所有しているコンパクト(デジタル)カメラに
ついて紹介する、不定期のシリーズ記事。
今回は、2018年発売の「FUJIFILM XF10」の
評価をしていく事としよう。
さて、本機XF10は、APS-C型センサー搭載の、
28mm(相当)広角単焦点レンズ搭載型、
普及(低価格)AFコンパクト機である。
なぜ「普及機」と書いたかは、銀塩時代の1990年代
以降、現代に至るまで、28mm(相当)単焦点搭載
コンパクト機は、マニア向けの高付加価値(高級)機
が大半であり、低価格帯機は、かなり珍しい点がある。
ただ、低価格機ゆえに、本機XF10は、高い性能
(またはスペック)を持つ機体では無い。
そこは承知の上での購入であり、では、実際に
本機の性能や仕様が、高級(高価格)機に対して
どのような点が劣るのか?そして、その弱点は、
実用上で、どの程度の影響があるのか? その
課題を回避するには、どうしたら良いか? さらに
その結果としてのコスパ(つまり、性能と価格の比)
は適正なのか否か? 本記事ではそのあたりを中心
に分析を進めていく事としよう。
では、まずは本XF10の立ち位置(ポジショニング)
からだ。
FUJIFILMにおける「X」シリーズとは、コンパクト機
およびミラーレス機での高性能機でのシリーズ名称
である。本記事ではミラーレス機についての説明は
割愛するが、何台かについては、別シリーズ記事
「ミラーレス・クラッシックス」で紹介済みだ。
高性能というのは、すなわち「高付加価値」であり、
コンパクト機が、スマホ等の台頭で市場縮退して
売れなくなった2010年代(正確には、FUJIFILM社
では2011年)から展開が開始された、高価格帯
の商品群が「X」シリーズである。
旧来のコンパクト機(例:FinePixシリーズ)等
から比べて、大幅に値上げされたXシリーズは、
コンパクト機の販売数が減った状態でも、利益率
を高めて、カメラ事業を継続させる狙いがある。
ビギナー層が買わないまでも、拘りのあるマニア層
等が、少数でも買ってくれれば良い、というのが
Xシリーズの基本商品企画コンセプトであろう。
ただ、当然ながら、この手の高付加価値商品の
場合は、実用面でのコスパは低下してしまう。
コスパを重視する層には、あまり推奨しにくい
カメラとなってしまう事は否めない。
私のXシリーズのコンパクト機の所有数は、さほど
多くは無い。故障廃棄機やら予備機やらがあり、
正確な数は出し難いが、現有機は概ね3機種のみだ。
ここで、未所有機を含め、FUJIFILM Xシリーズ
コンパクト機の分類について紹介しておく。
<高級単焦点機 X100シリーズ>(APS-C型機)
2011年:FinePix X100 (これのみFinePix銘)
2013年:X100S
2014年:X100T
2017年:X100F
2020年:X100V
注:S=Second、T=Third、F=Forth、V=ローマ数字の5
<中級単焦点機 X70シリーズ>(APS-C型機)
2016年:X70 (広角単焦点機)
<中級ズーム機 Xフタケタシリーズ>(2/3型機)
2011年:X10
2013年:X20
2014年:X30
<中級ロングズーム機 X-S1>(2/3型機)
2011年:X-S1(他記事紹介済み)
<普及ズーム機 Xアルファベット型番>(2/3型機)
2012年:XF1(故障廃棄)
2013年:XQ1(他記事紹介済み)
2015年:XQ2
<普及単焦点機 XF10>(APS-C型機)
2018年:XF10(今回紹介機)
さて、今、あらためてXシリーズコンパクト機を
全て洗い出してみると、思っていた程には
機種数が多く無い事に気付いた。これくらいの数
であれば、マニア層やFUJIFILMファン層ならば
各シリーズの機体を、少なくとも1台づつ位で
コンプリートする事は、難しくはなさそうだ。
ただ、それをやる必要があるか否か?であろう、
Xシリーズにはミラーレス機も存在しているから
高級機等では、むしろミラーレス機の方が安価で
あったり、汎用性・実用性が高くなったりもする。
また、近年ではXシリーズコンパクト機の新発売も
かなり減って来ている。
それから、各々のシリーズで、型番の付け方の
ルールが、ずいぶんと異なる点が気になる。
例えば、X100は型番番号固定で末尾にバージョン
の記号だし、Xフタケタ機は順次番号が進む。
他機は、毎回バラバラな記号を選んでいる模様だ。
そう、銀塩時代から近年に至るまでFUJIFILM社製
のカメラは、型番、機能、操作系から、果ては
バッテリーや充電器に及ぶ迄、機種個別で全く
仕様が異なる場合が大半であり、機種間での利用・
操作面での互換性が少なく、そこが困ったポイントだ。
標準化・共通化という思想がメーカー側に無いのか?
開発チーム間で、お互いの仕様を無視しているのか?
はたまた、多くの機種が外注設計でまちまちなのか?
