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ただのにっき


2012-04-06(金) [長年日記]

首相官邸ホームページとアクセシビリティ

首相官邸ホームページのリニューアルに4,500万円かかったというニュースで高いの安いのと話題になっているけど、それはまぁどうでもよくて*1。これに対してあるWebデザイン会社が書いた「高くないよ!」というエントリを読んだアクセシビリティ業界人たちがそろって天を仰いだという話である。

件のエントリは「首相官邸ホームページのリニューアル構築費用に対して製作者側からの考察」で、特にアクセシビリティのところはツッコミどころ満載なんだけど、その点にかんしてはすでに木達さんが書いているので(ようするに先をこされた)、Web業界人はろくろなんて回してないで読んでおいた方がよいです。特にアクセシビリティとデザインの両立のところ。

さて、首相官邸ホームページのリニューアルでアクセシビリティを確保するとして、件の記事では300万円の見積を出しているのだが*2、じゃあ300万円相当の仕事がされてるかどうか確認してみよう。というか、例えばトップページでCSSを有効にしたまま画像表示をOFFにしてみればそうでないのが一目瞭然なのだ(上はGoogle Chrome 18、下はFirefox 11):

[スクリーンショット]画像を非表示にした首相官邸ホームページ(Google Chrome 18によるもの)

[スクリーンショット]画像を非表示にした首相官邸ホームページ(Firefox 11によるもの)

注意: いくつか誤認および誤解を招く表現があったので公開当初から内容をアップデートしてあります。

左上にあったh1要素による「首相官邸」が消えてしまったが、これはいわゆる「画像置換」という手法を使ってテキストを画像に置き換えているせい。画像置換は達成基準1.1.1の不適合事例で明確にNGとされている*3。1.1.1は「レベルA」なので、首相官邸ホームページは最低限のアクセシビリティも確保できていないのがわかる。また、Firefoxでみるとグローバルナビゲーションの文字が左に重なって表示されており、これも読めない(めんどくさいので原因は追求せず。li要素のfloatの問題?)。他にもコントラストの足りていないアイコンがあるし(これはレベルAA)、タブキーによるフォーカス移動になかなか遊び心があって(←皮肉)、問題は他にもたくさんありそうだ。この案件のRFPにJIS X 8341-3:2010への対応は含まれていないのだろう。そもそも対応表明のページもないし。2012年に公開される公共サイトでそれはないだろうとは思うが。

よりによって一国を代表するWebサイトのアクセシビリティがてんでなってないとか、「技術的理由による競争の不存在」を理由に随意契約を結んだベンダーが画像置換を使っていたり*4、「持続可能なデザイン」を謳うWebデザイン会社がWebアクセシビリティについて無理解だったり……と、実に嘆かわしい話ではあるが、その批判の矛先はわれわれWebアクセシビリティに携わる者にも向けられるべきだろう。まだまだ啓蒙活動が足りない。がんばりましょう。

追記

その後、実際にアクセシビリティチェックをしている人が現れているので、参考までにリンクをしておく。実際のチェックがどのような観点で行われ、どんな手法が使われるのかの一端がわかると思う。

Tags: a11y

*1 ちなみに全部で1億2千万円の案件うちの4,500万円の話である(←これとは違うという話もあってよくわかんない)。小泉首相(当時)はメルマガのためだけにたしか1億円かけたはずなのであれと比較すれば格段に安いんじゃないですかね。それよりツッコミどころはなんでこれが随意契約なのってところじゃないかと思うのだが。

*2 この規模のサイトでこの見積は少ないと思います。

*3 ただし、実装方法C30にあるように代替ページがあれば良い。もっともimg要素にはalt属性があるんだから、わざわざ画像置換なんてしなくていいはずである。マークアップエンジニアの腕のみせどころ。なお他のimg要素にあるalt属性がChromeで表示されていないのは表示領域が狭い場合にWebKitで発生する問題なのでサイトのアクセシビリティとは別の問題。

*4 脚注1にも書いたように本当にこの案件のことなのか定かでないのでこの批判は適切ではない可能性もある。


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