゃない。だけど、貴方がた一人ずつを相手にして、負けるつもりもさらさらない。
   こんな玩具(つまらないもの)もあることだし……ね(チラッ)」

ジャン「”伝説の厨具”ね……玩具(つまらないもの)扱いとは、特級厨師様も偉くなったモンだ」

マオ「道具なんか目にならない、人間の”可能性”ってヤツのすばらしさを、見つけただけさ」

ジャン「ククククク……そんだけ長生きしてる化け物ジジイが言うんじゃあ、説得力もあるってモンだ」

マオ「違いないね」

二人『フフフフッ』



247 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 20:35:44.12 ID:mLgwdJw/0

山岡「……」

雄山「……士郎」

山岡「……正直、俺にもどうしていいかわからない……アンタの手なんざ、死んだって借りたくないんだ。
   だが、同じように俺のプライドが囁く……俺一人では、とうていヤツには勝てないと」

雄山「士郎……!」

マオ「躊躇することはありませんよ。二人組(コンビ)の戦いになるなら、僕も相方を指名します」

ジャン「面白いじゃねぇか。俺を選べよ劉昴星。手札をまるまる晒した上で、テメエを屈服させてやる」

伴「俺が行きますよマオしゃん。足手まといにはなりまっしぇん。絶対に!」

マオ「……ありがたい申し出ですが、僕の心は、もう決まっているんです」



マオ「”クッキング・パパ”荒岩一味さん。あなたを僕の相棒に指名します」



248 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 20:36:44.73 ID:7Tkogjoi0
ここで一味かww


250 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 20:37:37.34 ID:R2M3snu10
ハンデか


253 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 20:44:00.00 ID:mLgwdJw/0

               ~ 二 時 間 後 ~

虹子「……」

まこと「……どういうことなの、母ちゃん」

みゆき「うきゃーっ ぱーっ★」

まこと「とうちゃんは、負けたんじゃなかったの?」

虹子「……」

まこと「どうして、どうして父ちゃんが……」


   「 あ そ こ で 料 理 を し て い る の ォ ! 」

虹子「……母さんにだって……全然……わかんないわよ……」


254 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 20:51:26.36 ID:mLgwdJw/0
アナ「……ついに、彼が」

ジャン「ああ。ろくに見ちゃいなかったが、どうせここでも大した事ぁしてなかったんだろ?」

解説「その通りです」

公「まったく……秋山君も人が悪いですよ。彼ができた大人だったからいいようなものの」

陽一「できた大人だから、ダメだったんじゃないの?」

コンブ「そーゆーコト。オイラくらい素直な奴だったら、こんなに苦労はしなかったよ」

ジャン「俺だってこんなツマラン茶番に付き合わされたくなかったさ。だが」

公「”料理は勝負”だからこそ……でしょう?」

ジャン「……テメエ、向こうに行ったら覚えてやがれ」

公「はい。首を洗ってお待ちしております」

将太「その時は、是非僕も仲間に入れてください!」

陽一「へへっ、今度はバトルロイヤルか! 負けないよっ!!」


256 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 20:59:50.80 ID:mLgwdJw/0

            ~ 調 理 場 ~

雄山「……」

山岡「……」

雄山「……士郎」

山岡「……(スッ)」

雄山「……」


一味「さすがの連携だな」

マオ「カズミ、余所見している暇はないだろ! 小松菜の湯がきはどうしたんだ!」

一味「あ、ああ……そちらの鍋に仕込んでいる。今は白髪ネギを刻んでいるところだが」

マオ「(ピク)白髪ネギ……?」

一味「ああ。出来上がりに添えると、ちょっとの手間で格別に美味しくなるんだ。ウマいぞ」

        ビ シ ィ !