そのあたりでの「バラバラな発想」を疑ってしまう。
例えば、XF1(所有していたが、故障廃棄)と
本機XF10は、型番が似ているが、仕様や用途が全く
異なるカメラである。
巷では、前の機種からの比較レビュー記事が非常に
多い、その手の記事は「容易に書ける」からだろう。
(又は、前機種のオーナーに対し、新型機を褒めて
購入を勧める為の宣伝記事にもなっているからだ)
だが、そういった視点では、本機XF10は、どの
機種の後継型か?は、わからない事であろう。
XF10の前機種は、XF1では無いし、X70でもない。
まあつまり、各機は、個々に独立したコンセプトの
製品となっている次第だ。(参考:むしろ本機XF10
の企画思想は、銀塩時代の広角機「TIARA」に近い)
XF1は普及ズーム機ながら、高機能であり、デザイン
もスタイリッシュだったが、生憎、電気的故障に
見舞われ廃棄処分となってしまったので、本ブログでは
未紹介である(=動かないカメラや、借りて来たカメラ、
処分してしまったカメラ等は、紹介しないルールと
なっている。これは、ごく当たり前のルールだとは
思うが、世間のレビュー記事では、この大原則が
守れていないケースが極めて多い。なので、そうした
「所有すらしていないカメラについて語っている」様相
が見られた場合、その内容は参考にしない事としている。
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さらにちなみに、本ブログでのカメラ関連紹介記事は、
当該カメラ等の購入後、少なくとも1年間、又は/及び、
1万枚を撮影後で無いと掲載しないようにしている。
例えば、新製品の「宣伝レビュー記事」等では、急いで
記事化する必要がある事は理解できるのだが、現代での
超高機能化されたカメラを、数日間程度触っただけで
誰も評価など出来る筈が無い。当然、そういう意味でも
宣伝レビュー記事等は、殆ど参考に値しない次第だ)
XF10は広単焦点機であるので、XF1とは全く異なる
カメラだ。ただ、Fの名称は、「ファッショナルブル」
という要素も意味合いとして含まれると思われ、
「小型機、デザインが良い、格好良い」という特徴が
共通して存在する。
個人的には、カメラは格好が良い(と自分が思う)
機種は好みである。たとえ基本性能が低かろうが
「格好良い」という長所があれば、性能の低さに
目をつぶり、購入優先順位は上がる。
本機XF10も、「その類」のカメラである。
本機に数々の弱点があることは、購入前から、
取扱説明書を熟読して、理解・分析が出来ていた。
だが、「格好良い」のだ。様々な基本性能の低さは、
それが問題にならない用法を策定するか、あるいは
技能でカバーするか、そうした「用途開発」を行えば
済む話だ。
「万能のカメラ」などは存在しないので、個々の
カメラには弱点がある。そして、マニア層であれば、
多数のカメラを所有し、撮影目的により使い分ける
事も、ごく当たり前の話だ。
だから、カメラの個々の弱点については、さほど
大きな「購入を躊躇う理由」には成り難い。
初級層や初級マニア層等で、カメラやレンズを
少ない数しか使っていない場合、その弱点に対して
必要以上にマイナスの評価をしてしまう事もあろう。
また、「デザインが良い」と「品質が高い」とは
イコールでは無い。いわゆる「ビルド・クオリティ」
とも呼ばれる要素は、「上質な仕上げ」を意味するが、
例えば、前述のXF1は、仕上げの質やデザインは
良かったのだが、使用開始後、比較的短期間で
電気回路が故障して使えなくなってしまった。
つまり、外観は高品質だが、中身が低品質な次第だ。
まあ、壊れないカメラは無い。私も銀塩時代から
現代に至るまで、何百台ものカメラを購入し、
それら全てを、実際に実用的に使って来たのだが、
使用していて自然故障に至る機体は、数%程度は
確実に存在している。(注:修理が効く場合も
あれば、修理不能、または高額修理となって、
そのまま廃棄処分としてしまう機体もある)
私は各メーカーにおける製造品質等に、基本的に
大きな差異は無いと思っているし・・ 50年前の
世情ではあるまいし、現代では1つのメーカーだけ
で、全ての部品等を製造している訳でも無いので、
メーカー毎の品質の差を言及したくは無いのだが・・
でも、FUJIFILM機の場合、その故障廃棄比率は
およそ20%(概算だが、30台中6台が故障)にも
達する。これは「自然故障」のレベルを超えて
他社機よりも、ヒトケタも高い故障確率なので、
製造品質や耐久性が低いと言わざるを得ないだろう。
なお、SONY機も、数年の使用で、あちこちに色々
と課題が出てくるケースが多い。世間一般では
「ソニータイマー」とも呼ばれる状況ではあるが
これも耐久性に欠ける設計のカメラ(や電化製品)
が多い事が、その「噂」の根源ではあるまいか?
ただ、SONY機の場合は、完全に動かなくなる程の
酷い故障に至った事は、(自然故障の範囲では)
幸いにして無い。ボロボロになっても、ブツブツ
と文句を言いながらも、使い続けている次第だ。
(参考:近年の機体では、SONY α7Ⅲのシャッター
耐久性の問題が指摘されていて、米国では集団訴訟
問題にも発展した為、個人的には、同機の購入を
躊躇する原因となっている)
それと、「有名メーカー製で、製造品質も高いから
故障しない」という考え方も、ちょっとアテには
ならない。「プロも使う耐久性」を謳ったような
カメラですら、運が悪ければ、あるいはラフな
使い方をすれば、故障してしまう事はやむを得ない。
私の場合では、カメラやメカにも詳しく、ラフに
使うとは言っても(例:雨天の中で使用する等)
機器の耐久限界点は認識しているので、用法上で
故障させてしまうケースは無いのだが、それでも
電気部品の経年劣化、あるいは偶然が重なった際
での故障発生は、もうやむを得ないという認識だ。
別にNIKONやCANONのカメラだから壊れないという
訳ではなく、その旗艦機数台でも、壊れてしまった
ケースは、自身の所有範囲でも過去に存在する。
で、FUJIFILMの機体の場合は、故障には十分に
注意しなければならない。先に、耐久性が低いと
書き、約20%が故障廃棄となったと記載したが、
実は、完全故障廃棄に至らずとも、不調となって
騙し騙し使っている機体も多い。
具体的には、ダイヤル類(の中のロータリー
エンコーダー)等が、接触不良になったりする
ケースがある。そんな場合は、メンテナンスの
措置が必要だ(例:接点復活剤を注入する等)
そして、その程度の事は「故障」とは見なして
いない、カメラを長く使っていく上では、
なんらかの不調は、どんなカメラにも存在する。
さて、一般論を述べていてもキリが無い、そろそろ
本機XF10の固有の話に進もう。
機体の位置づけとしては「普及機」である。
いくつかの「コストダウン要素」があり、それは
あるいは「仕様的差別化」とも言い換えられる。
つまり、最高の性能を目指して贅沢に設計された
機体では無いので、本機に、それ(高性能)を
期待してはならない。
例えば、本機の購入を検討する際に、ライバル
となる機体は、通常は以下のとおりであろう。
2014年:SIGMA dp1 Quattro
2016年:FUJIFILM X70
