テーマ:F-4と女子大生
創作文章(ショート・ストーリー)を募集します。
ルールははてなキーワード【人力検索かきつばた杯】を参照してください。
締切は11月13日(土)夜10時、締切後に一斉オープンします。
黄色い風船
だれにも言ったことないけど、私は作家になりたい。てか、なれるんじゃないかと思ってる。
そんな私が、最初に小説を書いた日のことを書こうと思う。
一般言語学の授業中、私は居眠りをしていた。目を覚まして気づく。また同じ夢を見ていた。
「…ですので、FとPHは該当の関係ということです」
遠田先生が遠くでしゃべってる。となりで亜由美がiPhoneいじってる。
「ねえ、14日ヒマ? 合説いかない?」
「んー、何曜だっけ?」
寝起きの私は機嫌が悪い。
「日曜。あさってだよ。東京ビッグサイト行こうよ」
「行きたくなーい。就活かぁ、めんどいなぁ。ずっと学生でいいや私」
「なに言ってんの。夢ばっか見てちゃだめだよ?」
亜由美はまたiPhoneに目を落とした。夢ばかり見てちゃだめだよ、かぁ。鋭い亜由美のことだから、たぶん察知してるんだろう。私に就職する気がないこと。
「…ですので、FANSATY―幻想ですね―とPHANTOM―お化けですね―は語源が同じということです」
遠田先生の声で、急にさっきの夢を思い出した。
夢の中で、私はひとりF-4のコックピットに乗っていた。クルマの免許すら持ってない私は、F-4なんてどうやってエンジンを始動させたらいいかすらよくわからない。そうこうしているうちに、遠くの空に黄色い風船が飛んでいくのが見える。早くあれに間に合わせなきゃ、と思う。でも飛び方がぜんぜんわからない。風船はどんどん遠ざかり、見えなくなる。焦って、手も汗でべとべとになって、でもぜんぜんF-4を動かせない。動かせる気配もない。
そんな夢だった。
なんでF-4なんてモノが夢に出てくるのかというと、人力検索はてなに「かきつばた杯」っていう小説のコンテストみたいなのがあるからだ。そこに作品を投稿すればポイントももらえるし、練習にもなるし、ってわけでひとつ投稿しようと思ってるのだ。はてなからデビューする作家になれたらはてな初だと思う。今回のテーマは「F-4と女子大生」。女子大生ってことはまあ自分を主人公にすればいいけど、F-4ってなんだ? と思って最近ずっとネットで調べてたわけ。ぜったいそれのせいだ。
「かきつばた杯」は第1回から私ずっとウォッチしてて、今回で第4回っぽいけど、まだ1行も書けたことがなかった。でも、今回は書ける気がする。たぶん、書き始めたらカンタンなんだろうと思うけど、そこまでの道のりは険しかった。就活と同じぐらい難しい道を私は選んでるんだと思う。あーあ。授業中に夢を見て、それがファントムの夢で、そんなファンタジーな将来像を描いてるわけか私。ファンタジーとファンシーって同じ語源だろうか。
考え始めたら堂々巡りになりがちな私は、そのままぼんやりと亜由美と別れ、電車に乗って家に帰り、書かなきゃとわかってはいるのに、帰るなりベッドに倒れ込んだ。
そしてまた夢を見た。
私はF-4のコックピットに座っていた。遠くの空に黄色い風船が見えた。あれを取りにいかなくちゃ。でも飛び立てない。コックピットは耳鳴りがするほど静かなままだ。どのレバーも効かない。どのスイッチもつかない。
焦っていたら、向こうから亜由美が歩いてきた。私はここから降りて亜由美に声をかけようと思ったけれど、ドアの開け方すらわからなかった。飛べもしないし、出られもしない。焦って泣きそうになった。泣きそうなところを見られたくなくて、でも逃げ道もなくて。亜由美はしきりに私を指差したり、後ろを振り向いたりした。最初は私のことを笑ってるんだと思ったけど、亜由美の顔は笑ってなかった。なにかの手振り? 私は後ろを振り向いた。
