預金封鎖は戦後の日本やアルゼンチン、ブラジルなどで実際に行われた政策です。
国が国民の預貯金を一時的に凍結し、自由にお金を引き出せなくすることをいいます。
そして、国が預金から税金を強制的に直接徴収し、国の莫大な赤字の補てんに充てるという仕組みです。
預金封鎖のような強権的な政策は今の現代ではありえない、と考える人も多くいます。
ただ、日本の債務があまりにも膨れ上がってしまっており、その赤字を解消できるような効果的な方法がないのが現状です。
そのようなことから、「赤字でデフォルト(倒産)しそうな日本を救う最後の手段として、預金封鎖が行われる可能性もゼロではない」と言われ始めてきているのです。
もちろん、現時点において日本での預金封鎖の可能性は高いとは言えません。
しかし、万が一この政策が行われるとダメージははかり知れませんので、預金封鎖の知識や対策方法を知っておくことは大切です。
この記事では、預金封鎖の仕組みや預金封鎖が起こるきっかけ、その対策法について解説していきます。
預金封鎖について詳しく知り、自分の資産を守る知識を身につけておきましょう。
預金封鎖とは
預金封鎖とは、ある日突然金融機関の口座がロックされ、預金が引き出せなくなることをいいます。
この預金封鎖は戦後の日本だけではなく、近年も以下の国で実際に行われました。
- 1946年 日本
- 1990年 ブラジル
- 1998年 ロシア
- 2001年 アルゼンチン
- 2002年 ウルグアイ
- 2013年 キプロス
このことを見ても、預金封鎖は頻繁に行われることはないものの、政府が必要だと判断した時には実行されてきた政策であるということがわかります。
日本で預金封鎖が行われた場合、メガバンクも地銀もネットバンクも、すべてがその対象となり、最低限度の生活費を除いて、銀行からお金を出金することができなくなります。
そのため、今まで苦労して貯めてきた預貯金はほぼ出金できないまま凍結されると考えて良いでしょう。
この預金封鎖は、実は約70年前の戦後の日本で実際に行われたことが知られています。
戦後の日本では、預金封鎖を行って国民の資産を強制的に取り上げ、膨大な借金の返済に利用したのです。
戦後の預金封鎖を経験した人の話によると、突然の預金封鎖でお金が引き出せなくなったことで手持ちの資金が不足し、食料を手に入れるのも難しい状態になったとのこと。
預金封鎖が行われた年だけでも物価上昇率は300%に達しました。
その後もインフレが進行し、物価が高騰したため、何十年もかけて貯めてきたお金が、預金封鎖が終わるころには数カ月分の生活費しか残っていなかったということです。
現在の日本は債務超過で、借金が増え続けており、国の借金の深刻度を示す「政府の債務残高の対GDP比」は先進国の中では最悪で、230%を超えています。
戦後では、日本の債務残高の対GDP比が200%を超えたあたりで預金封鎖が行われていました。
このように、日本の債務は戦後に預金封鎖された頃よりも悪化しています。
そのため、「国の膨大な赤字を解消する手段として、預金封鎖が行われるのではないか」と考える人が増えているのです。
預金封鎖の仕組み
預金封鎖の仕組みは簡単です。
まず、国が国民の資産を凍結し、移動できないようにします。
そのようにして国民の預金額を国が把握したあと、「預金税」「資産税」などという名目で税金をかけ、銀行口座の預金から直接税金を徴収する仕組みです。
戦後の日本の預金封鎖では「全財産に課税する」とされたため、預貯金だけではなく株式や国債、不動産、ゴールドなどすべてのものに課税されました。
これらの資産税は、銀行に預けている預金から直接徴収されます。
そのため、税金を支払いたくなくても抵抗することはできません。
税率何十パーセントにも及ぶ税金を、支払わざるを得ない状況になります。
戦後の日本の預金封鎖の後に行われた「資産税の課税」は税率は25%~90%という高いものであり、資産額に応じて税率が高く設定されていました。