2019年:RICOH GRⅢ
いずれも、広角(換算28mm相当)の単焦点機
である。中上級層やマニア層においては、
「通好みのスナップシューター」として、
28mm(相当)単焦点機は、確固たる存在意義を
確立している。
ちなみに、その理由は、1990年代における
銀塩高級コンパクト機ブームにおいて、
28mm(→銀塩35mm判)AF単焦点機のいくつかが
人気となり、あるいは実用性を認められたからだ。
その具体的な(銀塩機の)機種名を挙げておこう。
1993年:NIKON (MINI) AF600(QD) (↓写真)
1994年:FUJIFILM CARDIA mini TIARA(後継機あり)
1994年:NIKON 28Ti(未所有)
1996年:RICOH GR1(後継機多数あり)
1996年:MINOLTA TC-1(限定版あり)
実は、他にもMF機等で28mm単焦点機は数機種存在
していたのだが、あくまでこの1990年代において
「28mmAF広角機の立場を、明確(磐石)にした」
という視点では、これらの機種群しかないと思われる。
銀塩機の話は、ここまで、としておき、それらの機種群
の大半は所有している(いた)ので、その時代の詳細
な市場背景、時代背景等については、別シリーズ記事
「銀塩コンパクト・クラッシックス」を参照されたし。
で、銀塩時代での「28mm単焦点機は通好み」という
概念が、その後20数年を経過した2010年代にまで
引き継がれている。それ自体は否定するものでは無く
まあ、「そういう志向性も十分にアリだな」という
個人的な考え方だ。
(ただし、消費者層の志向が、RICOH GR系一辺倒に
集中してしまう状況は、近年では、あまり好まなく
なって来ている。あまりに画一的すぎるからだ)
さて、デジタル機での28mm(換算)機でのライバル
機について考察しておこう。
まず、SIGMA dp1 Quattroは、特殊すぎるので、
(本シリーズ第5回、SIGMA dp0 Quattro編を参照)
あまり本機XF10との購入比較対象にはならない。
すると、比較するのは、同じFUJIFILMのX70か、
または、GRⅢ(注:中古買いならば、GR、GRⅡの
選択肢も十分にある。GRⅢでは、フラッシュ内蔵の
利点が無くなってしまったからだ)であろう。
ただ、その両機(どちらも未所有)と本機は、
まず価格帯が異なる。
X70(2016年)は、発売時実勢価格が9万円程、
そして、比較的短期間で、生産完了となって
しまっている。中古品は存在するが、6万円
前後(注:2020年頃)と、若干高価だ。
GRⅢ(2019年)は、発売時実勢価格が
12万円程。後に若干安価になっても、依然
10万円オーバーの新品販売価格帯だ。
また、中古品でも7~8万円もする。
この機体は未所有なので、何とも言えないが、
どうにもコスパが悪く感じ、食指が動かない。
本機XF10(2018年)は、発売時実勢価格が
6万円程と、他ライバル機よりもだいぶ安価だ。
実売価格も、すぐに5万円程まで下がっていた
様相もあり、新品購買層(中古は買わない)で
あれば、他機と比べての価格メリットは大きい。
X70は、生産完了になってしまったので、
2010年代末~2020年代初頭での、広角機が
(新品で)欲しいという消費者層の選択肢は、
本機XF10か、またはRICOH GRⅢの2択となる。
ただ、ズーム機であれば、広角28mm相当を含む
コンパクト機は、いくらでも存在する(殆ど全て)
であるから、単焦点機をわざわざ欲しがる層は、
そこそこ拘りがあるマニア層ではあろう。
つまり、「本格的なGRⅢか? または、価格が
安価でお手軽なXF10か」に悩まされる事となる。
本来、マニア的な視点からは、比較すべきは、
「X70 vs GRⅡの中古の、どちらを買うか?」
という話となるのだろうが、初級マニア層等
には中古購入は敷居が高い(→目利きが出来ない、
故障等の不安がある。他人が使った物は嫌、等)
ので、新品購入では、本当に選択肢が少ない。
しかし、そもそも「28mm(相当)単焦点機が
必要か?」という要素が大きいであろう。
仮に、「どうしてもその画角の小型機が欲しい」
と言うならば、そして、機材にお金を掛けたく
無いならば、前述の旧機種の中古品を買うならば
本機XF10より、さらに安価に機材を入手可能だ。
例えば、RICOH GR DIGITAL(Ⅰ~Ⅳ)であれば
もっと遥かに安価である。しかし、これらは
小型センサー(1/1.8~1/1.7型)機なので、
「どうしてもAPS-C型機が欲しい」のであれば・・
あるいは、変則的ではあるが、SONY NEX-3
(2010年)+SIGMA EX19mm/F2.8(2012年)
といったように、ミラーレス機で本機と同等の
スペックのシステムを組む事も可能だ(↓)
上写真のシステムの中古購入価格は、カメラ
+レンズで2万円を切る安価な相場である。
これでも、APS-C型センサーと、高描写力の
28mm相当の広角単焦点、つまり、希望する
スペックと同等だ。
ある種のスペックのシステムを所望しつつも、
コスパを意識する上では、常に現行機ばかりに
注目するのではなく、過去に販売していたシステム
の中古品等にも注目する必要があるだろう。
過去機に対する知識が不足していると、必然的に
現行機種の中からしか選択肢が無くなってしまう。
それだと、特に、コンパクト機や、近年のカメラ
全般は、従前の機種よりも、遥かに高額になって
しまったので、設備投資の金額が膨らみすぎて
しまう次第だ。
では、ここからは本機XF10の長所短所についてだ。
<長所(または特徴)>
1)28mm相当の広角単焦点機は希少である事。
2)高いデザイン性、小型軽量である事。
3)フラッシュ内蔵、および、各種の高機能を
備えている事。
→例:スナップショットモード、電子シャッター、
複数のAUTO ISO感度設定、デジタルテレコン、
編集可能Qメニュー、コントロールリング、
Fnボタン、タッチパネル操作系、等
4)同社製他機よりも、若干安価でコスパが良い事
5)アドバンスドフィルターに「モノクロ近赤外線風」
が存在する。本機からの初搭載だが、以降の他機にも
搭載されている(X100Vや、新型Xミラーレス機)
個人的には、ホンモノの「近赤外線撮影」も
研究的観点から良くやるのだが、その撮影手法は、
若干だが「大げさ」なシステムや技法を必要とする
ので、常時それを行う事は出来ない。
なので、本機の「近赤外線撮影風」撮影は、あくまで
フェイクではあるが、簡便であり、なかなか興味深く
感じる次第だ。
6)フリック操作によるカメラ設定が可能
→T(タッチ)-Fn(ファンクション)の機能の事。
ただし、この操作は測距点選択等と誤作動しやすく
優れたアイデアだが、実用性は低い。
7)最短撮影距離が10cmと、そこそこ短い。
→APS-C型センサー搭載の28mm相当広角単焦点機
では、これが、ほぼ横並びのスペックである。
しかし、APS-C型センサー用の28mm相当広角
単焦点交換レンズでは、20cmが最短撮影距離で
ある場合が大半なので、まあ、寄れる類であろう。
近接性能の判断基準としては、レンズの実焦点距離
の10倍(mmをcmに変えた値)を下回るか否か?
