この記事は「大分高専 Advent Calendar 2024」25日目の記事です。
はじめに
この記事では、私が高専を退学するまでの経緯と退学した後の振り返りを通じて、高専を退学した理由と高専を退学するまでの意思決定・行動をまとめます。
高専を辞めるというのは学生にとってハードルの高いことであり、悩んでいたとしても簡単には決めることのできないことだと思います。
この記事が過去の私のように高専で進路に悩んでいる人や、その家族や担当教員などの一助になれば幸いです。
この記事はあくまで高専で悩んでいる人のための筆者の主観的な意見であり、決して高専のネガティブキャンペーン等を行うものではありません。
私が高専を退学するまで
入学当初(1年目)
入学当初は学校で購入したプログラミングの教本を読みインベーダーゲームを作ったり、ロボット系の部活に所属してロボットの制御について学んだりするなどとても充実した日々を過ごしていました。部活動では最高の先輩にも出会うことができ、私の目標になりました。
その頃は当時の私と高専の環境が非常にマッチしており、不満もなく、自分にとって最高の環境でした。
2年目
2年目になると、UnityやUnrealEngineでのゲーム制作やLinux系のOSを使ってサーバーを構築するなど興味の幅も広がり、ますますエンジニアリングのスキルを身につけていく一方で、学校での授業との乖離を感じ始めます。
自分の時間をフルでエンジニアリングに投入したい、よりエンジニアとして成長したいと思う一方で、すでに理解した部分を授業でやらないといけなかったり、正直履修しなくても良いような内容の授業でパソコンの使用を許可してもらえず、自分としては時間を無駄にしている感覚が日に日に強くなっていきます。
3年目
3年目になるとゲーム会社でのインターンを通じてゲームエンジンを自作したり、Proxmox、Django、Nextjs、Vulkanなど、さらに授業とは乖離した内容に興味を持つようになります。またこの時期から単発でのプログラミングの案件の受注を行い実際の業務レベルでのプログラム開発を行ったり、DCONへの出場などを通して、学校の授業を律儀に受けたり、強いては高専というコミュニティに所属することが自分にとって良いものでないのでは?と考え始めます。
また後述するような、エンジニアリングに対して積極的な学生を邪魔するような高専のルールに嫌気がさし、高専からのサポートが十分ではないと感じ始めます。
4年目
そして4年目、自分の進路を本気で考えた結果、高専を退学することも視野に入れ、就職活動を始めた結果、幸運にも最高の会社に巡り会うことができ、そのまま高専を退学することになりました。
高専への不満点と寮への不満点
囲い込み防止での早期就職活動(インターン含む)の禁止
高専では5年生になるまでインターン含む就職活動を勝手に行ってはならないというルールがあります。IT系では早期先行が加速しており、4年の夏休み辺りからインターンや就職活動を始めたいところですが、それができません(インターンは一部可能)。
自分の場合はルールを破って3年生の時からインターン等に参加し、早い段階から情報を入手できていましたが、人によっては就職活動を止められる場合もあります。
学生としてはインンターンや就職活動を通じて自らの進路や人生について早い段階から考えたいにも関わらず、就職活動を禁止し、他の就活生から遅れをとるのは勿体無いです。
コミュニティとしての熱気の低さ
私が所属していた高専では、エンジニアリングに興味のある人はごく少数でした。ライバルや仲間といった関係が高専内で作りづらく、ほぼ一人で開発を行っていました。
熱気のなさはエンジニアリングだけでなく一般の部活や活動にも表れており、何かに全力投球するような仲間を得ることが難しい環境であり、退屈さを感じていました。
P2P通信を使用するソフトウェアに関して
P2P通信を行うソフトウェアの使用を禁止することに半ば強制的に同意させられます。Winnyのような使い方を間違えると危険なソフトウェアがあることは百も承知ですが、私はそれも含めて勉強の機会であると考えます。P2Pを使用してゲームやソフトウェアを作成することで学べることもあるにも関わらず一律で禁止にする(同意のサインをさせる)のは学習の機会を奪うとともに、P2Pを知らない人にとってそれ自体が危険なものであるかのように誤認させかねません。
コンテストへ参加する学生等への配慮
コンテスト等へ参加する学生に公欠がもらえません。平日に跨って開催されるようなハッカソン・コンテストへの参加が難しいです。教科によっては授業毎にテストを行うものもあり、欠席した時点で成績が下がります。それにも関わらす、受賞した際には学校で良い例のように扱われるのはモヤモヤします。