資産を持っていればいるほど、高い税率がかけられ、多くの資産を奪われたことになります。
預金封鎖の前日に行われた新円の切り替え
預金封鎖が行われる前日には政府が「新円切り替え」を発表し、その次の日に預金封鎖が発動されました。
みな近々使えなくなる旧円を銀行に預けに来ていたため、預金封鎖前日には、銀行にはいつもより多くのお金が集まっていたであろうことが想像できます。
そして、その翌日に預金封鎖が行われたのです。
市中にある現金をまず銀行に集めてから預金封鎖を行ったという、政府の用意周到さが見てとれます。
国家あっての国民生活なので、国家を維持するためにやむを得ず預金封鎖が行われたと考えられますが、このことにより、多くの国民が辛い生活を送ることとなりました。
このように、戦後は「預金封鎖」と「新円切り替え」「資産税」の3つが同時に行われ、国民の資産の多くが国に徴収されることとなったのです。
今後もし日本で預金封鎖が行われた場合は、目的が「国の赤字を埋めるための税金の徴収」であることは明らかなため、同じようにこれら3つの方法が実施される可能性が高いといえます。
なお、戦後の日本で行われた預金封鎖につきましては、下記で詳細に解説しております。
キプロスの預金封鎖では一定額以上の資産を徴収
預金封鎖の後に行われる資産の徴収では、資産額に応じて税金をかけるのではなく、資産を多くもっている人からまとめて徴収するやり方もあります。
キプロスで行われた預金封鎖では、10万ユーロより多い預金はすべて没収されました。
資産額が約1,000万以下の人はダメージは少なかったものの、資産が1,000万以上の人々は致命的なダメージを被ったといえます。
預金封鎖は、抵抗できないとはいえ国民の大きな反発が予想されます。
しかし、このように、「ある程度のライン以上の資産を徴収する」という方法を利用すると、国民の一部分の層(この場合は貧困層・中流層)の批判をかわすことができるというメリットがあります。
そのため、日本の預金封鎖でも「200万円以上」「300万以上」といったように、キプロス流の課税方法が行われるかもしれません。
預金封鎖ではどのような方法が採られるかはわからないものの、「資産の多くを国に徴収されてしまう」という点は同じです。
一度預金封鎖が行われれば、国の方針に従うしかない状況となりますが、預金封鎖が行われる前にそれを予期することはできません。
預金封鎖に備えるために何らかの対策をしておきたい場合は、「預金封鎖なんて起こるわけがない」と感じられるような、まったく不安がない状態のときに行っておく必要があります。
預金封鎖の目的
預金封鎖の目的は、以下のふたつと言われています。
- 市場へのお金の流れを制限し、ハイパーインフレを抑制するため
- 国民の資産への課税して税金の徴収し、国の赤字を補填するため
預金封鎖をすると、世の中に出回るお金の量が減るため、インフレ抑制効果が期待できます。
実際、ブラジルやアルゼンチンでは預金封鎖前にハイパーインフレが起こっており、それを沈静化させるためにまず預金封鎖を行うという流れになっていました。
このように、政府が預金封鎖を行う最初のきっかけは「インフレ抑制が目的である」という場合が多くなっていますが、日本で預金封鎖が行われた場合は「資産税の徴収」が一番重要な目的になると言われています。
- 戦後、預金封鎖と資産税で国の借金を返済し、国を立て直したという実績があること
- 日本の借金が膨大な額であり、返済するための効果的な方法がないこと
以上の2点を考えると、日本で予期封鎖が行われた場合は、資産税の課税が行われる可能性が高いといえるでしょう。
戦後の日本の借金返済は預金封鎖とハイパーインフレの二本立て
戦後の日本の借金返済では、ハイパーインフレと預金封鎖の二つが大きな役割を果たしました。
- ハイパーインフレが起こることで、借金が目減りする
- 目減りした借金をより減らすために、預金封鎖で国民から資産を徴収する
「日本はいつかハイパーインフレを起こすのではないか」という意見を多く見かけるのは、ハイパーインフレによって膨大な国の借金が目減りするからです。
