「まちづくり」の現場に変革が起こっている。
2015年、「リノベーションまちづくり」という言葉が猛スピードで浸透し、具体的な実践が全国に広がった。沈滞し、進退窮まった地方のまちの再生と自立に向け、重要な役割を果たしつつある。16年1月には、その方法論を教えるプロ向けのスクールが開校した。
リノベーションまちづくりとは、国や自治体が主導するも十分な成果を上げてきたとは言い難い中心市街地活性化策の問題などを反省材料とし、“民間自立”の精神を第一に始まった取り組みで、ここに来て花開いたものだ。
端的に「空き家再生」と表現される場合が多い。しかし、単独の空き家や、専用住宅だけを対象とするものではない。以下のような幾つかのポイントがある。
・“敷地主義”から脱し、「リノベーション事業」によってエリア(地域)の抱える社会的、経済的な課題の解決を図る。 ・オフィスや店舗ビルの空きフロア、利活用の進んでいない公共空間など、「遊休不動産」全般を事業化の対象とする。 ・その大家(不動産オーナー)と店子(ビジネスオーナーや居住者)、および両者の間をつなぐ新しい職能が、それぞれリスクを分担し、一致協力してエリアの不動産価値を上げるための事業に臨む。 ・補助金に頼らず融資や自らの出資を基本とし、ハードよりもコンテンツ(中身)重視で持続可能な事業計画を組む。
「スクール卒業生」は1000人超に
2015年末の時点で、どのような局面を迎えたか。
リノベーションまちづくりの“エンジン”と呼ばれる短期集中講座「リノベーションスクール」を運営し、その活動をけん引してきたリノベリング社(東京都千代田区)によると、スクール開催地は、北九州、熱海(静岡県)、田辺(和歌山県)、山形、鳥取、浜松、鹿屋(鹿児島県)、豊島(東京都)、福井、紫波(岩手県)、鶴岡(山形県)、甲府の12地域に達した。「卒業生」は総計1000人を超えるという。
リノベーションスクールは、開催地のまちなかに実際にある遊休不動産の再生を課題に扱い、受講者の立案した事業プランの実現を目的とする。結果として、そのエリアにおける雇用の創出や税収増に結び付く。これまでの開催地の合計で約20の事業が稼働済み、約25の事業が準備中、という成果を上げている(※)。
※リノベーションまちづくりから生まれたプロジェクト事例については、リノベリング社が運営するサイト「ReReRe Renovation!」を参照。
ほかにも、エリアに潜む“まちづくりのリソース”を探し当てる「まちのトレジャーハンティング」や、異なる運営体制で実施しているリノベーションシンポジウム、家守塾といった複数の取り組みを併せ、リノベーションまちづくりを各地に展開する動きが加速している。