258 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 21:11:04.35 ID:mLgwdJw/0
一味「ぐッ!?(鋼棍!?)」

マオ「カズミ、僕は言ったよね。君を相棒として指名すると」

一味「あ、ああッ……だからこうして、俺にできる工夫を、精いっぱい……グッ!」

        ズ ブ シ ュ 

一味「ぐうッ(今度は包丁……こ、これは洒落にならんゾ)」

マオ「カズミ、僕はそんな仕事、君に頼んだ覚えはないんだけれど」

一味「余計な事をするな……と言いたいのかッ!?
   馬鹿にするな! いい加減にしろ! 貴方がどれだけ優秀な料理人かは知らないが……
   魂まで売り渡さねばならないという謂れは無いはずだッ!!」

マオ「……カズミ」

一味「?」

マオ「僕はね……料理人なんだよ。


                           そして君は、料理人では、ない」


259 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 21:11:53.20 ID:qsaG3MG10
持ち上げて落としやがったw


260 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 21:14:05.85 ID:9zeY+xsj0
出番だと思ったらwwwwwwwwww


262 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 21:17:26.59 ID:mLgwdJw/0

一味「……そんな皮肉なら、放送席で聞き慣れましたよ」

マオ「……じゃあ、表現を変えるね。
   君は確かに”クッキング・パパ”かも知れない。それ以上でも、それ以下でも、ないんだ」

一味「……どういう、こと、だ……?」

マオ「僕は、料理人だ。料理することが大好きな、料理で人を幸せにするのが大好きな、ただの料理人だ。
   破魔八陣にも手を出した。悪魔に魂を売り渡し、
   仲間を時の流れの向こう側に置いてでも、料理を続けたかった、一人のクズだ」

一味「……」

マオ「だから僕は負けるわけにはいかない。僕の信じた正義において、僕は料理を続けなければならないんだ」

一味「……そんなのは……間違ってる。料理は、人を、幸せにするための……」

マオ「カズミ、今の君にそれを語る資格はないよ」

一味「…………!!」


265 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 21:24:15.85 ID:mLgwdJw/0


マオ「話はここまでだ。これ以上、余計な事に裂ける時間が残っていない」

一味「……」

マオ「カズミ、君に見せてあげるよ。21世紀を生きる、最年少特級厨師の戦い方ってヤツをね」




                ~ 調 理 終 了 ~


266 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 21:29:08.64 ID:mLgwdJw/0

アナ『さあ、続いて特級厨師・クッキングパパ組の料理が運ばれて参ります』

解説『海原親子の”究極の親子丼”の破壊力はすさまじいものがありましたが、彼らはどうでしょう』

五郎「ふーん イクラと鶏卵 海と陸のものがこうもよく合うとは」

アナ『彼らの料理は……豚の角煮。どうやら彼らの料理は豚の角煮のようです』

解説『いささか意外性に欠けるような気がしますがね』

五郎「いいや そうじゃないな」

アナ『?』

五郎「あのマオって料理人は本気だ。一味サンを使った理由はよくわからないが、少なくともあの目は凄い
   勝つ事を諦めた奴はああいう目をしないと思う」

解説『……そう、なのかも知れませんね』

五郎「……余計な事を言ってしまったかな」


268 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 21:35:07.39 ID:mLgwdJw/0

一味「(……俺は料理人ではない)」

  「(この”大会”中、いろんな人間から、同じような事を言われ続けていたような気がする)」

  「(だが彼らはこうも言う。俺のことを”クッキング・パパ”であると)」

  「(判らない……)」

  「(彼らは……俺に何を望んでいると言うのだ……!!)」

マオ「さあ、食べてみてください。これが21世紀の特級厨師が送る、必勝の料理です」




270 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 21:43:22.72 ID:mLgwdJw/0
ジャン「……へぇ、どんな古臭い味付けで来るのかと思ったら」

陽一「おいしいよ! マオ爺ちゃん、なかなかやるじゃん」

公「爺ちゃん……(子供と言うのは怖いもの知らずですね)」

伴「っかぁ~白ご飯喰いたかぁ~~!! ウマかァ~~!!」

アナ『歴史を感じますね……それでいて我々にもなじみ深い』

五郎「ああ さっきの白ゴハンを取っておけばよかった このすれ違いは痛すぎる……」

雄山「……」

山岡「……」


271 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 21:49:30.04 ID:mLgwdJw/0
マオ「……流石に海原さんと山岡さんは、気付いたみたいだね」

一味「……」

マオ「……不思議かい?」

一味「ええ。信じられません。まさかあんな素材と手法で、こんな……」

マオ「僕の方も信じられないよ。この時代の人はこんなに便利な材料を、
   しかもこんなに手軽に手に入れられるのに……」

山岡「……確かに、アンタの使った素材は……すぐに手に入れられる、便利なものだ」

雄山「だがっ……くッ……ワシは、こんなものを……認めるわけにはいかないのだ……!!!」

マオ「だって、美味しいんでしょう……自分にウソをついても、悲しいだけだと思います」

雄山「認めるわけにいくかッ!!!