国民の生活は大打撃を受けるものの、「国の倒産を防ぐ」ということが政府の第一の目的となった場合は、政府がなんらかの形でハイパーインフレを起こし、預金封鎖を行う可能性もゼロとは言えないかもしれません。
預金封鎖は予測不可能
預金封鎖はある日突然、まったく前触れもなく行われるため、予測することはできません。
預金封鎖の情報が事前にもれてしまうと、
- 預金を引き出す
- 海外へ送金する
- 金などを購入して家に隠す
といったように、皆どうにかして必死に資産を移動しようとします。
そうなると国が国民の資産を正確に把握することが難しくなり、税収も減ってしまうことになるため、絶対に国民にさとられないように行われるのです。
預金封鎖発表は週末が多い
預金封鎖は、発表されると銀行に多くの人が殺到することが予想されるため、銀行休業日に発表が行われる場合が多くなっています。
実際、混乱を最小限に抑えるため、戦後の日本では日曜日、キプロスでは土曜日に発表されています。
取付騒ぎが起きないようにするため、土日のどちらかで発表される可能性が高いものの、預金封鎖を事前に予想することは難しいと考えておいた方が良いでしょう。
地震が起こってから防災対策をしても時遅しというように、預金封鎖も起こってからでは対策が間に合いません。
万が一の預金封鎖に備えたい場合は、何も起こっていない平和な時にこそ、対策を行っておく必要があります。
また、預金封鎖が行われる期間がどれくらいになるのかということも予想できません。
過去日本で行われた預金封鎖では、資産が凍結された状態が約2年も続きました。
預金封鎖は年単位で続く可能性がある、ということも覚えておきましょう。
世界の預金封鎖について詳しく解説
預金封鎖は戦後の日本だけではなくブラジル、アルゼンチン、キプロスなどでも行われました。
預金封鎖の前後で起こっていたことについて詳しく知ることは、預金封鎖についての理解を深めるためにとても大切です。
例として、アルゼンチンとブラジルの預金封鎖について見ていきましょう。
ブラジルの預金封鎖
ブラジルでは預金封鎖の前年の1989年には、物価が前年比で20倍になっており、とてつもないインフレになっていました。
世の中に出回るお金を抑制してハイパーインフレを解決するために、翌1990年の3月に預金封鎖が実施されました。
すべての金融機関が閉鎖され、国民は預金を引き出すことができなくなってしまったのです。
そして、預金封鎖に加えて、資産の凍結が行われている間にブラジルの通貨が「クルゼイロ」から「レアル」の切り替えが行われ、旧通貨であるクルゼイロの価値がゼロになってしまいました。
この通貨切り替えで、銀行に凍結されていたクルゼイロの資産価値はゼロになり、国民はほとんどの資産を失うこととなりました。
戦後日本で行われたように「預金封鎖と通貨の切り替え」が同時に行われた例となっています。
アルゼンチンの預金封鎖
アルゼンチンの預金封鎖は比較的近年であり「アルゼンチン国債のデフォルト」として記憶にある人も多いかもしれません。
1999年のアルゼンチンでは、隣国であるブラジルのレアルが暴落したため、反動でアルゼンチンの「ペソ」の価値が高騰していました。
その結果、アルゼンチンで作られた商品の価格も高騰し、輸出をしても外国でまったく売れなくなったことから、輸出産業が大打撃をうけてしまいます。
このことをきっかけに、アルゼンチンの経済は悪化の一途をたどり、経済成長率が前年比マイナス11%という驚くような低い数字を記録。
その後、経済の悪化がつづき、ついにアルゼンチンは国債をはじめとした対外債務の不履行宣言(デフォルト)を行い、国家が破産状態となりました。
物価上昇、失業率増加、倒産件数増加の三重苦に
アルゼンチンでは国の破産が原因でペソが暴落し、通貨安のために物価が上昇するインフレになり、多くの企業は倒産し、失業率は20%を超えました。
そして、倒産しなかった企業でも賃金は大幅に下がったため、