いままで意識になかったけれど、後ろの席に私はかばんを置いていた。そしてそのかばんの上に黄色い風船が置いてあった。手を伸ばしてそれを取った。急に心が落ち着いた。飛べないならそのままでいいよ、と告げているみたいだった。私は風船に息を吹き込んだ。こんなの何年ぶりだろう。風船は最初のちょっとの抵抗をあきらめると、素直になってまるくふくらんだ。
ここで私は目を覚ました。時計を見た。いつの間にか日付が変わってた。やば、今日って13日じゃん。締め切りじゃん。
その朝、私はやっと“わかった”んだと思う。いまの私には、おおげさな戦闘機はいらないってこと。
だから私はまず、ケータイを開いて亜由美にメールをした。夢の中で、コックピットのドアはついに開かなかったけど、ケータイのメールボックスを開くのはたやすかった。
ケータイを閉じた私は、今度はパソコンを立ち上げて、「お気に入り」の中からあのURLを開いた。やってみたら書くのなんてとてもとても簡単だった。思うことを言葉にすればいい。
こうして私は、最初の1行を書いたのだ。こんな風に。
だれにも言ったことないけど、私は作家になりたい。てか、なれるんじゃないかと思ってる。
『私の彼はパイロット』
「長谷二尉、今日の”お客さん”はなんと女性だってよ。しかも現役女子大生でなかなかの美人だぜ!羨ましいなおい。格好つけて無茶な飛び方すんなよー」
隊長からからかい半分にそう言われた時、なんとなく予感がしたのだがブリーフィングルームにて”お客さん”(試乗希望者)を目にした時、それは当たった。
「まさか本当にここまで来るとはな」
「だって千載一遇のチャンスだよ?逃すわけないじゃん!」
そう言いながら美沙紀は笑った。
確かにな。
H基地では初となるジェット戦闘機試乗体験の募集が締め切られたのが二週間前。予想以上に集まった多数の応募者の中から選定するために設けられた課題は甚だ女性に不利な条件ではあったが、ひるまずそのチャンスをモノにしたのは見事としか言うしかない。
「コーちゃんのヒコーキに乗せてもらうのが昔っからの夢だったんだから・・・」
光輝にだけ聞こえるよう、そっと美沙紀つぶやいた。
成人式を迎え、すっかり大人らしくなった姿に若干とまどいを感じつつ、その言葉につかの間の感慨を覚えた光輝であった。
父親の転勤によって九州からはるばる埼玉県に引越したばかりで友達もいなかった小学生の土井美沙紀に、なんやかんやと世話を焼いてくれたのが隣に住む年上の少年・長谷光輝だった。なかでも将来の夢がパイロットである光輝が雑誌やプラモデルを見せながら得意気に話すヒコーキの存在は、いつしか美沙紀の心の中にも強く印象づけられたのであった。
光輝のおかげで近所の子供たちとすっかり仲良くなれたはいいが、どちらかというと男の子趣味に染まってしまった娘の様子に、両親は嬉しい反面困惑も多少あったとか。
そんな兄妹に近い関係が続いた二人が男女交際の間柄に発展したのは、美沙紀が高校生、そして光輝が航空自衛隊に入隊してパイロットへの道を歩みだした時期だった。
もっとも光輝の方が二尉に昇進して茨城県H基地に配属されるまでは全国を転々としていたので、遠距離でのつきあいの方が長かったが。
搭乗を2時間後に控えて、最後の打ち合わせを行う。今頃試乗体験用に武装を外され入念な整備をされたF-4EJ改が格納庫から誘導路に引き出されている頃だろう。
そしてフライトスーツに着替え、パラシュートやライフキット等装備の点検を経てようやく飛行場を出た美沙紀らを待っていたのは多数の報道陣、それに一般客だった。
「うわっ、すごい人・・・」
思わず驚きの言葉を漏らす。
「うん、まぁ何かと異色のイベントだから。しかしせっかくテレビカメラに写るってのに、その格好じゃ残念でしたねぇ」
付き添いの整備士がからかい気味に言う。
「や。私はファントムに乗りに来たわけですから!」