であり、XF10では、18.5cmを下回っているので、
優秀な類の性能であると言える。
なお、APS-C型よりも小さいサイズのセンサーを
搭載した28mm相当広角単焦点機、具体的には、
RICOH GR DIGITALシリーズ等は、もっとずっと
寄れる長所が存在していた。(私は、この問題が
気に入らず、APS-C型に変わったRICOH GR系機体
の購入優先度を下げた次第であった)
8)フィルムシミュレーションやアドバンスド・
フィルターの選択時にプレビュー機能が利用可。
→これらの選択メニューにおいては、撮影中の
ライブビュー映像がサムネイル化された画像が
4種類+ノーマルの計5種類表示され、効果の
効き具合や、どれを選ぶかの選択が容易となる。
(選択操作は、タッチパネルでの「スワイプ」にも
対応している)
ただし、最新の機種では無いので、以降の機種群に
搭載された、「グレイン(粒状)エフェクト」等の
新機能は搭載されていない。本機で扱える変更要素
は、カラー、シャープネス、ハイライト等の基本的
なものだけであり、かつ、この設定は、全ての
フィルムシミュレーション等に共通でもあるから
個別での設定(微調整)は出来ないし、これらは
基本メニューから呼び出す必要がある。
実用上では、「フィルムシミュレーションBKT
(ブラケット)」機能を持ち、これがDRIVEボタンで
簡便に呼び出せる事から、これに最大3種のフィルム
シミュレーションを登録し、1回のショットで
3枚を撮影するのが良いであろう。この仕様や発想
は、オリンパスでの「アートフィルターBKT」と
同様に、撮影者の事前の想定範囲を超える表現が
得られる場合があるので、あまり細かく、個々の
フィルムシミュレーションをチマチマと微調整して
撮る等の機能を実装するよりも有益だろうと思う。
同様に「そんなもの(色味等)はレタッチ(編集)を
すれば自在だよ」という発想や手法では、あくまで
編集作業者の想定の範疇を超える編集は出来ない訳
であるので、ある意味、「カメラまかせ」とする事も
偶然性による(≒アンコントローラブルな)表現を
得る上では悪く無いと思う。
なお、モードダイヤルを廻して、アドバンスド
フィルターのモードに設定後、実際のフィルターの
種別を選択する際は、速やか(非常に短時間の間)に
フォーカスレバーのOKを押してメニューを呼び出す。
遅れると、測距点選択になってしまい、測距点ロック
機能(中央固定等)が存在しないので、意図せず、
その位置が変わってしまったりする。
操作が遅れた場合だが、タッチ操作タブのAFモード
が、自動的にフィルターの種別選択に切り替わる
「動的操作系」なので、これを活用し、タッチ操作で
種別を選択すると良い。
タッチ操作を使わない場合は、いったんメニューの
ボタンを押して、同機能のメニュー項目を選択し、
そこから初めて種別の選択が可能となる。これは
かなり手数が掛かるので、好まない操作系だ。
(参考:同社製ミラーレス機、X-T10(2015年)では
まずモードダイヤルに任意の2種のフィルター種別
をユーザーがアサイン可能であり、2種までならば
瞬時に呼び出せる。さらに、このアドバンスド...
