なでしこジャパンの時代は終わったか?:なでしこ凋落の予兆!?
いま欧州でアルガルベ・カップが開催されている。これは、ワールドカップ、オリンピックに次ぐ重要な大会である。しかしヤングなでしこを含めた今回のなでしこジャパンは見る影もないらしい。以下のものである。
サッカー日本のA組3位以下確定 女子アルガルベ杯
ドイツに敗れ、肩を落とす(左から)田中美、田中陽、川澄の日本イレブン=パルシャル(共同)
【パルシャル(ポルトガル)共同】サッカー女子の国際親善大会、アルガルベ・カップは8日、ポルトガルのパルシャルなどで1次リーグ第2戦を行い、ドイツに敗れて2連敗の日本のA組3位以下が確定した。
ノルウェーがデンマークと0―0で引き分けて1勝1分けの勝ち点4でドイツと並び、日本は最終戦でデンマークに勝っても勝ち点3にしかならない。デンマークは2分けの勝ち点2。
B組では米国が中国に5―0で快勝して2連勝。スウェーデンはアイスランドを6―1で下し、1勝1分けとした。
というわけで、日本はこれから5位、6位の方に回るはずだろう。
11位決定戦 - C組3位とC組4位
9位決定戦 - C組2位と、A組・B組各4位のうち成績の悪いチーム
7位決定戦 - C組1位と、A組・B組各4位のうち成績の良いチーム
5位決定戦 - A組3位とB組3位
3位決定戦 - A組2位とB組2位
決勝戦 - A組1位とB組1位
私が予想するに、これは「なでしこジャパンの凋落」の序章であろうと思う。今回はちょっとこれをメモしておこう。
なぜそうか?
というと、実はこれこそ女子サッカーをずっと見てこないと分からないものなのである。私は大分前から女子サッカーも見てきたので、おおよそ予想したとおりである。要するに、女子リーグ世代の変化とともにレベル低下が起こってきたということに尽きる。以下を参照。
なでしこジャパンW杯初優勝おめでとう2:「なでしこは一日にしてならず」」
(この記事を書いた頃、私の息子たちが対戦した中学の選手に、道上彩花ちゃんがいた。阿南中vs那賀川中の試合である。私は横で見ていたから、彩花ちゃんが男子を全部後ろからコントロールしている姿を見ている。今では、女子の日本代表である。)
女子サッカーの第一世代は、例えば、澤穂希選手の世代、大野選手の世代は、小中高の時代、特に小中の時代に「男子といっしょに練習してきた」世代である。男勝り、男の子のように育った世代である。今の世代では、道上彩花選手がここ阿南出身で、男子生徒に混じって小中といっしょにサッカー部で過ごした選手である。
なぜなら、当時は女子サッカーチームがなかったからである。女子がサッカーをやりたければ、男の子に扮して行うしかなかった。「だれ、あのちょっとなよっとした上手い子は?」「あの子、女子なんだって!」と父兄やお母さんたちが言っていたような世代である。
しかしながら、大都市を中心に女子校サッカー部、女子中サッカー部、そして女子の小学校チームや、そしてクラブユースの女子専用の育成チームができてくると、今度は、最初から女の子同士でしか試合をしたことがないという選手たちがたくさん登場して来たのである。
身体能力とスピードに勝った男子選手相手に戦ってきた女子と、男子と比べてのろまで優柔不断な女子選手たちを相手に戦ってきた女子とでは、サッカーの感覚に差が出てくるのである。
この後者の代表格が、今回代表招集された、田中美、田中陽子選手たちである。いわゆる「ヤングなでしこ世代」である。大半は浦和やINAC神戸などの女子専門の育成チームから出てきた選手たちである。こうなってくると、男子の日本代表や男子サッカーと同じような”現象”が現れるのである。
男子の場合は、Jリーグの下部組織のクラブユース出身者と高校サッカー部出身者がこの差になってくる。クラブユースは、幼少期から「選抜試験」を受けて入るから、中に所属している選手がみんなうまい。あらゆる点で他のチームより優れている。幼少期に優れているということは、「早熟だ」ということである。つまり、クラブユースは、地方の「早熟でうまい選手」を根刮ぎする。だから、相手にはその残りが集まる。
