フットボール“新語録”BACK NUMBER
28歳の超若手監督が巻き起こす、
ホッフェンハイムの蹴球IT革命。
posted2015/11/02 10:40
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Getty Images
「私たちは育成をさらに発展させるために、新たな基準を作っている。それに見合う監督が必要だ」
ディトマール・ホップ(ホッフェンハイムの実質的オーナー)
ブンデスリーガでは監督選考において「戦術家ブーム」が訪れており、選手時代の実績はほぼ問われなくなった。たとえばドルトムントを率いるトーマス・トゥヘルには1部でプレーした経験がない。選手たちからの戦術的な要求も高くなっており、もはやカリスマ性だけでは心をつかめない。
そして今、そのブームは新たなステージに入ろうとしている。10月27日、ホッフェンハイムは来季の監督に、28歳のユリアン・ナーゲルスマン(1987年7月23日生まれ)を抜擢すると発表したのだ。もちろん現時点のブンデスリーガにおける最年少監督である。
現在、ナーゲルスマンはホッフェンハイムU-19の監督を務めており、ケルンで監督ライセンスを取得中だ。今季の残り期間は「残留請負人」のフープ・ステーフェンス(61歳)が指揮を取り、来年7月1日に最年少監督にバトンを渡すことになる。
ADVERTISEMENT
日本で言えば、槙野智章や内田篤人と同じ学年だ。いくら「戦術家ブーム」が起こっているとはいえ、なぜホッフェンハイムは28歳の監督を指名したのだろうか?
その背景には、ホッフェンハイムが取り組む「ITサッカー革命」がある。
ナーゲルスマンに訪れた不運と幸運。
元々、ナーゲルスマンはアウクスブルクのセカンドチームに所属するDFだったが、20歳のときに膝に怪我を負って引退を余儀なくされてしまう。
ここでナーゲルスマンが幸運だったのは、そのチームの監督がトゥヘルだったことだ。まだ選手としての契約が残っていたため、トゥヘルの提案により、まずは対戦相手を分析するスカウトになった。さらに「監督を目指したらどうか」とアドバイスをもらい、指導者の道に進むことを決心したのだった。
ナーゲルスマンは1860ミュンヘンの下部組織を経て、ホッフェンハイムU-17の監督になった。2012-13シーズンには、ホッフェンハイムのトップチームで監督交代が相次ぎ、フランク・クラマー、マルコ・クルツ、マルクス・ギスドルの下でコーチを務めた。ちょうど宇佐美貴史が所属していた時期だ。