こんにちは、日向です。
ツタヤ図書館問題を調べていると、各自治体の非常識な対応に、めったやたらと遭遇しますので、もうたいがいのことには驚かなくなっているんですが、
そんななかでも、本日、またメガトン級の“非常識ネタ”に出会いました。
香川県坂出市が昨年9月に発表した、JR坂出駅前にツタヤ図書館を核とした複合施設を建設する件です。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20240911/8030019332.html より |
坂出市は8月27日、JR坂出駅前と坂出緩衝緑地の再整備を進める事業者として、大手ゼネコンの大林組を代表とするグループを選定し、このほどグループから提案された計画を明らかにしました。
それによりますと、駅前に作る拠点施設は吹き抜けの4階建てで、カフェやラウンジのほか、「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブが手がける図書館も入るということです。(NHK NEWS WEB09月11日 JR坂出駅前の再整備 “図書館を核に” 拠点施設計画を公表より)
この件について、先週、CCC選定までの詳細なプロセスがわかる公文書を坂出市の総務課に開示請求しましたところ、
所管しているはずの教育委員会には、「文書はなにもない」と情報公開担当課の方から連絡がありました。
ということは、坂出市は、最近よくある図書館など教育文化施設の所管を教育委員会から市長部局に移管していて、
通常、教育委員会で必要とされている手続をしないでも、市長部局だけの決裁でなんでもできるようにしているんだろうと思ったんですね。
一応、その確認をしようと、本日、図書館部門のトップである館長さんに直接聞いてみたところ、
(市長部局へ)移管はしていません
とおっしゃるんですよ。
えっ?
でしたら、教育委員会でなんらかの手続を経ないと、いきなり駅前の複合施設に新しい図書館を建設するなんていう計画ができるわけがないのでは? 計画どころか、PFIで建設から運営まで担当する事業者もすでに選定されていて、そこにちゃっかりCCCが入っているんです。
図書館を駅前に移転して建替え、いまの中央図書館は廃止し、その運営を民間企業に委託(指定管理がどうかは不明)するという、地元元市民にとっては、このうえもなく重大な事柄について、所管する教育委員委員会では一度も議題にのぼることがなく、もちろんその承認も一切経ておらず、民間委託へ向けた条例の改正もなく進められていたわけで
いきなり、
賑わい創出のための図書館を駅前につくるよ、すごいでしょ。
と市長が宣言したということなんですよ。
新しい図書館を建設するとなければ、まずは図書館協議会などで議論したうえで、パブリックコメントを募集して市民の意見を聞いたり、ワークショップを開催したり、検討委員会を立ちあげて有識者の意見を聞いたりしたうえで、新図書館の基本計画を策定するものです。
村民への説明会を一度も開催しなかったと批判されている、あの沖縄県読谷村ですら、10年前に策定した図書館基本計画はありました(消されていた検討委員名簿)。多賀城市も和歌山市も、同様の計画文書は存在しました。
どの自治体も、曲がりなりにも、一応は、教育委員会内部でそれらのプロセスを経ていて、そこから初めて、新図書館の基本構想とか施設の基本設計を担当する事業者が決まるという流れでした。
建設と運営を一括にして民間に15年~20年委託するPFI案件であっても、教育委員会の承認が必要ないはずがありません。現に、読谷村は、坂出市と同じくPFI案件でした。
「いくらなんでも、教育委員会の手続がなにもないというのはおかしいんじゃないんですか?」と、館長さんにお聞きしましたら
えっ、なにが悪いの? それあなたの意見でしょ?
みたいな対応をされまして、図書館部門のトップなのに、まったく話が通じないといいますか、法制度が異なる外国の人と会話しているようでした。
そういうことは全部、公民連携・DX推進課で決めてますよ
と、おっしゃるんです。
図書館協議会は、一応設置されているそうなので、その場で今回の駅前図書館の件は議論はされているのでは?
と館長さんにお聞きしましたところ、
議論はしていないけど、パンフレットなどの資料は委員全員に配布した
そうです。当然、プロジェクト内容について詳しい説明はされたのでは?
と、さらに、しつこくお聞きしましたところ
市民向けのパンフは委員全員に配布したけど、特に説明はしていません
とのことでした。
ということで、徹頭徹尾、所管する教育委員会をパスというか、ないがしろにして、新しい賑わい創出型図書館を駅前に建設するという坂出市は、市長の独断でツタヤ図書館を誘致した12年前の佐賀県武雄市の原点に戻ったかのような様相を呈しているんです。
これまたすっかり忘れていましたが、坂出市がツタヤ図書館を誘致するであろうことは、以前書いた記事で予想していましたが(「公民連携」の種明し)、現実に、教育委員会をここまで徹底的に無視した市長独断の実態を目の当たりにすると、もう言葉がないと言いますか、とてつもない衝撃を受けました。
武雄市図書館・歴史資料館が2013年4月にオープンして以来、CCCによる図書館運営を決めた自治体の不適切な決定ブロセスが世間の批判を浴びて、もういまでは、あんなあからさまなことはできなくなったと思っていた矢先に、まるで12年前に時計を逆戻ししたかもような自治体が現れるとは、夢にも思いもしませんでした。
そう言えば昨年9月、この計画が報道された直後に、坂出市の担当部署に、テンプレの質問をしていたことを思い出しました。
選定されたカルチュア・コンビニエンス・クラブは、2019年2月に基幹事業が消費者庁に違法認定されて、1億円の課徴金を課せられた(“嘘つきTSUTAYA”を違法認定)ことはご存じですか?
担当課の回答は
知りません
でした。
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