どうも、こんにちわ。マッハ・キショ松です。フリーランス……といえばちょっとカッコいいですが、要するに日雇いWebライターをしています。
こんな仕事をしていると、複数のメディアで記事を書くのは当たり前です。新しく仕事を受けることが決まって、編集者と打ち合わせするといつも聞かれるのが
「ウチの文体、いけます?」
という質問。そのメディアのコンセプトを守るために、文体模倣して記事を書いてほしいというワケです。
記事のジャンルによって執筆方針はぜんぜん違いますから、初めて書くときはうまくいかないのが普通。頑張っても、完璧にはできません。それなのに、編集サイドから「てめぇ、やる気がねえのか!」と言わんばかりに怒られることもあります。
あと、「記事数×○○円」という契約がほとんどなので、いくら書き方を勉強しても1円も出ません。
ギブ ミー 生活費
まあ、そんな風にして、文体模倣はそこら中で行われてます。たとえば、新聞、雑誌を読んでるときに「あれ、この記事だけ文章がおかしいぞ」「何を伝えたいのかサッパリ分からん」って思うこと、ほとんどないじゃないですか。あれは何人ものライター、記者が適切な文章が書けるように訓練しているからなんですよ。
面倒だけど当たり前。そんな文体模倣について、ライターはどんな風に考えているのでしょうか。今回は、他のライターの方と一緒に実際に文体模倣しながら、話を伺ってみました。
いろんなジャンルのフリーライターと一緒に、文体模倣してみた
今回、協力していただいたのは、少女漫画、グルメ、マニュアルなど専門の異なるライターさん達。「プロはどういうことを考えて、文章を書いてるの?」と、話を聞いてみたかったので、「仕事で書く文章と同じ雰囲気になるように、文体模倣してください~」とお願いしました。
お題は、誰も専門としていない怪談。「耳なし芳一」に決めました。
【あらすじ】
・盲目の琵琶法師・芳一は平家の幽霊に騙され、墓の前で平家物語を演奏させられることに。
・「このままでは芳一が殺されてしまう」と、住職が芳一の全身に般若心経を書くことを決める(そうすると幽霊から見えなくなる)
・しかし、耳だけ書き忘れていたため、芳一は平家の幽霊に耳をもがれてしまう
案の定、怪談を仕事で扱う機会なんてまるでないため、皆さん手こずり、むっちゃ時間がかかったそうな。
完全に予想通りです、すいません。
【目次】
けっこう長~くなってしまったので、各項目にリンクを貼っておきます。ぜんぶ読んでもらえると幸いですが、時間のない方は気になるところだけでも~。
オモコロ風
キショ松が、オモコロの身体を張った記事っぽく書いてみたのがこちら。
どうも、こんにちわ。住職です。
いや~、夏ですね。幽霊真っ盛りで、肝試しにはうってつけの季節になりました。住職的にもむっちゃ楽しみです、丑三つ時の闇夜を跋扈する魑魅魍魎。オジサンも妖怪ウォッチングしてハッスル、ハッスルしたい!
ただね。こういう仕事柄、幽霊による被害をカンペキに回避する方法を知ってます。みんなと一緒に、名状しがたい化物に全身を引きちぎられるような恐怖を味わえなくて、非常に残念。
般若心経を書いた物体は、仏様の力で幽霊から見えなくなります。身体に書いておけば、どんなヤバい場所で肝試しても悪い霊に攻撃されません。
ただし、書いた場所にしか効果がありません。
つまり、こんな風に全身に書けば、カンペキな透明人間になれるってワケです。でも、必ずここまでしないとダメで、手を抜くと容赦なく悪霊に殺される……というのが定説です。
う~ん。「人体の一部でも見えたらアウト」という考え方、なんかおかしくないですか?
たとえば、首から上だけ何も書かない場合、幽霊からは電波少年にスタジオ出演しているチューヤンみたいに見えます。そんな生首人間が歩いてたら、普通、びっくりしません?
