山梨県の大月駅(大月市)と河口湖駅(富士河口湖町)を結ぶ富士急行線を運営する富士急行は4月28日、鉄道事業を5月に分社化する方針を明らかにした。
分社化については、新型コロナウイルスの感染拡大や地域経済の落込み、公共事業の縮小、モーターリゼーションの進展などで鉄道事業を取り巻く環境が厳しさが増していくなかででも「富士山に一番近い鉄道」として今後も鉄道事業を継続することを理由として挙げており、「様々な環境変化に即応する機動性を確保しつつ、より地域に密着した営業体制とする」としている。
分社化に際しては、富士急行が100%出資する新会社を設立し、同社を分割会社とする会社分割により鉄道事業を新会社へ承継させる吸収分割方式が採られ、5月に子会社を設立し、今後、所管官公庁の許認可へ向けて動き出す。
社名は「富士山麓電気鉄道」となるが、これは1929年6月に富士電気軌道からの譲渡を受けて大月~富士吉田(現・富士山)間の運行を開始した時と同じで、リバイバルする形となった。
大月駅と現在の富士山駅を結んでいた富士電気軌道は、1900~1903年に開業した馬車鉄道(都留馬車鉄道、富士馬車鉄道)が発祥で、これら2社の軌間が異なることによる乗換えの不便を解消するため、電化を経て1921年7月に1本化された会社だった。
しかし、輸送量の増大などに伴ない、馬車鉄道時代から続く併用軌道上での運行が困難になったことから、富士山麓電気鉄道へ引き継がれ、現在のような鉄道線での運行が開始された。同鉄道は1960年5月に富士急行に改称されていることから、実に61年ぶりの社名復活となる。