今回は、クレジットカード会社のVISAで働いていたセキュリティエンジニアの方から聞いたお話をしようと思います。
彼はもう退職されてるんですが、当時の給与をいきなり言ってしまいますと、私が聞いた7年前では50万ドル、つまり日本円で5500万円ぐらいということでした。
日本で高給を稼がれている弁護士の方なんかもそうかもしれませんが、ものすごい知識を持っている方っていうのはやはり希少性がありますから、短時間で高いお給料を稼げるというところがあるんじゃないのかなと思います。
彼はインドの方なんですが、高校の時にこちら(アメリカ)にきて、大学・大学院・PhDと全て数学を専門として学んできたんですね。
でも数学のアルゴリズムに関する知識だけは天才的と言うか、数学者としてはトップクラスと言うぐらい高いレベルだったんじゃないのかなと思っています。
例えば、(ちょっと技術的なことで分かりにくいかもしれませんが)暗号化するときに使われる公開鍵・秘密鍵に関する技術で、AESという暗号化アルゴリズムがあるんですが、彼はそのAESの中身(どんな処理が行われていて、どういう数式を使っているのか)も理解できて、さらに自分でAESのようなアルゴリズムも生み出せると私は聞きました。
日本で数学がめちゃくちゃ得意で数学オリンピックに出るようなお子さんもいると思うんですが、そういう方々は(数学者を目指すよりも)アメリカに来てセキュリティエンジニアになった方がいいんじゃないかなと、彼の話を聞いて私は思いました。
数学者は(仕事としては)面白くていいかもしれないんですが、なかなかお金にならないというところもありますのでね。それよりもセキュリティエンジニアとして成功して高い給与を得るというのはやっぱりひとつの狙い目かなと思います。
(とは言え、数学レベルはかなり高くないといけないので、その点は知っておく必要があります)
そして、その後の彼のキャリアですが、日本円で5500万円の給料ですから、やっぱりお金もどんどん貯まって余裕が出てくるものの、仕事が面白くなくなってきちゃったそうなんですね。ということで彼は結局その後スタートアップ(起業)しちゃいました。
(スタートアップしたときに私もいろいろお手伝いして、彼が考えるアルゴリズムを私が実装するという形で一緒にやっていました。方向性としてはめちゃくちゃ惜しかったものの、うまくいかず買収されて終わって利益も損失もなくという感じだったのですが、それはそれで私の経験としては非常に良かったと思っています)
どういったスタートアップだったかと言いますと、今クラウドでファイルを暗号化する技術がありますよね。
dropboxなんかが上場する頃に、クラウド上でどのように暗号化してファイルを管理するかということが、結構大きな話題になっていて、彼はそこに目を付けたんです。
ファイルを暗号化するときには、復号化するための秘密鍵を自分で持っていないとダメなんですが、秘密鍵をなくしてしまうとファイルの復号化ができないので、ローカルで秘密鍵を保存するというのはリスクがあるわけです。
で、今はもうクラウドの時代で、クラウド上にファイルをアップロードして暗号化するという技術はあるんですが、復号化のための秘密鍵はクラウド側にあるものを使ってやらなければいけないので、クラウド側の秘密鍵がなくなったり盗まれたりしたら、結局情報が盗られてしまうということになりますよね。
そういった面で、クラウド上のファイル管理をどうするかが問題になっていました。
そこに着目した彼が何をしたかというと、その秘密鍵を第三者機関で保管するような仕組みを作ったんですね。
ファイルをアップロードして暗号化するのはクラウドで、秘密鍵はクラウドではなくその第三者機関で管理するというイメージです。
さらにですね、複数の人が持っている情報がすべて集まらないと復号化できないというブロックチェーンのようなイメージで、全ての人が持っている情報をかき集めてさらに復号化を行うのは前述の第三者機関というようなことを考えていました。
ちょっと分かりづらいかもしれないんですけれども、これと同様のことをやっていたスタートアップが他にもあって、そこも数学のスペシャリストやエンジニアが3人程度でやってたんですが、そちらはsalesforceに30億ドルぐらいで買収されたんですよね。
彼も同じようなことを考えていたのに、それが(ビジネスとしては)ちょっとうまくいかなかったので我々としてもかなりショックでした。
そして彼は、ブロックチェーンのようなしくみは数学のスペシャリストだったら誰でも思いつくって言うんですよね。
数学のアルゴリズムとかに日常で触れない一般的な人と違って、そういう専門的な知識を持った人たちには当たり前みたいなやり方があるので、私も彼ともうちょっと早く始めていたら今頃何十億とお金が入ったかもしれないなんて悔やまれますが、まぁそれは後の祭りですね。
その後は(他社と)同じようなことをやってもダメということで、方向性を変えて違う暗号化方式を目指したんですけれども、ちょっと最近のトレンドと合わなくて売却するいう形でスタートアップは終わりにしました。
今は結局VISAで働いていたときと同じようにセキュリティの専門家として、楽な仕事で高い給与を得るという暮らしをしてます。
高い専門性があれば仕事が続く
彼のように、とりあえずアメリカに来てお金を貯めてしまって、その後スタートアップなり好きなことをして、それがうまくいかなければまた自分の専門性を活用して企業に勤めて高い給与を得て・・・という生き方を見てるとですね、まさに英語で言うところのジョブセキュリティ(Job Security、仕事に就き続けられること)という感じだなと思います。
ということで、数学がめちゃくちゃ得意だけど、日本では知識を生かせないという方はですね、こちらアメリカのセキュリティエンジニアを目指すのもいいんじゃないのかな~なんて思って、今日はVISAに勤めていたセキュリティエンジニアについてお話ししてみました。
