「海外出稼ぎ売春」の相談が増えている
関東地方某市の市街地にある雑居ビルの一室。
「相談室」と書かれた小さな部屋に、職員に伴われて少女が入ってきたときには「子どもだ……」というつぶやきが漏れそうになった。
ここは、風俗への就業相談、悪質ホスト問題、女性の人権に関わるあらゆる問題への相談を受け付けているNPО法人だ。
実は、海外出稼ぎ問題についての相談は、警察にだけ寄せられているのではない。こうした民間の相談機関が各地に存在し、相談を受け付けている。大々的にそうした看板を掲げているわけではないが、昨今こうした相談が多く、さすがに無下にはできず、なし崩し的に身の上相談を受け付けるようになった、という機関も多い。
記者はそうした各地の相談機関に実情を窺うべく、電話取材を試みた。すると驚くほど多くの機関から「海外出稼ぎに関する若い女性からの相談がある」という回答を得た。ただ、こちらが前のめりになればなるほど「プライバシーの問題で内容は明かせない」と言われ、それ以上は取材が進まなかった。
しかし――記者が実際にアポイントを取って訪れたとある機関のみ骨を折ってくれた。
プライバシーを最大限に守るという条件付きだったが、相談に訪れた本人に直接取材ができるようセッティングしてくれた。
幼い容姿をした19歳の女子大生
紹介された女性を仮にツムギと呼ぶ。
19歳の大学生だと職員から明かされた。
ツムギは終始俯きながら、そして小さな声でとつとつと話した。緊張しているためなのか、生まれつきなのかは判断がつかなかった。
ツムギがこれまで出稼ぎに行った国は2カ国。台湾とシンガポールだと打ち明けた。
この時点で本書のための海外出稼ぎの取材を始めて半年ほどが経過していた。
すでに多くの女性から壮絶な実体験を聞き、ある種の免疫があったはずだが、少女の口から「売春」「出稼ぎ」などの単語が出てくると、異様な世界に入り込んだ錯覚に陥った。繰り返しになるが、ツムギの容姿はそれほど「幼い」のだ。