「楽園追放」とはグラフィニカによって制作された、SF作品です(劇場公開)。キャラから爆発まで、ほぼすべてCG。いやあグラフィニカの絵作りって凄いですね。公開されてから、ずっと色んなところで絶賛の嵐だったので、そんなにすごいのかという感じで猜疑的だったんですが、百聞は一見に如かずという感じで。実際に見てみると、確かにこれは一定の評価はされるなあと。

そんで、本題は、劇中に出てくる「エフェクト」です。ええ、ここからはアンジェラちゃんがどうのこうのとかそういう話は一切しません。お尻にも触れません。徹頭徹尾、「エフェクト」のお話しかしません。煙、爆煙、砂埃、爆発。CG、作画を問わずにまとめて紹介したいと思う。

(「楽園追放」において、演出を務められた京田さんから色々と指摘をいただいたので、一部訂正しました。雑でごめんなさいね。そーす→。京田さん、ありがとうございます。)


さて大きな見どころとしては、やはり終盤。フロンティアセッターによって解放されたアンジェラがド派手に暴れまくるところから、ラストの打ち上げまで。カットごとに、少しずつ見て行きましょう。


・最新アーハンとサポートシステムを奪取するところ
20150213170758

姿勢制御スラスターを使い、回頭しているシーン。ここのスラスターが細かく描くことにより、この映像が実際に存在するかのように感じられる。つまりリアルさがある。



・保安局防空隊(赤メカ)の攻撃を交わしているシーン
20150213170759

ここはフルCG。戦闘機や板野サーカスの動きというのは、実に数学的でCGでもやりやすいと思うんだけど、ここでは爆発も素晴らしい。コマ送りしないとCGと分からないし、実際はもっと映像のスピードは速く、それに合った爆発とその煙の残し方(画面からフェードしていく感じ)が良い。



20150213170800

雪の結晶のように展開される爆発がグラフィニカではメインのような気がします。これって「宇宙戦艦ヤマト」であったり、結構古めな爆発なフォルムの気もする。CGにどういうのが適当なのかがイマイチ分からないけど、結構ハマってますよね、コレ見ると。



20150213170801

ここではCGと作画の両方で、爆発シークエンスを楽しむことができる。画面奥では、CGによる爆発があり、手前では中鶴さんの作画(※訂正)による手書き爆発が見て取れる。CGは基本的に画の粒子(ピクセルみたいな)が細かいことが、CG爆発に違和感が発生する原因だと思うんだけど、今回は意図的に粒子数を減らしているような気がする。



20150213170802

橋本作画。ワンカット目のクロス光の多用も印象的で、爆発自体のディテールも細かい。これはそこそこ時間かけたと思う。2カット目も透過光の広がりと消滅、そして触手煙を中心とした消え行く煙(画面左から中央)が上手い。まるで、演技を終えた役者が舞台から自然と去っていく感じ。



20150213170805 

電撃エフェクト。刺々しい電撃の合間にタタキのような小さいパーティクルも存在していることが分かりますね。実際の電撃というものをあまり見たことがないからアレですけど、このタタキはディテールアップのためだと思う。ただリアルを写しとってアニメに落としこむだけではなくて、こういった変換的な追加も必要なんだと思います。




・サーカスからの爆煙
20150213170808

全面CG煙。ここがCGの煙では一番良かったように思う。粒子数を減らしセルに色合いを近づけながら、タイミングもしっかりとこだわっているのがわかる。カット終盤の覆いかぶさってくるような、ダブラシ煙がいい味出してるんですよねえ。




20150213170809

ここは誰か分かんないけど、上手かった。吉岡さんによる作画(※訂正)。ジャミングスモークがその場に留まっている状態から、ミサイルがそれを突き破るという状況なんだけど、煙が破られるタイミングが特に良かった。多くの場合は早いタイミング(ミサイルがまだ来ていない状態)で空いてしまうんだけど、ここではミサイルが通った後に、そのミサイルの動きに合わせるかのようなタイミングで煙を突き破っている。戦闘機における、マッハの描写みたいな感じ。ちゃんと考えてアニメートしていることが分かる。



20150213170810

ここは、レイアウトとタイミングの勝利。奥行きのある画面を用意し、そして奥から連続爆発。しかも爆発が手前側になるにつれ、徐々に速くなってきているのがわかる。これによって、ことさら爆発の臨場感は増すし、同時にリアルさも増す。また連続爆発なんだけど、爆発と爆発の間のテンポは一定ではなく、ゆらぎがあるのがまたいい。多分タイミングは相当凝ったはず。これは考えてやってる。それもとんでもなく。



・市街地における爆発集
20150213170812

グラフィニカらしいフォトリアルな爆発。ズドドンと植物が生えるように展開されるフォルムは美しい。そして、画面手前(左)の爆発と画面奥(右)の爆発とでタイミングが異なっているのがとてもいいなあと感じた。せっかくレイヤーを分けているのに、タイミングは何故か全て同じということがCG爆発では多いので、こういったCG爆発に(セル時代の)知恵や感性を持ち込んでいるのが良かった。



20150213170815

PANしながらの連続爆発3つ。これもまた透過光も上手いし、触手煙も上手い。瞬間的な広がり方から、じんわりとしたその場での留まる煙の感じ、そうして動くべきところ(触手煙)は動かしてる、これが良いです。



20150213170816

透過光は前述した通り、発生と消滅も素晴らしいんだけど、ここでは触手煙の飛び方がいい。触手煙のタイミング、そのまま残っている煙との対比でぴょーんと飛んで行く感じがすごい良いですね。



・倒壊シーンと高架橋の崩壊
20150213170814

おそらく橋本作画。CGではないと思う多分。ここまでくると、レイヤーの氾濫ですよね。何層にも重なって、臨場感と立体感を出そうとしてる。いいなあ。破片もまた別セルでしょうけど、細かく描かれていて、ディテールアップに貢献してる。

【追記 2015/02/14】
Twitterで情報を頂きました(ありがとうございます)。
ビイ @wuokb  20時間前
@iqyu2627 監督の生コメンタリーで作画素材をCGアニメーターが組み合わせてコンポジットしてると言ってましたね
やや違和感(CGっぽいけど手書きにも見える)があったのは、これが理由かもしれないですね。



・ロケット打ち上げシーン
20150213170817 

ラスト打ち上げ。小澤さんによる作画(※訂正)。もこもこした煙と、そのしっかりとした動かし方は見事。2カット目で少し留まる大気・煙がここでは一番良くて、写実性を高めている。これにはフロンティアセッターも唖然とするしかない。



少し雑かもですが、「楽園追放」のエフェクト、CG・手書き問わずに紹介しました。CGによる爆発作画も進化を遂げていて、まさしくグラフィニカすげえなって感じです。今までのアニメ作品では必ずと言っていいほど、見所となるシーンには手書きでの爆発作画だったんですが、「楽園追放」では違っています。見せ場にCGを持ってくることも多々あるし、普通のシーンに作画を使う場合もある。それぞれの長所を活かして採用している印象を受けました。とにもかくにも、エフェクト好きとしては大変楽しめました。いやあ、CG爆発もいいもんですね。