   インスタントのホンダシと、スーパーのうすくち醤油で味を取った角煮が、美味いなどとッ!!!」


273 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 21:54:47.54 ID:mLgwdJw/0

マオ「別に不思議なことじゃありませんよ。この戦い、僕は伝説の厨具を一切使っていません。
   その代わり、インスタントのダシと調味料、アク取りシートに万能包丁で随分楽をさせてもらいました」

一味「(そう……この男は)」

  「(この戦いにおける料理を全て、家庭の調味材料を絶妙に配合し完成させている……!!)」

雄山「私どもには……本気でかかる必要すらないと……仰るのですか……ッ……!」

マオ「もちろん、そんな失礼な事は思っていませんよ。
   この場ここで作る料理は、これが最上だと思ったまでです」

山岡「ひと山いくらのクサレた調味料と材料で作る料理が、数十時間かけた手作りの料理に勝ると?」

マオ「少なくともそうあるように、世界は進化している。
   時間をかけて天然の素材を使わねばならないと言う考えこそ、古臭くありませんか」

海山『………………』

アナ『彼らのアイデンティティを突いてしまったようですが』

解説『市販の材料でこれだけ美味い物を作られてしまっては、仕方ないのではないでしょうか』


275 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 21:57:33.69 ID:fCZhl8SO0
水勝負で水道水を使ったジャンに通じるものがあるなwww


276 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 21:57:49.39 ID:mLgwdJw/0

マオ「……ですが、謝らなくてはならないことが、ひとつあります」

雄山「……?」

マオ「この料理は、貴方がたではなく。ある一人の”お父さん”にメッセージを込めた、料理なんです」

山岡「……俺の方からも願っときますよ。
   この料理に籠ったあんたの”メッセージ”が、正しく受け取られていますように、ってね」

マオ「どうでしょうね。あまり、手ごたえはありませんでしたが」


278 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:00:19.25 ID:mLgwdJw/0


一味「……家庭で作れる、真剣な料理……か」


  「……謝らなくては、ならないな」





 二回戦 第二試合

海原・山岡  ● ― ○ マオ・一味




280 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:03:43.09 ID:mLgwdJw/0

    ~ 決 勝 戦 当 日 ~


まこと「……父ちゃん!!」

一味「……まことか。どうした」

まこと「大変なんだ、大変なんだよ! 今会場に行ったらっ」

一味「知ってるよ」

まこと「えッ」

一味「予想していた、と言った方が正しいかな。いや、やっと判った、と言うべきか」

まこと「父ちゃん……? 何言ってるのか 全然ワカんないよ……??」

一味「まこと……」


                  (ぎゅっ)

まこと「わっ、わっ、いきなり何だよ、父ちゃん……」

一味「すまない。そして、ありがとう。これからも、よろしくな」

まこと「……????   

                           う、うん……」


281 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 22:04:32.48 ID:b1t5DQLm0
このまま良い話で終わらせてほしいwwww