確かにフライトスーツとヘルメット姿では遠めには誰が誰だかわからず、初めてジェット戦闘機に搭乗するという女性を一目見ようと期待して集まった人々にとっては残念であったに違いない。
この日のために純白の塗装を施され陽光を浴びてきらめくF-4EJ改の近くまで一行は辿りつき、基地関係者の見送りを受けて美沙紀から先に後部席に座る。
光輝の方は外野の喧騒におかまいなく、まずは機体周りの点検から離陸準備に入り真剣そのもの。美沙紀にとって初めて見る表情だ。
そして操縦席に乗り込んで最終チェックを済ませた光輝がマイク越しに話しかけてきた。
「じゃ、ちょっくら行くか?」
まるで散歩にでも行くような軽い調子の言葉にふっと余計な力が抜けた。念願のフライトとは言え、直前になってさすがの美沙紀も言葉も出ずに硬くなっていたようだ。
「うん。コーちゃんの腕を信頼してるから」
「よっしゃ!任せろ」
エンジンに点火されたファントムの周囲は轟音に包まれる。
滑走から離陸までの瞬間はあっという間だった。ドンっと急に体を押し付けられたと思ったらいつの間にか機体は雲ひとつ無い冬の蒼空を急速に駆け上がっていく。
(すごい勢いで空が流れていく・・・)
かつて経験したことのない感覚に美沙紀は声も出なかった。
高度を稼ぎ、水平飛行に入って余裕のできた光輝が話しかけてきた。
「とりあえず今6000まで上がった。そんでさっき説明した通りに霞ヶ浦まで南下した後、太平洋に出て北上し帰投するコースな・・・って大丈夫か?」
「あ、うん、大丈夫。わかっていたつもりだけど圧倒されちゃった。よくわかんないけどいい機体だよね。これ」
「そうそう、前にも言ったかもしれないけど、最初はファントムライダーになるんだって決まって内心ガッカリだったよ。イーグルに乗る同期が羨ましかった。見た目もちょっとドンくさい気がしたしね」「だけど乗ってみてわかった。開発から長年運用され続けているだけの堅実さというか渋さっていうかな。乗れば乗るほど愛着がわく。まだまだやれるよ、こいつは」
ヒコーキのことになると途端に饒舌になるのは変わらないなぁ、と美沙紀は微笑んだ。そのくせ肝心な時には不器用なんだから。
巡航速度となって余裕のできた美沙紀はふと外を見下ろしてみる。快晴に恵まれて視界は良好だ。前方に霞ヶ浦の広々とした水面と所々に市街地らしき塊が見える。この高度では人家や建物はほんの小さな点に過ぎない。
「なにかリクエストあるかな?といってもあんまり激しい機動は禁じられているけどな」
「えーとね、まず背面飛行に宙返りにぃ、インメルマンターン、スプリットSにー木の葉落とし!」
「ちょっ、アクロバットじゃないんだから!っていうか最後のは零戦の得意技だろが・・・」
「あはは」
「んじゃ、ちょっと口結んでろ」
おもむろに軽く操縦桿を引き、再び上昇しながらの連続ロールに入る。
再びGに翻弄されるが今度はぐるぐる振り回されるような揺さぶりがきつい。今まで美沙紀が経験した一番のジェットコースターをさらに数倍激しくしたようなきつさだ。
それでも光輝の操縦するファントムの機動を身をもって感じられるなら後悔はない。
ふと気がつくと機体は水平飛行に戻り、海岸線を左に見ながら北上していた。
「あと10分ほどで基地上空に達する。で、体験試乗はいかがでしたか?お嬢さん」
「あぁもう、すごかった。病み付きになりそう」
「ははは、それは頼もしいことで。美沙紀はパイロットの素質があるのかもな。目もいいし体も丈夫だから」
急に黙り込んだ美沙紀を気にして慌ててように光輝は言った。
「あ、いや冗談だから。まだ学生だし、じっくり将来のことを考えろよ」
「あのね。今日コーちゃんのヒコーキに乗ったら言おうと思っていたことがあるの」
「なに?」
「ちょっと早いけど、わたし就職先は自衛隊に決めたの!そして将来の目標は職場結婚してパイロットのお嫁さんになることだから・・・今後ともよろしくね!」