- 賃金は下がるが物価は上がる
という厳しい状態になりました。
小麦などの生活必需品は1カ月で60%も値上がりし、食料品も値上げが繰り返されることになります。
そして、アルゼンチンの不履行宣言をきっかけにした混乱のせいで、人やもの、お金が大量にアルゼンチンから流出し、職を求めて多くの人が海外脱出しました。
アルゼンチンは、国内の資本や預金が海外に流出することを防ぐため、預金封鎖を実施したのです。
預金封鎖では少しはお金を引き出すことができたものの「週250米ドルまで」と出金可能額が厳しく制限されました。
また、年金の支払も滞ったため、皆が銀行に殺到して長い列ができるなど、さまざまな混乱が続きました。
アルゼンチン復活の鍵は通貨安
この後アルゼンチンが復活を遂げた原因は、ペソの通貨安です。
通貨が暴落し、非常に安い状態になったことが、輸出産業の競争力を強めることとなり、その結果アルゼンチン経済は急速に復活していきました。
国家破産後に受けたIMFからの融資も2006年に全額返済し、貧困層も減少しました。
このように、預金封鎖が行われたり国家が破産した場合は、国の信用が低下して強烈な通貨安にみまわれますが、そのおかげで経済が回復していくというメリットもあるようです。
逆に、統一通貨であるユーロを導入しているギリシャなどは、経済危機が起こっても通貨安が起こらないため輸出の競争力が高まらず、その結果経済は低迷し続けています。
日本で預金封鎖が起こるとどうなるの?
日本で預金封鎖が起こると、まず資産が凍結され、お金を引き出せなくなります。
もちろん、大きな混乱が生じるでしょう。
その後、日本はいったいどうなってしまうのか、何が起こるのかということをはっきりと断言することはできませんが、預金封鎖が行われた国の状況を考えると、以下のようなことが起こると考えられています。
これらの影響がどれくらいの期間続くかはわかりませんが、いままでの日本とはまったく違う環境になってしまうことは覚悟しておかなければなりません。
- 日本国債の暴落と金利の高騰
- 円の信用度低下・日本円の暴落
- 国内が混乱・生活必需品や食料の高騰(ハイパーインフレも)
- 景気が悪化し倒産件数が増える
- 失業率も増加
- 職がない人が増えて貧困層が拡大
日本の預金封鎖のきっかけになる2つの事象とは?
日本で預金封鎖が起こるとすれば、きっかけはふたつ考えられます。
- 金利が上昇したとき
- 日本の財政状態がどうしようもなく悪化したとき
それぞれ詳しく見ていきましょう。
預金封鎖のきっかけ①金利が上昇したとき
預金封鎖のきっかけのひとつとして、金利上昇が考えられます。
日本では長年にわたり低金利が続いています。
それは、多くの借金を抱えている日本が支払う利息をできるだけ抑えるための施策ともいえます。
ここで、財務省が発行している資料を見てみましょう。
出典:日本の財政を考えよう(財務省発行教材)
日本の国の歳入では、98兆円のうち34兆円が、新たに発行した国債となっています。
また、歳出では、98兆円のうち、23兆円が借金の返済や利息支払いとなっています。
まさに自転車操業状態といっても過言ではありません。
このような状況の中で、もしも金利が予想外に上昇してしまったときには、国の支払利息額が高騰し、支払いが難しくなります。
また、金利が高騰した状態では新たに国債を発行することも難しくなり、国のデフォルトの可能性が高まります。
金利が上昇すれば、国は利払いのためにたくさんの現金が必要になるため、デフォルトを防ぐために、預金封鎖が実施される可能性が高まるでしょう。
預金封鎖のきっかけ②日本の財政状態がどうしようもなく悪化したとき
預金封鎖のきっかけになるもうひとつの事象として、日本の財政状態が悪化したときが考えられます。
国の借金の度合をみるための指標として「債務残高の対GDP比」がよく使われますが、日本は主要先進国の中で、長年にわたり最悪の水準となっています。
