はじめに
この記事は、株式会社スピードリンクジャパン Advent Calendar 2024 の24日目の記事です。
こんにちは、SES営業を10年近くやっている曾我といいます。
まずは、この記事を手に取っていただき、ありがとうございます。
今回はSES営業を10年近く携わっている私が感じている「スキルシートの重要性」を書いていきます。
エンジニアにとって、スキルシートは自分のキャリアを形にしたプレゼン資料であり、
案件先のお客様(顧客)に「会いたい」と思ってもらうための鍵となる存在です。
この記事では、なぜスキルシートが重要なのか、
どのようにスキルシートを見ているのかを含めてお話しします。
SES業界で案件が決まるまでを知る
まずは、SES業界での営業フローを簡単に説明します。
多くのSES会社では、1日あたり1000~3000通の案件や人材の情報がやりとりされます。
その中から案件と人材をマッチングさせるのが営業の役割の一つです。
以下が、案件獲得までの基本的な流れです。
【SES営業の基本フロー】
- 1.情報収集
- 案件概要として、業務内容や募集要件、就業条件を把握します。
- 2.マッチング
- 案件概要に見合う人材がいるかをスキルシートをもとに判断します。
- 3.提案
- 選定した人材を案件先に提案。案件概要に対する適合性をコメントし、スキルシートを送付します。
- 4.書類選考
- 案件先がスキルシートを確認し、提案された人材が案件に合うかを判断します。
- 5.顔合わせ
- 提案内容が評価され、案件先が「会ってみたい」と判断した場合に実施。業務内容やスキル、人柄の確認が行われます。
- 6.契約
- 双方が合意に至れば、参画に向けた契約手続きを行います。
今回はこのフローの中でもマッチングと提案で必要な「スキルシート」を細かくみていきます。
スキルシートは、案件参画を目指すうえで最初のステップであり、欠かせないツールの1つです。
スキルシートは提案の命綱
スキルシートは、営業にとって「提案書」であり、
エンジニア自身にとっては「プレゼン資料」です。
案件先と顔合わせをするには、まず提案が必要です。
そして提案にはスキルシートが欠かせません。
つまり、スキルシートは案件参画の第一歩となる重要な存在です。
しかし、スキルシートの情報が不十分だと、以下のような問題が起こります。
- ・営業が正確なマッチング判断をできない
- スキルシートの内容が薄いと、営業が人材のスキルや経験を正しく理解できず、マッチングの精度が下がります。
- ・案件先に不安を与える
- 案件先が「この人に任せて大丈夫だろうか」「自分がやってきたことを理解できてないのか」とマイナスな印象を与える原因になります。例えば、経験が明確でない場合や具体性に欠ける記載があると、不安を抱かれやすいです。
もちろん、あえて情報を簡略化し、「実際に会って確認したい」と思わせる作戦もあります。
ただし、その判断は案件先へ委ねることになるため、リスクが高いのも事実です。
スキルシートを改善することにより、マッチングの精度や提案の質を上げられ、
より良い条件や業務内容の案件への選択肢が広がります。
では、どのようにスキルシートを改善していくのか?
次は、案件概要にはどんな募集要件が書いているのかを見てみましょう。
案件先の顧客が求めている情報が分かり、記載すべき内容が分かってきます。
案件概要を知る:求められる情報を理解する
スキルシートを改善させるには、まず案件概要をしっかり理解することが大切です。
私が日々目にしている案件概要は、以下のような形式が一般的です。
- 【案件概要の例】
- ・案件名
- ・案件概要
- ・必須スキル
- ・尚可スキル
- ・作業期間
- ・作業場所
- ・募集人数
- ・単価
- ・精算条件
- ・面談回数
- ・商流
上記の項目をもとに案件情報がまとめられていて、
内容の粒度はその案件先の顧客ごとにまちまちです。
この項目の必須スキルを見てこの案件にこの人材が合う合わないを判断していきます。
必須スキルのところによくある条件が下記のものです。
- 【必須スキルのよくある例】
- ・〇〇言語(Java,PHP…)の経験3年以上
- ・〇〇業界(金融系、官公庁系、ECサイト…)での経験・知見
- ・自発的、積極的に業務を行える
- ・コミュニケーション能力
- ・その案件での具体的な作業経験(DBチューニングの経験、ドキュメント作成の経験…)
- ・プロジェクト管理経験
など、大きく分けると、技術的な経験値を図るもの、
働く姿勢や対人能力を図るようなものがあり、
1つの案件に必須スキルの要件は3〜10個の記載があります。
とはいえ、
Java経験3年以上は何ができれば良いのか?金融系で何を経験していたら良いのか?
