こんにちは、GxPの石村です。
この記事はグロースエクスパートナーズ Advent Calendar 2024のシリーズ 2の24日目です。
今回の記事はこの人とか意見や考え方が合わない、どうしてそんな言動をするのか理解できない、という相手との対立から抜け出して、向き合うための考え方についてご紹介します。
私も上手にできているとは言い難いのですが、苦戦しているからこそ学んでいることなので、同じく悩んでいる方の参考になれば幸いです。
なぜ対立してしまうのか
単に意見が合わないだけであれば、別の世界で生きればいいだけなので対立はしないはずです。
対立してしまうのは、自分のやろうとしていることや価値観を阻害する一因となっているからではないでしょうか。
例えば以下のような場合です。
- 相手とこちらが対立した意見を持っている状態で、いつも相手の意見を押し通されてしまう
- こちらの都合を配慮せずに一方的に意見やタスクを押し付けてくるため、計画が狂ってしまう
- チームに対してきつい叱責や嫌味な言動をされチームのモチベーションが下がる
このような場合こちらの視点からは相手は単に嫌なことをする人、意地悪な人と見られがちです。
特に相手から攻撃的な言動として表現されると、相手に悪意があるという認識が加わり、相手の意見には正当性がないようにも感じてしまうのではないでしょうか。
相手に悪意はあるのでしょうか
対立を解消できなくなってしまう大きな要因として、相手に悪意があるように感じてしまうことが挙げられます。
悪意を感じてしまうと、こちらが努力して対立を解消しようとすることにもモチベーションがわかなくなってしまいますよね。
これを放置すると対立関係が継続してしまい、その関係性にも疲弊して、相手には悪意があるということを前提に考えてしまうようになります。
そんな風に相手を見れば、普通の言動にさえ悪意を感じてしまいます。
(行間に悪意があると考えたり、なぜこの発言に至ったかの背景を嫌な風に想像したり)
しかし、実際には相手に悪意はなく、お互いの背景をわかっていないためにうまくコミュニケーションできていないことが原因であることが少なくありません。
世の中の多くの人はそんなに暇じゃありませんので、いちいち人を悪意でいじめてまわるような人はなかなかいません。
(ごくまれにそういう人もいますので、本当にそうだったら一目散に逃げましょう)
悪意があるわけじゃないと信じたい、だけど、どうしてそんなことをするのか理解ができない、という場合におすすめなのがTOCfEのクラウドです。
クラウドとは
クラウドはこんな感じで対立している自分の行動と相手の行動に対してその背景にある要望を探り、共通目標を確認した上で対立を崩すヒントが得られるツールです。
この図のように、ある課題をいつリリースするかについての意見が対立していたとします。
一方は緊急リリースすべきだ!と言っていて、もう一方は緊急リリースするべきではない!と言っている状況です。
このとき、右の意見だけしか知らない段階ではそれぞれこんなふうに相手に不満を持つ可能性があります。
Aさん→Bさん:緊急リリースしないなんて、顧客が困っていることを理解していない!現場が困っていることをもっと考えてくれてもいいのに。
Bさん→Aさん:緊急リリースを焦って進めたら品質が悪化してさらに顧客に迷惑をかける可能性がある。長期的に顧客を困らせないためにはもっと慎重に考えてくれてもいいのに。
お互いに顧客満足という共通の目標に向かっているはずなのに、なんと双方が顧客のことを真剣に考えていないかのように見えてしまうのです。怖いですね。
Aさんは決してBさんが困っているのがどうでもよくて緊急リリースしたいと言っているわけではありません。
Bさんも決してAさんが困っているのがどうでもよくて緊急リリースしないと言っているわけではありません。
でも、相手にはそう見えてしまっているかもしれないのです。
自分たちの立場や自分たちの努力しか見えていないと、相手が怠けているように見えてしまうことさえあります。
残念ながら、実際にこういう勘違いはよく起こっています。
対立を崩すためにもう一歩深掘りしてみる
クラウドではこんなふうにそれぞれの線がつながっている理由を書き足すことができます。
実際にはもっとたくさんの理由が出てくると思いますが、今回は簡単にするために1つだけ記載しています。
こうするとAさんは以下のように考えていることがわかります。
・顧客満足のためには困っている顧客に早く提供しなければならない。
なぜならば、スピーディに対応することで顧客の声に耳を傾けてくれる真摯な企業だと思ってもらえるから。
・困っている顧客に早く提供するためには緊急リリースしなければならない。
なぜならば、その顧客はこのままだと業務がまわらないから。
そしてBさんは以下のように考えていることがわかります。
・顧客満足のためには顧客に品質の良いものを届けなければならない。
なぜならば、品質が良いと安定して製品を使うことができ、信頼できる企業だと思ってもらえるから。
・顧客に品質の良いものを届けるためには緊急リリースすべきでない。
なぜならば、焦って品質が十分でないリリースを行うと、別の課題が生まれてさらに問題が長期化する恐れがあるから。
ここまでくると、どちらの考え方も間違っていないと感じるのではないでしょうか。
また、「目指しているのはそういうことだったのか」という背景がわかると、第3の案が生まれてきたり、相手の案を選択しても今回は問題ないことがわかったりしませんか?
相手の要望が想像できれば違う対応ができる
相手の指定した「行動」が絶対に変えられないものであると考えてしまったり、自分の立場から視点を動かさずに話してしまうと良い合意形成は難しくなってしまいます。
前述のように、どんな要望を満たしたいのか?どんなことに困っているのか?がわかれば、こちらから提案ができるようになります。
今回の事例であれば、早くリリースできる代替案の仕様、段階的なリリース、一時的な運用回避、相手に協力を求められればこちらが楽になるアイデア、他の案件との調整、などいろんな提案が可能になります。
次は相手に自分の背景を伝えていく
ここまで相手のことを想像してみましょうという話をしてきました。
こちらが相手の背景を汲んだ提案を繰り返していると、だんだん相手の姿勢も柔らかくなってくるはずです。
そうなってきたら、少しずつ相手の方にもこちらの背景を伝えていきましょう。
相手もこちらの背景がわかってくると、提案ベースだけでなく、相談しながらものごとを進められるようになっていくはずです。
さいごに
対立する関係性の根っこには、お互いが真剣に目標(今回でいえば「顧客満足」)に向かおうとしているエネルギーがひそんでいます。
そのエネルギーを対立に使ってしまうのはとてももったいないことです。
今日から少し相手のことを想像して、良い関係性を築き、ともに目標に向かって邁進していきましょう。
参考
TOCfE クラウド
こちらは勉強会のTOCfE BootCampが再開しましたので是非
クラウドを今回の記事にあるような観点で使うためにおすすめの本
他者と働く「わかりあえなさ」から始める組織論
どうしても疑心暗鬼になってしまう、相手に悪意があるという考え方から抜け出せない方におすすめの本
自分の小さな「箱」から脱出する方法