かろうじて操縦桿の操作を誤らなかったのは鍛錬のたまもの。しかし驚きの余り今度は光輝は言葉が出なくなる番だった。
「・・・あー、もうすぐ着陸だから。しっかり掴まってろよ」
「りょーかい!」
やがてH基地を視界に捉えた機体は徐々に高度を落としていく。
この時、二人は気づいていなかった。二人の会話は安全性の都合上、管制によってモニタされていたことを。やがて任務を終えた光輝は基地の仲間によって手荒い歓迎を受けることになる。
~Fin~
***********************************************************************
いざ書こうと思って気づいたのですが、私の乏しい航空機の知識では今回かなり難易度が高いことを。まして女子大生を主役どころにもってくるにゃどうすれいいんだと。
それで結局オーソドックスな展開になりました。
また、ボロが出ないようにところどころ省略したのですが、それでも2000字を遥かに超え、しかも一人称が二転三転するという読みにくい文章になってしまい申し訳ないです。
ご参加ありがとうございます。
今回は懸賞金がついていますので個別の講評、感想は後ほどということでご勘弁ください。
正直問題成立するかどうか冷や冷やしているところでの投稿だったのでありがたかったです。
_______________________
今回、hokurakuさんの賞金がありますので講評は後ほど、と考えておりましたが、スターについては、付けて頂いて問題ないかと思います。
(hokurakuさんなら引用スター程度なら問題ないだろうと思いますし、スターをつける動作って、どうしても見た瞬間、読んだ瞬間の勢いが必要ですので)
というわけでみなさまスターのオヒネリよろしくお願いいたします。
はじめ、カメラのことかな?と思いながら構想練ってたんですが、戦闘機ですか。。。
完全に向いてないと思いつつせっかくなので書いちゃいました。
alpinixさんの望まれるストーリーとは違うなぁと思いつつ、、、すみません。
戦え!武藤さん
「経愛女子短期大学家政科2年の武藤扶羽です。
よろしくお願いします。」
そう言って姿勢よく礼をする、濃紺のスーツがショートカットの
やや中性的でもある端整な(それでいて意思の強そうな)顔立ちを引き立てている。
「どうぞ、お掛けになってください。」
武藤と向かい合って座っている二人の面接官のうち、年下(おそらく部下)
であろう男(細眼鏡)が武藤に視線を向けながら答えた。
「それでは、我が社を志望された動機について、ご説明いただけますか?」
今度はもうひとりの面接官(脂太り)が武藤に問いかける。
武藤は、バッグからおもむろに分厚い紙束を取り出し、面接官に向けて差し出した。
「これは、私と父とで、主に父ですけど、設計した可変式全局面汎用型戦闘機の設計図です。
理論上はほぼ開発可能な段階まで達したのですが、幾つかの技術的な些細な
問題と主に開発費の面で、私個人での開発が困難な状況にあります。
そこで、御社の資金力と技術力によって、こちらを完成させていただきたい
と思い、応募させていただきました。数ある競合他社の中で御社を選択しま
した理由としては、、、」
「ちょ、ちょっと待ってください。なんですか?えっと、その戦闘機?」
細眼鏡が口を差し挟む。
「可変式全局面汎用型戦闘機です。これは実在のF-4をベースにして
いますが、その理由は広く普及したきわめて優れた機体であったとともに
そのフォルムが典型的な近代戦闘機でもあり、これが違和感なく人型に
変形した時に見るものに与える心理的影響とあらゆる局面で、、、」
「いや、そうじゃなくってね。」今度は脂太りが口を挟む。
「武藤さんでしたっけ、確かに我が社は航空機の開発もやってますけどね。
あなたは、航空機の開発を志望してるわけじゃないですよね?
