<金口木舌>文化と人が行き交う場所


<金口木舌>文化と人が行き交う場所
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 桜坂劇場で上映中のドキュメンタリー映画「キノ・ライカ」は、フィンランドにある人口9千人の小さな鋳物(いもの)工場の町に初の映画館ができるまでを描く。故郷への恩返しのため、映画館をつくったのは「枯れ葉」などの作品で知られる巨匠アキ・カウリスマキ監督

▼仲間と共に自ら椅子を取り付け、スクリーンを張る。作中、映画とは何かとの問いに「コミュニティーセンター」とのナレーションが流れた。館内にはワインバーも備え、映画館は人と人をつなげる場となった。その姿は桜坂劇場とも重なる

▼劇場内のカフェには上映後、語り合う人々の姿がある。同劇場はカルチャー講座を併設し、音楽ライブも開く。2005年に桜坂シネコン琉映を改修してオープンし、今夏で開館20年となる

▼中江裕司監督ら有志が立ち上げた会社が企画・運営する。中江監督は「劇場に豊かさは宿る。自分たちがいいもの、美しいと思えるものを発信したい」と語る

▼月額制の動画配信の普及で、映画を見る方法は増えたが、銀幕から映画の世界に浸る時間は格別だ。いつでも立ち寄れる、文化と人が行き交う場は地域の宝である。