何を持ってコミュニケーション能力があるといえるのか?など、
疑問に思うことは多々あります。
この限られた情報をもとに、どんな内容がスキルシートに必要かを考察していきます。
顧客の心に響くスキルシートを作るためには?
端的に言うと、スキルシートの内容はできる限り詳細に書くです。
「詳細に」というと抽象度が高いですが、顧客の視点に立って詳細に記載をすることがポイントで、
顧客の欲しいであろう情報が記載されていることが重要です。
先ほどの「案件概要を知ろう」の部分で、
「〇〇言語(Java,PHP…)の経験3年以上」とありましたが、
3年経験していると何ができるようになっているのかを深ぼって考えてみると…
経験3年以上は、一般的に言うと『詳細設計〜開発・テスト』ができることを指しています。
このキーワードだけを読み解くと、
「詳細設計〜開発テストまでを任せたいんだな。」
「同じような開発環境で経験している人がキャッチアップも早くて良さそうだな」
「テストまで担当するとなると、なるべく品質担保の観点も大事にしている人が良いんだろうな」
「詳細設計となったら、ドキュメント作成もできる人が良いんだろうな」
など、顧客視点に立つといろいろと想像ができます。
そう考えると、下記の情報はスキルシートに必要となりそうだということが分かります。
- 【〇〇言語3年目以上でのスキル要素】
- ・経験した開発工程
- ・設計書の作成有無
- ・開発手法
- ・どんな機能を開発したのかなど担当領域
- ・どんなフレームワークを使用していたか
- ・どんな開発環境だったか
- ・使用した言語のバージョンは何か
- ・テスト技法
- ・何人体制で行なっていたのか
など
他にも、「プロジェクト管理」が必須スキルの場合だと、
下記の経験があるかスキルシートで分かると良さそうだなと言うことも分かってきます。
- 【プロジェクト管理でのスキル要素】
- ・メンバーの工数管理
- ・メンバーのコードレビュー
- ・案件のWBS管理
- ・タスク管理、タスク割り振り
- ・もしかすると予算管理も?
顧客側の立場になってみると、必要と思われる情報が次々と浮かんでくることが分かります。
これらの情報がスキルシートに記載されていれば、
案件先の顧客も「このエンジニアに会ってみたい」と思う確率が高くなりことや
「この人に任せたらうまくいきそうだ」と感じてもらいやすくなります。
案件によっては、守秘義務やセキュリティの観点で詳細を書けない場合もあります。
その際は、「顧客とのセキュリティポリシーに基づき、詳細は非公開」といった
一文を入れることで、プロフェッショナルな印象を与えられます。
顧客の「選びたい」と思う人材になる
顧客は常に、「この人ならスムーズに業務を進められそうだ」「他の候補者よりも適任だ」と感じる人を選びます。
そのため、スキルシートは「ただ書くだけ」ではなく、顧客の心に響く内容を意識して作成することが大切です。
スキルシートの充実度は、エンジニアのキャリアの可能性を広げるカギとなります。
ぜひ、自分のスキルや経験を顧客に伝える「プレゼン資料」として磨き上げていきましょう。