283 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:06:40.39 ID:mLgwdJw/0

              ~ 五 分 後 ” 会 場 ” 正 門 前 ~

一味「ハアハアッ、ハアッ」

ジャン「……来たか」

コンブ「カズミのおっちゃんはトロいからなあ。あと4分遅かったら、みんなもう出ちゃってたよ」

一味「はははっ、コンブ君はあいかわらずキツいな。でも、間に合ったんだろう?」

公「ええ。正直、最後まで気づいてもらえないかとは思っていましたがね」

マオ「ついしなくてもいいお節介までしちゃったよ」

伴「まあまあ、結果オーライと言う奴ばい。こうして一味しゃんは来てくれたとかんね」

一味「ええ、おかげさまで、俺はこうして皆さんの前に立っていられます」



  「みなさんを空の向こうへ還す、その場にね」




284 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:11:09.95 ID:mLgwdJw/0

ジャン「……正直、アンタみたいなヘタレに後を任せるのは、不本意で仕方ないんだがね」

一味「残れるのが俺しかいないんです。仕方ないでしょう?」

ジャン「へっ、悪いのは世間の方さ。美味い物が正義。
    それを受け入れられなかったヤツらのせいで、俺はくたばったんだ」

一味「……貴方のおかげで、俺はもう一度、料理と真剣に向き合う事ができた。本当に、ありがとう」

ジャン「その良い子ちゃんぶったコメントは、最後までどうにもならなかったがな……後はしっかりやれよ?」

一味「……はい」



      ●鉄鍋のジャン!R 頂上作戦 
            週刊少年チャンピオン 2008年52号(2008年11月27日発売) 第二部終了




287 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:15:47.00 ID:mLgwdJw/0

公「僕と貴方は、一番近い立場にいるとは思っていたんですがね」

一味「全く違うさ。君は料理に人生のすべてを掛けていた。
   俺にとっての料理は、人生の潤滑油に過ぎなかった」

公「……その通りです。貴方の生き方は、正直見ていてイライラしました」

一味「君も、本当は厳しい人なんだね。隠しきっている辺りは流石に大人だ」

公「これからは、貴方に任せるしかないんです……宜しくお願いしますよ(ギュッ)」

一味「(ギュッ)少なくとも君よりは、家族を大事にして見せるさ」

二人『フフフフフ』

      ●大使閣下の料理人
            モーニング   2006年以下不詳           連載終了 



293 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:20:07.55 ID:mLgwdJw/0


一味「親子ほど年は離れているけど、実は同期生だったんだな」

陽太「へへへ……でもおっちゃんのアニメは、城も壊してないし宇宙にも行ってないだろ?」

一味「リアクションで料理の質を決めるのはおかしいゾ。君も今回の大会で学んだろうに」

陽太「いいね、その負けず嫌いなカンジ。頼もしいよッ」

一味「フフ、あまり大人をからかうもんじゃあないゾ」

      ●ミスター味っ子
            週刊少年マガジン 1989年末以下不詳         連載終了



297 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:26:31.97 ID:mLgwdJw/0

コンブ「本当は、大人になったオイラをこの場に呼びたかったんだけどね」

一味「なべやきコンブと言えば天才料理少年だからね。仕方のないところだろう」

コンブ「(実は……皆にはヒミツだけどさ、普段のおっちゃんも俺、けっこう嫌いじゃなかったんだぜ?)」

一味「(ありがとう。俺もいつか”向こう”に逝ったら、秘蔵のレシピを全部教えてあげるゾ)」

コンブ「へへっ、やーりぃ! 約束だぜ、おっちゃん!」

一味「ああ、君のリトルグルメも、楽しみにしてるぞ!」

      ●OH!MYコンブ
            コミックボンボン デラックスボンボン 没年不詳     連載終了



299 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:30:23.23 ID:mLgwdJw/0

一味「……君にはまた会えると思っていたんだが」

山岡「馬鹿を言わんでください。今の俺とアイツを一緒にしないでいただきたい」

雄山「ワシもまた然り。純かつ飽くなき食への探求心、それゆえに生み出される愛憎と葛藤。
   時流に膾炙しへたれてゆく自分の影法師を見ていることほど、辛いものはない」

一味「……それでも、私はもう少し、貴方達と話がしたかった」

山岡「どこの甘ったれぃがそんなセリフを吐く。アンタは俺達の代表だ。
   食の”究極”、アンタなら見つけてくれると信じてるぜ」

一味「少々、荷が勝ちすぎる気もしますがね……残る者の定めです。努力しますよ」

雄山「ハッ、期待せずに見守るとしようか」

      ●美味しんぼ
            ビックコミックスピリッツ 2009年3月9日号      以下続刊


301 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 22:31:20.09 ID:JQkiibQh0
美味しんぼwwwwwwwwww そういうことかwwwwwwww


303 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:34:30.24 ID:mLgwdJw/0
伴「一味しゃん、いろいろ失礼な事言ったようで、申し訳ありゃんしぇんでした」

一味「何が失礼って、君の中途半端な九州弁だと俺は思ってるんだがナッ」

伴「ハハハッ、それを言われると何も言えましぇんけど……」

一味「……それでも、寂しいよ。願わくば、九州で頑張っている頃の君とも、話がしたかった」

伴「俺もこれからは人の上に立つ男ばい、いつまでも青臭い事は言ってられまっしぇん。今日が最後ばい」

一味「……それが君たちの言う”料理人でなくなる”と言う事なんだな」

伴「そういうこつばい。そして、今までの一味しゃんも……」

一味「”クッキング・パパ”だったと言うことか……まったく、とんだ蔑称だったと言う事だな」

伴「ハッハッハ、これからこれから。一味しゃん、ファイトばい」

      ●バンビ~ノ!
            ビックコミックスピリッツ 2009年19号 
                    バンビ~ノ! SECONDO(経営者編) 連載開始 