教授によっては配慮してくれる方も多くいますが、学校レベルでの支援・仕組み作りが足りないと感じます。
授業割の自由度の低さ
コンテストへ参加する学生等への配慮にも関連しますが、単位習得や授業のコマ割りの自由度が著しく低いです。選択できる教科はとても少なくほとんどが必須の教科になり、作業時間の確保が難しい、欠席がしづらいと感じます。
よく言えば授業をサボることができないですが、生徒が自主的に学習したいことがし辛いと感じます。
特に長期インターンがしづらく、最近の早期先行が進んでいるメガベンチャー等への就職はインターンから先行に進むことが出来ない点や、インターンを通じて会社の雰囲気を掴むことが出来ないなど、就職に不利な点が目立ちます。
授業を動画で録画・配信するシステムがあるのに出席を必ずしなければならないというのはいささか時代遅れに感じます。
エンジニアとして教えてくれる教員がいない
高専に所属する教員はあくまで研究者であり、授業では触りしかやらないため、エンジニアリングを学ぶのはあくまで個人としてになります。エンジニアを目指して高専に入学したのに全て個人で学習しないといけないのは残念です。しかし個人のモチベーションが高い場合授業の内容で足りなくなるのは必然であり、そこに不満はないのですが、がっかり感は否めません。
工学実験の存在
高学年での授業の中に工学実験という教科があり、実際のアプリケーションの制作を通じてエンジニアリングを学ぶ教科になっています。個人的にはこの教科は授業としての形を成していないと考えています。
この授業では教員によって班が作られその班で作業を進めアプリケーションの完成を目指すのですが、たいてい各班にプログラミングの得意な人が教員によって配置されます。そして大抵の場合その人がほとんどのタスクを消化しアプリケーションを完成させます。
班員の中に働かない人物がいれば班全体として成績が下がるので、得意な人がより一層頑張ってなんとか完成まで漕ぎ着けるというのが常態化してしまっています。
せめて全員のレベルをある程度高めてから授業を始めるなどの工夫を行わないとこれは授業とは言い難いです。もはや丸投げです。
あまりにも古い寮のルール
サーバーのホストの禁止
本高専の寮ではいかなるサーバーのホストも禁止されています。セキュリティー対策というのはわかるのですが、エンジニアを育成する学校の寮でサーバーが建てられないというのはしょぼすぎます。
危険だからという理由で学習の機会を奪うのは勿体無いと感じます。
ゲームの持ち込みの禁止
ゲームを作れるようになりたいと考え入学する人も多い中で、一律にゲームの持ち込みを禁止するというのはナンセンスだと感じます。サーバーのホストの禁止とも通じる部分はありますが、学生の本文は勉強であるという理由で学習の機会を奪うのは勿体無いと感じます。
SAや寮生総会など
本高専の寮にはSA勉強会という、低学年の寮生が一定の時間食堂に集まり勉強をしなければならないというルールがります。寮で強制的に勉強の時間を設け、プライベートの時間を侵害するのは学生の成長の観点から見ても良くありません。また食堂で行うため、パソコンを使ってプログラミングなどは出来ません。また 2,3年生の成績不良者にも見せしめのように、成績の悪いことが悪であるかのように扱われ、強制的にSA勉強会に参加させられます。
あまりにも成績至上主義であり悪しきルールであると考えます。
絶望の寮の食事
以前よりは良くなりましたが、私は4年間体調がすぐれず、病院へ行く羽目になりました。生活の中で食事はとても大切だと思っているので素材・調理法等ぜひ改善してほしいです。
進路として進学を選ばなかった理由
高専からそのまま大学に進学すると三年時編入となり、大学に入学した年の夏には就職活動を始めないといけないので、個人的には大学進学によって学べることが少ないのではないかと考えました(そもそも私の学びたい分野と大学で学べる分野に差があった)。
まとめ
- 高専は良い学校だと思いつつも次第にに自分の求める高専の像とのギャップが大きくなってしまった
- 社会には学歴がなくても案外いける時もある
- 対外的な評価を気にしすぎることなく、自分のやりたいことを見つけて、そこに全力投球することが大事だと思った
最後に
私の高専生活で得た知識や経験についてなるべく赤裸々に書いてみました。
4年間面倒を見てくれた高専には本当に感謝しかありませんし、もう一度高校受験をやり直せるとしても迷わず高専を選びます。
この記事を元に高専がさらに改善されたり、高専に関して悩める人の一助になれば幸いです。