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2024.12.30
【復刻】当時のサイゴンの街にあった米兵バーについて説明しておこう 2004.05.10
すこし当時のサイゴンの街にいっぱいあった米兵バーについて説明しておこう。 サイゴンはフランスの植民地だったから 街路樹がうっそうとしげる通りが 碁盤のように入り組んだ美しい町だ。 少なくとも、私が駐在していた当時は、そうだった いや、それより以前は 恐らくもっと、美しくて風情があっただろう事は間違いない 以前書いたようにサイゴンの街には ヴィエトコンの侵入やテロ行為を警戒する 完全武装の兵士が歩哨をしているし 警官や憲兵による検問所も街中にある 夜は、ヴィエトコンの侵入を防ぐ意味で ヴィエトコンが潜んでいるであろう郊外や田んぼに向けての 腹に響く威嚇の砲撃(waraning fire)が まるで日本の夏の花火大会のように ド～ン ド～ンと絶えない 夜空の底がその瞬間、キラッと輝く。 こんな体制でも サイゴンの街は 表面的には 少なくとも昼間は 前線から帰還した米兵の姿を除けば 南国の平和で退廃的なフランスの植民地 といった雰囲気を漂わせていた ヴィエトナムの人々は 中国・フランスによる何百年の制圧に耐えただけに 強靱な精神力を持っているし 第一、なぜか？明るい。 絶望に慣れた諦観なのかもしれないが どんな状況においても その明るさを失わないから 客観的に見てサイゴンの街が 閉塞状態で退廃的ではあっても 極めて活気のある街に見えていた 気候も素晴らしい。 中東のような人間の生存を許さないような フライパンの上の様な という気候ではない。 おだやかさのある亜熱帯と言うところだろう。 日本のような厳しい冬では無く 旧正月（テトと呼ばれる）の頃は 背広を着て、ちょうどいいぐらいの温度にはなる。 それに食べ物がおいしい。 ヴィエトナム料理はこの頃日本でも よく食されるようになったが 近隣のタイ料理などに比べると日本人好みの薄味で 中国料理をエスニックにしたようなもの。 それに旧宗主国のフランス料理が素晴らしい。 サイゴンにはフランス料理のレストランが数軒あり フランス系やイタリア系の店主の経営で 私が後にパリで食べたフランス料理と どちらが上かというと 判定が難しいぐらいだ。 サイゴンの中華料理にもこれは言える 主に中華街にあるのだが その中華レストランの味は 当時、世界一と言われた香港の中華料理 それをしのぐ、と言われていたものだ ただもちろん 亜熱帯地方の植民地のフランス料理 というアレンジはあったと思う。 また、本場フランスでは ブランデー（コニャック）を 冷やさずに飲むのが常態のようだが ヴィエトナムでは冷やして飲む。 またはロックにして飲む。 特に華僑の人々はブランデーが好きで （多分、紹興酒に味が似ているからなのだろう） 中華街で華僑相手の宴会というと必ずブランデーが出る。 ～～～～～～～～～ 食べ物や気候の話はまたすることにして バーについて 早く書こう(笑)。 サイゴンの目抜き通りにはバーが林立していた。 戦地から帰ってくる米兵が軍服のまま入って ミニスカートのバーガール相手に飲むのだ。 ゆっくりソファーに座ってというケースは少ない カウンターでの立ち飲みが多い そんな米兵にミニスカートのバーガールが寄ってきて 「サイゴンティー」を飲みたいとねだる。 この「サイゴンティー」は 一種の場代のようなものなのだろう と同時に このティーをおごられたバーガールは そのティーの代金から幾分かが自分の実入りになる。 シンプルなシステムだ。 客がかわいいバーガールと話をしたいと思えば このティーをおごらなければならない。 