モード時において、背面十字ボタンの1つに、予め
Fn(ファンクション)としてアサインしておいた、
フィルター種別選択メニューを簡便に呼び出せる。
だが、このX-T10の比較的優れた操作系であっても
アドバンスドフィルターを使わない通常撮影時では、
十字ボタンでのアサイン済みFnの1つが、完全に
「効能なし」となって、機能が無駄になってしまう。
つまり「動的操作系」では無い事が問題になる訳だ)
ここのフィルムシミュレーションとアドバンスド
フィルターの操作系は、タッチ操作であるか否かを
抜きにしても、なかなか優れている。フォーカス
レバー(又は旧来の十字キー)での、あまり効率的
では無い従前の操作系に比べて、格段に改善されて
いるし、一部、先進的な「動的操作系」の概念も
適用されているので、もしかすると、タッチによる
操作系一式は、カメラ本体とは全く別の設計思想
(専門設計チームや外注企業等)で考案・開発された
ものかも知れない。
(が、できれば、十字キー等の場合も含めて全体の
操作系を大幅改善して貰いたいとも思う)
なお、「他のFUJIFILM機と発色傾向が違う」という点
を気にする意見も聞いた事がある。
まあ、センサーも画像処理エンジンも新型で、かつ
コストダウン型だから、他機と異なるのは当然だ。
だが、ここで述べて来たようにフィルムシミュレーション
を始め、カメラ内部で発色を調整できる要素は、本機
には、いくらでも存在する。
また、本ブログのカメラ・レンズ紹介記事では殆ど
行わないが、現代において、撮った写真は画像編集
(レタッチ)して用いる事は常識だ。
結局、カメラの発色は、そのオーナーの責任範囲であり
カメラのデフォルトでの発色に、あれこれと文句を言う
必要は無いと思う。
<短所(または課題)>
1)一般的なベイヤー配列型センサーであり、
X-Trans CMOSではない。
→これはどういう意味・差異か?と言えば
「ベイヤー配列型センサー」は、RGGBのカラー
フィルターを持ち、「4画素分で1つの色」しか
表現できない。つまり、高画素で撮影した場合
では、演繹補間演算で各画素のRGB値を再現して
いる為に、額面どおりの最大解像度が出ていない。
又、色モアレを防ぐ為、ローパスフィルターが
必要となり、その点でも高解像力が得られ難い。
対して、X-Trans CMOSは、6x6ピクセルを単位
としたランダムなカラーフィルターを用いる事で
規則的な色モアレや偽色が発生し難く、光学
ローパスフィルターを必要としない。
すなわち、X-Trans CMOSの方が、原理的には、
ベイヤー配列型センサーよりも解像感が高くなる。
もっとも、両者の差異は、さほど大きなものでは
無いと思うし、X-Trans CMOSの方がコストアップ
してしまうので、基本的にはFUJIFILMの高級機に
しか搭載されていない(注:稀に、XQ1等の普及機
にも搭載されている/いた)
これらから「XF10は画質が悪い」と言ってしまうと
身も蓋もない。他社機の殆どもベイヤー配列なので、
それらと同等だ。XF10では、あくまでコストダウン
の為に最新のテクノロジーを搭載していないだけ
であるし、X-Trans CMOS搭載の効能も、けっして
驚く程に顕著な差が出る訳でも無い。
対策として、演繹補間処理を行わないと見られる
(注:それでも内部処理の実際は不明である)最大
画素数の1/4(約600万画素)で、常に撮影する事
としている。さらに絞りを若干絞る事で諸収差を
低減すれば、かなりの解像感を得る事が出来る。
絞り込んでも減らない収差には、歪曲収差や倍率
色収差があるが、歪曲収差と倍率色収差が比較的
少ない広角単焦点レンズであれば、絞り込む事で
殆ど全ての(諸)収差、ならびに、周辺減光等の
低減・改善に繋がる。
・・まあでも、この話は、基本的には、あくまで、
被写体の条件に、よりけりであろう。
2)AF速度、AF精度の不足。
→本機は、像面位相差AF機能が搭載されているか
どうか、あるいは、それが有効に機能している
かどうかが? 良くわからない(汗)
一応、「インテリジェントハイブリッドAF」
(TTLコントラストAF+位相差AF)と記載があるが、
その動作条件等の詳細については不明だ。
で、FUJIFILM社製のミラーレス機やコンパクト機の
高級機(注:稀に普及機のXQ1も含まれる)には、
像面位相差AF機能が搭載されている(いた)。
これらは、X-Trans CMOSセンサー搭載である事が
条件な様相だったが、X-A5(2018年)と本機XF10
(同年)に向けて新開発された2400万画素ベイヤー
配列型撮像センサーには、像面位相差機能が
一応は搭載されている模様だ。
だが、これが、なかなかピントが合わない
(速度も精度も)という課題を持っている。
こちらは、解像力の問題より、ずっと深刻だ。
ただ、これもまず、被写体の条件によりけりだ。
あるいは、撮影者のスキルにも大きく影響される。
AF性能が低い課題の回避法においては、まず、
コントラストAF等の原理を、ちゃんと把握している
ユーザーであれば、その機構が苦手とする被写体に
カメラを向け「なんとしてもピントを合わせろ!」
と思う事自体が無謀だ。AFが合わせ易いように
測距点や、その大きさ(面積)と被写体の関係性を
選ぶ、つまり利用者がカメラの弱点をサポートして
上げれば良い。
又、カメラ設定での回避だが、まず「プリAF」と
いう機能があり、これをONすると、XF10は電源
投入後に、常にAFを合わせ続ける状態とはなる。
AF速度的には勿論向上するが、AF精度は、この
設定では上がらない。
そして、カメラを、例えば、近接フォーカス状態
から遠距離被写体に振った際等、AFがジワ~と
動き、その遅さが気にかかる。
又、バッテリーの消耗も気になるであろう。
そして「コンティニュアスAF」(AF-C)では、
シャッター半押し中にAFを合わせ続ける。
これもAF速度向上となるが、AF精度は別問題だ。
なお、本機のデフォルト設定では、AF-C時でも
「フォーカス優先」となっているので、ピントが
合わないとシャッターを切る事ができない。
(これは「レリーズ優先」にすれば解決するが、
そうすると、ピンボケ写真を連発する)
又、測距点をシングルで狭くしている場合等では
AF-Cでピントを外してしまった際に、レンズが
ガタピシと前後するので、やや鬱陶しいし、
AF-SでもAF-Cでも、ピントの後抜け(背景に合う)
も頻発する。
他、「スナップショット」モードは最も有効だ。
これを設定すると、5mまたは2mのいずれかに、
ピント距離が固定され、かつ、絞り値も
5m時でF5.6、2m時でF8に固定される。
この時、AFは動作しないので、ゼロタイムの
即時フォーカスが実現でき、速写性が高い。