306 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 22:39:13.28 ID:A+vl8RoN0
オチまできちんと用意してあるとは思わなかった。
美味しんぼww



307 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 22:42:23.05 ID:p0PYjcWj0
なんでこのスレで感動してるんだ俺


308 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:42:33.45 ID:mLgwdJw/0
マオ「……」

一味「……マオ、さん……」

マオ「……少し、お話ししませんか」


一味「……」

マオ「……聞かせていただけませんか。一味さんなりの、今回の”大会”についての見解を」

一味「だらだら生き永らえてる後輩に、先立った先輩が喝を入れに来た……ってトコロでしょうかね」

マオ「おおむねその通りです」


309 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:47:07.25 ID:mLgwdJw/0
マオ「今回集まった皆は、各々それぞれ形は違えど、皆料理に命を捧げた人間達なんです」

一味「……公君や伴君、山岡君は言わずもがな、陽一君やコンブ君も、最終的には料理人になった」

マオ「ええ。ジャン君などは人生そのものが中華を究めるためにあるようなもので。僕もその一人です」

一味「だから、社会生活の傍ら、ほのぼのだらだらと生き永らえながら料理漫画を名乗る俺が許せなかった」

マオ「……実を言うと、そんな面もなくはなかった。僕らはあなたに嫉妬していたのかも知れません」

一味「気にしないで下さい。今となっては、みなさんの仰る事も、十分理解できる。
   大会中の仕打ちも含めてネッ」


310 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 22:48:22.53 ID:A+vl8RoN0
あの仕打ちが伏線とかわからねーよwww


312 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:51:33.13 ID:mLgwdJw/0
マオ「……あなたが最後の一人で、本当によかった。百数十年の孤独を耐えた甲斐があったというものです」

一味「聞いてはいけないのかも知れませんが……これから貴方がたは、何処へ行くのです?」

マオ「僕にも判りませんよ。二次創作と言う世界に引き込まれるのかもしれないし。
   終わる事のない"本編”をループし続けるのかも知れない。人の心から、消えない限りは」

一味「あるいは、こんな”大会”がまた開かれたりしたら……?」

マオ「その時は、完膚なきまでに叩きのめして差し上げますよ。絶頂期の僕がね」

一味「ほう」

マオ「”全速で料理(や)れ。でなければ、僕には勝てない!”」

一味「クックッ……フフフ……」

マオ「フフフ……ははははは……」


                アハハハハハハ!!!


314 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:56:00.43 ID:mLgwdJw/0
マオ「……さて、そろそろ、本当にお別れです」

一味「……貴方に教えていただいた事は、すべて、一生。絶対に。忘れませんヨ」

マオ「どうですかね。本編の貴方は、とても温厚で、臆病だから」

一味「この心と、打ち傷と、刀傷に賭けて。と言うのでは、いかがですか」

マオ「……どうなるかは、判りませんけどね。残る何かがあるかもしれないと言うのは、とても、いいものです」

一味「……さようなら。そして、ありがとうございました」

マオ「ええ。さようなら、そして、願わくば」


            『 い つ か 、 ま た 』



        ●真・中華一番!
           週刊少年マガジン 1999年以下不詳            連載終了


316 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 22:59:17.30 ID:mLgwdJw/0
一味「…………」

虹子「……あ、あなた……」

まこと「とーちゃーん! と~ちゃ~ん!!」

みゆき「う き ゃ ー っ   だーっ」

一「あ、あの、主任っ……」

夢子「あ、あなた……」

一味「オッ、皆揃ってどうしたんだ??」

虹子「エッ……あれ? えっと、あたしってば今まで何してたのかしらン?」

まこと「あれれー……僕もなんだか、父ちゃんに謝らないといけない事があったような」

一「なんだまこと、まーた何かイタズラでもしたのかィ」

まこと「一兄ちゃんと一緒にしないでくれよな!」ワイワイガヤガヤ


一味「……フッ」


318 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 23:05:40.99 ID:mLgwdJw/0
一味「ヨシ、みんな帰るぞ。今日はホームパーティだっ」