ただ、一般的に、米兵は貧乏なので(笑) バーガールにおごって会話をすることなく 黙々とビールやバーボンをあおるだけ と言う米兵も半分ほどいる そ～ゆ～米兵には 当然ながら ミニスカートの可愛いバーガールは近寄らない 私が若い頃には 日本でも、横須賀とか横浜には米兵バーがあったが 多分同じシステムだと思う。 いや、後に私が中東で大型プラントの契約を追っかけていた頃 中東諸国での滞在ビザの切り替えのため 大使館のあるパリに出たものだが パリのピガールと言う色街(笑) そこにずらりと並んだバーが 全くサイゴンの米兵バーそのもの システムも、そのまま同じだった つまり、フランス人は ピガールのバーをそのままサイゴンに移植していたのだ サイゴン時代にバーのシステムの KNOW HOW を しっかり身に着けた(笑)私が パリのピガールへの初上陸で あたかも水を得た魚のように 大活躍したのは言うまでもない（コレコレ） その話は、また、別稿で ーーーー 私たちはサイゴン店の自主規制で 原則としてサイゴン以外の地域に出ることを禁じられていた。 だから生活はサイゴンの中だけ と言うことになる。 では、サイゴンの夜をどう過ごすか？ サイゴンはあらゆる怠惰と悪徳がそろった街で(笑) 退屈などしない 夜には麻雀をする人も多いが 私は麻雀を含むギャンブルをしないし、 そうなると退屈で仕方がないから 結果的に 自然の法則に沿って(笑) 私はこのかわいいバーガールのいる米兵バーに通った。 本当はこのバー通いも支店長はいい顔をしなかった。 原則として禁止されていた。 明らかに危険だからだ。 一般的に日本人はベトコンのテロの少ない 中華街（チョロン、フランス名ではショロン）で遊んでいた だから、私の他に米兵バー通いした日本人は少ないと思う。 以前日記に書いた 副大統領殿にそっくりの繊維出身のちょび髭の先輩も、 サイゴンの一流のナイトクラブには毎晩通っていたが こんな殺伐とした 泥まみれになりベトコンと死闘した後の米兵 彼等が、端部の泥のついた軍靴そのままで まだ、硝煙が匂う様なピストルを腰に下げた そう言う米兵がバーボンやビールを 乾いた喉に放り込む そんな米兵バーには行ってないはずだ。 客はほとんど軍服のままの米兵 中には拳銃も腰ベルトから吊したままという グリーンベレーもいる。 バーガールをめぐって米兵同士がケンカをしたりもする。 いつトラブルに巻き込まれてもおかしくない そう言う場所だったのだ ～～～～～～～～～ 私がある朝、事務所で 朝のコーヒーを飲みながら 現地の新聞を読んでいると ！！！ 「バーでプラスティック時限爆弾爆発 米兵一人死亡」 という記事が目にとまった。 それだけではない さらにそのバーの名前を読んでびっくりした。 昨晩、私がハシゴ酒をして回ったバーのひとつだ。 私は、通常、バーを数軒はハシゴしていた なじみのバーガールがいる店では少し長居するが そのバーの名前は今でも鮮明に覚えている 店の名前は「PINK PUSSY」 なかなかのネーミングである(笑) それだけではない この店の場所はおろかピンク色のネオンまで覚えている 他のバーについては、うろ覚えなのだから 余程ショックだったのだと思う 私がこのバーに立ち寄ったのは ハシゴのちょうど中間あたりで あまり長居はしなかった それでも、もし もっと遅くまで 仮に、その米兵と一緒に飲んでいたならば 私も、尊い？犠牲者になったかもしれない(笑) 軽いショックを受けた私ではあるが 幸い事務所内の誰も 私の微妙な表情の変化には気が付いていない 私の隣席の引退前は元ベトナム高級官僚だったグエンさんも 好みの甘い味の米国製シガーをくゆらせて新聞を読んでいる もし、ここで私が騒ぎ立てては 私が危険な米兵バーに行ったことがバレる。 私は外見上 あたかも何もなかったように 冷静に(笑) そのまま新聞を読み続けたのだった。
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