国ごとのGDP(%)/暦年 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 |
日本 | 235.6 | 237.6 | 238.2 | 236.6 |
米国 | 106.8 | 105.2 | 106.1 | 107.8 |
英国 | 87.9 | 87.5 | 87.4 | 87.2 |
ドイツ | 67.9 | 63.9 | 59.8 | 56.0 |
フランス | 96.6 | 96.8 | 96.7 | 96.5 |
イタリア | 132.0 | 131.8 | 130.3 | 128.7 |
カナダ | 91.1 | 89.7 | 87.3 | 84.7 |
日本は債務を少しでも減らしていく必要がありますが、日本の現状として、以下のようなことが挙げられます。
- 景気が回復しないので税収が上がらない
- 高齢化により社会保障費が増大、国の支出は増える一方
- 出生率が低く、若い労働人口が減り続けており、稼ぐ力が低下
実際、2019年の税収は大幅下方修正されており、消費税アップにもかかわらず2兆円以上税収が下落する見込みが発表されました。
このように、国の財政としては支出が増えるばかりで、債務を減らせるような税収増の見込みもたっていません。
アベノミクスが成功すれば日本の景気が回復し、国の税収も上がると期待されていましたが、依然として日本の経済は低迷したままです。
- 日本の借金が膨れ上がり、どうしようもない状態の一歩手前まできている
- 効果的な借金解決方法がない
という状態は、預金封鎖が行われた戦後の日本と非常に似ています。
日本の景気が再び悪化すると、国の財政状態がますます困窮し、それをきっかけにして預金封鎖が行われる可能性があります。
令和の世界不況が日本の預金封鎖を引き起こす可能性も
日本の景気の動向は、税収と大きくかかわってくるため、国の財政に大きな影響を与えます。
2019年の税収の大幅下方修正では、企業業績悪化が主な原因とされています。
しかし、現在は経済のグローバル化が進んでおり、景気が良くなるか、悪くなるかということは日本だけの問題ではなくなってきています。
日本の景気が良くなるためには円安になることが必要ですが、中国とアメリカの対立、イギリスのプレグジット問題によるユーロ圏の不安定さなどから「リスク回避」として日本円が買われやすい状態が続いています。
この円高が日本の景気回復に悪影響を及ぼしており、今後も状況が好転しにくいと考えられているのです。
また、これから世界が大不況に突入するのではないかとも考えられており、日本の景気回復にとって、不安材料が多くなっています。
令和版リーマンショックの可能性 ドイツ銀行の不穏な噂
2019年にはいってから、何度となくドイツ銀行の破綻のうわさが流れており「令和版リーマンショックが起きるのではないか」と市場関係者の間で憶測をよんでいます。
ドイツ銀行は欧州で最も大きい銀行の一つであり、ここが破綻するとヨーロッパのみならず世界にも大きな影響を与えてしまいます。
このドイツ銀行の経営不安がリーマンショック規模の金融危機のきっかけになるのではと不安視されているのです。
しかも、ドイツ銀行が抱える負債はリーマンショックのときとは比べ物にならない規模と言われており、もしもドイツ銀行が倒産すれば、日本の経済や金融市場も大打撃を受けることが予想されます。
ドイツ銀行の破綻がきっかけに一気に不景気に突入してしまうと、企業業績がますます悪化することから、日本の税収も大幅に減少してしまうでしょう。
このように、ドイツ銀行の破綻や令和版リーマンショックが起これば、国の財政がますます悪化するため、預金封鎖のきっかけになると考えられます。
預金封鎖による日本円暴落が経済に与える影響
預金封鎖が起きると最初に円の価値が暴落し、急激な円安になることが考えられます。
もちろん、円が暴落すると輸入品が高騰するなど、生活へのダメージは非常に大きくなります。
しかし、逆に輸出産業には追い風になるというメリットもあるのです。
