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日販の物流新拠点「N-PORT新座」に自在型自動倉庫「ラピュタASRS」が導入 多品種少量在庫管理に対応

出版取次の日本出版販売株式会社(日販)は、物流新拠点「N-PORT新座」を2024年10月7日に開設した。持続可能な出版流通の実現に向けて日販グループ全体で取り組んでいる「物流再編プログラム」の第一弾として着手した新拠点で、日販グループを横断した新しい倉庫管理システムのほか、Rapyuta Roboticsの自在型自動倉庫「ラピュタASRS」が導入されている。12月10日にプレス公開が行われたのでレポートする。

日販の新物流拠点「N-PORT新座」

■日販の「物流再編プログラム」とは

日本出版販売株式会社 物流企画部 部長 大熊祐太氏

会見では見学に先立ち、日販 物流企画部 部長の大熊祐太氏が日販の「物流再編プログラム」について解説した。少子高齢化に伴う生産年齢人口減少、燃料費や人件費の高騰等による物流における諸問題に加えて、書店数も減少しており、その売り場を支える出版取次の物流も施設の老朽化や、一冊あたりの物流維持コストが年々上昇するなど曲がり角を迎えている。
日販ではまずは拠点集約によって対応している。これまでにも市場変化に合わせて拠点集約を行ってきた。今後は練馬と浮間に2拠点ある雑誌送品拠点も、2025年夏には浮間流通センターに統合する予定だ。
同業他社であるトーハンとの協業も進めており、書籍返品で協業してトーハン桶川へ移管する。これについては2025年には具体的発表が行われる予定だ。これからも統合や効率化によって特に固定費を削減することでコスト削減を続け、物流を持続的なものに作り変えようとしているという。
いっぽう、本と雑誌の流通量が低下しているなか、書店で扱われている他商品である文具や雑貨など全てを日販で扱えているわけではない。そこでより物流現場を汎用性と柔軟性を高くしていくことで「持続可能な物流」へと作り変えようとしている。

幅広い品揃え、オールインワン納品などで書店の売り場を支える

具体的にいうと、従来は書籍につけられているISBNや雑誌コードだけしか扱えなかったシステムから、一般商品のJANコードやハウスコードも扱えるような新たなシステムを実装することで、柔軟性を高くする。さらにロボットなど自動化マテハン機器を導入することによって現場を省人化し、より高い生産性実現を目指す。
だが、そうはいってもピッキングに関しては人間のほうが生産性が高いし、様々なものを扱える。だが人手不足なので搬送はロボットに、在庫をどこに置くべきなのかといったリロケーション判断等はAIにまかせることで、複雑なピッキング作業は人間が行うべきだと日販では考えているという。
そして書店の売り場を全て支援できる幅広い品揃えやオールインワン納品によって店頭作業負荷の低減、トラックの積載率向上、さらに出版社各社の倉庫とも連携して「ネットワーク在庫」と扱えるようにすることで在庫の引き当てや着荷確約も行えるようにする。共通の倉庫管理システムを用いることで、まずはグループ内から連携を開始しており、将来的には様々な出版社倉庫と結ぶことを目指す。N-PORT新座の文具雑貨商材も、従来通り出版便を使って運ぶことで納品の手間を一度にまとめる。
紀伊國屋書店とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、日販が2023年10月に共同出資して設立した、書店と出版社が直仕入れする株式会社ブックセラーズ&カンパニーの出荷を「N-PORT新座」で行っている。新しい仕組みを使いながら、本や雑誌、文具雑貨など様々な商材を扱っていきたいと語った。

■文具雑貨の3拠点を1拠点に統合、クラウドWMS「SLIMS」を導入した「N-PORT新座」

「N-PORT新座」の由来。「N」には複数の意味が込められている

「N-PORT新座」は日販の物流再編一期の取り組み。新座をプロトタイプとして他拠点にも改革を進めていく。拠点設立で一番大変な点は「人集め」だが、埼玉県新座はもともと日販グループの拠点が集中した場所だったこと等から優れた立地だと判断し、「2027年までに物流再編をやり切る」ことを目標としている。

「N-PORT新座」の商品が入荷するトラックバース

「N-PORT新座」の「N」は、New、Notice、Normalといった色々な意味が込められている。書店の売上が下がっている今日、様々な商材で書籍・雑誌以外の売上を支える日販のポートといった意味だ。常温の倉庫だがお菓子類など食品にも対応可能だ。