それにその変形する飛行機ですか?ロボット?それを我が社が開発するという
必要性がよくわからないんですが?」
武藤は動じない。
「ロボットではありません。あくまで可変戦闘機です。設計に関してはほぼ完了していますし、
御社クラスの持つ実験設備があれば残りの問題はすぐに片がつきます。ですので協力
いただきたいのは主に費用の面でのバックアップです。
航空機から人型兵器への変形が理論上可能になったからには一刻も早く実現に
向けて動き出すのが、御社も含めた我々の義務であり責任であると思いますが。」
「あ~~、よくわかりませんが、仮に我が社がその戦闘機?作り始めたとして、やっぱり
あなたはそれの開発に関わろうと考えているんですよね?では、一般職での応募ではなく
設計部門の応募要領に従って応募いただくのが筋だと思うんですけど。」細眼鏡も噛み付く。
「それについては、開発が最集段階を迎えたときに起こるであろうアクシデンタルな
イベントによって、やむを得ず私が搭乗して、そのままパイロットとして定着していく
ことを想定していますので、それまでは開発現場の周辺でさえあればどのような業務でも
よいかと思いまして、今回の応募をさせていただきました。」
「よくわからないんですけど、パイロット志望ってことですか?なおさら我が社に
入社する意図がわかりませんわ。そもそもF-4も我が社の製品じゃあないですし。」
脂太りは半分さじを投げかけたようだ。
「親の手による兵器には正当な手順で搭乗するのではなく、なし崩し的に乗り込むのが
世の常ではないでしょうか。またF-4もあくまで設計思想の抽象概念のベースでして、実際の
フレームや機構に関してはこちらを見ていただければわかりますが、可変を念頭にいれて、、」
「え~~と、わかりました。いいです。いいです。本日の面接は以上とさせていただきます。
えっとこの設計図ですか?これは本日は持って帰ってください。」
先ほどから時計を気にしていた細眼鏡が、脂太りの雰囲気も察してか面接を切り上げるべく
話を進めていく。
「本日はご苦労様でした。結果は後日連絡しますので。」
「よろしくお願いします。ありがとうございました。」立礼すると、武藤はひらりと身を
翻して退室した。
「なんか変なのが来ましたね。ぱっと見たところまともそうな設計図でしたけど。」
武藤の退室を見届けてから細眼鏡が言う。
「あんなもん、作れるもんかい。見た目可愛いかったし、筆記の成績もよかったから
普通に面接してくれたら採用しようと思ってなんだけどなぁ。」
「さすがに、変形ロボットは無いですねぇ」細眼鏡も同意する。
「まぁ、あんな変な子はそうそう来んだろ。時間も無いし次の子に入ってもらって。」
「はい、了解です。えっと次の子は、、、」
細眼鏡が開いたファイルの履歴書を二人で覗き込んだ。
『○×女子大学 ~~学部
祖父江 ミグ』
ご参加ありがとうございます。(二人目以降、コメントが一律になる点、ご容赦ください)
今回は懸賞金がついていますので個別の講評、感想は後ほどということでご勘弁ください。
ボクはプロレスが好きだ。
小学生の頃、いとこのカズお兄ちゃんが持っていた、古いビデオテープに入っていたプロレスの試合を見て、ボクはプロレスが大好きになってしまった。
今の時代、ボクみたいな女子高生でも気軽にプロレスが見れる。近くのショッピングプラザに無料で試合をする団体があったりするし、後楽園ホールなら2000円で試合が見れるし、ケーブルテレビでも見れる。
テレビでもいいのだけど、やっぱり生じゃないとね。
ボクはお気に入りのプロレス団体、全日本プロレスを見に行きたくて、カズお兄ちゃんに無理を言って、両国国技館に連れて来てもらった。
ボクは、全日本プロレスの社長、スキンヘッドの武藤敬二が好き。だって可愛いし。
会場についてしばらくすると、黄色いパンツの凄いマッチョなお兄ちゃんがリングにあがった。
「皆さん、こんにちは!」
パチパチパチ、と少ない拍手があがる。
ボクは、思いっきり手をバンバンと叩いて、「ヤマトー!」と叫んだ。
いかにも女子高生っぽい感じな盛り上がり方だけど、せっかくお金を払ってプロレス会場に来てるんだし、はしゃげる時にはしゃがないと、勿体無い。