実は、低迷が何十年も続いている日本経済が復活するためには、「日本は落ちるところまで一旦おち、急激な円安になることが不可欠である」という意見が以前から多くあります。
現時点では、世界のリスクが高まると日本円が買われて円高になる状態が続いており、日本にメリットがある「円安」になる気配はありません。
現在の世界情勢をみても、ユーロ圏の混乱、中国とアメリカの紛争、世界同時株安の可能性がある等、円高になる要素のみが多くなっています。
しかし、万が一預金封鎖が行われれば、円の暴落により経済再生のきっかけがつかめる可能性もあります。
預金封鎖は、国民の負担は非常に大きいものの
- 日本の債務を減らせる
- 円安になる
という2点をとると、国にとってみると悪いことばかりとも言えません。
数年前にNHKで放送された預金封鎖の特集では、戦後預金封鎖が行われたときの当時の大蔵官僚の証言が紹介されています。
「天下に公約し国民に訴えて発行した国債である以上は、これを踏みつぶすとはどんでもない話だ。取るものは取る、うんと国民から税金その他でしぼり取る。そうして返すものは返す」
デフォルトを避け、経済再生のきっかけをつかむためであるならば、政府が「国民の負担はいたしかたない」と判断する可能性も十分にあると考えることができます。
預金封鎖をチャンスに変えた人々とは?
預金封鎖の間は経済面でも大きな混乱が起こるため、株式や不動産が大暴落するなどして、逆に投資のチャンスが訪れる場合もあります。
ただ、資産をすべて銀行に預けていた場合は、それらがすべて凍結されているため、何をすることもできません。
しかし、過去の預金閉鎖でこれらの危機をチャンスに変えた人々は存在します。
戦後の日本で行われた預金封鎖の際には、資金を外国に移していた森ビルの創業者が暴落した土地を大量に購入し、財産を築いたという話があります。
また、1998年にロシアの国債のデフォルトをきっかけに行われた預金封鎖では、ニューリッチと呼ばれる富裕層が生まれました。
ロシアの預金封鎖ではロシアの銀行に預けていた預金はすべて国に奪われてしまい、一切手元に戻ってくることはありませんでした。
また、預金だけでは危険だということで貸金庫に金やダイヤなどの宝石、外国株式などを預けていた人達も、それらをすべて没収されてしまったのです。
しかし、このような中でも、外国の銀行にドルを保有していた人達は資産を凍結されず、守ることができました。
彼らはそのお金を使って、暴落してタダ同然となったロシアの土地を買いあさったことで、ニューリッチと呼ばれる富豪になったのです。
彼らが預金封鎖を予期していたかどうかはわかりませんが、リスクに備えるために外国に保有していた資産のおかげで、資産を守れただけではなく、資産を増やすこともできたということになります。
日本が債務超過でも預金封鎖は起きないとする考え方
日本で預金封鎖が起こる可能性についてここまで詳しく説明してきましたが、「預金封鎖が起こる可能性がある」という意見がある一方、「日本政府の債務超過は問題がなく、預金封鎖は起こらない」とする意見もあります。
このような考え方があることもよく理解しておきましょう。
世界中で話題のMMT理論 お金を刷れば大丈夫
MMT理論は財政拡大理論とも呼ばれ、今世界中で話題となっている理論です。
独自の通貨を持つ政府は、通貨をいくらでも刷って発行できるため、債務不履行に陥る可能性はない、よって、債務残高がどれだけ増えても問題はない、という考え方です。
独自の通貨を持つ国とは、日本やアメリカ、オーストラリアなどのことをいい、ユーロ圏以外のほとんどの国にあてはまります。
逆に、ギリシャやイタリアなど、ユーロ圏の国の通貨はすべて「ユーロ」であり、その国独自の通貨を持っていません。
よって、自由にお金を創り出すことができないため、MMT理論の対象にはならないということになります。
日本ほどではないものの、アメリカも相当借金が膨らんでおり、巨額の財政赤字をどうするべきかという議論の中で、このような理論が注目を集めてきているのです。