一「ヒャッホ~イ♪ 今月ピンチだったんですよねィ♪」

夢子「あ、あなた……」

虹子「大丈夫? 私も少し手伝いましょうか?」

一味「いや、今日のところは俺に任せてくれないか。試したいアイデアが、山ほどあふれているんだ」

虹子「まッ、どうしたの、急にやる気を出しちゃって」

一味「あんまりもたもたしている暇がないんだ。約束もあることだし」

虹子「約束……?」

一味「帰ったら、ゆっくり話してやるさ。それよりも、さ、早く行こう。



               お い し い 未 来 が 、 待 っ て る ぜ ! 」





                                   ~ 完 ~




321 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 23:07:35.02 ID:mLgwdJw/0


○クッキングパパ
            モーニング   2010年2月14日現在     連載中


319 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 23:07:19.61 ID:AivFa7wA0
感動した


324 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 23:08:04.58 ID:A+vl8RoN0
乙。てっきりクッキングパパに凄まじい憎しみでも抱いてるのかと思ったぜ。


328 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 23:09:55.71 ID:9zeY+xsj0


それでも作中の仕打ちはひどいwwwww



334 : ◆KQ21hGdwuc :2010/02/14(日) 23:15:27.57 ID:mLgwdJw/0
>>328 作中の参戦作品はクッキングパパの事をガチで嫌ってます。


338 :以下、名無しにかわります:2010/02/14(日) 23:20:36.02 ID:3Bh4nmYv0
ガチかよwwww


367 :以下、名無しにかわります:2010/02/15(月) 02:49:35.04 ID:3OMBluU1O
ごちそうさまでした



関連記事
2010/02/15 20:17:06 コメント21 ユーザータグ アニメ漫画

コメント

※47230:No name:2010/02/15 20:45:30
ゆで先生のグルマン君さえいてくれたら…!
※47242:No name:2010/02/15 23:31:02
軽い気持で読んだら思いのほか深くてびっくりした
でもおもしろかった
※47244:No name:2010/02/16 00:05:28
将太は何しに来たwwww
寺沢でかぶってたし
※47249:No name:2010/02/16 01:42:51
まさかの鉄鍋のジャンwww
※47260:ZERO:2010/02/16 09:19:10
公が結構それっぽくてよかったw
※47268: :2010/02/16 16:19:13
最後の美味しんぼの下りが良かった
※47275:No name:2010/02/16 21:16:22
一瞬出て来た鼻田の存在感がすごい
※47279:No name:2010/02/16 23:41:13
マガジンの料理漫画枠、いつの間にかなくなってんだな
※47284:No name:2010/02/17 03:22:42
面白かった。
尖ったセンスがステキ
※47299:代打名無しさん:2010/02/17 19:17:01
味平にも参加してほしかったが
鼻田のほうがインパクト強烈だから仕方ないのか…。
※47302:No name:2010/02/17 21:04:26
鼻田クソワロタ
※47303:No name:2010/02/17 22:03:14
トンデモ料理人に言われたくないw
※47318:No name:2010/02/18 10:59:43
クッキングパパの本編ではまことが成人式を迎えている件
※47319:No name:2010/02/18 11:55:49
ここに包丁無宿も加わったら・・・
※47323:No name:2010/02/18 14:08:17
つかみが最高wwそして感動したww
※47330:No name:2010/02/18 18:05:25
将太が一番うざかったwwww
※47415:No name:2010/02/20 18:03:34
毒舌なら「ザ・シェフ」の
味沢さん枠が何故無いのだ…
と思ったけど太閤と被るからかね
※47423:No name:2010/02/20 21:07:01
いい終わり方だったが、解説とアナは死んだほうがいい。
※47457:No name:2010/02/21 15:00:44
正直コンブに料理人はあーだこーだと言われたくはないな
リトルグルメでダメなものは本気でまずいから
※47472:No name:2010/02/22 00:11:26
クッキングパパって他の料理漫画作家に嫌われてるの?
別にいいじゃん、勝手に厨房借りたりする位・・・それぐらいしか思い当たらないけど

それにしても作中のアゴの扱いがヒドすぎて悲しいゾ!
※54523:No name:2010/08/04 23:36:48
ミスター味っ子は、復活してしまったな……
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