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田中碧はなぜ「ここぞ、という場面で点を取れるのか?」中村憲剛が感じた“あがき続ける才能”「三笘の1ミリ」からの得点に「やっぱりな、と」
posted2024/12/10 17:10
text by
中村憲剛Kengo Nakamura
photograph by
Kaoru Watanabe / JMPA
あがき続ける才能
川崎フロンターレでともにプレーした田中碧も、あがく才能、あがき続ける才能を持っています。
彼は2017年にユースからトップチームへ昇格しました。当時のチームではブラジル人のエドゥアルド・ネット、大島僚太、それに僕がボランチをすることもあったなかで、田中のプロ1年目だった17年シーズンは、クラブ史上初のJ1優勝を成し遂げました。
待ち望んだ歓喜に酔いしれるチームのなかで、ユースで背番号10を背負い、「アカデミーの星」とも評された田中は、公式戦の出場機会がないままプロ1年目を終えました。シーズン開幕早々の3月に手術を要するケガをしてしまい、およそ4か月の離脱を強いられたのも、出場機会を得られなかった一因でした。
それでも彼は、一日、一日を大切に過ごしていました。
現役時代の僕は、クラブの施設で長い時間を過ごしていました。午前中の練習前から準備をして、練習後に昼食を取り、昼寝をしたり身体のケアをしたりして、必要なら筋トレもする、といった感じです。一日の半分近くをクラブの施設で過ごすこともありました。
田中も、同じくらいクラブハウスにいました。午前中の練習後に昼食を取り、少し休んで、みっちり筋トレをやったりしていました。身体作りにも取り組んで、食べるものからサプリメントまで勉強していました。
ピッチ上では僕や大島、家長昭博、阿部浩之、18年加入の守田英正らと一緒にやることで、ものすごい量の情報をぶつけられていきます。情報処理能力が追いつかずにパニックになることもありつつ、処理した情報を実践して自分のモノにしていきました。川崎フロンターレが大切にしていた「相手を見ながらサッカーをする」という設計図を少しずつ理解して、自分の良さをいかせるようになっていきました。