オモコロスタッフの原宿です。最近実家が引っ越すことになりまして、僕も荷物の整理をしています。10年以上同じところに住んでいたので、ガラクタから思い出の品から、色々なものが溜まってしまいました。学生時代に書いた卒業文集の内容に赤面したり、何枚か出てきたビックリマンシールを「懐かしいなぁ」と飽かずに眺めたり、楽しみながら片付けをしていたのですが……。
僕はとうとう見つけてしまったんです。押入れの奥から、“それ”を。
「ん? あの奥にあるものは……」
「え?人の足? これは……これはまさかっ……!」
「虹野沙希……これは確か中学の時に……中学の時、俺は……俺は……」
【中学時代の原宿のエピソード】
■初代「ときめきメモリアル」で完全にギャルゲーにハマる
■「ときメモ」のキャラクターの一人である虹野沙希に本気で恋をする
■虹野沙希の顔写真を財布に入れて持ち歩き、疲れた時などにそっと取り出して見ていた
■辛い時には虹野さんの口癖である「根性よ!」が脳内再生されていた
■虹野沙希が主役に抜擢された「ときめきメモリアルドラマシリーズVol.1 虹色の青春」は何十周もプレイした
■「ときメモ」のキャラグッズ欲しさに毎週アニメイトに通っていた
■「ときメモ」とは全然関係ないが、声優の飯塚雅弓のファンクラブに入っていた
「虹野さんか……懐かしいな。当時は『ときメモ』をきっかけに、『サクラ大戦』とか『トゥルーラブストーリー』とか、ギャルゲーにのめり込んでいたっけ……。『エヴァンゲリオン』が丁度ブームになった頃で、アニメもよく見ていたなぁ」
「でもそれも昔の話……今はすっかりアニメも見なくたったし、ゲームもやらなくなった。この虹野さんの等身大ポップも荷物になるし、引越し前に粗大ゴミに捨ててしまおう。同時にオタクだった過去を捨てて、新しい自分を生きるんだ。もうアニメグッズなど俺には必要ない!」
「…………」
「……うーん……」
「でもこのままゴミに捨ててしまうのも何だか忍びないというか……寂しいな。一度は本気で好きになった人だしな。かといってこのまま保管しておくのも気が重いし……一体どうしたらいいんだろう……」
(翌日……)
「………」
「………」
「というわけなんです、シモダ編集長」
「……なるほど、お話はわかりました」
「僕は一体どうしたらいいんでしょう? やはり二次元のキャラクターを愛してしまった黒歴史とは、きちんと決別するべきなんでしょうか?」
「いえ、僕はそう思いません」
「二次元だろうとなんだろうと、その人を一心に愛することで原宿さんが救われていた過去があったんですよね? ならそれは、『黒歴史』なんて言って隠すようなものじゃなく、立派に胸を張って話せる過去だと思いますよ」
「体すら触れ合えない相手にそれだけの愛情を注げるのって、ほんと素晴らしいことだと思います。だからもっと、虹野さんを愛した自分に自信を持ってください。虹野さんへの深い愛をみんなに伝えてください!」
「虹野さんへの、“愛”を……」
「…………」
「思えば俺は他人からどう思われるかってことばかりを気にして、当時の君が俺を勇気づけてくれたこと、俺の背中を押していてくれたことを、封印しようとしていたのかもな、沙希……」
「でもこれからは違うよ。君を愛した過去も、君自身も、全部ひっくるめて俺は未来を生きていく。もう俺は、自分自身の過去を恐れない」
「これからも、手をつないでいてくれるかい?」
「あの日の涙を、君が受け止めてくれたから。今度は僕が、君を哀しみの雨から守ってあげる」
「この記念すべき日を写真に残そう! ほら笑って笑って! あ! 笑ってるか~!」
「人の目なんて、もう関係ないだろ? さぁ目をつぶって……なに? つぶっていたくないって? しょうがない子だ……」
「ヌチュヌチュッ、ペロッ、ペロペロペローン、チュバッ、ピュルルルルッ…」
「俺がいるところに沙希がいて、沙希がいるところに俺がいる。それがもう、自然なことなんだ」
「ほら、選挙やってるよ選挙。タリーズ? タリーズの社長に投票しちゃう?」
「ムニャムニャ……沙希……これからも、ずっと一緒だよ……」
シモダ
「集めに集めた虹野沙希グッズに抱かれて……なんて穏やかな寝顔なんだ……」
「………?」
「脈がない」
「死んでる……」