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中古PCの健全な市場形成を目指す、業界団体「RITEA」が設立
7月26日 設立 中古PCの業界団体である有限責任中間法人 中古情報機器協会(略称・RITEA=リテア)が7月26日付けで設立。31日に、東京・芝公園のメルパルク東京で設立総会を開催した。 初の代表理事には、ソフマップの矢野晴久取締役が就任。正会員19社、準会員4社、特別会員2社、賛助会員3団体の合計28組織・団体が加盟してスタートした。 「年間100万台とも、150万台ともいわれる中古PC市場全体のうち、会員会社だけで6~7割を占める。市場全体の3分の2に達する」(小澤昇事務局長)というように、中古PC市場を牽引するに相応しい体制でスタートを切ったことで、今後の同協会の活動にも期待が集まる。
実際、代表理事となったソフマップは、中古PC市場ではリーダー的存在。中古PCの価格設定は、ソフマップが左右するという時代が長く続いている。 また、常務理事兼事務局長に就任した小澤昇氏は、この7月までは、NECの中古PCであるRefreshed PC事業の推進役を担い、同事業を軌道に乗せた人物。かつては、NECのPC-9800シリーズの草創期から同事業に携わり、事業推進のトップである当時の本部長の浜田俊三氏、ソフトウェア部門を担当した早水潔氏とともに、ハードウェアの担当として、その頭文字をとって、「H2O」の1人と称された功労者でもある。 今回、長年勤めたNECを、NECの創立記念日となる7月16日付けで退社し、今後、同協会の活動に専念することになる。 もちろん、NECのPC事業を担うNECパーソナルプロダクツも、同協会に加盟することになる。販売店だけの組織ではなく、メーカーが、この団体に参画することも大きな意味を持つ。 ●RITEAへの一本化が業界の混乱を未然に防止 そして、なによりも大きいのは、2005年、ヤマダ電機の子会社であるインバースネットを中心として設立した中古PCの業界団体である、有限責任中間法人 日本中古情報機器事業協会(略称ジェイ・スイート=Japanese Society of Used Information Technology Equipment)と一本化を図った点だ。 ジェイ・スイートの代表理事だったインバースネット株式会社社長の関戸光雄氏、理事だった日本システムケア株式会社社長の家近茂氏、監事だった株式会社上武社長の船橋孝一郎氏がそれぞれ新団体の理事に就任し、両団体の歩み寄りで、2つの団体が林立するという事態を避けることに成功した。これは業界にとっても喜ばしいことだ。 これにより、急速に中古PCの取り扱いを拡大しているヤマダ電機が参加したともいえ、ソフマップと並ぶ中古PC販売の両雄が名前を連ねたことになる。 インバースネットの関戸光雄社長は、「団体を一本化できたことは良かったと考えている。この協会のために尽力したい」と語る。 また、RITEAの矢野代表理事も、「同じ主旨を持つ団体が2つあっても、混乱するだけ。一本化に向けて話し合いを続けてきた結果、ご参加、ご協力いただけることになった」と説明する。
ジェイ・スイートは、2004年11月から経済産業省と設立に向けた準備を進め、2005年5月に登記。11月には説明会を開催して本格的なスタートを切っていた。だが、説明会後も会員獲得が思うように進まず、このままでは、業界団体としての役割を担うのは難しいとの声も業界内からあがっていた。 一方、PCメーカーなどが参加している社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)と、PC販売店が加盟する社団法人 日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)、ソフトメーカーが加盟する社団法人 日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA)の3団体が、2005年4月に、「中古PCに関するガイドライン~安心・安全な普及を目指して~」を策定し、中古PCの流通に向けた環境整備へ取り組む動きが見られていた。今回のRITEAの設立は、この取り組みをベースとして組織化されたものともいえ、RITEAの賛助会員には、JCSSAおよびJPSA、そして、JEITAの関連団体である有限責任中間法人 パソコン3R推進センターが名を連ねている。 2つの異なる中古PCを取り巻く動きが、今回のRITEA設立で一本化されたことで、業界の混乱を招かなくても済むようになったわけだ。 PCを循環型社会のサイクルに当てはめてみると、製造から販売という部分には、JEITA、JCSSA、JPSAという業界団体が存在していた。また、PCの廃棄から再資源化というサイクルでは、それを担う団体としてパソコン3R推進センターがあった。