MMT理論では、「国債償還時に政府のお金が足りなかった場合は、日銀でお金を刷って創り出し、それを国債償還に充てれば良い」ということになります。
ただ、これはあくまでも理論にすぎず、実際にMTT理論が政府の債務超過の解決策になるかは不透明です。
このような理論が注目されていたとしても、預金封鎖は国民のリテラシー・その時の世論・情勢によって最終的に政府によって判断されると考えたほうが良いでしょう。
このような理論が世の中にはあるということも頭に入れつつも、万が一に備えておくことが大切だといえます。
日本は対外資産が世界一だから大丈夫
日本は対外資産が世界一だから、借金が多くても大丈夫という意見があります。
2018年の対外資産ランキングでは、3位の中国、2位のドイツをおさえて日本が1位となっています。
国の借金は多いけれど、海外に多くの資産を保有しているから破産することはない、という考え方も一理ありますね。
ただ、日本が危機のときに、対外資産を円に変えて赤字補填に充てられるのかというと、疑問が残ります。
例えば、日本は米国債を多く保有していますが、一気に売却すると米国債は暴落し、アメリカに大きなダメージが出てしまいます。
アメリカの意向を無視して米国債の大量売りができるかというと、大きな疑問が残ります。
また、ドルを売って円を買うという動きを大規模に行うことになるため、急激な円高になってしまう可能性もあります。
これは、日本の景気に悪影響を及ぼしてしまいます。
対外資産は世界一であっても、それを自由に利用できるかどうかは別問題であるといえるでしょう。
日本の預金封鎖対策は4つ!万が一に備えてすべきことを紹介
預金封鎖対策には、大きくわけて4つの方法があります。
日本で預金封鎖が行われるかどうかは色々な見方があるため、一概に判断することはできません。
しかし、もし実際に預金封鎖が行われた場合、ダメージははかりしれません。
例え少しでも「預金封鎖のリスク」に備える対策を行っておくと、万が一の非常事態のときに大きな力となります。
預金封鎖対策①海外に資産をつくる
預金封鎖では、預金だけではなく、ロシアのように持っている資産すべてが没収されたり、課税対象となる場合があります。
日本ではマイナンバー制度の普及が進んでおり、国が個人の資産をすべて把握できるような状態に近づきつつあります。
そのため、預金だけではなく不動産や証券などすべてが対象となる可能性も高くなっているのです。
海外資産もマイナンバーで把握されている場合もありますが、資産税が課されたときに「海外の資産は対象外」となる可能性があります。
少なくとも、課税の優先順位は国内資産の方が高くなることが明白なので、海外資産のリスク度合は低いといえるでしょう。
海外の金融機関で資産を保有する5つのメリット
海外の銀行への預金や、海外銀行を通して購入した金融商品の場合は、下記のようなメリットもあります。
- 預金封鎖の対象外なので、お金を自由に動かせる
- 新円切り替えの被害にあわない
- 国内でインフレが起きても外貨は影響を受けない
- 資産に課税されたとしても、没収されることはない
- 預金封鎖の混乱のなかで国内銀行が倒産した場合でも、海外の金融機関に預けている資産は影響を受けない
根こそぎ資産が没収されたロシアでも、海外の資産は被害を受けずにすんでいますので、海外資産の安全度は国内のものに比べてかなり高いといえるでしょう。
このように、預金封鎖対策としては、海外に資産を作ることが一番確実な対策方法であるといえます。
「海外に資産をつくる」というととても難しく感じるかもしれませんが、昨今では海外に銀行口座を作ったり、その口座を経由して投資商品を買うことも簡単にできるようになっています。
海外の金融機関に口座を開設して外貨を保有したり、海外の口座経由で投資商品を保有しておけば、いざというときにも資産や家族の生活を守ることができます。
他の人よりも3歩先に動くことが大切
預金封鎖の可能性が高まる要素として