したがって、同じ年代で試合をする限りにおいて、同世代には勝って当たり前の状態になってしまう。チーム内で試合するほうが、実際の試合より難しいという状況になる。これが結局、試合中に「手を抜く」、「サボる」、「ちんたらプレーをする」という状況を生むのである。つまり、「いつも必死で一生懸命プレーしない」、「インチキプレーでも試合には大勝する」という状況が生まれるのである。
これが、実はその選手たちを「スポイルする」、「ダメにする」のである。せっかく、良いチームに入って良い指導を受けるのだが、自分たちが強すぎるために、一生懸命にプレーしなくてもいつも優勝する。だから、選手たちが特別意識を持ち、傲慢になり、怠慢プレーをする。あるいは、多少自己中心的なプレーでも許される。サッカーの鉄則通りにプレーしなくても勝てる。言い換えれば、「遊ぶことを覚えてしまう」のである。
この結果、高校レベルから青年時代になると、徐々に相手の下手くそだと思っていた選手たちの身体能力も大型になりスピードも上がり、昔よりずっとうまくなってくると、だんだん自分たちが通用しなくなってくるのである。
ところが、一方の高校サッカー部ではそうはいかない。練習をしないもの、しっかりしたプレーしないものは、レギュラーから外される。高校総体や選手権などすべてトーナメントの一発勝負である。一回でも負ければ終わり。だから、上手い下手以前に常に全力プレーしなければ勝てない。いい心がけを培って、「運を味方につける」。そうでもしなければ勝てない。そういう状況になる。
これが、日本代表の岡崎選手や元日本代表のゴン中山選手たちがレギュラーになっていられた基本的理由である。彼らは高校サッカー時代にそういうメンタリティーを身につけたからである。サッカーの上手い下手ではない。身体のあるなしではない。とにかく、チームのために懸命に動きまわる精神を身につけたからである。
ところが、ユース出身者にはこれが希薄になる。中には、読売ユース時代には神童と言われたような伊藤リオンですら、関東連合の愚連隊や殺人チームの仲間入りをしてしまったというのである。いかに精神を鍛えることが大事か分かるだろう。スポーツは、体でも技でもない。最後にモノを言うのは、精神性なのだ。
これと非常に似た状況がそろそろ女子サッカーにも見えてきたナ、というのが、私個人の見解なのである。田中選手たちは、最近のU20ワールドカップでも非常にいい活躍をし、うまい選手である。しかし、自己中心的で、フォア・ザ・チームやサッカーの鉄則を外した場面が非常に多かった。結局、私は頑張ったけど試合には負けちゃった、という試合だったのである。そこが、澤選手の世代たちとは大きく異るように見えるというわけである。
この問題を、私はだいぶ前から(昔の拙ブログKiKidoblog時代から)「子供横づなの問題」と称して指摘してきた。小学生横綱が大相撲の横綱になることはまずない。子供時代に大柄で強い柔道選手も世界レベルでは小粒になる。だから、子供の時早熟で大柄の選手にも、実際には小柄な選手としての基本を身につけさせないと、世界では通用しないという問題である。どのスポーツにおいても日本人は極めて小粒である。だから、国内で大きく見えてもそれは国内の話であり、世界レベルに通用するのは小粒としての基本技術なのである。日本人選手が大きなプレーをしては世界では通用しないのである。だから、いまのヤングなでしこも国内ではそこそこ通用しても国際大会ではまったく通用しなくなるのである。これは、故柘植俊一博士が日本の柔道についてソウル・オリンピックの時代から言ってきたものである。日本人は小粒としての技の基本を身につけなければ世界には通用しないと。
女子サッカーも高校まで男子サッカー部所属義務とか、そういった特別ルールを課さないと、日本の男子以上に大柄の欧州の女子サッカー選手相手にはまったく歯がたたなくなるはずなのである。
まあ、私個人の見方だけどナ。
いやはや、なでしこジャパンの将来はちょっと暗雲見え始めたようですナ。
by KiKidoblog | 2013-03-09 11:40 | なでしこジャパン