SNSなどで拡散されるデマや誤情報を検証する「ファクトチェック」を行っている団体がある。フリー記者の渡辺一樹さんは「日本ファクトチェックセンター(JFC)という団体が配信している記事には問題がある。専門家もJFCの記事に危機感をあらわにしており、専門機関としての適性が問われている」という――。

SNSが大きな影響を持った兵庫県知事選

斎藤元彦知事が再選した兵庫県知事選は、SNSや動画サイトが民主主義に与える影響を、改めて浮き彫りにする結果となった。

民間調査会社ネットコミュニケーション研究所の調査によると、この選挙では斎藤氏を応援した立花孝志氏が「デマを流すマスメディアvs真実を伝えるネット」という対立構図を描き、その発信がYouTubeやXなどで拡散したことが、投票結果に大きな影響を与えたという。

同社の分析によると、立花氏関連チャンネルの動画は1500万回近くも再生され、インフルエンサーや切り抜きチャンネルなどが立花氏の発信を大きく取り上げていた。

ここで問題だったのは、そうして発信・拡散された内容の中に、自殺した元県民局長のプライバシーに関わる情報や、確たる証拠もなく斎藤知事のパワハラを全否定するといった「真偽不明」の情報が含まれていたことだ。

兵庫県議会の百条委員会で証人尋問に応じ、宣誓する斎藤元彦知事=2024年12月25日午後、神戸市内[代表撮影]
写真=時事通信フォト
兵庫県議会の百条委員会で証人尋問に応じ、宣誓する斎藤元彦知事=2024年12月25日午後、神戸市内[代表撮影]

情報の拡散源となった有力プラットフォーム

ネットコミュニケーション研究所の調査によると、立花氏や支援者たちの発信する情報が拡散したのは、YouTubeやXなどのプラットフォームを通じてだ。そのプラットフォーム上で、どのユーザーにどんな情報を届けるかについては、「アルゴリズム」が大きな役割を果たす。アルゴリズムの中身は非公開で、その仕組みはプラットフォーム側が自在に変更できるものだ。

クイーンズランド工科大学のティモシー・グラハムとマーク・アンドレイェヴィッチの研究によると、イーロン・マスク氏のXでの投稿は、彼がトランプ大統領支持を表明したタイミングで起きたXのアルゴリズム変更により、表示回数が138%増加していた。マスク氏はXのオーナーで、アルゴリズムの中身を決定できる立場にある。

当然の帰結として、プラットフォーム側は、アルゴリズムを作り出した責任からは逃れられない運命にある。国際的にみると、YouTubeやXは誤情報や偽情報を垂れ流すプラットフォームだとして強く非難されている。

「ソーシャルメディアには誤情報が溢れている。特にXには多い」という指摘や、「イーロン・マスクとXは米国選挙の誤情報の震源地」といった分析は後を絶たない。米国のIT企業であるMozillaの大規模な調査においてもYouTubeは誤情報への対応が甘いと追及されており、米国のジャーナリズム教育機関であるポインターメディア研究所からは「特に英語でない言語の誤情報には対応が甘い」と批判されている