はじめに
『Delphi 6』 についての概要です。
概要
製品概要です。
項目 | 説明 |
---|---|
製品名 | Delphi 6 |
コードネーム | Iliad |
発売年 | 2001 |
発売元 | Borland Software Corporation |
ビルドバージョン | 6.0 |
コンパイラバージョン | 14.0 |
BDS バージョン | - |
サポートプラットフォーム | Windows (/ Linux) |
前バージョンとの違い
- マルチプラットフォーム用フレームワークとして CLX (Component Library for Cross Platform) が採用された
- バリアント関連が Variants ユニットへ移動された
- 列挙型に任意の値を割り当てられるようになった
- 汎用的なインターフェイス型 (IInterface) が使えるようになった
-
{$If}
コンパイラ指令が使えるようになった -
CONDITIONALEXPRESSIONS
とCompilerVersion
が使えるようになった - インラインアセンブラが MMX 等に対応した
- 改行が LF のソースコードを扱えるようになった
- テキスト形式 DFM が Unicode 対応となった。U+0080 以降のコードポイントの文字は 10 進数で表される UTF-16LE でエスケープされるようになった
- バイナリ形式 DFM が Unicode 対応となった。U+0080 以降のコードポイントの文字は UTF-16LE で格納されるようになった
- カスタム Variant が作れるようになった
- 複素数計算用のユニット
VarCmplx
が追加された - 度量衡計算用のユニット
ConvUtils
が追加された - 文字列操作用のユニット
StrUtils
が追加された - BCD 演算用のユニット
FmtBcd
が追加された - XML をサポートした (
[XML データバインディング]
、XMLDoc
) - コンポーネントエディタ用インターフェイス (
dsgnintf
)の変更 - WebBroker が強化された (Enterprise 版には WebSnap も追加された)
- 生成した実行形式バイナリが Win32s で動作しなくなったと思われる (そもそも Delphi 2 ~ 5 で作った空のフォームのある VCL アプリケーションですら Win32s では動作しない)
- IDE の強化 (コードエディタのタブの入れ替えなど)
- Delphi 5 にあったデータモジュールデザイナが廃止され、左側ペインは [オブジェクトツリー]、[データダイアグラム]ページはコードエディタ下部の[ダイアグラム]ページへ移動した
- ネットワークコンポーネントとして『Indy (Internet Direct)』が付属するようになった
- 製品のアクティベーションが必須となった (従来はプロダクトキーのみ)
その他
- 初のマルチプラットフォーム対応 Delphi
- CLX アプリケーションは Windows 版を『Delphi 6』で、Linux 版を『Kylix』または『Kylix 2』でビルドする
- 『Kylix』『Kylix 2』のコンパイラバージョンも 14.0
- ヘルプが劣化している (恐らく CLX 対応でページ数が増えすぎた事による Windows 9x での制限)。
- BDE (Borland Database Engine) の最終バージョン (ver5.2) が付属する
- 以降、DBX (dbExpress) が付属するようになった
- 無償版の『Delphi 6 Personal』が公開された
- DFM の挙動を Delphi 5 に合わせるレジストリキーが存在するが、Delphi 7 以降には存在しないので使用しない方がいい
-
Synchronize()
が DLL 内で動作しなくなった - TBitmap にバッファオーバーフローの脆弱性がある
- W32/Induc-A に感染する
- Borland を冠する社名に戻った
- 前年の 2000 年に『Windows 2000』と『Windows Millennium Edition (Me)』が発売されています
- 2001 年は『Windows XP』が発売された年です
コンポーネントエディタ用インターフェイスの変更
Delphi 5 までに存在した DsgnIntf
は廃止されました。 多くの場合、DesignIntf, DesignEditors
に置換すれば動作します。
設計時パッケージの requiers には DesignIDE.dcp
を含める必要があります。
See also:
次に
『Kylix』 についても触れておく必要があると思います。
Kylix
Linux で動作する統合開発環境です。
CLX を使ったマルチプラットフォーム対応 (Windows / Linux) が可能です。
言語としては Object Pascal (Delphi) と C++ が使えます。「Kylix = Object Pascal」ではありません。
発売年 | 製品名 | 言語 | コンパイラ バージョン |
対応する Windows 環境 |
---|---|---|---|---|
2001 | Kylix | Object Pascal | 14.0 | Delphi 6 |
2001 | Kylix 2 | Object Pascal | 14.0 | Delphi 6 |
2002 | Kylix 3 | Object Pascal C++ |
15.0 | Delphi 7 C++Builder 6 |
- 『Delphi 7』には『Kylix 3』の Object Pascal 版だけが使える『Kylix 3 for Delphi』が付属しました
- 『C++Builder 7』は発売されていませんので、Kylix 3 (C++) と C++Builder 6 には若干のミスマッチがあると思われます
- 無償版である Open Edition もリリースされました
おわりに
『Delphi 6 Personal』のおかげで Delphi ユーザーが増えた印象があります。
- 『Delphi 6 Personal』が CD-ROM に収録されている書籍は結構あります。
- 『Kylix Open Edition』が CD-ROM に収録されている書籍も結構あります。
- 現在、Embarcadero によるアクティベーションは受け付けられていないと思いますが、インストールさえできれば未登録のままでも動いたと思います。
See also:
- ボーランド、Web サービス対応を強化した「Delphi 6」 (PC Watch)
- ボーランド、Delphi 6 と Kylix の無償ダウンロード版を 24 日に公開 (PC Watch)
- ボーランド、Linux 用ビジュアル開発ツール「Kylix 日本語版」を 5 月 18 日より発売 (PC Watch)
- Kylix (Wikipedia)
- Component Library for Cross Platform (Wikipedia)
- Delphi で生成された EXE が動作する Windows のバージョン (Qiita)
- Delphi と複素数 (Qiita)
- 【Delphi】とても長い数値の計算 (BCD) (Qiita)
- Delphi Community Edition と過去の無償版との比較 (Qiita)
- 今更聞けない Delphi のコト (フォームファイル編) (ht-deko.com)
- Delphi および C++ Builder における VCL Bitmap LoadFromFile の脆弱性について (Support Wiki)
- Delphi 6 の使用許諾 FAQ (Support Wiki)
- Delphi 6 で使用許諾が完了したのに、製品を起動すると使用許諾ウィザードが表示されます (Support Wiki)
- W32/Induc-A Virus (Compile-A-Virus)に関する Q&A (Internet Archive: EDN)