酒井潤
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数学の専門性で高給を得る
しかも1日大体3時間くらい働いて、あとはリラックスして食事をしに行ったりジムに行ったり上司と雑談したりという感じで、非常に割がいいお仕事だったと言っていました。
日本で高給を稼がれている弁護士の方なんかもそうかもしれませんが、ものすごい知識を持っている方っていうのはやはり希少性がありますから、短時間で高いお給料を稼げるというところがあるんじゃないのかなと思います。
彼はインドの方なんですが、高校の時にこちら(アメリカ)にきて、大学・大学院・PhDと全て数学を専門として学んできたんですね。
コンピューターサイエンスの授業も一応取っていたそうですが、(私も一緒に仕事をしたときにびっくりしたくらい)彼はプログラムは書けないですし、Linuxのコマンドとかも叩けないんです。
でも数学のアルゴリズムに関する知識だけは天才的と言うか、数学者としてはトップクラスと言うぐらい高いレベルだったんじゃないのかなと思っています。
例えば、(ちょっと技術的なことで分かりにくいかもしれませんが)暗号化するときに使われる公開鍵・秘密鍵に関する技術で、AESという暗号化アルゴリズムがあるんですが、彼はそのAESの中身(どんな処理が行われていて、どういう数式を使っているのか)も理解できて、さらに自分でAESのようなアルゴリズムも生み出せると私は聞きました。
でも、彼は数学者ではなくセキュリティエンジニアというキャリアを選びました。
数学の知識があればシリコンバレーではセキュリティエンジニアという職でIT企業に入る道がありますし、そちらの方が給料も高くなるからということなんですが、これは私から見ても非常に良い選択だったんじゃないかなと思います。日本で数学がめちゃくちゃ得意で数学オリンピックに出るようなお子さんもいると思うんですが、そういう方々は(数学者を目指すよりも)アメリカに来てセキュリティエンジニアになった方がいいんじゃないかなと、彼の話を聞いて私は思いました。
数学者は(仕事としては)面白くていいかもしれないんですが、なかなかお金にならないというところもありますのでね。それよりもセキュリティエンジニアとして成功して高い給与を得るというのはやっぱりひとつの狙い目かなと思います。
(とは言え、数学レベルはかなり高くないといけないので、その点は知っておく必要があります)
専門性を生かしてスタートアップ
どういったスタートアップだったかと言いますと、今クラウドでファイルを暗号化する技術がありますよね。
dropboxなんかが上場する頃に、クラウド上でどのように暗号化してファイルを管理するかということが、結構大きな話題になっていて、彼はそこに目を付けたんです。
ファイルを暗号化するときには、復号化するための秘密鍵を自分で持っていないとダメなんですが、秘密鍵をなくしてしまうとファイルの復号化ができないので、ローカルで秘密鍵を保存するというのはリスクがあるわけです。
で、今はもうクラウドの時代で、クラウド上にファイルをアップロードして暗号化するという技術はあるんですが、復号化のための秘密鍵はクラウド側にあるものを使ってやらなければいけないので、クラウド側の秘密鍵がなくなったり盗まれたりしたら、結局情報が盗られてしまうということになりますよね。
そういった面で、クラウド上のファイル管理をどうするかが問題になっていました。
そこに着目した彼が何をしたかというと、その秘密鍵を第三者機関で保管するような仕組みを作ったんですね。
ファイルをアップロードして暗号化するのはクラウドで、秘密鍵はクラウドではなくその第三者機関で管理するというイメージです。
さらにですね、複数の人が持っている情報がすべて集まらないと復号化できないというブロックチェーンのようなイメージで、全ての人が持っている情報をかき集めてさらに復号化を行うのは前述の第三者機関というようなことを考えていました。
ちょっと分かりづらいかもしれないんですけれども、これと同様のことをやっていたスタートアップが他にもあって、そこも数学のスペシャリストやエンジニアが3人程度でやってたんですが、そちらはsalesforceに30億ドルぐらいで買収されたんですよね。
彼も同じようなことを考えていたのに、それが(ビジネスとしては)ちょっとうまくいかなかったので我々としてもかなりショックでした。
そして彼は、ブロックチェーンのようなしくみは数学のスペシャリストだったら誰でも思いつくって言うんですよね。
数学のアルゴリズムとかに日常で触れない一般的な人と違って、そういう専門的な知識を持った人たちには当たり前みたいなやり方があるので、私も彼ともうちょっと早く始めていたら今頃何十億とお金が入ったかもしれないなんて悔やまれますが、まぁそれは後の祭りですね。
その後は(他社と)同じようなことをやってもダメということで、方向性を変えて違う暗号化方式を目指したんですけれども、ちょっと最近のトレンドと合わなくて売却するいう形でスタートアップは終わりにしました。
今は結局VISAで働いていたときと同じようにセキュリティの専門家として、楽な仕事で高い給与を得るという暮らしをしてます。
高い専門性があれば仕事が続く
専門的な知識があれば、スタートアップに行っても、それがうまくいかなくても、また元の道に戻れるんだなと。
ということで、数学がめちゃくちゃ得意だけど、日本では知識を生かせないという方はですね、こちらアメリカのセキュリティエンジニアを目指すのもいいんじゃないのかな~なんて思って、今日はVISAに勤めていたセキュリティエンジニアについてお話ししてみました。
技術的なことが多く参考になったか分かりませんが、こういった話もまたお伝えしていこうと思います。
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