「全日本プロレスの興行に、ようこそおいでくださいました!」
リング上で前説をしてるのは、大和タケシというプロレスラーで、かなりマッチョな上に体脂肪率も低くて、顔もカッコイイ。けど、見るからに「いい人」で、プロレスラーとしては優しすぎそうな人。
彼氏にするには最高っぽいけど、プロレスラーとしてはちょっとイケてない。
案の定、前説の途中で、悪役軍団のブードゥマーダーズが乱入してきて、大和はボコボコにされてしまった。ただ、大和はボコボコにされてるところが、可愛くて、いいのだけど。
大和のパートナー、KAIがやってきて、ブードゥマーダーズはさっさと去ってしまった。
ボロボロになりながら、大和が前説の最後、定番のアレを始めた。
「じゃあ、みなさん!僕らのユニット名、エフ・フォーって、大きな声で呼んでください。
じゃあ、南側から!みなさん、エフ・フォー!」
「エフ・フォー!」
「西側、エフ・フォー!」
「エフ・フォー!」
「東側、エフ・フォー!」
「エフ・フォー!」
「じゃあ、最後に北側!」
来た!北側!せっかく来たんだし、大声で叫ばなきゃ。
「エフ・フォー!」
「えふ・ふぉーーーーーーーーーーっつ!!」
「大きな声で、応援ありがとう!」
大和が、ニコッと笑顔で、ボクに向かって手を振ってくれた。
やった!嬉しい!ボクも手を振った。
「お前、恥ずかしくないの?」
「こういうのは、乗ったもん勝ちだよ、お兄ちゃん」
そういいつつ、ボクの顔はちょっと赤くなっていた。恥ずかしいのは、大声を出したからじゃなく、大和に手を振ってもらったから、かも。
ご参加ありがとうございます。(二人目以降、コメントが一律になる点、ご容赦ください)
今回は懸賞金がついていますので個別の講評、感想は後ほどということでご勘弁ください。
F-4が流行って
いま、私の周りでは、F-4 というものが、流行っている。しかし、私はF-4 というものを知らない。
身勝「F-4やばくない?」
桜花「うん。すごいよねー。まさにいまの流行だねー。」
私の通っている女子高も、いつもこんな感じだ。
一体、なに??
彼氏も、いつもその話をする。私はいつもなあなあで聞き流している。
本当に、一体なんなの??
…適当だな…
ご参加ありがとうございます。(二人目以降、コメントが一律になる点、ご容赦ください)
今回は懸賞金がついていますので個別の講評、感想は後ほどということでご勘弁ください。
やぁ皆さん、私の研究室へようこそ。
今日は「F-4と女子大生」についてお話ししましょう。
傑作という評価の高いアメリカの戦闘機と日本の女子大生との歴史を紐解く時、「失われた10年」に至る日本経済の諸相も浮かび上がってくるのです。
今日のレジメとリンク集はこの講義が終わったら研究室のサイトにアップしますから、復習するときに活用してください。
F-4 ファントムIIが産声を上げたのは1950年代後半の事でした。
設計思想とかアメリカでの配備状況について話し出すと、講義時間と2000文字をオーバーしますので、Wikipedia の F-4 を参照してください。
ひとつだけお話ししておきますと、F-4 の成功によって躍進したマクドネル社が、ダグラス社を買収したのと同時期に、ハンバーガーで有名なマクドナルド社も買収していた事はあまり知られていないようです。
買収後の社名はマクドネル・マクドナルド社であり、これを記念して発売されたのがダブルマックです。
現在も季節商品で出てくる「たまごダブルマック」を想像してはいけません。
英語の辞書で double mac を引けば、ビーフパティが4枚入っているビッグマックである事がわかります。
不幸にして、調理用の油にケロシンを使用しているという噂が広まったため、社名はただのマクドナルド社に戻っています。
さて、F-4 が日本に導入されたのは、1966年(昭和41年)の第2次 F-X によるものでした。
F-4E を日本向けに改修した F-4EJ であり、日本でのライセンス生産です。
しかし、この時点ではまだ女子大生との接点はありません。
F-15J が導入されるまで主力戦闘機として活躍していたのですから、当然と言えば当然です。