だが、回収や再整備、再販売という領域においては、これまで業界団体がなかった。ここには、リユース再生業者やデータ消去会社、PCオークション事業者、中古PC販売会社、そして、PCメーカーの中古事業を担う部門などが存在するが、「市場規模全体がどうなっているのか、どんな企業が、どれだけの規模で事業を行なっているのか、まったく実態が掴めていないという状況」(小澤事務局長)だった。 また、各社が独自のガイドラインを策定しているため、中古PCの品質に関連する評価基準が各者各様で、ユーザーが安心して売却や購入できる市場が形成されているとは言い難かった。業界を健全に発展させるという意味でも不十分な状況であったことは否めないだろう。 つい最近も、PSEマーク制度の施行を巡って、中古オーディオ製品や中古電気楽器を取り扱う販売店が、直前までその事実を認識せず、制度開始直前に社会全体が大騒ぎしたことは記憶に新しい。これも、中古製品を取り扱う事業者を取りまとめる業界団体が存在せず、事業者に対する周知徹底ができなかったことが一因といえる。 今後、中古PCに関しては、ソフトウェアのライセンス問題や、環境対策、そして、中古PCによる情報漏洩問題対策といった点での整備が課題となっており、業界団体が果たす役割は少なくないといえよう。 RITEAは、「中古情報機器に係わる良質な事業者の育成、また、情報機器に関係する各事業者の協力による良質な中古情報機器の認知度向上、及び普及活動により我が国の中古情報機器市場の発展を図る」ことを活動目的に掲げる。 また、具体的な事業として、1.中古情報機器市場の拡大及び中古情報機器取扱い事業の認知度向上を目指す広報啓発活動、2.ユーザーが使用済み情報機器の売却または中古情報機器の購入をする場合のガイドラインの設定と広報周知、3.使用済み情報機器の再生工事及び中古情報機器の商品化に係る業界共通モデルの管理・運営、4.中古情報機器の付加価値を高める施策の推進、5.業界としての使用済み情報機器買い取り実績及び中古情報機器流通実績状況の公表、6.良質な中古事業取り扱い事業者の認知拡大を目指した事業者認定制度の実施及び認定事業者の公表、7.中古情報機器市場の発展に関する提言――などを掲げる。 加盟の対象となるのは、データ消去事業者・再生工事事業者、情報機器に関係する新商品製造メーカー(ソフト・ハード)、販売店、リース業、レンタル業の事業者などで、使用済み情報機器の適切なデータ消去・再生工事から、良質な中古情報機器として販売するための基準設定を行ない、使用済み情報機器保有者が安心して売却でき、同時に中古情報機器購入希望者も安心して購入できるよう、新商品→中古品→部材化という情報機器の一連の利用プロセスにおけるバリューチェーンの構築に寄与していく、としている。 代表理事である矢野晴久氏(ソフマップ取締役)は、「良質な中古PC市場を育成するためには、いくつかの解決すべき課題がある。例えば、データ消去に関するガイドラインを定め、中古PCの取り扱い業者がそれに則って、中古PCとして流通させること、あるいは中古PCに搭載されているOSを、新たなOSに入れ替えて流通させるといった、ソフトメーカーの著作権を尊重しながら、新たなビジネスを行なうことも考えなくてはならない」と語る。 今後、RITEAでは、会員会社を対象に、中古情報機器取り扱い事業者を認定し、認定証や資格取得ロゴを提供するほか、データ消去(再生工事)が済んだことを示すシールを作成し、これを9月から10月にも加盟各社に頒布。会員会社が販売する中古PCには同マークを貼付して、再販することになる。 「単に、シールを貼ればいいというのではなく、業界のモラル向上も大切。しっかりと基準を作り上げ、これを徹底することに力を注ぎ、中古PCを取り扱う業者、ユーザーの双方にとって、メリットがある仕組みを作り上げたい」と語る。 25年を経過したPC市場は、その歴史のなかで、少しずつ中古PC市場が形成され、いつのまにか全PCの約1割を占める規模にまで成長してきた。PCが、我々の生活のなかで広く浸透するのに伴って、中古PCの役割はますます重要になってくるのは間違いない。 一部のメーカーや、販売店の独自の手法が業界の標準となり、業界が形成されてきたが故の弊害も散見されるのが実態。中古PCでのOSやソフトの流通問題もその1といえる。そうした課題を解決していくことが新団体には求められることになるだろう。 □RITEAのホームページ (2006年8月3日) [Reported by 大河原克行]
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