今週のお題「今年買ってよかったもの」
(PS4/PCゲーム) NieR: Automata
まさか2児の父にもなって、仕事をほっぽり出してゲームに没頭し、
物語を進めるに従い、何度となく心を揺さぶられて、真のラストエンドでは目頭を熱くすることになろうとは、購入時点では予想だにしていなかった。
あまりに熱中してしまい、ゲームを始めてから余韻が覚めるまでに、長らく仕事を放棄した気がする。そのくらいこのゲームは良い意味でヤバイ。*1
その後も、この作品への理解を深めたくなり、この作品をてがけたプロデューサー ヨコオタロウ氏の過去作品や、舞台設定資料、関連作品など漁りまくって、今年はとんでもない時間を奪われた。そして、それに見合うだけのリターン(感動)があった。超ヤバイ。
詳しくは後述するのだけど、ヨコオタロウ氏について深掘りすると、NieR:Automataのみに留まらず、NieRというシリーズを通して描かれている作品全体の世界観を垣間見ることができるようになって、一層楽しめた。
ま、そんな小難しい話はさておき、NieR:Automataは1つのゲームとして、シナリオ、音楽、ゲームシステムからキャラクター設定、舞台設定と、微に入り細に入り全方位的に完成度の高い作品なのは確か。
※ 王道展開をことごとく裏切る&先が見えないことが多いので、安心してゲームしたいタイプの人だと辛みを感じるかもしれない。どちらかと言えば、ゲームにおける王道のシナリオ・展開のパターンを認識していて、よくあるパターンに飽きを感じている(刺激を求めている)人だとより楽しめると思う。
以下、盛大にネタバレを交えて、NieR:Automataという作品の凄さについて紹介する。
なお、ゲームの購入を考えている場合は、ネタバレなしでプレイしたほうがゼッタイ面白いので、下記記事は読まないほうがいいです。迷わず買えよ、買えば分かるさ。価格以上の価値を保証する。
目次
NieR: Automataという作品の凄さについて
のっけからネタバレになるのだけど、このゲーム、真のエンディングを見るためには、ゲームを5周する(5回エンディングを迎える)必要がある。
とはいえ、ただゲームを繰り返す作業ゲーというわけではなく、この5周には1周1周にちゃんと意味がある。
以下では、周回ごとにその凄さを紹介する。
1周目 (Aルート)
オープンニングからして度肝を抜かれる。物語が始まって右も左もわからないうちに、めっちゃ大きなロボットと戦闘したりとテンションが上がる演出、があったかと思いきや、主人公2人が自爆して木っ端微塵ですからね。
ビックリした。
この衝撃的な斜め上をいく展開が、真のラストまで延々続く(プレイヤーの安易な予想・期待を裏切り続ける)ので、舐めてかかると心が持たない。そんな作品。
ま、ともあれ主人公の2Bがめっちゃかわいい。
2Bを操作して、ガシガシ敵を切り倒していくアクションRPGで始まり、突然のシューティングゲームへの変容、巨大ロボットとのバトルなど、ラストまで飽きさせない演出が楽しめる。
アクションパートでは数多の武器をとっかえひっかえ、ひらすら切りまくる。爽快感パない。
2Bかわいい。
数多の驚きの展開もありつつ1周目は綺麗に話がまとまり、白熱のラストバトルを越えてハッピーなエンディングを迎える、のだけど、なんやかんや本筋ではなさそうなところに未回収の伏線が多数あり、なんだかモヤッとした気分に。
それはさておき、TV CMのキャッチコピー
『命もないのに殺し合う』*2
を思い返して、ゲームのストーリーはさておき『アンドロイドと人とを分ける境界線』はどこだろうと考えてみたり、
なかなか考えさせられる作品だなぁと、この時点ではまだ呑気に余裕を持ってゲームを遊んでいた。そう、このときは。
エンドロール後には、ヨコオタロウ作品では安定の2周目あります宣言。
2周目 (Bルート)
主人公2Bのサポートキャラクターであった9S視点でのゲームに変わる。1周目では触れられることのなかった物語の裏側が徐々に姿を表してくる。これまたヨコオタロウ作品では安定のきな臭い(見るものを不安にさせる)空気が流れ始める。
ところで、自分はアクションRPGを買ったつもりだったのだけど、2周目はほぼほぼシューティングゲームだった。なんでやねん。*3
アクションRPGパートに比べると爽快感が少な目、物語は刻々と重苦しくなっていき、2周目はテンションがダダ下がりの中、鬱々としてプレイし続けた。
妻いわく、ゲームをしている最中リアルに顔色が悪かったらしい。
今思ってみると、単純に自分は9Sが好きじゃないんだと思う。好きじゃないキャラを操作するのがこんなにも辛いなんて!
