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「頑張れって言わないで!」水泳・大橋悠依が語る“コーチとの衝突”…感情を失った金メダリストはどうやって“燃え尽き”を乗り越えたのか?
posted2024/12/20 11:04
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Asami Enomoto
9月、競泳女子個人メドレーの第一人者・大橋悠依(29歳)が現役引退を発表した。2021年東京五輪では400mと200mの個人メドレーで、夏季五輪日本女子史上初の2冠を達成。しかし、コロナ禍で開催された異例の祭典では心残りがあった。両親や家族にレースを見せたい――その思いで現役続行を決断した大橋だったが、パリ五輪までの道のりは実に険しいものだった。【NumberWebインタビュー全2回の2回目/前編から続く】
「両親や家族にレースを見せることができなかったので、会場で見てもらってから辞めたいなという思いが大きかった」
気持ちを新たにスタートを切った大橋は、200mでは2017年、400mでは2018年に記録した自己ベストを更新することを目指し、パリ五輪へ向けて再び歩みを始めた。
しかし、東京からパリまでの3年間は、重圧との戦いでもあった。
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「どれだけ小さなレースでも取材していただく機会が増えて、レースで試したいなと思っていることがあっても試しにくかったですね。国内では負けられないという気持ちがあったので」
「引退しておけばよかった」という考えが頭をよぎったことは一度や二度ではない。悩みがあり、知人に相談すれば、「それは金メダリストにしか分からないことだよね」という言葉をかけられることもあった。
金メダリストの孤独――それに打ち勝つために、大橋は苦悩し、もがき、努力を重ねた。