|
カテゴリ:カテゴリ未分類
さて、ここまで
「官邸主導」と「政治任用制」の 問題点を指摘してきたが、 結局2つに共通することは、 「臭いにおいは元から立たなきゃダメ」(苦笑) ということじゃなかろうか。 そこで、政策立案過程における 「議題設定」 の重要性、という話に 移りたいと思うんだけどね。 政策立案過程で、 議題設定の権限を持つ者は 極めて大きな権力を 行使することが可能である。 簡単に言えば、 自己に有利な争点だけを選別して 政策決定プロセスに 持ち込むことができるからである。 話し合いたくないことは 隠しとけばいいんだから。 そして、日本の政策過程で 議題設定の主導権を握っているのは 官僚である。 各省庁の政策立案のスタートとなる 「審議会」 では、その事務局を務める 官僚が話し合う議題を決め、 専門家を参考人として意見を招致し、 質疑応答の後、議事録を作成し、 次回の議案を作成する。 この過程を何度か繰り返して、 最終的に報告書を 作成することになるのだけど、 ここで審議会の委員は、 実質的には 質疑応答に参加できるだけで、 官僚が完全に議論を 最初から最後まで コントロールしているのだ。 私は、政策立案過程の 「官僚支配」を排するには、 政治家がこの議題設定の権限を 審議会のところで 抑えることが重要だと思う。 私は博士論文の時から ずっと政策過程を見ているけど 突き詰めると、結局 ここに行きつくわけです。 しかし、現実的には 政治家は官僚バッシングを いろいろやっているけど なぜかここには 全く手をつけようとしない。 私は、現在、官僚組織の独断で行われ、 政治が全く介入していない 審議会委員の任命権を 政治家が握ることが 重要なんだろうと思う。 具体的には、官僚の設定する「議題」に 「お墨付き」を与える役割を果たしている 「御用学者」 を審議会から一掃することだ。 そして、政治学・経済学などの 最先端の研究に携わる、 海外の大学での PhD(博士号)取得者などを 審議会に送り込むことである。 日本では、最先端の研究から離れた 「御用学者」が幅を効かせているために、 最先端の研究知識の蓄積が 政策に反映されていない。 例えば、松井彰彦東大教授が 朝日新聞紙上で指摘したように、 経済学の最前線では 「御用学者」が主張してきたような 野放図な市場主義が 礼賛されてきたわけでは ないんですよね。 経済学だけではなく政治学でも、 そういう話はいろいろあってね。 小難しい事例は置いといて(苦笑) 身近でわかりやすい例を いくつか挙げると、 例えば、このブログで何度か書いた 「審議拒否・強行採決の頻発と 日本の国会会期の短さの関連性」 なんて、政治学では少なくとも 20年前に指摘されていたことだけど、 有識者と呼ばれる人たちには いまだに、政治家の資質の低さが 引き起こすものだというようなことを 言う人が少なくない。 あと、「首相公選制」なんてものも うまく機能しない制度だと、 政治学では相当昔に結論を出しているが、 日本では小泉政権時代に 「首相公選制を考える懇親会」が 作られたりした。 これも、専門的な研究と いわゆる評論レベルの議論が 相当に乖離している 1つの例と言えるかもしれない。 いずれにせよ、 欧米では、経済学博士が 政策立案を行うのが一般的だ。 日本にも海外の大学での PhD取得した若手研究者は、 現在日本の学会の主流ではないが 相当数いる。 中にはG8の中央銀行に 研究員として在籍している者もいる。 一般に知られてないだけで、 隠れた人材は探せば ゴロゴロいるのだ。 私などは凡才だけど、 英国にいる時代に知り合った 若手の人たちには はあ~っとため息が出る様な 切れ者がいろいろいた。 いるところにはいるんです。 彼らを発掘し審議会に送り込むことで、 審議会を官僚が設定した議題を 追認するだけではなく、 実質的な政策立案のための議論の場に 変化させることができるかもしれない。 もちろん、日本には 「専門バカではなく、 様々な人生経験を経て 深い見識を身に着けた人 (いわゆる有識者)が 政策立案に携わることが大事」 という考え方があるのは 私もよくよく承知してます。 しかし、その有識者が導いてきて 果たしてこれまで日本は うまくいってきたと 言えるんだろうか? うまくいってないという 実感を持つ人も 少なくないと思うよ。 それと、「専門バカ」というけど、 本当に先端の専門的知見が 日本の政策過程に行かされたことは これまでほぼなかったので、 本当に役に立つのかどうかは まだ検証されていない。 やってみる価値はある。 審議会委員への若手研究者の登用は、 官僚組織の若手・中堅キャリア官僚にとって 必ずしも悪い話ではない。 現在、彼らは「議題設定」の 最前線の現場にいるけど、 実際は族議員と利益集団の陳情への 対応に追われて、疲弊している。 政策の決定は、 結局、族議員・利益集団の 政治力によって 決まってしまうしね。 若手研究者との 最先端の研究を基にした議論は、 若手・中堅キャリア官僚の 政策立案へのモティベーションを むしろ向上させる効果がある。 民主党は、既に昨年の 日銀正副総裁人事において、 小泉改革にかかわった 「御用学者」の 副総裁への起用案に 不同意している。 民主党は政権獲得後、 経済財政諮問会民間議員を 入れ替えるくらいのことは 行うつもりだろう。 しかし、民主党が「官僚支配」の排除を 本気で標榜するならば、 官僚の周辺に跋扈する 「御用学者」を 全省庁の審議会から一掃して、 全く新しい優秀な人材を導入するくらい ぶち上げてもいいのではないだろうか。 それでは、またね。 ------------------------------------------- 「かみぽこ政治学」バックナンバーはこちら。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年04月01日 10時28分08秒
|