クリスマスに突然公開された松本人志の「裁判終結後第一声」
お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志氏が性加害疑惑問題をめぐり、文藝春秋などに対して約5億5000万円の賠償を求めた裁判は、松本氏側の「訴えの取り下げ」と文藝春秋社の合意により、11月8日に終結。そこから1カ月超を経て、松本氏が12月25日に芸能記者・中西正男氏のインタビュー(Yahoo!ニュース掲載)で現在の心境を語り、話題になった。
この記事に対しては、松本氏のファンからは歓迎、感謝の声が多数あがった一方、「一方的に松本氏に都合のいい事だけ垂れ流して」「ただの提灯記事」「いくらもらったら魂売れるんですか?」といった辛辣な批判も続出。
さらに、この記事が配信された同日には、中西氏と同じYahoo!ニュースエキスパートで吉本興業所属芸人の取材も多い田辺ユウキ記者が擁護ととれる記事を配信。
「いろんな意見はあるが、そもそもこの記事の趣旨は、松本人志さんの『第一声』を届けることだろう。松本人志さんの言葉を濁りなく、まっすぐ伝えてくれる人・メディアはどこなのか――。そういう意味で、中西正男記者はもっとも適任だという判断だったのではないか」と評価し、「この記者は普段から芸人サイドに偏った提灯記事専門記者だから」「同業者に忖度した生煮えの長文」といった批判を浴びていた。
報道でもなく芸能人インタビューでもない不可思議な記事
実はこの記事、記者やライター、編集者など、文字に関する仕事を生業にする者たちの間でも大いに話題になった。なぜなら、一般的なインタビュー記事の「形式」「体裁」を逸脱した異様なものだったためだ。
この記事を受け、筆者はXで「あくまで松本人志のひとり語りの形式にまとめるこずるい記事」と投稿。これに対し、松本氏の復帰を切望するアカウントからは「文春記事のA子さんも一方的な言い分だったけど」「一人称ひとり語りはA子さんの記事と同じ」といった反論があったが、中西記者の記事と文春報道は本質的な部分が大きく異なっている。
その違いは後に詳述するとして、まずは中西記者の記事を説明する上で、一般的なインタビュー記事の形式について触れておきたい。
インタビューは一般的に①「地の文+コメント(カッコでの会話文と、会話以外の状況説明や叙述で構成されるもの)」か、②「Q&A(インタビュアー〔取材や執筆を行う側〕とインタビュイー〔質問をされる側〕の掛け合いで構成されるもの)」形式の二択が多い。
インタビュイーがひとりで語りおろす③「一人称ひとり語り」の形式は少数派で、多くは特集内の囲みインタビューなど文字数が少ないパターンか、語り手の「主張」を強調したいものや、語り手の回顧録的意味合いのもの、編集部は責任をとらず「勝手に喋らせる」パターンなどに限定される。