お母さんなら「見ちゃいけません!」って言うタイプの人じゃないですか。そんなのに手を出すなんて、好奇心いっぱいの幽霊なんているわけないでしょ。アイツらは、人間の世界にはないようなもっとスゴいもの見てるんだから。
……というわけで、今回は我が寺の居候、芳一くんの身体に中途半端に般若心経を書いてみたいと思います。この子、平家の悪霊とツーカーなんで、ちょっくら遊びに行かせてみましょう。
(中略)
あ、芳一くんのTwitter実況が止まった!
大丈夫かああああああああ!!
芳一ッ! 芳一いいいいいいいいいいい!!
アカンかったああああああああ!!
(おしまい)
工夫点としては、こんな感じ。
・文章いらなくね? ってくらい、画像を入れまくる
・何が何でもオチをつける
・ちょこちょこ小ボケを入れる(住職はおじさんなので、ネタは古め)
編集長の原宿さんに感想を聞いたところ
「キショ松を芳一の設定にして撮影したいから、一刻も早くスキンヘッドにしてくれ。剃る時は切れ味の悪い錆びた包丁を使ってね」
とのこと。幽霊以前に、編集部に殺されるわ。
グルメ記事風
お次は、Webで活動するグルメライター(匿名)さん。
山口県は下関市にある「阿弥陀寺」というお寺をご存知でしょうか?ここには、口コミ人気も高い「芳一」という名の琵琶法師(琵琶の弾き語りをする盲目の僧)が住んでいます。
そんな芳一の弾き語りが、3日間・深夜限定で開催されることになりました。しかも入場無料!
◆会場はお寺の墓地
会場となるのは、阿弥陀寺の境内にある墓地。安徳天皇の慰霊碑が目印です。
なお、芳一は怨霊に化かされているので、ここをどこかのお屋敷だと思っているようです。
◆生々しい弾き語り
ピークタイムは午前2時。ぞくぞくとやってくる怨霊たちで、会場は満席になりました。
さて、今回の芳一へのオーダーは「壇ノ浦の戦い」です。いよいよ弾き語りが始まりました!
たぷたぷと船に当たる波の音、ざっくざっくと鳴り響く足踏み、シュワシュワと弓矢が飛び交う音…芳一の語り口は生々しいほどに臨場感たっぷりで、まさにいま目の前で戦が繰り広げられているかのよう!
◆最終夜は中止に
ところが最大の盛り上がりが期待された最終夜、残念ながら弾き語りは中止となってしまいました。芳一が化かされていると気づいた阿弥陀寺の住職が、芳一の体じゅうにお経を書き上げてしまったのです。
怨霊は仕方なく、唯一お経が書かれていなかった芳一の両耳を取っていくことにしました。
もぎたての耳はふっくらと肉付きがよく、血も滴るほどのみずみずしさ。鮮度の高いうちに殿様の霊へと献上されたそうです。
これ以降、耳を取られた芳一は「耳なし芳一」と呼ばれるようになり、広くその名を知られるように。みなさんも耳なし芳一の弾き語りが聴きたくなったら、ぜひ阿弥陀寺を訪れてみてはいかがでしょうか。所在地は、山口県下関市阿弥陀寺町4-1です。
「耳なし芳一」には食べ物がまったく出てこないんですが、無理矢理書いてもらいました。とはいえ、以下のような点でグルメ記事っぽさを出したとのこと。
・「ピークタイムは午前2時」という表現を入れて「ここが一番盛り上がるし、混む」という情報を紹介
・「ざくざく」「シュワシュワ」のような擬音の多用(ホントはシズル感の演出に使う)
・もがれた耳の画像として、シズル感のあるものを使用
ちなみに書いたはいいものの、シズル感のある耳の画像の撮り方はまったく分からないそう。生身の人間だから仕方ないですね。おいしいものを目の前に死んで「この世に未練を残し現世に留まる怨霊 兼 グルメライター」にクラスアップできたら、教えてください!