
きのうはすごい風だったな。
おれんちのまわりにはタワマンが何本もにょきにょき立ってるから、なおさら風がキツい。ひどいもんだぜ。これも「公害」だよな絶対。イマドキ建設前にいくらだってコンピューターでシミュレーションできるだろうに。
それはともかくとして、これはルシンダ・ウィリアムスのニューアルバムなり。
去年の暮れくらいからピーター・バラカンの番組などラジオでかかるのを何回か聴いて、あーこれはいいなあと思ってたんだよな。
例の感染症が世界じゅうで猛威をふるってる最中、ルシンダが始めた〈LU'S JUKEBOX / IN STUDIO CONCERT SERIES〉つうカヴァーアルバムのシリーズがあってね。サザンソウルのカヴァー集とかディランのカヴァーとかトム・ペティのカヴァー集なんかが今までに出て、LPを買ったのもあればハイレゾをダウンロードしたのもあり、配信で聴いたのもあったりしたんだよ。
たしかウィルスの蔓延で仕事が激減したスタジオミュージシャンやレコーディングスタッフの救済と、室内に引きこもることを余儀なくされてるリスナーのためにルシンダ姐御がスタートさせたシリーズだったから、パンデミックの沈静化した今ではもう完結したんだとばかり思ってた(けっこうなハイペースでアルバム6枚出た)。
そしたら去年の暮れにビートルズのカヴァーときたもんだ。しかもアビーロード・スタジオでレコーディングしたっつうんだから、ちょっとびっくりだ。
もしかするとシリーズとして所期の目的は達したけど、やってみたらカヴァー集作りが意外と楽しくて(曲を作らなくていいからラクってのもあったか)、なおかつセールス的にも売れ行きが良かったってことなのかもしれない。
まあホントのところはよくわからんけども、ともかく年末からラジオでかかるのを何度か聴いてるうちにこれは配信とかダウンロードとかじゃなくてレコードで欲しいよなと思ったんでした。
ルシンダ・ウィリアムスってシンガーは、おれが聴き始めたころは〈オルタナ・カントリー〉系のシンガーソングライターつうようなジャンルでわりかし語られた気がする。ようするにカントリーシンガーとしたら相当にクセっぽいというか個性的というか、だから誰でも好きになるようなひとじゃなかった。
明るく爽やかなんつうところはないしね。どっかライヴで叩き上げた苦労人の歌手っぽい雰囲気だし、ざらざらした声でシャウトしたり唸ったりするし発音もクセっぽい(もしかして方言か)。そのうえトシ取ってきてからは風貌にいっそうヤサグレ感が増してきたりなんかして、まあどう考えたって全世界で何千万枚もアルバムが売れるようなスターなわけはない。
それがねえ。このビートルズのカヴァー集ではびっくりするくらい「素直」にストレートに歌っててね。それが新鮮というか意外つうか、まあこのシリーズ全般にストレートに歌ってきてるとは思うんだけども、ビートルズではそれをことのほか感じてしまうんだった。
なにを歌ってるかといえば
side 1
Don't Let Me Down
I'm Looking Through You
Can't Buy Me Love
Rain
While My Guitar Gently Weeps
Let It Be
side 2
Yer Blues
I've Got a Feeling
I'm So Tired
Something
With a Little Help from My Friends
The Long And Winding Road
以上12曲。
あのルシンダ独特のシャウトとか唸り声もない。自分の個性に強引に引っぱり込んだ「解釈」なんてのもなくて、どっちかっていうとティーネイジャーのころシングル盤をかけながら、あるいはラジオから流れてくる曲に合わせて口ずさんでたのを思い出して歌ってるような素直さを、フッと感じたりしてね。いやーあの姐御がねえ、って感じがまたいいんだよね。
ミュージックマガジン誌1月号のレビューによればルシンダ10歳のころ「自室の壁はビートルズだらけ、ポール・マッカートニーに夢中だった」とある。
あーそんな感じがジャケットの写真にも出てるかもなあ。ちょっとだけ夢見るオトメっぽい?
ドキドキしながらアビーロード・スタジオで歌ってるルシンダ・ウィリアムス72歳。
だけどさ。アビーロード・スタジオで録音されたビートルズナンバーなんだけど、バックはギター・ベース・ドラムスの3ピースにペダルスティールとハモンドB3が加わって、なんつうかもうこれはかなりバリバリの "アメリカーナ" サウンドなのであった。これがまた、おれ的にはとってもいいんだよねえ。
どのトラックもいい感じで、一度ターンテーブルに乗せれば両面全曲聴いちゃうんだけども、B面ラストのロング・アンド・ワインディング・ロードがしみじみとして、あーもういっぺんアタマから聴こうかなーなんて毎回思っちゃうんだよ。
それとこれは余談ですけど、ジャケットまん中らへん 'From Abby Road' の文字のすぐ下の白ヌキの6本線が楽しいよな。
HIGHWAY 20 RECORDS (7 3288 20533 0)
さらに余談。
それにしても今日び新譜のレコードは高い。おいそれと手が出せるようなお値段じゃない。ぢつは買うか買うまいか結構迷ったもん。これも4070円もしたけどイマドキもっと高い新譜LPはいくらでもある。年金生活のジジイにはツラいよ。