「10年先読み」がトップの仕事 アサヒ会長の未来像
アサヒグループHDの泉谷直木会長(下)

アサヒグループHDの泉谷直木会長
国内のビール市場で首位を走り、グローバル展開も進めるアサヒグループホールディングス(HD)。株主の目が厳しくなる中、2011年にホールディングス体制へ移行したが、会長としてどのような役割を果たしているのか。10年先のアサヒはどんな会社になるのか。泉谷直木会長に聞いた。
10年後のアサヒグループHD
――今の泉谷会長の役割は何ですか。
「今日、明日の経営に口を出すことはない。10年先に必要な人材とは何か、10年先に我が社はどんなポジションにあり、何をしているのか、そういったことを考える。私の生活はそんな感じです」
「ずっとトップをやっているわけもないし、(10年先のことを)考えてどうするのか、という人もいる。しかし、投資家が我々にカネを出す理由は何か。トップの経営能力や人柄もあるが、企業戦略の差別性と、中長期的な成長可能性、さらには、戦う市場の規模と成長性だ。投資家は、将来どれだけ収益を生むかでその会社の価値を測る。しかし、確証が持てるわけじゃない。だから、今の上場企業の経営者は投資家に『私は10年先をこう見ている』という見識を披瀝(ひれき)できないといけない」
――株主の目も年々厳しくなっています。
「2011年にホールディングスにしたのは、株主中心の経営にするという意味ではないが、資本市場を意識したということだ。私は『SSK(ステークホルダーサティスファクション経営)』と呼んでいるが、顧客、社会、株主、従業員など、すべてのステークホルダーにどれだけ満足を与えられるかが重要だ。たとえば機関投資家と議論すれば10年先の収益、社会と向き合うなら、サステナビリティー(持続可能性)、つまり20年、30年後の話になる。社員も、結婚し子どもが生まれ、子育てしているときに、3年後にクビになるかもしれないといわれたら困るでしょう。豊かな生活が送れるよう、長く会社で働いている。顧客に対しても、『うまい』と思って買ってもらっている商品を我が社の都合で勝手にやめるわけにいかない。そうすると、『長期の視点』は必要なんです。そこから考えて今何をやるべきか」