1986年(昭和61年)になると、主力戦闘機の座を F-15J に譲った F-4 の「延命・能力向上目的の改修」が始まります。
これを歴史上、「日本版 スーパーファントム計画」と呼びます。
官民一体となって、F-4 を再利用しようとしたのです。
運命のいたずらか、時あたかも日本がバブル景気に突入しつつある時期でした。
「ワンレン・ボディコン」で武装した女子大生たちのターゲットは、ジョルジオ・アルマーニを着た「三高」な「ヤンエグ」であったようです。
ここで、六本木のディスコ「エリア88」からじわじわと広まったトレンドが、「自家用ファントム」でした。
有り余るお金を持つ「ヤンエグ」たちが、フェラーリやロールスロイスより高価な F-4EJ に目を付けたのです。
中でも、防衛庁と光文社がタイアップしてカスタマイズした F-4EJJ は、後席のシートはレカロで、風防ガラスはバカラのクリスタル、オーディオはボーズの ノイズキャンセリング・ヘッドセット と、女子大生の好きな一流ブランドで固めていました。
さらに、当時まだ軍事機密だった GPS によるナビゲーションシステムを搭載しており、地図の読めない女子大生でもナビゲーター役が務まる、という親切設計だったのです。
F-4EJJ で飯倉交差点あたりをタキシングすれば、「後席に乗せて」「あなたのナビになりたい」という女子大生がむらがった、と伝えられています。
雑誌 JJ には、「ファントムライダーをゲットする10の秘訣」「ユーハブコントロールと言われるには」「栗原二等空尉直伝・ネイルケアの極意」などの記事が掲載されました。
一部マスコミは、「三高」ではなく「四高」、つまり高学歴・高収入・高身長・高々度を流行らせようとしましたが、「高高度」には「高」が二つあるから「五高」ではないのかという批判もあり、流行語にはならなかったようです。
また、「彼女がフライトジャケットに着替えたら」「私を百里に連れてって」などの当時のヒット映画を見れば、その頃の様子をうかがい知る事ができるでしょう。
1991年(平成3年)、バブルが崩壊し、日本経済は「失われた10年」と言われる低迷期に入ります。
資金繰りが苦しくなり、またファントムの燃費の悪さに辟易していたヤンエグたちは次々に自家用ファントムを中東に売り飛ばし、ここにファントムバブルもまた崩壊しました。
今でも都心のそこここに残る時間貸し駐車場が、かつての自家用ファントム駐機場だった、という事を知る人も少なくなってきているようです。
「駐車場 ヤンエグどもが 夢の跡」
実に味わい深い句と言えるでしょう。
なお、今でも自家用ファントムを所有している元ヤンエグたちの間では、「魔改造」と称して、ガウォーク 形態に変形できる改造が流行している、という噂を聞きましたが、真偽の程は定かではありません。
これで「F-4と女子大生」の関係が、ひととおり理解していただけたかと思います。
では、今日はこの辺にしておきましょう。
また来週、この時間にこの部屋でお待ちをしております。
ご参加ありがとうございます。(二人目以降、コメントが一律になる点、ご容赦ください)
今回は懸賞金がついていますので個別の講評、感想は後ほどということでご勘弁ください。
黄色い風船
だれにも言ったことないけど、私は作家になりたい。てか、なれるんじゃないかと思ってる。
そんな私が、最初に小説を書いた日のことを書こうと思う。
一般言語学の授業中、私は居眠りをしていた。目を覚まして気づく。また同じ夢を見ていた。
「…ですので、FとPHは該当の関係ということです」
遠田先生が遠くでしゃべってる。となりで亜由美がiPhoneいじってる。
「ねえ、14日ヒマ? 合説いかない?」
「んー、何曜だっけ?」
寝起きの私は機嫌が悪い。
「日曜。あさってだよ。東京ビッグサイト行こうよ」
「行きたくなーい。就活かぁ、めんどいなぁ。ずっと学生でいいや私」
「なに言ってんの。夢ばっか見てちゃだめだよ?」
亜由美はまたiPhoneに目を落とした。夢ばかり見てちゃだめだよ、かぁ。鋭い亜由美のことだから、たぶん察知してるんだろう。私に就職する気がないこと。
