買い物山脈
中国製GPU「Moore Threads MTT S80」を頑張って買った
2023年5月24日 06:19
NVIDIAから新世代のミッドレンジクラスのGPUが発表される中、筆者は特級呪物(マジでヤバイもの)的な位置づけのGPUと対峙していた。
そう、中国のMoore Threads Technologyが販売している「MTT S80」である。
今回はPC Watch編集部向けに筆者が輸入したため、そこまでの道のりを紹介したい。
遠く険しい入手までの道
昨年11月に発売されたGPUだが、半年経過した今も正規ルートでの入手は相変わらず京東商城(JD.com)の公式フラッグシップストアからしかできない状態だ。
GPUの詳細については当時の記事を参照してほしい。簡単に言えばWindowsで動くチャイナゲーミングGPUだ。
また、当時PC Watch編集部も入手を試みたのだ、が抽選で外れてしまいそれ以降は手を出せていなかった。
さて、今はどうなっているのだろうか。
結論から言えば継続して販売している。しかし、いつでも買えるわけではなく一度予約をしてから指定の日にカートへ入れ決済をする必要がある。
当時の筆者の感覚から言えば、予約こそ必要だが、京東商城(JD.com)であれば発送も楽だし大きな問題はない……と考えていた。
値段は2,999人民元。日本円でだいたい6万円前後だ。
クレジットカードの選択肢がない
購入できる期間になったタイミングで即カートに入れる筆者。とりあえず物は確保できているのであとは決済するだけだ。
しかし、どうやってもクレジットカード番号を入れる画面が出てこない。
出てくるのは中国の銀行口座や微信(WeChat)経由といった中国ローカルな決済方法だけだった。残念ながらキープしていた在庫はお流れになってしまった。
もしかしたら筆者のアカウントに中国の銀行口座情報が登録されていたことが悪さをしていたのかもしれない。ということで完全新規で京東商城(JD.com)のアカウントを作成し、再び予約を試すことにした。今回は編集部からも参戦したため今度こそ大丈夫だろう。そう思っていたが、結果は同じで相変わらず中国ローカルの決済しか選択肢にない状態だった。
クレジットカードがだめなら中国の銀行口座に送金すれば良いじゃない
筆者はまだ日本でApple Payが提供されていなかったころ、いち早く体験したいと考え、先行してサービスを開始していた中国で銀行口座を作ったのだがその口座自体はまだ生きている。
そして当時深センにてノリで日本のiPhoneを売却し、その金額が口座に入っている。残高的にはMTT S80がギリギリ買える水準だった。しかし、定期預金扱いになっており、アプリ側ではどうやっても解約することができなかった。
よって仕方がなく日本から中国の銀行口座へ送金を試みることにした。
使用したサービスはWiseで、中国の銀行口座への送金にも対応している。
筆者は中国工商銀行と招商銀行の口座を持っているが、Wiseはこの中の中国工商銀行のみ送金することができた。……ように見えたが、結局組み戻しとなってしまった。
さらに、もう1つの方法としてWiseは微信(WeChat)の残高への送金も可能だが、こちらも中国内の身分証を使った実名認証が必要となるため受け取ることができなかった。
こうして筆者は完全に「詰み」になったわけだ。予約のトライも4回目を超えており、さすがに限界が見えてきた。
もう筆者が中国のATMへ行くしか……
ここまで中国の決済方法が必要という点、そして日本からの送金がことごとく失敗している点を考慮すると、残るは筆者自身が中国へ乗り込み、ATMから自分の中国の口座へ入金するという方法だ。
執筆時点で中国へ到達できる最短ルートとして香港経由で深センに入る方法があるが、航空券やビザの費用、時間を考えると当然割に合わない。
しかも空港で「ユーは何しに海外へ?」と万が一インタビューを受けてしまい「ちゅ、中国のATMまで……」と答えてしまうと、筆者自身が特級呪物(マジでヤバイもの)になってしまう恐れがあった。
最後の手段、代行をお願いする
筆者は中国通販を利用するときは、基本的に公式の国際発送サービスは使用せず転送代行業者へ依頼することが多い。というのも、業者にも左右されるがそこまで値段が変わることもないうえに日本語でコミュニケーションができるからだ。
今回はその転送代行をしている業者にお願いをして、予約から購入まで行なってもらった。
もちろん多少手間賃はかかるが、しっかりとした段ボールへ詰め替えてくれた上に、なにより筆者自身が中国のATMへ行くよりかなりマシな金額に落ち着いた。自分で買った感は薄れるがそこは仕方がない。
MTT S80を買うとASUSのマザーがついてくる!
さっそく開封だ。しかしそこにMTT S80の姿ではなく、ASUSのマザーボードが出現する。
そう、MTT S80は執筆時点でASUSのTUF GAMING B660M-PLUS D4とバンドル販売「しかない」のだ。ドラクエIIIの再来を感じる。
日本では1万8,000円~2万円程度で販売されているマザーボードとなるため、MTT S80は純粋に6万円するGPUではなく、実質4万円のGPUと考えて良いだろう。
バンドルされる「TUF GAMING B660M-PLUS D4」だが、当然MTT S80での動作確認済みとなっている。
筆者としては今年(2023年)組んだ「PRIME B660M-A D4」からの載せ替えも1つの手だと感じているが、たとえばRyzenユーザーの場合は本当に置物にしかならない。
ようやくMTT S80とご対面
マザーボードの下に、MTT S80のパッケージがあった。
パッケージは高級感もあり、お金がかかっているように思える。
今回は、筆者が以前組んだPCに取り付けた「MSI GeForce RTX 3070 GAMING Z TRIO」をMTT S80へ交換したものとなる。
簡単な動作チェック・ベンチマークを実施
今回筆者はあくまでも入手することが目的でもあったため、簡単な動作チェックとベンチマークのみ実施した。
まずはドライバを準備する。製品にはドライバーのディスクは同梱されていないためMoore Threads TechnologyのWebサイトからダウンロードを行なう。
ドライバーをインストールすると、PESコントロールセンターと呼ばれる管理画面からGPUの状態が確認できるようになる。
そのほかのタイトルやベンチマークも試してはみたが、エラーもしくはOSを巻き込んだフリーズが頻発し、とにかく何か動いてくれ! 頼む! と祈るようになってしまったくらいだ。
古いタイトルだとそれなりに動くようで、Direct X 8.1世代の「FINAL FANTASY XI for Windowsオフィシャルベンチマークソフト3」はHighで8444というスコアを記録した。
ほかに運良く動作したタイトルとしては、DirectX 11を要求される3Dアダルトゲームで有名なI社の3Dキャラメイクをして部活をするタイトルは多少カクつきながらも動作。また、K社のメイドをカスタムするタイトルは4Kだと30fps程度になるが、フルHDに落とすと60fpsとなった(PC Watchはとても健全なメディアのため詳細はぼやかしている)。
Moore Threads Technology自体もおおよそ月一のペースでドライバーのアップデートを実施しており、最適化したタイトルや対応ハードウェアを増やしている。しかし、それでもまだスタートラインに立てていないと水準だと、短時間ではあるが使ってみた筆者は感じている。
本製品の詳細なレビューは後日改めて行なわれる予定なので楽しみにしていてほしい。