かつ、被写界深度は、許容錯乱円を0.03mm
で計算すれば、18.5mmの広角レンズにおいて、
5m/F5.6→約1.5m~∞
2m/F8 →約0.9m~∞
となり、この範囲ではピントを外す事はない。
つまり、銀塩時代から続く「パンフォーカス技法」
の代用となる次第だ。
(参考:本機では、このあたりの被写界深度が良く
計算されて仕様が決められているのだと思われる。
2015年に同社から発売された、FILTER LENS
XM-FL 24mm/F8は、固定焦点パンフォーカス
仕様なのに、被写界深度を計算すると、どうも
∞まで到達していないように思えた。
まあ、このXM-FLは「トイレンズ」の一種だから
その仕様でも良いが、本格的な描写を期待する
本機XF10では、そうはいかなかったのであろう)
なので、スナップショットモードは、極めて
有効であり、Fnボタン等にこれを設定しておけば、
OFF→5m→2m→OFFの、押す度の循環動作により
非常に使いやすいパンフォーカスカメラとなる。
また、絞り値も、少し(F5.6/F8に)絞り込まれ
諸収差低減効果により、解像感も向上する。
絞り開放(F2.8)近くは、近接AF撮影専用とし
中距離、遠距離撮影では、このスナップショット
モードを活用するのが、本機の用法として望ましい。
注意点としては、絞り込まれる事で、低速
シャッター化しやすく、手ブレや被写体ブレの
頻度が高まる事だ。これについては後述のAUTO ISO
感度設定を綿密に行う必要がある。
まあ、総括としては、元々被写界深度が深い広角
レンズなので、AFの性能等をとやかく言う前に、
「そんな事は、撮影者側のカメラ設定や撮影技能で
何とかなるでしょう?」という話だ。
銀塩時代から「広角機は中上級層向け」と言われ
続けた背景には、こういう事もあり、撮影者に
様々なスキルを要求する、という意味でもある。
決して「広角レンズは広い風景を撮るモノ」では
無いので、そもそもビギナー層向けでは無い。
3)手ブレ補正なし
→まあ、ここも言ってしまえば弱点なのだが・・
これの対策としては、ISO感度で調整する事だ。
AUTO ISO時の上限下限感度および低速限界設定が
3種類(AUTO1~3)も!、本機では設定できる。
例えば、私の設定だが、
AUTO1:下限ISO200、上限3200、限界1/ 40秒
AUTO2:下限ISO200、上限3200、限界1/160秒
AUTO3:下限ISO200、上限6400、限界1/ 15秒
となっている。
これは、AUTO1=通常撮影用、AUTO2=動体被写体用、
AUTO3=低輝度(暗所)撮影用、という風に
分類していて、Qメニュー(あるいはFnキー等)で
簡便に、これを被写体条件に応じて切り替える。
なお、一般的には、「ビギナー層における手ブレ
限界シャッター速度は、レンズ換算焦点距離分の
1秒である」と言われている。そうならば本機では
レンズは28mm相当なので、1/30秒あれば手ブレは
しない理屈なのだが、コンパクト機+EVF無し
では、カメラのホールディング(保持)が完璧
には出来ないので、もっと手ブレ限界速度は上がる
であろう。が、中級クラス以上の撮影者であれば、
1/40秒あれば静止被写体では十分だと思われる。
それと、本機には、ややレリーズ・ライムラグ
(シャッター押下後、すぐに撮れない)があるので
スナップショットモードで、シャキシャキと撮って
いる際、レリーズ直後に(もう撮れた、と思って)
カメラを動かしてしまうと、手ブレし易いが、
まあ、そこまで慌てずに撮る必要があるだろう。
要は、ここも「手ブレ補正機能が無いと、ブレて
しまうのが怖い」と言っているのはビギナー層のみ
なので、そうした人達だけが問題となる話だ。
ほんの20年程前までは、世の中には手ブレ補正が
入っているカメラ等は殆ど無かったので、それ
以前から写真を撮っている人達ならば、手ブレ補正
機能が無くとも、なんとでも写真を撮れるであろう。
(注:昔から写真をやっている人でも、手ブレの
原理や限界点を理解しておらず、その対策の為に
常に三脚を使って撮っていたような層では無理だ)
反面、高速シャッター側の限界点だが、
一応は機械式シャッターで、最高1/4000秒だ。
本機のベース感度はISO200なので、日中晴天時
(EV=15)では、絞りF4程度で、だいたい1/4000秒
に到達してしまい、それ以上絞りを開けれない。
(注:手動設定でISO100が使えるが、条件がある)
だが、中遠距離撮影では、前述のスナップショット
モードを用いる事で、少し絞り込まれるので、
シャッター速度オーバーにはならない。
また、カメラ設定で、M+E(機械式+電子式)
シャッターモードにするか、手動で電子式シャッター
を選択する事で、最大1/16000秒のシャッターを
使う事が出来る。しかし、電子シャッターは
動体でのローリング歪みが発生したり、後述の
「機能制限」(=排他仕様)が出てくるので要注意だ。
4)レンズのフィルター溝なし
→保護フィルターやPL/NDフィルター等が装着できない。
一応、サードパーティー製のフィルターアダプター
が売っていた模様だが、現在ではあまり見ないし、
優れたフォルム(格好良さ)が失われてしまう。
面倒でも、付属のキャップを、都度開け閉めする
必要があるだろう。付属キャップには、細い紐を
通して、カメラやストラップに付け、紛失防止は
できるが、この細い紐がキャップに取り付け難く、
結構難儀した。
ちなみに、ストラップは片吊りであり、ここも
どうにも、カメラの保持や可搬性(例:首から
掛けておけない)、耐久性に若干の問題がある。
付属ストラップは皮革製で見栄えが良いが、
実用的観点から、適当な市販品に交換している。
5)撮影モード等による制約(制限)事項が多い
→撮影モードやカメラ設定によりけりで、使えない
機能が色々と出てきて、撮影中「なんでこの機能が
動かない! 故障か?」と慌てる事が良くある。
例えば、連写モードでは、フラッシュが動作しない。
まあ、ここは連続フラッシュは無理なので、理解は
容易であろう。(注:「電子音+フラッシュ」
という、一種の「マナーモード」設定をOFFとした
場合でも、フラッシュは動作しない)
でも、連写モードで「デジタルテレコン」機能が
動かなくなってしまうのは、当初は、かなり慌てた。
他社機では連写時でもデジタル拡大機能が有効で
ある事は、ごくごく普通である。
また、連写モード、かつ、電子シャッター又は
機械式+電子式シャッター設定を用いる場合、
拡張ISO感度(L:ISO100、H:25600/51200)
が動作せず、ISO200~12800に制限される。
これも、良く理由がわからない制限事項だ。
それと、連写モード時に、撮影モードをAdv.