パレット単位で平置き管理されている商品

延床面積は7,670坪。主に文具雑貨商品等の保管および仕分・出荷のほか、出版社からの物流受託事業の拡張、他社からの物流業務受託(3PL)を担うことを狙っている。10月には王子流通センターから移管した雑貨の出荷を開始した。さらに10月中旬にカルチュア・エクスペリエンスで扱う文具の移管・出荷を開始、11月上旬に王子流通センターから文具を移管し本格稼働した。常駐する社員数は15名程度。協力会社の労働者数はおおよそ140名。

WMS(倉庫管理システム)はセイノー情報サービスの「SLIMS(スリムス)」。ロボットに指示を出すWESは「RMS」

セイノー情報サービスのクラウドWMS(倉庫管理システム)の「SLIMS(スリムス)」を導入しており、他拠点とも連携・拡張が可能だ。ロボットへの作業指示や状態管理は、いわゆる WES(倉庫実行システム)に相当する「RMS(Robots Management System)」経由で行なっている。

「N-PORT新座」の機能概要。商品は左から右へ流れる

「N-PORT新座」は、従来は王子の拠点で行っていた文具雑貨の3拠点を1拠点に統合し、業界最大規模の倉庫となった。入荷された商品は従来型の平置き管理と棚管理、そして自動倉庫の「ラピュタASRS」に入庫されて管理される。大量にまとめて出荷されるような製品はフリーロケーション方式での平置き管理で、自動倉庫には入れない。

棚管理されている商品

扱いアイテム規模は37,000SKU。2024年11月末現在では22,000SKU、2,000,000ピースとなっている。平置きと棚管理の商品に関してはピッキングはハンディターミナルを使っている。出荷作業は、アイテムごとにまとめてピックする「トータルピック」と、一つ一つの店舗ごとに周回しながらピックしていく「オーダーピック」に分けられている。まとまったアイテムに関してはトータルピックで行うことで、従来は200周していた作業の手間を削減することができ、試算では作業工数の3割を削減できるという。両者の手法を柔軟に切り替えられるのも「SLIMS」導入の効果だ。

まとめてピッキングするトータルピックによって作業工数を3割削減

アイテムごとにピックされた商品は椿本チエインのソーターか、DAS(デジタルアソートシステム)に流されて各店舗ごとに仕分けされる(後述)。ソーターは100間口の仕分けが可能で、DASは500間口ある。DASは流量に応じて編成を変えられるようにしている。
「N-PORT新座」はまだ満床になっておらず、空いているスペースは出版社倉庫や3PL事業向けに展開しようと考えているとのこと。配送についてはナショナルキャリアとも連携し、出版便以外にも対応する。

■「ラピュタASRS」を導入、ロングテール商品を格納

「ラピュタASRS」。

「ラピュタASRS」は、高さは9段(5m)。従来型のGTPでは昨今の倉庫の天井高(6m)を持て余し、保管効率が低くなるが、自在型自動倉庫の利点を活かした。よく出る商品は下側に、あまり動かない商品は上のほうに収納される。もともと最初は、AMR導入を検討していたところ、新たなソリューションとしてRapyuta 側から提案されたという。
中を走り回るロボット数は90台。ビン(専用オリコン容器)は9000ビン。これを間仕切りを使って1、2、4、8分割して使っている。内訳は保管ビンが6,000、出荷ビンが3,000。

ラピュタASRSの出荷用ステーション。作業内容はライトとディスプレイで指示される。モーションキャプチャ監視も行ってミス防止

「ラピュタASRS」の特徴の一つは、ロボットが商品が入ったビンをどんどん持ってくることによる作業者の手待ち時間の少なさ。目標は1時間あたり400行(オーダー)。一般的にはGTPでも200行程度で、従来の人が歩き回ってピッキングする方式で90-100行程度なので「約2倍の数字を出していこう」と目標を掲げているという。ピッキングの詳細については下記の動画を参照してほしい。
*動画

一般的には、商品を10分類すると、上位2割の商品が全体出荷量の8割を占めると言われる。いわゆる「パレートの法則」だ。ラピュタASRSには、上位2割の商品ではなく、残りの8割、すなわち多品種少量の部分を入れて管理する。よく出荷される商品は従来どおり棚管理や平積みのほうが効率的だと判断した。残り8割の従来方式では物流効率が悪いものを自動倉庫に入れることで、高い生産性で、しかも誰でも均等な速度で行えるようにすることが目標だ。「ECの場合は注文単位が小さい。卸の場合は注文単位が大きいので従来どおりのやり方も必要」とのことだった。

