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Pascalアーキテクチャの「GeForce GTX 1080」が発表
~GTX 980のSLIより高速で599ドル
(2016/5/7 10:44)
米NVIDIAは6日(現地時間)、Pascalアーキテクチャを採用するハイエンドGPU「GeForce GTX 1080」を発表した。発売は5月27日で、価格は599ドル。
アーキテクチャの刷新に加え、世界で初めて16nmプロセスのFinFETトランジスタを採用するのはHPC向けの「Tesla P100」と同じだが、ビデオメモリはHBM2ではなく、Micron製超高速DDRである「G5X」を世界で初めて採用。メモリ速度は10Gbpsに達する。256bit接続で、容量は8GB。
GPUベースクロックは1,607MHzだが、さらなるオーバークロックが可能で、発表会で行なわれたデモでGPUのクロックは2,114MHz、温度は67℃と表示されていた。NVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏によれば、このクロックはGTX 980を液体窒素で冷却した場合に達成できるものよりも高いというが、GTX 1080は通常の空冷を採用する。CUDAコア数は2,560基、GPUブーストクロックは1,733MHz、消費電力は180W。
これらにより、MaxwellアーキテクチャのGTX980のSLI、そして過去最高性能のTITAN Xより高速という。具体的には、TITAN X(消費電力250W)の理論性能値7TFLOPSに対し、GTX 1080は9TFLOPSに及ぶ。
そして、この性能差はVRではさらに開き、TITAN Xに対し絶対性能で2倍、エネルギー効率では3倍になるという。その秘密は、新たに導入された「Simultaneous Multi Projection Pipeline」(以下、SMPP)技術にある。
この技術により、従来のパイプラインでは1つしか持てなかった表示域(ビューポート)を最大16個に拡張。これらの表示域は独立しており、それぞれを個別かつ同時に(1パスで)制御、レンダリングできる。
これによる恩恵の1つは、マルチディスプレイでの画面の歪みの補正。3画面構成で、両脇の2つをやや内側に傾けたレイアウトにすると、ユーザーがディスプレイに囲まれる形となり、没入感は増すが、ディスプレイを傾けた分だけ、正面の画像に対して、両脇の画像は歪んでしまう。そこで、SMPPを使うと、ディスプレイの角度をGPU側で自由に補正できるため、まるで3つの窓を通して景色を見るように、歪みのない完全な1枚絵を表示できる。これまでは、これを行なうには3枚のGPUが必要だった。
もう1つが、VRにおけるレンズの樽形歪み補正。VRのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)にはレンズが使われており、特に周辺部分は画像が歪んでしまう。そこでGPUは、レンズの歪みを想定し、逆向きに歪んだ映像をレンダリングする。これによって、歪みを修正できるが、歪ませる分、実際には目に見えない周辺のピクセルまでレンダリングする必要が生じ、GPUを無駄に使うことになる。
そこでPascalではSMPPを使い、1つの目に対して4つの表示域を設定し、それをレンズに合わせて傾けた形でレンダリングを行なう。これによって、無駄なレンダリングを省きつつ、歪みを修正できる。その効果は甚大で、この機能を使わない場合のレンダリング性能が60~70fps程度であるところ、95fps程度にまで向上させることができる。これがTITAN Xに対して2倍の性能を実現できる秘密である。
標準ディスプレイインターフェイスは、DisplayPort 1.4、HDMI 2.0b、デュアルリンクDVI。DisplayPort経由では4K解像度で120Hzの表示が可能。
GTX 1080には、Founders Editionというオーバークロックモデルも用意され、価格は699ドル。
また、6.5TFLOPSで8GBのG5メモリを搭載するGeForce GTX 1070が379ドル、そのFounders Editionが449ドルで6月10日より発売される。