(アドバンスドフィルター)とすると、自動的に
単写となるが、これは撮影モードを絞り優先(A)
等に戻せば、連写モードに復帰する。本来は、
このような挙動が望ましいが、多くの撮影モード
変更において、機能制限が自動復帰する事は無い。
一応、FUJIFILM社のWebには「排他表」と言う、
「こういうモードの際には、この機能は使えない」
という一覧表が出ているが、それは膨大な表で、
とても覚え切れるものでは無いし、かつ、その
排他表に載っていない要素もある(例:前述の、
ISO拡張感度が使える条件等)
(注:この場合の「排他」とは、エクスクルーシブ、
つまり「何かを立てれば、何かが立たない」状態
を示す。ただし、本ブログで良く使う独自用語の
「排他的仕様」とは、自社純正の製品群でシステム
を組まないと、他社製品を混ぜると本来の性能が
発揮できないように制限を掛ける、という「他を
排する、意地悪な状態」を表すことが殆どだ)
まあ、なので「何かの機能が動かない」となったら、
とりあえず、「絞り優先(A)モード」「単写」
「機械式シャッター」の設定とすれば、これで殆ど
の機能制限(制約事項)には、ひっかからない。
ただ、個人的には、多くのデジタルカメラの
基本設定は「連写モード」であるので、単写の
設定の必然性を要求される事は好まない。
そもそも、「排他」の多くは、ファームウェア
のプログラミング上での工夫で回避できる筈だ。
例えば「連写時に使えないモードが存在する」
のではなく、「連写が出来ないモードを利用者が
設定した際には、一時的に連写を止める」で
済む筈だし、事実、一部はそういう仕様となって
はいる。でも、それが全てのケースで、そうした
挙動にはなっておらず、プログラミングが出来る
私の感覚では、どうにもプログラミングの部分で
何かしら、手を抜いているように感じてしまう。
単写と連写等の設定は、専用操作子の「DRIVE」
ボタンがあり、これは比較的簡便な操作性が実現
されているのだが、本機は小型機、かつストラップ
が片吊り(両吊りでは無い)なので、「片手撮影」
というケースも多々存在する。その際に、この
「DRIVE」ボタンが、片手では操作できない、という
課題が存在する。
操作系、操作性については後述する。
6)操作系が練れていない
→これは、ほとんどのFUJI Xシリーズ機や
従前からのFinePix機、あるいは銀塩時代での
FUJIFILM機でも同様の課題があった。
2010年代のXシリーズにおいては、少しづつ
改善はされているようだが、メニュー構造が
階層型で使い難く、かつメニュー位置メモリー
すらも無い(注:電源を切ったら設定項目を
忘れてしまい、常にメニュー先頭からの表示だ。
ただし、「Qメニューで」あれば、項目を編集
した際、次回電源投入時でも、位置を覚えている)
このあたりは、他社機であれば「保存設定」で
色々と設定が可能なのだが、FUJIFILM機では無理だ。
また、本機には、「フォーカスレバー」という
ジョイスティック型操作子が新設されているが、
これは、8方向型ではなく、4方向型なので、通常
又は旧来の「十字操作子」と、そう変わるものでは
無い。若干だが使い易い要素もあるが、連続動作時
等で誤操作もしやすく(例:チャタリングが発生し、
設定したい操作位置よりも、余分に進んでしまう)
あるいは、メニュー操作等での 操作系がタイマー
動作になっている場合では、すぐに測距点選択に
入ってしまう(しかも、測距点ロックが存在しない)
これも同様に誤操作しやすい、という課題に繋がり、
全般的に、この操作子は、どうにも微妙だ。
まあでも、FUJIFILMのコンパクト機のみにある
「コントロールリング」等は、旧来のXQ1(2013年)
等の時代から存在し、使いやすさを感じている。
また、AF+MFモード等では、このリングの効能は
ピント合わせに動的(自動的)に変化する。
(ただし、経年劣化で、接触不良を起こし易い。
また、前述の「排他表」にひっかかる操作を
している内に、せっかくの動的設定が、勝手に
OFFになってしまうケースもある)
まあ、Xシリーズでもコンパクト機は若干マシで
あり、ミラーレス機の方は、まだまだという感じだ。
しかし、コンパクト機においては、前述のように
「片手撮影」を多用するケースも多いので、多くの
操作が「カメラを両手で持ちながら、あるいは
カメラを右手で持ち、左手での操作が必要」と
なる事は、ちょっと不満である。
特に、タッチパネル式操作が増えているが、これも
必ず左手(又は、カメラを左手で持っての右手)
操作が必要となる為、あまり効率的だとは思えず、
前述の、T-Fn機能との誤(混同)作動も気になり、
結局、タッチパネル操作は、フィルター系の選択
の他は、その殆どをOFFとして使っている状態だ。
又、本機では有益な機能である「デジタルテレコン」
は、コントロールリングにのみアサイン可能であり
QメニューやFnボタンには割り振る事が出来ない。
他の有益な機能である「フィルムシミュレーション」
を、仮にコントロールリングに割り振ると、デジタル
テレコンの行き場(アサイン先)が無くなってしまう。
結局、フィルムシミュレーション機能は、Qメニュー
又は、背面モニターのタッチ操作で変えるしか無いが、
操作の手数が増えてしまう。
つまり、他機に無い機能(デジタルテレコン等)は、
本機を使う上で優先的に使う機能な訳だから、その
特徴的な機能を、操作系設計上では優先しなくては
ならない。結局、GUIコントロールのプログラムを
他機と共通にして、開発工数を省力化したが故に、
個々の機体独自の機能を無視している状態であろう。
開発側において、本機の特徴が、あまりわかって
