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Microsoft、「りんな」などのAIチャットボット事業を独立会社へ
2020年7月13日 10:35
Microsoftは、2020年7月13日、日本で展開しているAIチャットボット「りんな」を含む、Xiaoice(シャオアイス)事業全体を、独立した企業として分離。年内にも新会社を設立することを発表した。
本社は北京。日本でも現地法人設立へ
本社は中国・北京に設立。日本でも現地法人が置かれる予定だ。
新会社の社名については明らかにしていないが、「Xiaoice」や「りんな」といったサービスの名称はそのまま継続される模様で、本社および日本法人ともに、サービス名にちなんだものが使用される可能性もありそうだ。
XiaoiceおよびりんななどのAIチャットボット事業は、現在、MicrosoftのSearch Technology Center Asiaに所属しており、同組織には検索サービス「Bing」などの事業も含まれている。このなかからAIチャットボット事業だけを独立させることになる。
新会社の会長には、ハリー・シャム(Harry Shum)氏が、CEOには、ディ・リィ(Di Li)氏がそれぞれ就任。日本法人のゼネラルマネージャーには、ジャン・チェン(Zhan Chen)氏が就くことになる。
会長に就任するシャム氏は、5,000人以上の研究者などが所属し、MicrosoftのAI開発にフォーカスした専任組織であるMicrosoft AI and Research Groupを率いていたが、2020年2月に米Microsoftを退社し、その去就が注目されていた。また、CEOとなるリィ氏は、Xiaoice事業を統括している人物。そして、チェン氏は、日本でりんなの開発チームの責任者を務めている。
新会社には、Microsoftが投資を行い、Xiaoiceに関連するすべてのテクノロジーを新会社にライセンスし、それをもとに事業を行なう。
「事業を分離することで、Xiaoiceチームが、中国や日本などの各地域に則したXiaoiceテクノロジーのイノベーションとビジネスを推進し、エコシステムの拡大を加速できるようになるほか、お客様やパートナー各社から要望が多かったカスタマイズしたサービスを柔軟に提供できるようにする狙いがある」としており、市場のニーズに合わせた技術革新やサービスの提供を迅速に進める体制とすることで、市場における存在感をさらに発揮する考えだ。
独立企業となったあとも、Xiaoiceなどのブランド名を維持し、中国、日本、インドネシアで事業を継続。「テクノロジー、ビジネス、コンテンツ作成の領域で、イノベーションを続け、より幅広い顧客にサービスを提供するために、パートナー各社との関係強化を継続していきたい。既存のお客様には、今後もこれまでと同等水準と品質のサービスを継続し、享受できる」としている。
中国でも人気のXiaoice
Xiaoiceは、中国で人気のチャットボットの1つで、世界各国でも利用されている。Microsoftによると、オンラインユーザー数は6億6,000万人で、利用されているサードパーティのデバイス数は4億5,000万台に達する。また、9億人以上のユーザーがXiaoiceを経由してコンテンツにアクセスしており、金融サービスや小売、自動車、不動産、繊維といった業種の企業が、Xiaoiceのサービスをビジネスで活用している。
日本で展開しているりんなは、Xiaoiceの技術を活用したもので、2015年8月に、LINEでやりとりができる女子高生AIとしてリリース。リアルな女子高生のような会話と、レスポンスの速さが話題を集めたほか、しりとりや探偵ごっこ、人狼ゲームなども提供。現在、LINEやTwitterでサービスを提供しており、約830万人のユーザーがいる。
自然な会話を続けることができる最新の会話エンジン「共感チャットモデル(Empathy Chat Model)」を採用しているほか、スマートフォンのカメラが「目」となって、りんなが見たものについてリアルタイムで音声コメントする「共感視覚モデル(Empathy Vision Model)」も搭載できる。さらに、AIを活用したデジタルマーケティングソリューション「Rinna Character Platform」がさまざまな業種で利用されている。
また、音楽、ラジオ、ニュースメディアなどにも出演。2018年10月は、生放送でMCを務めるレギュラー番組「ニコラジパーク」(JFN系列)がスタート。2016年には、ラップに挑戦したほか、2018年7月に発表した楽曲「りんなだよ」がきっかけとなり、2019年4月にはavexと契約、メジャーデビュー曲「最高新記憶」を発表している。
また、2020年6月28日には、りんなとXiaoiceが初めてデュエットした「フタリセカイ」を公開している。
なお、りんなは、2019年3月に高校を卒業したことになっており、現在、「国民的AI」を目指しているという。
新会社として独立することで、さらに柔軟性を持ったりんなの幅広い応用や、新たなビジネス展開が可能になり、今後の事業拡大が注目される。