閑話休題。
この別視点で1周目を見返すという仕組みのお陰で、
1周目プレイ時にはわからなかった、2Bの何気ない仕草の意味や、仲良しに見ていた2Bと9Sの実は危うい関係性など、いろいろ見えてくるものがあり、
だんだんとNier:Automataの物語に引き込まれ始めた。
主人公たちアンドロイドの敵である機械生命体が進化し、人へと近づいていく過程も興味深かった。
…。
時間を経て本を読み返してみると、1回目に読んだときとは違った感想を抱くのに似た感覚。まさかゲームでこの感覚を味わうことになるとは、と衝撃を受けた。
3、4周目 (C,Dルート)
2周目クリア後、ヨコオタロウ作品では安定の同じルートを繰り返すかと思いきや、1(2)周目クリア後の物語が始まる。
3,4周目という言い方をしているのだけど、従来のヨコオタロウ氏作品と違って、C,Dルートはそれぞれ、完全にA,Bとは異なるストーリー。
2周目を終えて、『さぁ次の周回は何が変わるんだ?』って期待していたのをいい意味で裏切ってくる当たり、手のひらで踊らされた感がある。
で、この3周目の物語の内容がもうほんと衝撃的で、初っ端は
『(ちょっとキナ臭いけど) 2Bと9Sが手を取り合ってキャッキャウフフな感じのアクション無双きたこれ!』
って感じで、1,2週目の辛いラストの展開も相まって、幸せ展開にテンション上がるんですけどね、
2Bがいるからこの作品を買ったと言っても過言ではないにも関わらず、
3周目 開始早々、2Bがお亡くなりになる。
ネタバレごめん。
2Bが亡くなるまでのくだりがあるんだけど、いや、ほんともう泣きそうだった。
『うわー、これ亡くなるフラグだよ、てかフラグじゃねぇし、カウントダウンはじまっちゃってるし』と泣きそうになる状態で2Bを操作するパートあるからね。辛すぎた。
1周目、2周目で、2B、9Sそれぞれの背負ってる宿命や、その宿命とは相容れない思い、葛藤などなど内面も外面も描きまくって、プレイヤーに感情移入させまくってからのこれですからね。ヨコオタロウ、マジえげつない。
それだけでなく、この周回では、この物語における数少ない癒し要素パスカルと死よりも辛い別れ方をしたりと、ヨコオタロウ節が全開だった。総じて、SAN値を削られすぎた。
切なすぎて、思い返しただけでも、胸が苦しくなる。未体験の人には、ぜひこの悲しみを経験して欲しい。
で、ですね。3周目、4周目を進めていくと、これまで純粋な感じで、めっちゃ良いやつだった9Sがね、闇落ちしていくんですよ。。。これまでの経緯を踏まえると、『そうなるよね、当然だよね。』って分かってしまうのがつらかった。
物語を進めれば9Sを闇落ちさせてしまうとわかった上で、進むしかなくなりますからね。ヨコオタロウ、ほんまエグいわ。
唯一の救いは、1,2周目ではチラ見せだったキャラクターA2をメインに操作できるパートで、それだけがこの周回での心のオアシスでした。A2の圧倒的なフィジカル&メンタルの強さで、心の平穏をゲット。
過去のNieRを知っていると、胸にこみ上げるものがあるラストバトルへの導入部。
真相があきらかになるにつれ、9Sとともに闇落ちするプレイヤーの心。
ラストに近づくにつれ、ガンガンにテンション上げてくる演出・シナリオが巧すぎてヤバかった。
でもラストは救われない。全く。
5周目 (Eルート)
5周目はシナリオ自体は特になく、チャプターセレクト機能で最終場面を選択すると、救われないC,Dエンドとは異なる真のエンディングに。
ラストは、感動的な胸熱展開かつ殺人的な、前代未聞のスタッフロール。
プレイヤーが操作してクリアする必要のあるスタッフロール(エンドロール)っていうアイデア自体がもうクレイジーなのだけど、
このスタッフロールが、マジやばい。
真のエンディングを迎えるため、プレイヤーはがんばって、スタッフロールをくぐり抜ける必要があるのだけど、
(未プレイの人には『ちょっと何言ってるかわからない』だろうけど、まぁそこはフィーリングで読んで)
あまりにも初見殺しなトラップがちりばめられたスタッフロールをノーセーブでくぐりぬけている中、
『もう、これ以上は無理、俺にはクリアできない…』
となったところで、今まで自分と同じように、何度となく心をエグられながら、この地獄のような周回プレイを乗り越えてきた世界中に実存するNieR:Automataのプレイヤーたちが、『がんばれ、あと少しだ』、『お前なら出来る!』、って励ましてくれるんだぜ。そら、涙で前が見えなくなるわ。
実存するプレイヤーからの励ましっていうのが、もうね…。胸にこみ上げてくるものがあった。
この演出は憎すぎる。
そして、最後の最後に、ヨコオタロウらしからぬハッピーエンドが!!