いない設計思想だ。
それから、アドバンスド・フィルター機能の一部
(例:HDRアート)では、撮影・画像処理後に、
「この画像を保存しますか?」という選択メニューが
表示される。これは、そのモードで撮りたくて、そう
設定しているのだから、保存しない筈が無いだろう。
これも、なんだか良くわからない操作系設計だ。
7)ピーキング機能が低精度(低性能)
→FUJIFILM社製の機体全般で同様であり、もう、
どうしようもない。
私が趣味的/日曜大工的に作ったピーキングの処理
(プログラミングシリーズ第3回記事参照)の方が
遥かに高精度である状態なので、大メーカーでの、
ちゃんとした研究開発チームでは、もう少しマシな
アルゴリズムを作って貰いたい、と切望する。
まあ、本機は、MF撮影を多用する仕様や用途では
無いので、この弱点は不問としておこう。
8)バッテリー充電時間が長い
→本機には、急速充電器が付属しておらず、
USB給電での充電となるが、結構時間がかかる。
対策だが、バッテリーの型番はNP-95であり、
これはやや古い時代の、X-S1やX100S等でも
使用されたタイプであるから、それらの機種に
付属(又は、単品販売)の急速充電器(型番:
BC-65N)を使用すれば良い。
(追記:家の部品箱を探していたら、10数年も
前に買ったと思われる「NP-95」が出て来た。
どうやら、2000年代のFUJIFILM機から既に
使われていた、古い仕様のバッテリーの模様だ。
何故、これを現代でも使うのだろうか?ここも
コストダウン要素だろうか? でも、それが
理由でバッテリーの充電が遅いのであれば、
ちょっと納得が行かない措置(仕様)だ)
なお、CIPA規格での静止画撮影可能枚数は、
約330枚である。撮影技法や気温等にもよるが、
その数倍は持つと思う。本機の特性で趣味撮影
では1日で1000枚を超える事は無いと思うので、
まあ、丸1日の撮影には十分持つバッテリーだ。
課題(欠点/弱点)は、だいたい以上である。
なお、本ブログにおける用語の「重欠点」とは、
「撮影者が(技能等で)回避しようが無い欠点」
を示す。
上記のような、本機XF10が持つ課題は、概ねだが
撮影者次第で回避が可能なので、「重欠点」には
ならないものばかりだ。
課題の多くは、「コストダウン的な理由」を
根源とするものであろう。だから、コストダウン
の為に省略された機能や性能(例:手ブレ補正や
AF性能等)については、その回避法を良く考察し、
それらが問題とならない撮影技法を実践しなければ
ならない。
それが出来なければ、「所詮は安物カメラだ!
GRⅢ等の高いカメラには、全く及ばない低性能だよ」
といったビギナー的評価となってしまい、本機に
失望し、早々に手放してしまうハメになるだろう。
低価格機には、低価格である所以(コストダウン要素)
がある訳なのだから、その弱点を回避して使う事を
想定していないとならない。そういう視点で本機を
選ぶ事は必須なのだが、残念ながらビギナー層が
主力となってしまった現代のカメラ市場では、
それを考慮したユーザーレビュー等は皆無に等しい。
まあ、総合的には、弱点を回避して使う上では、
本機XF10のパフォーマンスは高く、加えて、価格が
安価な事から、「コスパ評価」については
近年での高価格化した(=大きく値上がりした)
カメラの中では珍しく、減点評価にはなっていない。
以下、例によって、個人評価データベースを
参考用に掲載しておくが、ここも例によって、
こういう評価項目やその評価点は、個々のユーザー
のカメラの利用法、撮影技能、価値観等によって
大きく異なるものとなるので、あくまで以下は
参考に留めておき、最終的には、利用者自身が、
自分なりの評価を行わないとならないと思う。
<FUJIFILM XF10 個人評価点>
【基本・付加性能】★★★★
【描写力・表現力】★★★★
【操作性・操作系】★★☆
【高級感・仕上げ】★★★★
【マニアック度 】★★★
【エンジョイ度 】★★★☆
【購入時コスパ 】★★★(中古購入価格:33,000円)
【完成度(当時)】★★☆
【歴史的価値 】★★☆
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】3.22点
評価総合点は、標準の3点を超えているので、
まあ、全般的には悪く無いカメラである。
全体的に高機能ではあるが、前述して来たように
コストダウン要素で、機能や性能が省略または
制限されているケースが多いので、その課題を
理解・回避するスキルが必要となるだろう。
ビギナー層向けカメラと思われやすいのだが、
実際の使いこなしは、中上級層向けである。
うまく使いこなせれば、エンジョイ度は低くは
なく、楽しんで撮れるカメラとなる。
他には特筆すべき長所はなく、操作系、完成度、
歴史的価値は、いずれもやや減点とした。
総合的には、大きな弱点(重欠点)も持たないし
近代の高価格化した新鋭カメラの中では、価格も
安価である為、珍しくコスパ評価の減点は無しだ。
初級中級層あるいは初級マニア層あたりに推奨
できるカメラかどうかは微妙である。本機の持つ
様々な弱点をスキル(撮影技能等)で回避できる
ならば、あるいは、そうしようとスキルアップを
目指すならば、悪く無い選択肢だと思う。
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では、本記事は、このあたりまでで。
いつも書いているように、本シリーズの対象となる
(デジタル)コンパクト機は、2010年代から市場
縮退が著しく、あまり欲しいと思える機体が無い為、
滅多にそれらを買う事は無い。
本シリーズ記事は本記事をもって暫定最終回とする。