物流効率の悪いロングテール商品を自動倉庫に収納・管理

残念ながら今回のプレス見学の折には「たまたま出荷がないタイミング」とのことで動いていなかった。動作はあくまでデモで動かしてもらったものだ。
*動画

■「とにかくやってみよう」がすごいRapyuta Robotics

ラピュタASRSのビン搬送ロボット。カメラ画像処理にはNVIDIA Orinを採用

必要な要件検討は事前に行ったとのことだが、「ラピュタASRS」はまだ開発中であり、実際に今回の導入検討中にも仕様が変更になっている。たとえばカメラ画像のエッジAI処理に使われていたのは開発初期は産業用Raspberry Piだったが、現在では NVIDIAのJetson Orin Nanoが使われている(詳細はNVIDIAのブログに掲載されている)。
それについては「勝手により良いものになっている」という感覚だったという。ユーザーインターフェースなどについては日販からも積極的に提案しているが、それ以外の仕様についても徐々に向上していったという感覚だったそうだ。

Rapyuta Robotics CEO モーハナラージャー・ガジャン(Gjan Mohanarajah)氏。スリランカ出身で、日本・東工大とスイス・チューリッヒ工科大学でロボティクスを学んだ

Rapyuta Roboticsへの印象については、「多国籍のメンバーから形成された会社なので、良い意味で『違うな』と思いました。『とにかくやってみよう』、『明日良くなるから大丈夫だ』というポジティブマインドがあって、そこは本当に勉強になる」とのことだった。
将来的には「ラピュタASRS」の機能を、出荷後の搬送にも用いたいと考えているという。「ASRS」のフロア部分をそのまま次の工程へと伸ばすことで、ロボットを使って自動で搬送させる。コンベアよりも安価で、しかも柔軟性に富むと判断している。

「N-PORT新座」では独自の青いフレームを採用

■椿本チエインのループ式ソーターも導入

椿本チエインのループ式ソーター。100間口ある

出荷については、多方面に素早く仕分けするために椿本チエインのソーターも導入した。リニアモーターで駆動するループ式ソーターの汎用機で様々なものが仕分けできる。ストレートソーターと違って、「シュート」と呼ばれる仕分け先がいっぱいになってもレーンが止まることがない。能力は最大5000個/時間、シュート数は100。1日あたり15万ピース、5万行の出荷能力を持つ。対象物は文具・雑貨、アパレル、食品、玩具などだが、本の仕分けにも対応する。

DASエリアでは500間口までの仕分けに対応

ループ式ソーターは100間口だが、並行して使っているDASでは最大30人での仕分けが可能で、500間口までの仕分けに対応する。特に仕分けしきれない処理の注文に対応する。また雑貨や新商品などSKUが少ない商品を仕分けするにはDASのほうが効率がいいという。

■休憩室には植物工場パッケージ「City Farming」も

2F休憩室

環境整備にもこだわった。2Fやエレベーターホールを改修して各フロアに休憩できるスペースを増やした。以前は少なかった休憩室を増やすことで労働者が気持ちよく働けるようにしたという。

オフィス向け植物工場パッケージ「City Farming」が導入されている。栽培されているのはイチゴ

2Fの休憩室には、日販とオカムラが進めている、オフィス向け植物工場パッケージ「City Farming」が導入され、中ではイチゴが育っていた。植物工場を生活空間に提供することを目指しており、100Vのコンセントがあれば栽培・設置が可能だ。

N-PORTエントランス。日販のバリューがまとめられている

■本や雑誌のマテハンにもロボットやAIの活用は「マスト」に

ロボット活用は今後も「マスト」になると語った

日販の大熊氏は「書店さんの売り場を支える物流として投資した。しっかり注文していただきたい」と語った。消費者目線では今後、店頭での商品のバラエティが増すことが期待される。書店にとっては、一括で様々な商品を日販が取り扱えるので、様々な会社と取引する手間なく店頭アイテムを増やすことができる。
今後は2年目での単年度黒字を目標とし、センターの満床を目指す。そのために関係各所と商談を進めているとのことだった。特に書店店頭に並んでいる商品のメーカーと話をしているほか、Rapyuta Roboticsとも話をして、互いの顧客を紹介しあったりしているという。
本や雑誌に関する今後のマテハンに関しても聞いてみた。「今後さらに人手が不足することは確実なので、ロボットやAIを積極的に活用することで、より効率的なものに変えていく必要があると考えている」という。
具体的には、「たとえばAMRは使えるのではないか」と考えているとのことだった。「商材は様々なので、アイテムのピッキングにおいては人が必要だと考えています。しかしAMRを使うことで『担当する間口はここからここまで』といったことがやれればいいんじゃないかと考えています」(大熊氏)とのことだった。

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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