「…ですので、FANSATY―幻想ですね―とPHANTOM―お化けですね―は語源が同じということです」
遠田先生の声で、急にさっきの夢を思い出した。
夢の中で、私はひとりF-4のコックピットに乗っていた。クルマの免許すら持ってない私は、F-4なんてどうやってエンジンを始動させたらいいかすらよくわからない。そうこうしているうちに、遠くの空に黄色い風船が飛んでいくのが見える。早くあれに間に合わせなきゃ、と思う。でも飛び方がぜんぜんわからない。風船はどんどん遠ざかり、見えなくなる。焦って、手も汗でべとべとになって、でもぜんぜんF-4を動かせない。動かせる気配もない。
そんな夢だった。
なんでF-4なんてモノが夢に出てくるのかというと、人力検索はてなに「かきつばた杯」っていう小説のコンテストみたいなのがあるからだ。そこに作品を投稿すればポイントももらえるし、練習にもなるし、ってわけでひとつ投稿しようと思ってるのだ。はてなからデビューする作家になれたらはてな初だと思う。今回のテーマは「F-4と女子大生」。女子大生ってことはまあ自分を主人公にすればいいけど、F-4ってなんだ? と思って最近ずっとネットで調べてたわけ。ぜったいそれのせいだ。
「かきつばた杯」は第1回から私ずっとウォッチしてて、今回で第4回っぽいけど、まだ1行も書けたことがなかった。でも、今回は書ける気がする。たぶん、書き始めたらカンタンなんだろうと思うけど、そこまでの道のりは険しかった。就活と同じぐらい難しい道を私は選んでるんだと思う。あーあ。授業中に夢を見て、それがファントムの夢で、そんなファンタジーな将来像を描いてるわけか私。ファンタジーとファンシーって同じ語源だろうか。
考え始めたら堂々巡りになりがちな私は、そのままぼんやりと亜由美と別れ、電車に乗って家に帰り、書かなきゃとわかってはいるのに、帰るなりベッドに倒れ込んだ。
そしてまた夢を見た。
私はF-4のコックピットに座っていた。遠くの空に黄色い風船が見えた。あれを取りにいかなくちゃ。でも飛び立てない。コックピットは耳鳴りがするほど静かなままだ。どのレバーも効かない。どのスイッチもつかない。
焦っていたら、向こうから亜由美が歩いてきた。私はここから降りて亜由美に声をかけようと思ったけれど、ドアの開け方すらわからなかった。飛べもしないし、出られもしない。焦って泣きそうになった。泣きそうなところを見られたくなくて、でも逃げ道もなくて。亜由美はしきりに私を指差したり、後ろを振り向いたりした。最初は私のことを笑ってるんだと思ったけど、亜由美の顔は笑ってなかった。なにかの手振り? 私は後ろを振り向いた。
いままで意識になかったけれど、後ろの席に私はかばんを置いていた。そしてそのかばんの上に黄色い風船が置いてあった。手を伸ばしてそれを取った。急に心が落ち着いた。飛べないならそのままでいいよ、と告げているみたいだった。私は風船に息を吹き込んだ。こんなの何年ぶりだろう。風船は最初のちょっとの抵抗をあきらめると、素直になってまるくふくらんだ。
ここで私は目を覚ました。時計を見た。いつの間にか日付が変わってた。やば、今日って13日じゃん。締め切りじゃん。
その朝、私はやっと“わかった”んだと思う。いまの私には、おおげさな戦闘機はいらないってこと。
だから私はまず、ケータイを開いて亜由美にメールをした。夢の中で、コックピットのドアはついに開かなかったけど、ケータイのメールボックスを開くのはたやすかった。
ケータイを閉じた私は、今度はパソコンを立ち上げて、「お気に入り」の中からあのURLを開いた。やってみたら書くのなんてとてもとても簡単だった。思うことを言葉にすればいい。
こうして私は、最初の1行を書いたのだ。こんな風に。
だれにも言ったことないけど、私は作家になりたい。てか、なれるんじゃないかと思ってる。
ご参加ありがとうございます。(二人目以降、コメントが一律になる点、ご容赦ください)
今回は懸賞金がついていますので個別の講評、感想は後ほどということでご勘弁ください。
ご参加ありがとうございます。(二人目以降、コメントが一律になる点、ご容赦ください)
今回は懸賞金がついていますので個別の講評、感想は後ほどということでご勘弁ください。