晴天の霹靂

上品な歩き方とかを習得できないまま人生を折り返すとは

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』~顔面に魅力ありすぎる皆さん

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を観てきたよ。


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しばらく前から劇場予告をしょっちゅう見かけていたので、映画友達に「今回のデカプーも中年を腹黒さで煮詰めたような顔をしていて本当に素晴らしい」というような感想を漏らしたところ「今回のデカプーはイイモンだろ」という思いもかけない返しをされたのです。

そこで私は言いました。一体何を言っているのか、と。スコセッシが満を持してデ・ニーロとデカプーを連れてくるのに今さら苦境に立っている少数民族に心を寄せる良き夫とその叔父の役なわけがないだろう。

公開前で予告映像しか観てない者二人で激論になりまして、あんまり楽しみだったので原作買って先に読んだことですね。

原作の副題を読んだだけで、「ほら、映画のトレーラーと印象違うじゃん!」となってだいぶ盛り上がってくるわけですが、内容もまた超面白いのです。

デカプー問題については当然読むとネタバレしてしまいますが、私は読んでから見に行って正解でした。というか、読んでだいたい知っているのにそれでも映画鑑賞中に「待て待て、この人誰だっけ?」ってなるところがあったので、登場人物いっぱい出てくると頭の中で話の整理をするのが苦手な人は、読んでから観たほうが落ち着いて楽しめるような気がします。字幕でしたが「純血資産」とか、はじめて目にする日本語が出てくるし、そこで気をとられてると話がどんどん先に進んでしまうので、背景知ってて良かったです。

ネタバレした上で観てもめっちゃめちゃ面白い。

 

驚異の3時間26分あるのですが、デカプーが出てきた瞬間に「大丈夫、この映画は面白い」っていうのがわかって安心します。なんという顔面の天才。最後がなぜかちょっとマーロン・ブランドに似てくるところも超面白いではないか。なんなんだ、その顎。

あとは、ちゃかちゃかしてないのに勝手に面白いデニーロと、そんな熟練の顔芸の間にあって沈黙の中にたくさんの表情をみせるリリーグラッドストーンもまた素晴らしく、終始引き込まれます。

 

リリーグラッドストーン演じるオーセージ族の女性は、英語で喋ってもロクなことにはならない人生を歩んできているので無駄なことは一切言わない寡黙で聡明な人なのですが、その意志の強い顔を正面からのアップにして静かな声で「無能力者です」と何度も言わせる無駄のない胸糞演出も印象が強くて素晴らしかったです。こんなに胸糞悪いのに、あいつとあいつは意外とあんまり憎めなくて困る。っていうか、特にお前は本当にちょっとしっかりしろ。

間違いなく今年ベスト級の一本でありました。

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