2Bと9Sのこれまでの因果を考えると、また同じ悲劇を繰り返すのでは、という一抹の不安もあるので、これがハッピーかどうかは判断が別れるところなのですが、後味の良い最後でした。
余韻
オープニングムービーの出だしに2Bの独白があるのだけど、
1,2周目プレイ時には『なんか小難しいこと言っているなー』って印象で何のことやらといった感じだったので、『作品の世界観を演出してるのかなー』くらいに思ってたのだけど、
5周クリア&資料集や舞台で明かされた裏設定(ゲーム開始前の物語など)をアタマに入れた上で聞き直すと、最初とは全く違って聞こえた。
全てをわかった上で任務を遂行し続けるなんて、切なすぎるよ、2B…。
最初から最後まで、ヨコオタロウという奇才の仕掛けに心を揺り動かされ続けた。
ゲームという枠を介して、作り手(制作スタッフ)と遊び手(プレイヤー)との魂のせめぎ合いを楽しませてもらった感がある。せめぎ合い、っていうか一方的にせめられ続けるわけだけど。
5周クリア後は、ほんと燃え尽きて、1週間は放心していた。
追加コンテンツ(DLC)は買ったけどまだクリアしてない。子育てが落ち着いたらクリアしたいなぁ。
感情を想起させる圧倒的完成度のゲーム音楽
ゲーム中、場面場面にあった超絶ナイスな曲が使われていて物語を盛り上げてくれるのだけど、
クリア後は曲単体で聞いて、それぞれのシーンを思い返してしまっては泣きそうになる。
NieR:Automataの世界をより深く知りたい人のための資料集など
過去作品の資料集などレアなものにまで情報が散らばっていてコンプリートが厄介だったのだけど、
とりあえず、今ならこれ1冊にだいたいまとまってる。
あとは、舞台の台本を読むと、NieR:Automata開始以前の衝撃的な話が載っている。
さらに深掘りしたくなったら、ググって下さい。
ヨコオタロウ氏の凄さについて
ヨコオタロウ氏の鬼才ぶり
ヨコオタロウ作品のすごいところは、作品に登場する1つ1つ(キャラクターだけに留まらず、舞台の背景にまで)に、きちんと意味・理由があるんですよね。
すげーよ、この圧倒的完成度。
氏のインタビュー記事や過去の発言から推測するに、ざっくりとした設定(大枠)だけ決めて、細かい所は後付の要素が多いようなのですが、これだけの大作にも関わらず、寸分違わずちゃんと整合性をとってるからね。
まったく正攻法ではないアプローチで、この世界観を生み出しているのは、マジ鬼才。
ヨコオタロウというプロデューサーが今までどんなゲームを、何を考えて作ってきたかを踏まえて遊んだほうが100倍面白くなる。お世辞抜きでマジで。
クリアした後には、ぜひヨコオタロウについて調べてほしいところ。
『あのときのアレは、こういうことだったのか』
『この作品のアレが、Automataのコレに繋がってるのか!!しかもこんな形で?!』
とか調べるたびに新しい知見にであえて、ヨコオタロウの描く世界のスケールの大きさに感嘆すること間違い無し。
ヨコオタロウ氏のひととなり
インタビュー記事などをまとめました。このあたり読むだけでも十分わかると思う。
かなり癖のある方なので、個々の発言を真に受けて解釈するよりは、一気に大量に読んで、頭のなかで人となりを整理して全体として言わんとしてることを理解する方が良いように思う。
- 電撃 - 『NieR:Automata』はヨコオタロウさん流『君の名は。』である!? プレイした編集部員による座談会
- 2017/2/23
- 『ニーア オートマタ』ヨコオタロウ氏の素顔に迫るドキュメンタリー映像 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト
- 2017/4/1
- 貴重なドキュメンタリー映像!!
- 電撃 - 『NieR』の新作は前作を遊んだファンほど混乱する!? ヨコオタロウ氏ら開発スタッフに直撃インタビュー
- 2015/6/19
- ニーア、ペルソナ等の人気ゲーム開発者が激論! 国内ゲーム産業を支える40代クリエイターの苦悩とは【SIE外山圭一郎×アトラス橋野桂×スクエニ藤澤仁×ヨコオタロウ】
- 2017/8/28
- 「メチャクチャにしてしまえ」ヨコオタロウ氏シンガポールkeynoteリポート - ファミ通.com
- 2017/10/15
- 「NieR:Automata」はこうして作られた。ディレクターのヨコオタロウ氏とプロデューサーの齊藤陽介氏が,シンガポールのゲームイベントで述べたこと - 4Gamer.net
- 2017/11/1
- ヨコオタロウ氏×加藤正人氏がゲームの世界観を語る!「Flyers' Lab #2」が開催 - GAME Watch
- 2017/11/21
- BUKKORO / ヨコオタロウ / コラム
- 氏が過去(2010年代初頭)に書かれていたブログ記事(コラム)まとめ
この他にも探すと座談会的な動画などがある。ニコニコ動画で公開されていたNieRスタッフ・声優陣との座談会はおすすめ。
ヨコオタロウ氏の他作品の紹介
下記記事にまとまっています。