- 金利が上がり始める
- 世界景気の先行きに不透明感が高まる
- 日本の税収が低下する
といったことが考えられます。
昨今はSNSが発達しており、ツイッターなどで情報が一気に拡散される世の中になっています。
日本の状況が悪化しはじめると、「日本はやばいらしい」「海外に資産をうつすといいらしい」といった情報が一気に拡散する可能性があります。
そうなると、海外の口座開設申込者が殺到し、海外の口座を開設したくてもできなくなる場合があります。
また、申込者が殺到するような状況になると資産の海外流出を防ぐため、海外金融機関の新規口座申し込みに対して規制がかかる可能性もゼロではありません。
万が一の対策をしたいと考えるのであれば、誰も興味を持っていないような平時のときに行うことが大切です。
海外に資産があると投資のチャンスも増える
海外に金融機関の口座さえ持っておけば、送金ひとつで資産を海外に送れるようになり、いざというときの選択肢が広がります。
海外の口座にすべての資産を海外に移すことは現実的ではありませんが、まずは口座を開設し、たとえ少しであっても資産を海外にうつしておくと良いでしょう。
また、海外に資産を持っておけば、預金封鎖時であっても自由に動かせるお金があるため、暴落した土地や株式を購入することができます。
海外の金融機関に口座を持ち、そこに資産を保有しておけば、「資産を守る」ということに加え、富豪になれるチャンスもめぐってくるかもしれません。
すでに外貨預金や海外の投資商品を購入している人も、日本の金融機関で保有していた場合は預金封鎖で凍結され、リスク分散にならない可能性があります。
海外の金融機関で外貨や投資商品を保有することも検討すると良いでしょう。
円以外の通貨を持つ
預金封鎖が行われると、まず真っ先に円が暴落すると考えられますので、ドルなどの外貨を持っておくことが預金封鎖対策になります。
実際、ロシアの預金封鎖では、海外にドルを持っていた人が富豪になりました。
ただ、日本の金融機関でドルなどの外貨を保有していても凍結される恐れがあります。
また、万が一銀行が倒産した場合、外貨はペイオフの対象外となりますので、円預金のような1,000万円までの保証がないというデメリットもあります。
できれば海外の金融機関の口座にドルやユーロなどの外貨をもっておくと安心です。
実物資産への投資
金や不動産などの「実物資産」を保有しておくことも預金封鎖対策になります。
預金封鎖で銀行口座が凍結される場合に備え、資産は預金や株式などの金融資産だけではなく、他の種類のものと分散して保有することがおすすめです。
特に金は換金性が高いため、「金の実物」を自宅で保有しておくことは、万が一のときに有効です。
ただ、場合によってはマイナンバー制度により資産の保有を特定され、これらの実物資産へも課税される可能性があります。
海外の移住件や永住権の獲得
預金封鎖が行われれば、日本は大混乱に陥ることが予想されます。
企業の倒産件数の増加、物価の異常上昇、国による医療保障の削減などにより、住みにくい状態が続くと考えられます。
しかし、海外の移住権や永住権を獲得しておけば、万が一のときには海外脱出をすることができます。
昨今では若くして成功した人が、高い課税を逃れてマレーシアやタイなどの海外へ移住する例も増えてきています。
もしものときに備え、移住件や永住権の獲得方法について調べておくと良いかもしれません。
まとめ
預金封鎖が日本で起こるかどうかは誰にもわかりません。
しかし、日本の財政を取り巻く環境は年々悪化しているため、「絶対に起こらない」と断言するのは難しい状況となっています。
「預金封鎖は起こらない可能性が高いが、絶対に起こらないとも言い切れない」ということが、現状を正しく表している言葉であるといえるでしょう。
預金封鎖に関する知識を知れば知るほど「もしものときに起こるダメージの大きさ」が理解できることと思います。
自分の資産を守るためにも、無理せずにできる範囲で何らかの対策を行っておくことをおすすめします。